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研究機関における公的研究費の管理・監査に関する検討会(第5回)議事録

1.日時

平成20年2月12日(火曜日)15時30分〜17時30分

2.場所

如水会館「富士の間」

3.議題

  • (1)米国の競争的資金の柔軟な会計制度とそれを実現してきた米国の仕組みについて
  • (2)競争的資金のルールの統一化へ向けた取組について
  • (3)小規模な機関等における体制整備状況の確認及び指導助言等について
  • (4)その他

4.資料

資料5−1
 米国の競争的資金の柔軟な会計制度とそれを実現してきた米国の仕組みについて
資料5−2
 小規模な機関等における体制整備状況の確認及び指導助言等について(案)

5.議事内容

【石井主査】

 それでは、第5回目の研究機関における公的研究費の管理・監査に関する検討会を開会する。
 本日は、私どもが取り組んでいる問題に関連して、科学技術振興機構、通称JSTの高橋プログラムディレクターと、内閣府総合科学技術会議の統括官付参事官である久保参事官を、外部有識者としてお招きしている。
 お手元の議事次第にあるように、本日の議事は主に2点であり、第1点目は、競争的資金の制度改善に関連して、JSTの高橋プログラムディレクターから、制度改善に関するアメリカ合衆国の仕組みについてご紹介をいただき、その後、内閣府の久保参事官から、日本における今後の取り組みのあり方についてご意見を伺う、それぞれお話を伺った後でご議論をいただく、これが大きくまとめて1点目である。
 第2点目は、小規模な機関等における体制整備状況の確認及び指導助言等について、ご議論をいただきたいと考えておる。申し上げるまでもないと思うが、当方がつくったガイドライン、これを小規模な研究機関がどう受けとめ、どう具体的な形を整えてくださるのかということは、必ずしも自明なことではない。したがって、実情等を聞きながら、そして議論を進めてまいりたいと考えておる。
 それでは、配付資料の確認を事務局からお願いする。

 清浦競争的資金調整室長より、資料5−1〜資料5−2、席上の配付資料として、第4回の検討会の議事録の案、今後の日程の、合わせて4種類の資料について確認があった。

【石井主査】

 それでは、議事の第1番目に入りたいと思う。(1)、(2)について、続けてご説明をいただくことにする。初めに、(1)についてJSTの高橋プログラムディレクターから、アメリカの競争的資金会計制度の柔軟性と、その柔軟性を実現してきた歴史と申すか、アメリカ合衆国における取り組みの歴史についてご紹介をいただきたい。それでは高橋主監、よろしくお願いする。

