日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構(以下「原子力二法人」という。)が統合され、新たに原子力研究開発を総合的に実施する独立行政法人(以下「新法人」という。)が設置されることとなったことを踏まえ、原子力安全委員会は、新法人の役割・機能等に関する意見を以下のとおりとりまとめた。
1. |
持続可能な発展を目指す21世紀の人類社会において、原子力利用が欠かせないとすれば、原子力安全の確保は、わが国ばかりでなく全世界にとってますます重要になるものと考えられる。また、唯一の被爆国としての重い歴史を負いつつも、原子力開発利用を国策とするわが国は、その点で中核的役割を担うことが国際的にも強く期待されている。これらの観点から、原子力安全は、日本の国の基盤を支える技術分野の一つとして、位置付けられるべきである。
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2. |
国の基盤にかかる原子力安全を確立・維持し、その成果を世界的公共財として提供することを可能にするためには、優秀な人材や研究施設などの研究開発資産の形成・維持に長期的かつ計画的に取り組んでいくことが不可欠であり、学界・産業界との連携のもと、国の積極的な関与が求められている。
原子力二法人の統合化に当たっては、この視点を忘れるべきではない。 |
3. |
原子力安全は、高い専門性とともに広範な科学技術分野にまたがった総合性を必要としており、原子力安全委員会が原子力の安全の確保及び放射線防護に関する知的基盤の整備を確実にかつ効果的に実施するためには、原子力に関する基礎的・基盤的研究を体系的に実施する新法人の強力な支援が不可欠である。
特に、安全規制を支える「安全研究」を適時的確に実施すること、原子力施設の事故時等に際し、その原因究明等に対し迅速に貢献すること、国や地方公共団体の行う緊急時対応を技術的に支援すること、さらに安全規制を支える人材を育成することなどにおいてこの新法人は重要な役割を担うべきである。
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4. |
言うまでもなく、原子力安全を支える基本的要素は人材である。人材の育成を継続的に図る観点からは、優秀で意欲的な若い技術者を広く糾合する必要があり、新法人にはそのための求心力が備わっていなければならない。そのような求心力をもつためには、安全研究と併せて、先端エネルギーの開発や環境安全の徹底研究などの挑戦的課題に今後とも取り組んでいく必要があり、また、それによって総合性と専門性を兼ね備えた人材の育成がはじめて可能になる。
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5. |
また、原子力安全委員会が行う安全確保のための規制活動に対し国民の信頼を獲得するためには、その規制活動が原子力の推進活動と適正に分離独立していることが重要である。このような観点から、この新法人が行う安全研究及びそれに関連した研究には「透明性」「中立性」が求められる。
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6. |
従って、新法人は、原子力に関する基礎的・基盤的研究を体系的に実施する総合研究機関としての機能を十分発揮し得る組織とすると同時に、「安全研究」がその主要業務の一つに位置づけられるべきである。そのため、新法人が行う安全研究及びそれに関連する研究に対しては、国は必要な資金を十分確保するなど開発推進部門との明確な分離を行い、その中立性が保持し得るよう特段の配慮が不可欠である。
なお、プルトニウムに関しては、核不拡散上の制約から国の主導的関与を要し、新法人が中心となってその安全研究に取り組むことが欠かせない。
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7. |
この他、現在、原子力二法人が指定公共機関として原子力防災等に貢献している現状に鑑み、新法人はこの使命を引き継ぎ、万一の事故時に専門的立場から防災活動を支援するとともに、平常時に防災関係者に対する原子力、放射線についての研修も期待されているところであり、これらの機能の維持向上を図り得るよう特段の配慮が必要である。 |