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(参考5−1)

原子力二法人統合に関する原子力安全委員会の意見

平成14年5月13日
原子力安全委員会

   日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構(以下「原子力二法人」という。)が統合され、新たに原子力研究開発を総合的に実施する独立行政法人(以下「新法人」という。)が設置されることとなったことを踏まえ、原子力安全委員会は、新法人の役割・機能等に関する意見を以下のとおりとりまとめた。

1.    持続可能な発展を目指す21世紀の人類社会において、原子力利用が欠かせないとすれば、原子力安全の確保は、わが国ばかりでなく全世界にとってますます重要になるものと考えられる。また、唯一の被爆国としての重い歴史を負いつつも、原子力開発利用を国策とするわが国は、その点で中核的役割を担うことが国際的にも強く期待されている。これらの観点から、原子力安全は、日本の国の基盤を支える技術分野の一つとして、位置付けられるべきである。

2.    国の基盤にかかる原子力安全を確立・維持し、その成果を世界的公共財として提供することを可能にするためには、優秀な人材や研究施設などの研究開発資産の形成・維持に長期的かつ計画的に取り組んでいくことが不可欠であり、学界・産業界との連携のもと、国の積極的な関与が求められている。
   原子力二法人の統合化に当たっては、この視点を忘れるべきではない。

3.    原子力安全は、高い専門性とともに広範な科学技術分野にまたがった総合性を必要としており、原子力安全委員会が原子力の安全の確保及び放射線防護に関する知的基盤の整備を確実にかつ効果的に実施するためには、原子力に関する基礎的・基盤的研究を体系的に実施する新法人の強力な支援が不可欠である。
   特に、安全規制を支える「安全研究」を適時的確に実施すること、原子力施設の事故時等に際し、その原因究明等に対し迅速に貢献すること、国や地方公共団体の行う緊急時対応を技術的に支援すること、さらに安全規制を支える人材を育成することなどにおいてこの新法人は重要な役割を担うべきである。

4.    言うまでもなく、原子力安全を支える基本的要素は人材である。人材の育成を継続的に図る観点からは、優秀で意欲的な若い技術者を広く糾合する必要があり、新法人にはそのための求心力が備わっていなければならない。そのような求心力をもつためには、安全研究と併せて、先端エネルギーの開発や環境安全の徹底研究などの挑戦的課題に今後とも取り組んでいく必要があり、また、それによって総合性と専門性を兼ね備えた人材の育成がはじめて可能になる。

5.    また、原子力安全委員会が行う安全確保のための規制活動に対し国民の信頼を獲得するためには、その規制活動が原子力の推進活動と適正に分離独立していることが重要である。このような観点から、この新法人が行う安全研究及びそれに関連した研究には「透明性」「中立性」が求められる。

6.    従って、新法人は、原子力に関する基礎的・基盤的研究を体系的に実施する総合研究機関としての機能を十分発揮し得る組織とすると同時に、「安全研究」がその主要業務の一つに位置づけられるべきである。そのため、新法人が行う安全研究及びそれに関連する研究に対しては、国は必要な資金を十分確保するなど開発推進部門との明確な分離を行い、その中立性が保持し得るよう特段の配慮が不可欠である。
   なお、プルトニウムに関しては、核不拡散上の制約から国の主導的関与を要し、新法人が中心となってその安全研究に取り組むことが欠かせない。

7.    この他、現在、原子力二法人が指定公共機関として原子力防災等に貢献している現状に鑑み、新法人はこの使命を引き継ぎ、万一の事故時に専門的立場から防災活動を支援するとともに、平常時に防災関係者に対する原子力、放射線についての研修も期待されているところであり、これらの機能の維持向上を図り得るよう特段の配慮が必要である。



(参考5−2)

日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化の制度設計にあたり、国の原子力の安全確保に関する基本に係る観点から考慮すべき事項について

平成15年6月19日
原子力安全委員会

   日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構が廃止・統合され、新たに原子力研究開発を総合的に実施する独立行政法人(以下「新法人」という)が設置されることとなったことを踏まえ、現在、文部科学省をはじめとした関係機関において新法人設置に向けた検討が進められているところである。
   これまで原子力安全委員会は、新法人設立の重要性に鑑み、平成14年5月13日に、新法人の役割・機能等に関する基本的な意見をとりまとめた(添付資料)。今般、同意見に加え、新法人の業務方針の骨格を定める制度設計に関する検討が関係機関において進められるにあたって、国の原子力の安全確保の基本に関する観点から考慮すべき事項に係る意見を、以下のとおり示す。

