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4. 新法人の業務とその推進の方向
  (1)    新法人の業務
   新法人の使命を果たすため、新法人においては、原子力二法人が実施している業務を引き継ぐことを基本に、以下の18の業務を実施することが必要である。
   
1 原子力の基礎・基盤研究等を行うこと
   日本原子力研究所が実施している原子力に関する基礎的研究や応用の研究等の原子力の基礎・基盤研究等に係る業務を実施する。具体的には、エネルギー利用に係る基礎・基盤研究、原子力安全委員会の定める原子力安全研究年次計画に従って実施する安全研究、放射線利用の研究、核融合の研究などが含まれる。
2 核燃料サイクルの確立を目指した研究開発を行うこと
   核燃料サイクル開発機構が実施している核燃料サイクルの確立を目指した研究開発に係る業務を実施する。具体的には、高速増殖炉サイクルに関する研究開発、使用済燃料の再処理に関する研究開発、高レベル放射性廃棄物の処理処分に関する研究開発が含まれる。
3 自らの原子力施設の廃止措置と自らの放射性廃棄物の処理処分を行うこと
   原子力二法人が保有している原子力施設及び放射性廃棄物を承継する新法人においては、自ら保有する原子力施設の廃止措置と放射性廃棄物の処理処分を行うとともに、必要な技術開発を実施する。
   具体的には、上記の1及び2の業務において使用する原子力施設について、役割が終了したものなどについて計画的に廃止し、その放射性廃棄物について処理処分を行うほか、既に研究開発活動が終了しているウラン濃縮施設、新型転換炉「ふげん」、原子力船「むつ」等についての廃止措置及び放射性廃棄物の処理処分についても実施する。
4 原子力安全規制、原子力防災対策、国際的な核不拡散等への協力を行うこと
   新法人においては、我が国唯一の原子力の総合研究開発機関として、規制行政庁をはじめとする行政機関等からの求めを受けて、新法人の有する研究施設及び人員を活用し必要な協力を行う。
   具体的には、原子力安全規制や原子力防災対策、国際的な核不拡散対策等に関して、関係行政機関等からの個々具体的な要請に応じて調査研究等の技術的支援を実施する。
5 大学との連携協力等を通じた原子力分野の人材育成を行うこと
   日本原子力研究所が実施している原子力に関する研究者及び技術者の養成訓練に係る業務を実施する。なお、その際、前述の昨今の原子力を取り巻く諸情勢を踏まえて、大学との連携協力の強化等により原子力分野の人材育成を行う。
6 原子力に関する情報の収集、分析及び提供を行うこと
   原子力に関する情報の収集、分析を行うとともに、その成果を関係機関等へ提供する。特に、我が国唯一の原子力の総合研究開発機関として、この機能を充実・強化することにより、国の原子力政策立案の支援等を行う。
7 研究施設及び設備を共用に供すること
   新法人以外の者が原子力に関する研究開発のために必要な研究施設及び設備を保有することが困難な状況になっている現状を踏まえ、新法人が保有する原子力研究の基盤として重要な研究施設及び設備について、広く産学官の共用に供する。
8 研究開発成果の普及とその活用の促進を図ること
   新法人の研究開発成果を普及し、その活用を促進する。具体的には、研究開発成果を公表し、民間企業等に対して技術移転を行うとともに、その成果を利用主体が活用するために必要な情報提供や人員の派遣等を実施する。

  (2)    新法人の業務の推進の方向
   「(1) 新法人の業務」の18の業務については、以下の方向で推進していくべきである。
   
1 原子力の基礎・基盤研究等
   原子力の基礎・基盤研究の分野は、新法人における高速増殖炉サイクル研究開発等のプロジェクト研究開発の推進と原子力利用の新たな領域の開拓に寄与するものであり、我が国の原子力研究、開発及び利用を支える新法人の中核となる研究分野の一つとして位置付けられる。
   新法人は、原子力研究開発を総合的・一体的に実施する先端的な研究開発機関として、科学技術の水準の向上を図り、原子力の利用の高度化及び多様化の推進に貢献するという重要な役割を担っている。そのため、新法人は、経済社会の動向、ニーズを踏まえ、国際的な原子力研究開発の中核的拠点として、基礎・基盤研究等を総合的に推進することが必要である。
   新法人におけるこれらの業務の推進に当たっては、原子力システム、放射線利用技術に係る研究分野に重点化して研究を実施することが適当である。
(a) 原子力エネルギー研究開発に係る基礎・基盤研究
   我が国の原子力研究開発の基盤を形成し、新たな原子力利用技術を創出するため、新法人において、炉物理・核データ、材料科学、アクチノイド科学、環境科学等の分野の研究を着実に実施することが必要である。
   また、原子力発電所の安定運転、軽水炉におけるプルトニウムの効率的な利用、核燃料サイクル事業の安定操業等、我が国の産業活動を支える基礎・基盤研究を産業界のニーズ等を踏まえて実施する必要がある。
   さらに、原子力による多様なエネルギー供給を目指す高温ガス炉の開発と核熱利用による水素製造等に関する技術開発を実施することが重要である。
   高レベル放射性廃棄物中の長寿命放射性核種の分離変換技術については、分離技術と核変換技術との整合性をとりつつ、原子力委員会の報告を踏まえた国レベルでのチェック・アンド・レビューを受けた上で、研究開発を着実に実施することが適当である。
   新法人の多様な研究施設や人材を有効に活用して、核不拡散・保障措置に関する技術開発を総合的に推進することが国際的にも強く期待されている。