【高橋主監】

 ご説明させていただく。お手元の資料5−1、パワーポイントの資料であるが、この資料に基づいてご説明させていただく。タイトルが、「米国の競争的資金の柔軟な会計制度とそれを実現してきた米国の仕組み」となっておるが、1行目の部分については、残念ながら詳しくご説明する時間がないけれども、予備のファイルとして後ろのほうにつけてあるので、ご質問とご興味があれば、また時間があればご説明させていただいて、私の説明は主として2行目の、柔軟性を実現してきた米国の仕組み、それについてご説明させていただこうと思う。
 1番目の真ん中のところに副題として、米国のFDP(Federal Demonstration Partnership)の活動についてとあるが、その部分についてご説明させていただく。そのこめじるしの部分の説明が下にあって、会員約300名(98の大学と11の競争的資金配分機関の代表者)となっている。このFDPという組織は300名の会員を抱えておるが、重要なことは、この300名は個人の集合体ではなくて、98の大学と11のファンディングエージェンシーを代表して来ている人たちであるという点である。
 2番目に移る。FDPはホームページがあり、ホームページの記述内容の中から重要と思われる部分を抜粋して訳したものがそこに記されておる。少し読ませていただくが、米国の競争的資金会計制度の柔軟性は、私の判断する限り極めて高いと思う。競争的資金の高い効率性と透明性が実現していると思っておる。これを1986年以降、20年かけて配分機関と大学が公式に協力して構築してきた枠組みがFDPであり、そのFDPについてご紹介させていただこうと思う。
 FDPの目的として書かれている内容であるが、競争的資金の事務手続を合理化し、これはStreamlineという言葉が使われておる、事務上の負荷、これはAdministrative Burdenという言葉が使われておるが、それを軽減し、研究者にScienceをさせることというのが目的になっておる。裏返すと、これはFDPの発足する20年前は、米国の競争的資金にも事務的な複雑さや煩雑さや不自由があって、研究活動が阻害されていたことをうかがわせるのではないかと思われる。それから、合理化、即ちこめじるしの1の部分のStreamlineの意味であるけれども、これは単にできなかったことをできるようにするということだけではなくて、できるにしても事務手続が複雑であるというようなものについては事務手続を簡略化し、時間の軽減を図るという意味合いが含まれておる。
 FDPの機能であるが、配分機関と大学が協力して競争的資金制度の改善策を研究し、議論し、実験・実証する場である。場というのはTest bedを訳したものである。それからこめじるしの5、実験・実証するという表現にはDemonstrationという言葉が使われており、これがほかの活動と違って特徴的なところかと思われる。
 次に、パワーポイントの3番目に移っていただく。FDPが開始された1986年という年がどういう年かということをご理解いただくために、この表をつけさせていただいた。赤い折れ線グラフが、米国における全省庁トータルの競争的資金の1960年、70年以降の推移である。70年代、80年代にかけて急増していることがうかがえるかと思う。上から2番目の折れ線グラフがNIH、上から3番目の折れ線グラフがNSFの予算の増加傾向を示したものであるが、このように競争的資金が急増しているさなかにおいてFDPという活動が開始されたということがうかがえるかと思う。
 それからグラフの一番左側のところに、1959年にNCURAの設立という文字がある。NCURAというのは、図の下のところに書いてあるが、National Council of University Research Administratorsの略で、大学において研究を理解し競争的資金の事務を担当する専門職の団体であり、このような専門職がアメリカの場合、今から数えると50年以上前から確立していて、そういったものが30年近く活躍した後でFDPという活動がスタートしているということが言えるかと思う。
 4番目にFDPの歴史というタイトルがあるが、FDPは今申し上げたとおり、1986年にスタートしたわけであるが、その前の年、1985年にPre-FDPというものが、全米科学アカデミーの一つの部局であるGUIRR、この正式名称はGovernment-University-Industry Research Roundtableというものであるが、そこの主催で開催されておる。そこで競争的資金の官僚的煩雑事務、これはBureacratic Accretionと書かれておるが、それに関して公聴会が開かれており、これ以降、このGUIRRがFDPの親組織という位置づけになっておる。FDPそのものはその翌年の1986年にスタートしたわけだが、Phase1からPhase2、Phase3、Phase4、Phase5というふうに年数を区切って、かつその年数に応じたテーマを定めて活動を過去20年間続けてきているわけである。
 Phase1が1986年から1988年まで2年間で、実はそこに書いてあるように、Florida Demonstration Project、頭文字をとるとFDPなのだが、違った名前になっておる。それは、NSF、NIHなど5つのファンディングエージエンシーとFlorida大学群、即ち、Florida州で運営している大学はホームページで数えると全部で11あるのだが、その11のFlorida大学の中の9つの大学とMiami大学が参加して行われ、こういうことから、この最初の活動についてはFlorida Demonstration Projectという名前がついているようである。
 Phase2が1988年から1996年ぐらいまで、ざっと8年間。このときは名前がFloridaという部分がFederalと変わっており、Federal Demonstration Projectとなっておる。これもやはり頭文字だけとるとFDPであるけれども、このときには11のファンディングエージェンシーと21の大学が参加し、大学の数が増えておる。Phase1とPhase2を合わせると10年間になるわけだが、この10年間でいわゆる繰り越しとか予算のつかない期間延長、これは下に書いてあるNo Cost Extensionのことであるけれども、それから費目間流用などの柔軟性とExpanded Authorityというものを実現しておる。このExpanded Authorityについては、後ほどまたご説明する。
 Phase3は1996年から2002年まで。このときに現在と同じFederal Demonstration Partnershipという名前になって、以後10年間ずっとこの名前が続いているわけである。11のファンディングエージェンシーと65の大学が参加し、このときから研究者とプログラムオフィサーが正式メンバーに加わっておる。つまりこれ以前はどちらかというと、ファンディングエージェンシー及び大学のいわゆる事務方の人たちが活躍してきて、このPhase3から、研究者、即ちファカルティーメンバーとファンディングエージェンシーにおけるプログラムオフィサーが正式メンバーに加わったという事情があるようである。このPhase3から事務の電子化、ご存じの方がおられるかと思うが、NSFにはファーストレーンというすぐれた電子システムがあるが、そうしたものが構築され始め、整えられたようである。
 Phase4が2002年から2008年までということで、引き続き電子化、これを現在Electronic Research Administrationと呼んでいるようであるが、そういったものの充実化が図られているようである。ことしはPhase4の最後の年で、ことしの10月からPhase5の活動が始められるようである。