1.    新法人は、わが国の原子力の安全確保に関する基本政策を適時的確に踏まえ、原子力研究開発の中心的役割を担う機関として総合的に安全研究を実施すべきである。具体的には、国の安全規制からの要求に応える研究、すなわち現行の規制活動への支援及び規制に係る政策全般に資する研究、事故・故障の評価に関する研究、施設の不安全要因の検出・分析・評価に関する研究等に加え、放射線影響に関する研究、原子力利用の全段階にわたる放射性廃棄物等の安全な処理処分を含む安全(以下、環境安全という)の維持・強化を含めた総合的安全性の向上を目的とした研究及び防災対策のための研究を、各々の研究課題に関する原子力安全政策上の重要性に応じて、着実に推進する必要がある。
   安全研究の成果が安全規制活動等に適切に活用されるためには、その研究の実施形態やプロセスが十分な中立性と透明性を保ち、信頼性の高いものであることが必要である。

2.    新法人は、わが国の原子力安全活動を支えていくため、人的基盤も含めた知的基盤、及び研究施設・設備等の研究基盤を、継続的に維持・強化し、その中核的役割を担う必要がある。特に、新法人には安全規制を支える安全研究の着実な実施、原子力施設の事故・災害時等における原子力防災・緊急時対応への技術的支援に関し国の中核的機関としての役割が期待されており、十分な実行能力と責任をもってその負託に応えるべきである。また、放射線源に関するセキュリティの強化等、国際的課題に対する新たな対応や、高度かつ先進的原子力安全研究に関する国際的な研究拠点としての役割なども期待されている。
   研究施設・設備等の研究基盤の強化については、中性子の照射試験が行える原子炉やプルトニウム等の特別の放射性物質を扱う大型の施設(ホット施設)等の試験施設を、わが国で唯一有する法人として、その維持と活用が求められているとともに、種々の原子力基盤研究施設の共用施設の整備・運用に対する役割が大きいことを踏まえて対応する必要がある。その際、既存研究施設の整理・合理化にあたっては、代替機能の確保に特段の留意をする必要がある。
   人的および知的基盤の維持・強化については、安全研究を実施する人材への適切な評価、規制活動の適切な実施に必要な人材の育成、人材の質の向上のための教育・研修機能の強化に配慮すべきである。

3.    新法人においては、既存原子力施設の廃止措置および放射性廃棄物の処理処分が、今後、ますます重要な業務になると思われる。これらの業務は、いわゆる原子力利用に伴う環境安全と密接に関連しており、この観点から国民の理解を広く得ていくためにも、その実施にあたり環境安全を含む安全性の確保・向上に長期的視点から確実に取り組む必要がある。
   原子力利用に伴う環境安全の確保は、今後の原子力安全政策上の重要性においてその比重がますます増すものと予想され、新法人の設立にあたっては、この点に関する配慮が特に重要である。

4.    新法人の設置、運営方針を具体的に定めていく際には、以上の観点を十分に踏まえて進めることが必要である。

   新法人の業務方針の骨格を定めるなど、新法人設立の制度設計にあたっては、次の事項を明確にすべきである。
1 主務大臣による新法人の中期目標の策定、中期計画の認可等にあたっては、原子力安全委員会が企画・審議・決定する原子力の安全確保に関する基本政策にもとづいているか否かとの観点から、あらかじめ原子力安全委員会の意見を聴くこと。
2 主務大臣による中期目標は、新法人が行う安全研究にかかる業務を、原子力安全委員会の定める安全研究年次計画にもとづいて策定すること。

   また、次の事項についてその制度設計にあたり特に配慮すること。
1 新法人の年度計画の評価においても、原子力安全委員会の意見を十分に参考にすること。安全研究に関しては、原子力安全委員会の示す重点分野を十分踏まえること。
2 主務大臣による中期目標の策定や中期計画の認可にあたっては、原子力施設の廃止措置および放射性廃棄物の処理処分に関する環境安全を含む安全の確保が確実に実施されるよう財源を確保するなど、所要の措置が講ぜられること。
3 万全な原子力の安全規制体制を確保するためには、原子力安全に関する知見・経験を有する者を十分確保する必要があり、新法人においては、このような人材の育成・確保を可能とするような運営が図られること。規制行政への知的支援や協力には客観性と透明性が不可欠であり、新法人の運営にあたってはそのことが十分考慮されること。

   なお、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構とが統廃合され新法人になることは、単に当該二法人の問題にととまらず、日本の原子力安全に対する取り組み全般に関わるところが少なくない。原子力安全委員会としては、日本の原子力の安全確保に関する基本政策を企画・審議・決定する立場から、原子力安全研究年次計画の策定と実施のあり方、及び研究基盤や知的・人的基盤の維持・強化など、総合的視点からの考察を要する事項について検討するとともに今後必要に応じ意見を述べることとする。検討にあたっては、二法人以外の関係機関も含めて行うこととする。
以上


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