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(参考4−1)

日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と
独立行政法人化に向けての基本的な考え方

平成14年4月2日
原子力委員会決定

   日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構は、昭和30年に制定された原子力基本法にその根拠を有する組織であり、これまで累次にわたる「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(以下、「原子力長期計画」という。)の下で、我が国の原子力研究開発における中核的な役割を担ってきた特殊法人である。

   昨年12月19日に、中央省庁等改革に続く行政改革の一環として、「特殊法人等整理合理化計画」が閣議決定され、その中で、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構について、その廃止・統合及び独立行政法人化(以下「統合」という。)が決められた。
   原子力委員会としては、この旨の報告を受け、統合後の新法人が、今後の我が国の原子力研究開発においても、引き続き中核的な役割を果たすことを期待する旨表明すると同時に、新法人のあり方について、積極的に意見を述べていくとの意向を明らかにした。
   その後、原子力委員の間において議論を重ねるとともに、5回にわたり、原子力委員会参与から意見を聴取した上で、今般、両法人の統合に向けての基本的な考え方をとりまとめることとした。

   今回の「基本的な考え方」は、特に原子力研究開発における両法人の重要性に鑑み、原子力委員会としての基本的な考え方をとりまとめたものであり、今後の関係行政機関を始めとする関係者による検討が、これに沿って行われることを強く希望するものである。
   両法人の統合については、上記閣議決定により、平成16年度中に関連法案を提出することとされており、それまでの間関係者による詳細な検討が行われることとなるが、その進捗状況を踏まえながら、今後とも、適時適切かつ臨機応変に、原子力委員会としての考え方を提示することが必要であると考えており、引き続き、積極的に両法人の統合に向けて取り組んでいきたい。

1.基本的な認識
(1)    今後、我が国が科学技術創造立国を目指していく中で、原子力科学技術の重要性は増しこそすれ、いささかも減じるものではない。また、我が国のエネルギー供給構造が依然脆弱な一方、地球温暖化問題が日々深刻化する状況の下においては、原子力の研究開発利用のより一層効果的な推進が求められているものと考えている。
   したがって、まず何よりも、引き続き、我が国の原子力研究開発利用の枠組みを定めた原子力長期計画(現行計画   平成12年11月24日原子力委員会決定。同28日閣議報告)の着実な推進を図っていくことが重要であり、同計画の下で中心的な役割を担ってきた両法人が、統合後も引き続き、同計画に沿って、我が国の原子力研究開発において中心的な役割を担っていくことが是非とも必要である。

(2)    特に、統合後の新法人は、国が行うべき「基礎・基盤的な研究開発」から「プロジェクト型研究開発」までを全て包含する、まさしく我が国唯一の中核的な原子力研究開発機関と位置付けられるものである。
   したがって、今回の統合が積極的な効果をもたらし、我が国の原子力研究開発の一層の発展に資するよう、「基礎・基盤的な研究開発」や「プロジェクト型研究開発」など、各々の研究開発の性質に応じて、適切な組織構成や運営が行われることが不可欠であるが、それにとどまらず、「先進性、一体性及び総合性」を備えた研究開発機関として、その役割を果たすことが強く求められる。
   なお、その際、特殊法人改革の趣旨を踏まえて、業務の重点化・効率化を併せて図っていくことが重要であることは、言うまでもない。

2.新法人に求められるもの
(1) 横断的課題
1    組織運営
新法人は、「基礎・基盤的な研究開発」から「プロジェクト型研究開発」までの部門から構成されることとなるが、原子力科学技術の発展と、我が国のエネルギーセキュリティの確保といった政策上の観点に立てば、まず安全確保を大前提として、全体のバランスのとれた運営が図られることが必要である。
もとより両部門は、「基礎・基盤的な研究開発」では研究者の個性と自由な発想を尊重することが要請され、組織のフラット化が有益である一方、「プロジェクト型研究開発」ではプロジェクトの目的の明確化とそれに沿った研究開発の実施が必要であるなど、研究開発の性質が大きく異なるため、具体的に組織や人事、また運営管理手法を検討する際には、その点について留意することが必要である。
   他方で、今般の統合を我が国の原子力研究開発の一層の発展のための重要な契機とするためには、新法人を単に両部門が併存するだけの組織とするのではなく、組織全体の活性化に努めつつ、シナジー効果の発揮される組織とすることが強く求められる。
   そのためには、内部の研究開発組織を硬直化させることなく、新法人内部での交流を活発化させるなど、言わば「組織横断的なマネージメント」を追求していくことが期待される。
また、併せて、両部門を含め、新法人全体の適切な運営に要する資金の確保がなされるべきであり、原子力委員会としても、関係府省を始めとする関係者とともに、これまで以上に努力していきたい。