 5番目のパワーポイントに移っていただくと、先ほどご紹介した1985年のPre-FDPでどんなことが行われたかということが、そこに書かれているわけであるが、概略は先ほどご説明したので省略させていただく。要は、競争的資金における大学及び配分機関の官僚的な煩雑事務の軽減について公聴会が開かれて、いろいろな問題点が指摘されたようである。
 6番目に移るが、先ほど申し上げたとおり、Phase1においてはFlorida Demonstration Projectという名前で呼ばれていたわけだが、これはNSFを退職したDr. Robert Newtonが前年のGUIRRの公聴会を受けて、競争的資金制度を改善するに当たって実験過程、即ちDemonstrationというプロセスを入れることが重要であるということを考案したようである。この考案と言う言葉はBrainchildという単語を訳したものである。また、Phase1に対しては、Florida州選出の上院議員、後に州知事になった人もバックアップしたようである。そういうことからもFlorida Projectと呼ばれているようである。
 また、そこに書かれているようなファンディングエージェンシーが参加しており、このPhase1において採択前の研究コスト、これはPre-Award Costと呼ばれておるが、それから繰り越し、あるいは先ほど申し上げたNo Cost Extension、即ち予算のつかない期間延長、また、そういうことについて前もってファンディングエージェンシーの許可をとるという手続、これはPrior Approvalと呼んでおるが、このFlorida大学においてのみ、そういったものの手続きを試験的になくしたということがなされたようである。
 次に、7番目に移る。Phase2でどのようなことが行われたかというと、Phase1で行われた、Florida州でのみ行われたことを、米国において全国展開するという位置づけの活動が行われたのがPhase2であるということが言えるかと思う。また、ご説明していないのでわかりにくい方もおられるかと思うが、競争的資金には種類があって、アメリカではGrantとCooperative AgreementsとそれからContract、この3種類があるということであるが、Phase1においてはGrantだけについて検討されたわけだが、このPhase2において、Contractについても検討が行われたということである。
 次に、8番目のご説明をさせていただく。先ほどExpanded Authorityという言葉について発言したが、その内容がどういうことかというと、訳すと権限委譲という訳し方もあるが、私はあえて権限委任と訳している。これは世間的に認められた訳ではないので、クエスチョンマークがつけられておる。
 このExpanded Authorityの実現に、FDPが開始された1986年から96年まで、約10年の歳月がかかっているわけであるが、どういった内容かというと、その2つ目のフレーズだが、大学の競争的資金管理能力を審査し、一定レベル以上の管理能力のある大学には、繰り越しとか費目間流用、研究期間の延長など、本来、配分機関が判断し許認可すべき事項を大学側に権限委任して、判断を任せているということである。この場合大学に先ほど少しご説明したが、University Research Administratorがいて、その人たちに権限を任せているということで、これがExpanded Authorityの内容である。
 Expanded Authorityがどのようにして実現してきたかということがそこに簡単に書かれておるが、そこは省略させていただく。
 8番目のパワーポイントの下の部分だが、このExpanded Authorityの実現により、大学――事務部門と研究者両方であるけれども――それから配分機関双方に大幅な事務の効率化が図られ、研究時間が大幅に増えたという記述もホームページに載せられておる。
 9番目に移る。これが今申し上げた内容のエッセンスで、1枚でまとめるとこの図のようになる。米国の柔軟な研究費会計制度を実現し、支えている枠組みというタイトルが示されておるが、ピンク色の部分に米国の会計制度、これは支出負担確定主義会計と呼ばれておるが、この部分についても今日は全くご説明していないが、日本とは非常に異なった会計制度をとっており、繰り越し等が非常に柔軟にできるような仕組みになっている。
 それからもう一つは下に書いてあるOMB即ちOffice of Management and Budget、そういう組織がアメリカの政府の中にあり、これも日本にはない組織である。それからNAS、これはNational Academy of Sciencesである。会計制度の仕組みと、OMB、NASといった組織がバックアップするという土台の上に、FDPという活動の枠組みが乗っており、このFDPの枠組みの中で、大学のURAと呼ばれる競争的資金を専門に担当する事務の人たち、またファカルティーメンバーの人たち、それからファンディングエージェンシーのスタッフ及びプログラムオフィサーと呼ばれる人たちが20年かけて協力し、現在の柔軟な米国の競争的資金の制度をつくり上げてきたと理解しておる。
 以下、Q&A用の予備ファイルということで幾つかそえられておるが、タイトルだけご紹介させていただくと、11番目であるが、先ほども申し上げたように、アメリカの競争的資金には3つの種類があるということがそこに記されておる。日本にも補助金、共同研究、それから委託研究という3つの形態がある。
 12番目にFDPの評判であるが、FDPの活動はアメリカ国内で、絶賛という言葉を使っていいぐらい高く評価されており、その内容についてそこに記されておる。
 それから13番目であるが、先ほど来、米国の競争的資金の会計的側面が極めて柔軟であるということを申し上げているわけだが、その柔軟な内容の一端が13番目の図に示されておる。
 それから14番目であるが、これがNational Council of University Research Administrators、つまり大学にあって研究もわかり、かつファンディングのこともわかり、会計のことも詳しいといった専門職の団体である。やはりホームページがあり、そこに記されておるように、全国での講習会とかテレビ、ラジオによる通信教育などによりこの専門職の内容が紹介され、かつ会員の能力向上と新たな専門家の育成という活動に取り組んでいるようである。
 15番目であるが、このURAがどのようにアメリカの大学の中で位置づけられているかというのが書かれている。読ませていただくと、研究が高度化し、大型化するにつれ、研究にかかわる各種事務も複雑化し、高度化しており、研究と事務の橋渡しのできる人材(Research Administrator)の必要性が高まったということで、このURAの団体がアメリカでも50年前にスタートしているということである。ただ、研究と事務を橋渡しするのは何も競争的資金だけではなく、最近だとバイオセイフティーであるとか、そこに書かれているようないろいろな問題があるわけだが、こういった問題についても研究者が片手間にやっておると事故につながるので、アメリカの場合は専門家が担当しているということである。
 最後の16番目であるが、今もご説明したURAが大学の本部の中で、そういった組織の中で重要な役割を担っており、こういった組織があるからこそファンディングエージェンシーから大学に、先ほど申し上げたような権限委任、Expanded Authorityがなされている、そういう側面もあるわけである。
 簡単ではあったが、また早口でわかりにくい部分もあったかと思うが、以上で私の説明を終わらせていただく。