 
原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会「長寿命核種の分離変換技術に関する研究開発の現状と今後の進め方」(平成12年3月31日)

(b) 安全研究
   安全研究については、原子力安全委員会が定める原子力安全研究年次計画に従い、新法人の研究資源を最大限活用し、新法人が一体となって実施することが重要である。なお、主として自らプロジェクト研究開発を進めている施設の安全性の向上等を目的とした安全研究については、プロジェクト研究開発の中で一体として実施していくことが適当である。
(c) 放射線利用研究
   中性子、荷電粒子・RI及び光量子・放射光の放射線利用研究については、新法人においても着実に実施すべきである。
   中性子利用研究については、建設中の大強度陽子加速器施設等、新法人の様々な中性子源を活用した研究を着実に実施することが肝要であり、中性子を利用した物質、生命科学研究の進展及び産業利用への応用等に資することが期待される。
   荷電粒子・RI利用研究については、工業、農業、医療、環境等の分野における放射線利用の普及、新産業の創出に貢献することを目指して、荷電粒子利用技術に関する研究開発を着実に実施することが重要であり、機能材料、バイオ技術、環境保全等の研究開発を促進することが期待される。
   光量子・放射光利用研究では、光の量子的利用であるレーザーと世界最高性能の放射光施設であるSPring−8の放射光を利用して、核科学、核工学の研究や原子力材料等に係る基盤技術の開発に重点化することが適当である。
(d) 核融合研究開発
   核融合エネルギーは、将来のエネルギー源の有力な候補であるとされていることから、我が国として世界水準の技術を着実に蓄積するため、新法人において核融合研究の技術基盤の構築を図ることが必要である。
   具体的には、新法人は、今後の国際熱核融合実験炉(ITER)計画の動向を踏まえ、ITER計画に積極的に協力するとともに、国内におけるトカマク方式の炉心プラズマ研究や炉工学開発の分野において、我が国の研究開発の中核機関としての役割を果たすことが求められている。
   新法人は、核融合に係る研究開発を進めるに当たっては、国内の他の研究機関との連携を強化し、科学技術・学術審議会核融合研究ワーキンググループの定めた方針に沿って、研究開発を実施する必要がある。

2 核燃料サイクルの確立を目指した研究開発
   核燃料サイクルの確立に向けた研究開発は、新法人の中核業務の一つに位置付け、新法人の有する基礎・基盤研究の研究能力及びプロジェクト遂行能力を結集して取り組むことが必要である。
   特に、核燃料サイクル技術の実用化の目途をつけるため、安全性、経済性及び核拡散抵抗性の向上、資源有効利用、環境負荷の低減並びに放射性廃棄物処理処分技術の確立に重点を置いて研究開発を実施することが必要である。
   また、民間に移転された技術について、技術の定着の観点から、必要な場合には、継続的に技術開発を行うとともに、「8研究開発成果の普及とその活用の促進を図ること」により民間への技術支援を行っていくことが必要である。
   なお、研究開発は、実用化技術の確立と研究開発成果の民間への技術移転を目指して行うものであり、開発目標の設定、研究開発の進め方等については、経済社会情勢の変化等を踏まえつつ、5年程度毎に国レベルにおいて厳正な評価を実施し、推進することが適当である。
(a) 高速増殖炉(FBR)サイクル研究開発
   FBRサイクル研究開発については、実用化を目指し、着実な努力を続けるが、当分の間、既存の施設を有効に活用して研究開発を実施することが必要である。
   また、FBR等次世代の原子力システムに関しては、革新的水冷却炉も含めた評価を進めつつ、安全性、経済性及び核拡散抵抗性の向上、資源の有効利用、環境負荷低減を目標としたFBRサイクル実用化戦略調査研究により、実用化像と実用化に至る行程を提示することが期待される。
   高速増殖原型炉「もんじゅ」については、早期運転再開を目指し、再開後、10年程度以内を目途に、まずは「発電プラントとしての信頼性実証」と「運転経験を通じたナトリウム技術の確立」という所期の目的達成に最大限の努力を傾注することが必要である。高速増殖炉の実用化までには息の長い着実な研究開発が必要であることから、その後の「もんじゅ」の運転計画等開発の進め方については、「もんじゅ」を内外に開かれた世界水準の研究開発拠点、即ち、実用化戦略調査研究の成果も取り入れつつ、FBRの実用化を目指した様々な先端的な研究成果を実証する場として活用する方向で、国レベルで厳正な評価を実施し、決定することが適当である。
(b) 軽水炉再処理技術開発
   東海再処理施設において、電気事業者との既契約に基づき役務再処理を実施するとともに、新型転換炉「ふげん」のMOX燃料の再処理を通じて、技術的知見の蓄積を図ることが必要である。
   なお、軽水炉MOX燃料(プルサーマル燃料)等の再処理技術の実証試験については、プルサーマル計画の進捗状況等を踏まえ、実施施設や規模など、その実施のあり方を国レベルで評価した上で、実施することが必要である。
   また、再処理施設の廃止措置及びTRU廃棄物の処理処分については、産業界の動向も踏まえつつ必要な研究開発を実施することが必要である。
(c) 高レベル放射性廃棄物処理処分研究開発
   新法人は、我が国における地層処分技術に関する研究開発の中核的役割を担い、瑞浪及び幌延の深地層の研究施設、地層処分放射化学研究施設等を活用し、地層処分技術の信頼性の向上や安全評価手法の高度化に向けた研究開発を実施することが必要である。
   なお、研究開発の実施に当たっては、研究開発成果を処分事業や安全規制に反映するために、原子力長計等に定められている国や原子力発電環境整備機構(NUMO)等の関係機関との役割分担に基づき、これらの関係機関と連携して研究開発を実施することが重要である。
   また、ガラス固化技術開発については、円滑な技術移転も念頭に置きつつ、ガラス溶融炉の安定運転技術などの確立に向け継続的に取り組むことが適当である。