2    研究評価の充実
   原子力研究開発の重要性については、既に述べたとおりであるが、その重点化・効率化が重要であることも論をまたないところであり、その意味で、他の科学技術同様、新法人においても、1で述べたような研究開発の性質の多様性に着目しながら、これまで以上に厳正な研究評価が行われるよう、評価制度の充実を図っていくことが必要である。

3    透明性の一層の向上
   原子力研究開発を円滑に推進していくために、国民から幅広い支持を得るとともに、立地地域の理解と協力が不可欠であることは、あらためて言うまでもないところである。
   したがって、新法人は、これまで以上に透明性の向上を図る観点から、これまでに実施してきた情報公開や外部評価の一層の充実、立地地域への理解促進活動に努めることが必要である。

4    安全確保への貢献
   今般統合される両法人については、これまでの長年にわたる研究の実施を通じて、先進的な研究開発の一部としての安全研究、安全確保のための科学的・技術的基盤の構築を含む、安全規制・防災対策への支援につながる安全研究の両面において、相当の貢献を行ってきている。
   したがって、統合後の新法人が、引き続き、客観性・透明性を堅持しつつ、こうした役割を担っていくことが、安全確保を大前提とした、我が国における原子力研究開発利用の一層の発展のためには必要不可欠である。

5    産学官の連携強化
近年、経済のグローバル化などにより、国際的競争が激化する中、科学技術における産学官の連携の重要性は、年々高まっている。
   そもそも原子力分野は、エネルギー供給にとどまらず、放射線利用なども含む、極めて広がりの大きい分野であり、原子力研究開発においても、産学官の連携強化を図っていくことは、我が国の産業競争力の強化という観点からも、強く求められるところである。
   このため、核燃料サイクル分野における民間への技術移転はもちろんのこと、原子力研究開発全体において産学官の連携強化を図る中で、新法人がその重要な一翼を担うことが必要である。
原子力科学技術の発展には、広汎な基礎科学的基盤を有する大学との連携が不可欠であることは言うまでもないことであり、それにより、新法人における革新的な研究開発の発展が期待される。
また、産学官の連携強化を図るに当たって、円滑な技術移転や研究開発成果の迅速な産業化は、人材の移動が円滑に行われるか否かに左右されるケースが多いことを踏まえ、今後の検討において、人材の流動化に配慮することが望まれる。

6    大学との人材育成面での連携強化
   今後の原子力研究開発の発展のみならず、我が国における原子力の一層効果的な推進にとって、専門的な人材の育成は極めて重要な課題であり、統合後は我が国唯一の中核的な原子力研究開発機関となる新法人に対しては、こうした面での役割も強く期待されるところである。
   こうした観点から、人材育成面においても、大学との連携強化が最も重要な課題の一つであり、特に近年、大学教育における施設や設備の取扱いの機会の減少が指摘されていることを踏まえ、専門的人材の養成において、新法人の施設・設備の活用を図ることも有益であると考えられる。

7    国際協力・核不拡散への貢献
これまで長年にわたり一貫して原子力研究開発に取り組み、いわば「原子力先進国」の地位を占める我が国としては、原子力分野における国際協力、特に今後エネルギー需要の高い伸びが見込まれるとともに、放射線利用の拡大が予想されるアジア地域において、専門的な人材の育成を含む協力を進めることが極めて重要である。
   統合後は世界で屈指の規模を有する原子力研究開発機関となる新法人が、研究員の受入れ、要員教育、各種技術協力の面で、統合を契機として、より開かれた運用を図っていくことが肝要である。
また、核燃料サイクルについて豊富な研究実績を有する機関として、国際的に主導的役割を発揮することが重要であることは言うまでもない。
我が国は、これまで一貫して原子力を平和利用に限ることを国是としてきており、原子力研究開発を進めるに当たっても、常に平和利用を念頭に置いて実施してきたところである。
   新法人についても、そうした面での蓄積を有することを踏まえ、これまで以上にプルトニウム管理等の核不拡散に対する研究開発面での貢献を行い、二国間、IAEAを始めとする多国間ベースで、我が国が期待される国際的な付託に応えていくことが期待される。

