第4章 今後15年を見据えた国際トレンド及び我が国のトレンド

 1.今後の国際トレンド

 グローバル化の進展、新興国の台頭等による多極化の進展、世界の産業構造の変化などの世界のトレンドは今後も変わらず、むしろ加速していくことが想定される。
 特に、世界の多極化については、米国を中心としたグローバル化から、中国やインドを筆頭とするBRICs諸国が巨大な市場としてのみならず、政治的・軍事的なパワーとしても大きく台頭することが想定され、世界の国際政治はもちろんのこと、地政学的にも経済的にも勢力図を大きく塗り替えていく可能性がある。加えて、グローバル化の進展に伴い、多様な文化、宗教、人種への対応が求められるようになると想定される。
 また、研究開発分野においても、先進諸国、特に米国をはじめとする先進諸国が世界のイノベーションセンターの地位を占めているが、中国、インドでは、欧米で活躍する優秀な研究人材を輩出しており、これらの人材の活用や経済成長を通じて、将来、世界のイノベーションセンターとしての地位を奪う可能性も出てきた。
 一方、アジア諸国等の成長等に伴い、資源・エネルギー需要も引き続き増加が見込まれており、地球温暖化問題や資源・エネルギー・食料の逼迫は、将来において社会的にさらに大きな制約要因となっていくことが想定される。
 また、産業構造についても、水平分業がさらに広範な産業で進展することが想定されるとともに、製品開発、知的財産・標準化戦略、事業モデルを一体とした取組が不可欠になると考えられる。一方で、垂直統合・すりあわせによる新製品開発等も依然存在することが考えられ、垂直統合と水平分業の併存、揺り戻しが続くことが想定される。さらに、製品や事業モデルの構想先行型のイノベーションや、サイエンス型産業とサービス産業の拡大などが想定される。

図:世界のエネルギー消費量の見通し

図:世界のエネルギー消費量の見通し 
資料:(財)日本エネルギー経済研究所

2.今後の我が国のトレンド

(1)グローバル化に伴う我が国の位置付けの変化

 今後も我が国の少子化が進み、新興国等は引き続き高成長を続けることが見込まれており、世界における日本の位置付けの一層の低下が予想される。そのような中、我が国企業としても、日本市場を主な対象としてビジネスを行っていては生き残りが困難となることが想定され、グローバル化への対応が急務とされている。さらに、研究開発においても、グローバル化への対応なしに、高い国際競争力を確保することが難しくなることが予測される。

(2)我が国の国際競争力

 モジュール化、水平分業がさらに広範な分野で進展し、自動車や精密機器など我が国企業が比較優位を維持している分野にも拡大する可能性があり、我が国産業の競争力の低下が懸念される。現在、我が国産業は素材・部品・製造装置などの分野で世界的に見て優位に立っており、将来においても我が国産業が優位に立てる分野は出てくるものと考えられるが、このように世界の社会・経済情勢が大きく変化する中で、我が国の競争力は、このままでは一層厳しい状況に直面することが懸念される。また、サイエンス型産業やサービス産業においては、このままでは現在圧倒的な国際競争力を有する米国の一人勝ちが続き、我が国との格差が拡大するおそれがある。
 このような中、人口が減少し、天然資源の乏しい我が国が将来において国際競争力を確保するためには、科学技術の振興によって技術革新を含むイノベーションを実現することが不可欠になると考えられる。

(3)プロダクト・イノベーションを推進するための産学官連携の重要性の高まり

 東アジア企業のプロセス・イノベーションにおける追い上げはより激化することが予測され、我が国がアジア諸国や欧米に対抗していくためには、我が国発のプロダクト・イノベーションの実現が必要不可欠になってくると想定される。
 このようなプロダクト・イノベーションの実現を図るためには、それを支える基礎研究が必要であり、これを主として担う大学等の公的研究機関の役割が大きくなることが想定される。また、研究成果を実用化につなぐためにも産学官の連携が重要であり、特に、イノベーションのグローバル化・オープン化等の状況を踏まえ、公的研究機関と企業等の新たな役割分担、連携の在り方を検討していく必要がある。

お問合せ先

科学技術・学術政策局