3 自らの原子力施設の廃止措置と自らの放射性廃棄物の処理処分
   新法人は、自らが保有する原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理処分を、長期的観点に立って、計画的かつ安全に、着実に実施することが必要である。
   なお、新法人は廃止措置及び廃棄物の処理処分の効率化に努め、所要の費用の低減に努めるとともに、その過程において合理的な廃止措置及び廃棄物の処理処分を可能とするための技術開発を実施することが必要である。

4 原子力安全規制、原子力防災対策、国際的な核不拡散への協力
   新法人は、国の行う安全基準、安全審査指針類の策定等に関し、関係する規制行政庁や原子力安全委員会の要請に応じて、安全研究の成果を活用して必要な協力を行うことが強く求められる。
   また、新法人は、原子力施設等の事故・故障の原因究明に関しても、関係行政庁の要請に応じ、人的・技術的支援を行うことが必要である。
   原子力災害の発生時には、国、地方公共団体等の要請に応じ、その活動に対する人的・技術的支援を積極的に行うとともに、平常時にあっても、国、地方公共団体等の要請を受け、原子力防災関係者に対する訓練、研修に協力することが必要である。
   さらに、新法人は、世界的な原子力の平和利用の実現のため、国の要請を受けて、国際的な核不拡散の強化等に技術的観点から積極的に協力することが求められる。

5 大学との連携協力等を通じた原子力分野の人材育成
   前述のように原子力分野の人材育成の基盤に対する懸念が生じている現状を踏まえ、新法人は、我が国における原子力分野の人材育成や教育研究の推進に積極的に寄与することが強く期待される。このため、大学等と連携協力し、人材育成に関する機能を充実、強化することが求められる。特に原子力産業を支える中核的技術者及び規制行政庁等の職員を対象に、その能力の向上を図るため、産業界、国、地方公共団体等のニーズを踏まえた大学院修士レベルの専門的実務教育の実施が求められる。
   さらに、アジア地域を中心とした海外の原子力分野の人材育成にも貢献し、国際的な原子力平和利用の推進と安全の確保に寄与することが重要である。

6 原子力に関する情報の収集、分析及び提供
   我が国において、原子力に関する研究、開発及び利用を円滑に進めていくためには、原子力に関する情報について、社会が必要とする情報を必要な時に、時宜に応じて適切かつ十分に提供していくことが不可欠である。
   このため、新法人は、原子力に関するデータを総合的に蓄積、分析、統合し、社会や地域などに適切に提供する機能を充実・強化することが適当である。そのような活動の一環として、国のシンクタンクとしての機能を発揮することによって、国の原子力に関する政策の立案を支援するとともに、国等が行う原子力政策に関する広報活動等に大きく貢献することが期待される。

7 研究施設及び設備の共用
   新法人が保有する、我が国の原子力研究開発基盤として重要な施設及び設備は、新法人が共用施設として運用し、広く外部の利用に供することが必要である。
   なお、個々の施設及び設備の共用に当たっては、新法人において、その運営に利用者の意見を適切に反映することが可能な共用体制を確立することが適当である。

8 研究成果の普及とその活用の促進
   新法人は、原子力エネルギー研究開発の分野では、開発段階から産業界等その成果の利用者との連携を密にして研究開発を実施するとともに、実用化の見通しが得られた研究開発成果については、積極的かつ円滑に民間へ技術及び人材を移転し、また技術移転後も引き続き情報の提供や技術指導等を実施して、民間事業者による成果の活用を促進することが必要である。
   また、新法人は、放射線利用研究の分野においても、研究計画やその成果を広く公表し、共同研究の実施、人材交流等を通して、早い段階から産業界との連携・協力に積極的に取り組み、成果の普及とその活用を促進することが望まれる。


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