8    廃棄物処理・処分方策の確立
   新法人が、将来に向けて、原子力研究開発を推進していくためには、放射性廃棄物の処理・処分や廃止措置が、新法人の運営に過度の負担とならないことが必要不可欠である。
   こうした課題については、既に関係行政機関を始めとする関係者によって検討が進められているところであるが、この解決を新法人のみに委ねることのないよう、引き続き国が責任を持って検討を行い、その方策の確立を目指していくことが必要である。

(2) 個別的分野における課題
1    核分裂分野(核燃料サイクルを含む)
   核分裂分野は、今回の統合による積極的効果が最も期待される分野であり、両法人のこれまでの研究成果を生かし、将来に向けた革新的原子力技術の研究開発などを積極的に実施していくべきである。
   核燃料サイクルについては、我が国にとっての重要性に鑑み、核燃料サイクルの完結及びその高度化のため、高速増殖炉及び関連する燃料サイクル技術、軽水炉使用済燃料の再処理技術の高度化、高レベル放射性廃棄物の処理・処分技術の研究開発について、現行原子力長期計画の方向性を踏まえ、引き続き積極的に実施していくべきである。

2    核融合分野
   国際熱核融合実験炉(ITER)計画の進捗を踏まえ、我が国が果たすべき役割の中での新法人の役割を検討し、相応しい体制を構築していくべきである。

3    加速器分野
   加速器装置自体は、様々な科学技術分野の原理原則を解明するための手段であり、また、物質の創製、構造解明などの幅広い研究分野の基盤を成す技術である。
   新法人は、放射線研究の蓄積など、原子力の中核的研究開発機関としての役割を十分に認識し、加速器開発を実施している諸機関との間の役割分担を踏まえながら、我が国全体における加速器開発の総合化・効率化を図る中での重要な役割を担うことが期待される。

4    放射線利用分野
   放射線利用分野においても、将来にわたる我が国の産業創生の一つの柱として、産業界との連携が期待されるとともに、多岐にわたる分野での利用の普及を図る上での新法人の役割を検討していく必要がある。



(参考4−2)

日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と
独立行政法人化に向けての各事業の重点化及び運営等に関する方針

平成14年12月17日
原子力委員会

   原子力委員会は、原子力研究開発における日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の重要性に鑑みて、本年4月2日に、原子力委員会決定「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての基本的な考え方」(以下「基本的な考え方」という。)をとりまとめた。この「基本的な考え方」において、原子力委員会は、特殊法人改革の趣旨を踏まえ、新法人においては業務の重点化・効率化が図られるべきであるが、同時に、
      1 新法人が引き続き、原子力長期計画(現行計画は、平成12年11月24日原子力委員会決定、同28日閣議報告)に沿って、我が国の原子力研究開発において中心的役割を担うこと。
2 我が国の中核的な原子力研究開発機関として、各々の研究開発の性質に応じた適切な組織構成を行うこと。
      が必要であるが、これにとどまらず、
      3 「先進性、一体性及び総合性」を備えた機関として役割を果たしていくこと。
という方向性を示した。

   この「基本的な考え方」を踏まえて、現在、文部科学省をはじめとする関係機関において新法人設立に向けた具体的検討が進められているところであるが、さらにこのたび、原子力委員会は、「基本的な考え方」に示した「個別的分野」をより具体化し、各個別分野における新法人の果たすべき役割と重点化に向けての方針を示し、併せて、新法人と原子力委員会との関係等について基本的考え方を示すこととした。
   なお、「基本的な考え方」において、横断的事項について、組織運営、研究評価の充実、透明性の一層の向上、安全確保への貢献、産学官の連携強化、大学との人材育成面での連携強化、国際協力・核不拡散への貢献、廃棄物処理・処分方策の確立等の観点から、新法人に求められる事項を示したが、原子力委員会は、これら横断的事項については、今後さらに議論を深め、方針を示していくこととする。

1. 個別分野の事業の方向性(新法人の役割と重点化の考え方)
   原子力委員会は、「基本的な考え方」において、各個別分野の課題と新法人への期待を示したが、本方針では、新法人の役割をさらに明確化し、その役割に応じて個別分野の事業において重点化すべき方向性を示した。
   方針の検討にあたっては、新法人が、原子力長期計画に沿って、我が国の原子力研究開発において中心的な役割を担っていくという大前提のもとで、
   ○ 新法人が、原子力の研究開発において、国が行うべき「基礎・基盤的な研究開発」から「プロジェクト型研究開発」までの全てを包含する研究開発を担っており、また、その規模においても他に類をみない大きな規模をもっているところから、新法人の機能が、他の研究機関によって代替できるかどうか否かという観点から、
原子力政策における優先性及び関係機関の研究開発上の位置付けを勘案して、新法人がそれぞれの個別分野における果たすべき主な役割について、1主導的立場、2一翼を担う立場、3支援的立場という性格付けを行った。
   本方針に示した各個別分野の方向性に基づき、各分野の個別事業毎に具体的検討が行われ、業務の最大限の重点化・効率化が図られることを期待する。

(1)    核分裂分野(核燃料サイクルを含む)
   原子力発電は我が国のエネルギーの自給率向上及び安定供給並びに環境適合性向上に貢献し、核燃料サイクル技術はこれらの特性を一層向上させるものである。さらに、核燃料サイクル技術は社会の様々な活動やその発展を支える科学技術であるにとどまらず、他の科学技術分野の発展へ波及効果を及ぼすものである。核分裂分野の研究開発が我が国のエネルギーセキュリティや科学技術の発展に及ぼす影響をもつという重要性に鑑みて、核分裂分野の研究開発は、国民や社会の期待を踏まえた上で着実に実施していくことが必要である。
   核分裂分野の研究開発については、両法人がそれぞれこれまでに担ってきた役割を鑑み、また、新法人が有する規模・能力からみて、新法人は、基礎・基盤から実用化までを幅広く扱う、我が国において主導的な立場に立つ研究開発機関としての役割を担うべきであることは言うまでもない。
   特に、核燃料サイクルの実用化を目指したプロジェクト型研究開発に関しては、新法人は、国内唯一の研究開発組織として、主導的な立場で研究開発に取り組むことが期待される。
   重点化にあたっては、核燃料サイクル技術を取り巻く諸情勢を勘案しながら、本分野における両法人のこれまでの研究成果をその研究目的・目標に照らして評価を行い、事業の整理・合理化を行うとともに、その際には、重要プロジェクトの目標の明確化、資源重点配分などにより、研究開発への取り組みを一層メリハリのついたものにしていくことが期待される。

   既に実用化の段階を迎えている軽水炉発電については、これまで通り、民間による技術開発の継続が基本である。新法人において実施すべき核燃料サイクル技術、高レベル放射性廃棄物の処理・処分技術、並びに、高速増殖炉及びこれに関連する燃料サイクル技術については、将来において実用化を確実に達成するために、各事業のユーザーやメーカーと連携し、達成すべき時期や成果などについて適切な目標を設定し、目標を踏まえた新法人とユーザー等の明確な役割分担の下、事業の効率化・重点化を行うべきである。なお、ユーザーへのスムーズな技術移転を可能とするよう、体制面を含めた配慮が必要である。

   また、革新的な原子力システムについては、我が国のエネルギーセキュリティの観点からは、重要な役割を担うものであり、高い経済性と安全性あるいは熱利用等の多様なエネルギー供給可能性など、社会の需要に見合った特徴を持つシステムへの期待があるものと考えられる。同時に、原子力産業の活性化によって技術基盤の維持、新産業の創出による経済社会への貢献及び、これらを通した社会受容性の向上などの社会的な目標が達成されることが期待される。これら革新的原子力システムの研究開発については、将来の実用化を見据えて、研究開発の内容の適切な評価と絞り込みなど、取り組みのあり方を検討し、より一層の効率的な取り組みがなされることが期待される。

   核分裂分野の研究開発は、上記のとおり、経済社会の需要、そして国民の期待に応えるものであることが重要であり、これら研究開発は、目標の明確化とその達成状況等の厳正な評価を定期的に実施しつつ、進めることが必要である。また、核分裂分野に関連する「基礎・基盤的な研究開発」との均衡ある発展に留意し、その成果を十分に活用しつつ効率的に進めることが重要である。なお、「基礎・基盤的な研究開発」については、大学など他機関との連携を密にし、それぞれの有する人材や保有設備の内容、予算規模等に照らして新法人が分担すべき役割を明確にして、取り組んでいくべきである。
   なお、これまで両法人は、長年の研究開発を通じて、先進的な研究開発の一部としての安全研究や、安全確保のための科学的・技術的基盤の構築を含む、安全規制・防災対策への支援につながる科学的・技術的な安全研究の両面において貢献を行ってきているが、統合後の新法人も、引き続き、客観性・透明性を堅持しつつ、こうした役割を担っていくことが必要不可欠であることは、「基本的な考え方」で示したとおりである。

(2)    核融合
   核融合分野は、「第三段階核融合研究開発基本計画」に基づき、自己点火条件達成等の主要目的達成の中核を担うものとしてトカマク型実験炉を研究開発するとともに、今後の研究開発成果によっては、トカマク型を上回る閉じ込めを実現する可能性を有するトカマク型以外の装置の研究開発を進めることとしている。
   同計画において、日本原子力研究所は、トカマク型実験炉を担当するとともに、大学や核融合科学研究所などの関係機関と協力して、その他の装置についても研究開発を進めることとされているが、新法人においても、本分野の長期的な研究開発を総合的に推進すべく、関係機関と連携しつつ、主導的な立場で研究開発に取り組んでいくことを期待する。
   他方で、本分野の研究開発の実施にあたっては、第三段階核融合研究開発の主要目標達成の中核を担うトカマク型実験炉として位置付けられており国際協力により進められている、国際熱核融合実験炉(ITER)計画の政府間協議の進捗を踏まえることが必要である。
   すなわち、ITER計画の実施は、後の我が国の核融合研究開発のあり方に大きな影響を与えるものであり、ITER計画が実施の運びとなった場合、それを踏まえて我が国の将来の核融合研究開発計画を検討する必要がある。
   特に、ITERが我が国に誘致される場合には、人材・資金を結集し、新たな体制を構築することも含めて、今後、原子力委員会核融合専門部会での審議を踏まえ、研究開発体制及び各関係機関の役割について検討を実施し、ITER計画における我が国の立場に相応しい体制を構築していくこととする。

(3)    加速器・レーザー
   加速器やレーザーに係わる技術は、物質の創製・構造解明などの幅広い研究分野の基盤を成す技術であり、高エネルギー加速器研究機構、理化学研究所、大学など諸機関で研究開発が進められている。
   新法人は、これら諸機関の取り組みを考慮しつつ自らの役割を明確化することが必要であり、中性子科学研究をはじめとした、新法人自らの研究開発の目標により加速器やレーザーを手段として開発する場合においても、国内他機関との適切な協力体制を構築するべきである。しかしながら、その際、他機関では持ち得ない原子力の総合的な研究開発機関としての役割に留意が必要である。

   現に有する大型施設については、上記の考え方を踏まえながら、原子力委員会研究開発専門部会で検討していく様々な各研究開発分野の手段として用いる加速器の、国としての開発・整備方針との整合を図り、自らが大型加速器施設を保有する必要性を再評価すべきである。

   加速器やレーザーを利用した放射線利用研究開発やこれに関連する基礎・基盤的な研究開発については、その内容を評価し、新法人が中核となって実施することがふさわしい課題を抽出していくことが必要である。

(4)    放射線利用
   放射線利用分野は、将来にわたる我が国の産業創生の一つの柱として大きな将来が展望できる分野であり、その推進は重要であるが、大学、放射線医学総合研究所、理化学研究所、民間医療機関、農業研究機関など様々な関係機関において、多岐にわたる研究開発に取り組まれている。
   新法人は、それら関係機関の研究開発活動を、高度な専門知識により支援する役割を担うべきであり、新産業創生を目指す個々の研究開発ニーズに応じた装置利用・実験技術の開発を行うとともに、シーズを育むための基礎・基盤的な研究など、個々の活動を支える研究開発について、各々のグループと協力あるいは分担して取り組むことが望ましい。その内容として、例えば、現有する大型設備を用いた新産業創生のプロセス技術の研究開発といったことが考えられるが、これらの研究開発を実施する際は、関係機関と目標とする成果の全体像を構築した上で取り組んでいくことが必要である。    

       本方針においては、「基礎・基盤的な研究開発」及び「安全研究」に関し、特に項目を起こして方針を述べてはいない。しかし、「基礎・基盤的な研究開発」及び「安全研究」は、原子力研究開発のすべてを支える横断的、共通的な課題として極めて重要である。我が国の原子力研究開発の一層の発展には、安全の確保が大前提であり、これに対する両法人のこれまでの貢献がさらに深められるとともに、原子力研究開発について長期的な視点に立った、基礎・基盤的な研究開発が不可欠であることから、「安全研究」及び「基礎・基盤的な研究開発」は、1.に示す個別分野の全てに共通するものであり、また、相互に関連するものである。
   新法人はこれらの課題について、その能力を最大限に活用して取り組むべきであり、これらについては、関係者間において、さらに具体的な検討が行われることを期待する。

2.新法人の運営等について
(1)    新法人の運営の仕組み
   新法人の運営の仕組みについては、「基本的な考え方」において、新法人に求められる、バランスの取れた運営、研究評価充実、透明性向上など、必要な要件を提示したが、今後、関係者間で具体的検討が行われることを期待する。
   新法人は、各分野の研究開発及び廃棄物処理・処分方策などについて、「基本的な考え方」で示した内容を備えた仕組みを構築することにより、組織を一体化し、更にシナジー効果を発揮しつつ、研究開発に創造的かつ積極的に取り組んでいくことが期待される。

(2)    原子力委員会との関係
   新法人は独立行政法人の趣旨に則り、自己責任のもとで自らの役割に相応しい取り組みを行っていくことが基本である。一方、原子力委員会は、原子力基本法(昭和30年12月19日制定)において、原子力の研究、開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため、その設置が定められている組織である。また、同基本法には、原子力の開発機関として、現行の両法人の設置が定められている。

   原子力委員会は、同基本法に定める、原子力の平和利用・安全の確保並びに民主・自主・公開の原則を遵守する観点から、新法人に適切に関与していくことが必要不可欠と考える。
   また、新法人は、原子力長期計画に沿って、我が国の原子力研究開発を推進する中核的研究機関となるが、その取り組みの多くは、長期的かつ多額の経費を必要とすることに加え、技術の先端性と内包する高度の専門・技術性を有している。原子力委員会は、新法人の活動が原子力長期計画に沿って行われていることを担保するのみならず、日々進展する国内外の原子力研究開発に関する政策面、技術面における動向等を踏まえ、高度な判断を行うことが求められており、その観点から、原子力委員会は新法人の研究開発の方向について今後も継続して必要な関与を行っていくべきと考える。

   具体的には、主務大臣による新法人の中期目標の策定に先立って、原子力委員会が、その内容に含むべき目標等を提示するといった関与を行うことを検討する。また、主務大臣による中期計画の認可の際、あるいは、業務の実績の評価に際して、原子力委員会から提示した目標等との整合などの観点から関与することを検討する。また、政策面、技術面における新しい観点から、中期計画期間中に研究開発上の対応が求められるときは、原子力委員会が適切な提言を行い反映させるような仕組みも検討すべきである。

   また、原子力委員会は、関係行政機関の原子力利用に関する経費の見積もり及び配分計画を企画・審議及び決定することになっているが、独立行政法人は中期計画において予算を定めて政府から交付を受けるため、原子力委員会において、独立行政法人を含めた原子力関係経費の見積もり及び配分計画のあり方を検討する必要がある。

   新法人と原子力委員会の関係については、今後、関係者間で上記を踏まえた検討が行われ、具体的内容が明らかにされることを期待する。

今後 の進め方について
   横断的事項について議論を深め、方針を示していくことは既に述べたとおりであるが、原子力委員会では、今後、法人統合についての議論を深め、必要に応じて方針として示すなどの対応を行っていくこととする。

以   上



(参考4−3)

日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と
独立行政法人化に向けての横断的事項に関する方針

平成15年5月20日
原子力委員会

   原子力委員会は、原子力研究開発における日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の重要性に鑑みて、昨年4月2日に「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての基本的な考え方」(以下「基本的な考え方」という。)を、昨年12月17日に「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての各事業の重点化及び運営等に関する方針」(以下「個別的分野の方針」という。)をとりまとめた。
   この「基本的な考え方」及び「個別的分野の方針」を踏まえて、現在、文部科学省をはじめとする関係機関において新法人設立に向けた具体的検討が進められているところであり、原子力長期計画に基づく役割を踏まえた事業の重点化等について具体化がなされることを期待する。
   一方、「基本的な考え方」に示した「横断的事項」(組織運営、研究評価の充実、透明性の一層の向上、安全確保への貢献、産学官の連携強化、大学との人材育成面での連携強化、国際協力・核不拡散への貢献、廃棄物処理・処分方策の確立等)については、「個別的分野の方針」をとりまとめた際に、さらに議論を深めて方針を示すこととしていたが、このたび、有識者との意見交換などを行い、内容をより具体化し、その方針を示すこととした。
   新法人は、従来より引き続き、原子力長期計画に沿って、我が国の原子力研究開発の中心的役割を担うものである。また、その廃止・統合においては、従来の設置法に囚われることなく、改めて、原子力長期計画に沿った自らの行うべき事業、保有すべき機能に立ちかえり、事業の重点化を行いつつ、事業内容に応じた適切な組織構成・運営の仕組みを有する原子力研究開発機関となることが求められる。新法人は、「基礎・基盤的な研究開発」から「プロジェクト型研究開発」までの幅広い研究開発を実施することとなる。その際、各々の研究開発の性質に応じて、適切な組織構成や運営が行われることが不可欠であるが、それにとどまらず、統合によるシナジー効果の発揮を目指し、我が国の原子力研究開発の一層の発展に資するよう、「先進性、一体性及び総合性」を備えた研究開発機関としての運営が行われることを切に求める。

○横断的事項の方向性
(1)    組織運営
   新法人では「基礎・基盤的な研究開発」から「プロジェクト型研究開発」までの幅広い範囲を包含する総合的な原子力研究開発が行われるため、資金、人材等の資源配分に当たっては、それぞれの研究開発の内容に応じた全体のバランスのとれた運営が行われるとともに、より一層の組織全体の活性化に努めつつ、明確な経営方針と経営者の強力なリーダシップの下、研究所・事業所横断的な運営が可能となる責任体制の構築が必要である。
   新法人は、その組織運営においては安全確保が大前提であり、
教育・訓練の徹底等による運転管理体制の強化
事故教訓の学習と反映等による安全確保の基盤整備
日常の安全確保対策を通じた事故の未然防止及び事故が起こった場合に備えた事前の対応策の確立等による危機管理体制の確立
等による安全確保対策が図られるべきである。

(2)    研究評価の充実
   新法人が行う研究開発の性質の多様性に着目しながら、これまで以上に厳正な研究評価が行われるよう、評価制度の充実を図っていくことが必要である。その際、特に、「基礎・基盤的な研究開発」については、プロジェクト化に際し、厳正な研究評価、実用化の見込み等の評価が行われることが必要である。
   また、研究者のオリジナルなアイデアや成果を大切にすることが、研究の推進力となり、研究成果の質の向上が期待できる

(3)    透明性の一層の向上
   新法人が、国民から幅広い支持を得るとともに、立地地域の理解と協力が得られるよう、これまで以上に透明性の向上を図る観点から、地元をはじめ国民に対して、これまでに実施してきた情報公開や外部評価の一層の充実、立地地域への広聴・広報活動など理解促進活動に努めることが必要である。
   その際、事業目標や研究成果等の活動状況についてわかりやすく積極的に公表することが必要である。

(4)    安全確保への貢献
   先進的な研究開発の一環としての安全研究、安全確保のための科学的・技術的基盤の構築を含む、安全規制・防災対策への支援につながる安全研究の両面において、引き続き、客観性・透明性を堅持しつつ、新法人がこうした役割を担っていくことが、安全確保を大前提とした、我が国における原子力研究開発の一層の発展のためには必要不可欠である。

(5)    産学官の連携強化
   原子力分野は、エネルギー供給にとどまらず、放射線利用なども含む、極めて広がりの大きい分野であり、原子力研究開発において、産学官の連携強化を図っていくことは、原子力分野はもとより、その他の分野の産業競争力の強化という観点からも重要であり、新法人がその重要な一翼を担うことが必要である。
   原子力科学技術の発展には、広範な基礎科学的基盤を有する大学との連携が不可欠であり、新法人と大学のそれぞれの研究開発目標をより効率的に達成すべく、交流を一層活発にしていくことが重要である。
   産学官の連携強化を図るに当たって、円滑な技術移転や研究開発成果の迅速な産業化を図るため、技術移転先が特定される技術については、関係者間で技術移転についての考え方を整理し、新法人は、産業界の事業の進展の程度に応じ、その要請を考慮しつつ自らの役割を明確化し、関係者の一体となった取り組みを行うことが重要である。また、今後の研究開発の進捗を踏まえた上で産業化について検討されるものについては、ニーズの把握、マーケット開発を念頭においた取り組みが不可欠であり、これに対応した組織運営が必要となる。
   以上のような産学官の連携強化にあわせて研究開発に必要な資金の多様化に努めていくことも重要である。

(6)    大学との人材育成面での連携強化
   原子力分野においては、これまでの大学における原子力学科・大学院に加え、原子力施設立地地域の特性を活かし、地域密着型の大学院を設置する動きが新たにある。新法人はこれら大学との人材育成面での連携強化を図ることが重要であり、円滑な相互協力がなされるよう組織運営上の配慮がなされるべきである。
   また、大学教育における放射性物質を取り扱う施設(ホット施設)や設備の取扱いの機会の減少が指摘されていることを踏まえ、新法人の研究施設や設備を学生の教育や研究に利用できるよう、施設の共同利用が重要である。その際、新法人は、施設等の提供にとどまらず、必要に応じて大学との共同研究を行う形態が望まれる。

(7)    国際協力・核不拡散への貢献
   新法人が行う国際協力は、厳に平和利用に限ることを前提に、
我が国と諸外国の双方の原子力開発利用の発展に貢献する原子力平和利用の高度化
核不拡散体制の強化への貢献としての国際協力
これまで我が国が蓄積してきた知見を基に、原子力利用を進めつつあるアジアその他の地域あるいは国際機関における技術面、人材育成面での協力
を主体的、主導的に進めることが重要である。
   また、国際協力の成果について厳正な評価が行われるよう、その仕組みの検討が必要である。

(8)    廃棄物処理・処分方策の確立
   新法人が、将来に向けて、立地地域をはじめ国民の理解を得て、原子力研究開発を推進していくためには、放射性廃棄物の処理・処分や廃止措置を着実に進めることが必要であり、重要な課題と認識する必要がある。
   そのため、放射性廃棄物の処理・処分や廃止措置を行うことが、新法人全体の経営に及ぼす影響について検討し、必要な資金等について見通しを得る必要がある。その際、放射性廃棄物の処理・処分や廃止措置に必要な資金を計画的に確保するとの観点から、将来に向けた積み立ての要否等に関する検討を行うべきである。
   また、放射性廃棄物の処理・処分方策については、発生者である新法人が責任を有すると考えるが、国においては、新法人が円滑に事業を実施するための環境整備について引き続き検討を行い、その方策の確立を目指していくことが必要である。



(参考4−4)

日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合する
独立行政法人への原子力委員会の関与について

平成15年5月20日
原子力委員会

   原子力委員会と日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合する独立行政法人(以下「新法人」という。)の関係については、既に「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての各事業の重点化及び運営等に関する方針(平成14年12月17日原子力委員会)」において、原子力委員会は新法人の研究開発の方向について今後も継続して必要な関与を行っていくべきとの考えを示したところである。

   原子力委員会は、原子力基本法等に基づき、新法人の業務に関して引き続き所要の調整を行い、必要があると認めるときは内閣総理大臣を通じて主務大臣に勧告することが出来るが、以下の原子力委員会の関与について検討し明らかにする必要がある。

主務大臣による新法人の中期目標の策定に当たっては、原子力委員会の定める原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画に基づくこと。
主務大臣による新法人の中期目標の策定、中期計画の認可等に当たっては、原子力委員会が企画、審議し、決定する国の原子力政策に基づいているかとの観点から、あらかじめ原子力委員会の意見を聴くこと。
主務大臣による新法人の理事長及び監事の任命・解任への原子力委員会の関与。


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