【石井主査】

 感謝申し上げる。確かめておきたいことがもしあれば、ご質問をお受けする。

【中村委員】

 2つあるのだが、だれが発議して、予算は全体に対してどれぐらい使っているのかという点なのだが。

【高橋主監】

 FDPの活動についてか。

【中村委員】

 これは政治家が始めたのか、それとも研究者が言い出して始めたのか、だれがもともと言い出したか。

【高橋主監】

 6番目のパワーポイントの一番上のところに、1985年にPre-FDPという公聴会があって、それを受けて、NSFを退職したDr. Robert Newtonという人が個人的には発議して始めた。ただ、個人で始められるわけではないので、そこに書いてあるFlorida州選出の上院議員もバックアップしたとか、結局関係者が協議して始めたのだと思う。

【中村委員】

 予算というのはどれくらいかかるのか。総額に関して、こういうのをオペレーションしてどれぐらいお金がかかっているか。

【高橋主監】

 正確な数字はつかんでいないが、現在年会費をとって、その年会費で運営されているようで、予算そのものはそんなに使っていないと思う。というのは、いろいろな会議、例えば年3回の年会もやっているわけだけれども、その会議を全部National Academy of Sciencesの講堂でやっている。そのNational Academy of SciencesがこのFDPの活動の親組織ということになっているので、多分会議場の使用料は無料だと思うし、全部各組織から手弁当で参加する建前になっておるので、ある意味でほとんどお金はかかっていないと思う。ただ、ホームページの運営費とかはかかっているかもしれない。

【石渡委員】

 そもそも発足のときは国は一切関与していなかったのか。

【高橋主監】

 その国という言葉の定義だが、FDPの名前はFederal Demonstration Partnershipで、Federalはまさに国そのものである。ただそのFederalというのはアメリカの場合、ファンディングエージェンシーは全部国家機関であり、そういう意味でFederalという言葉が使われている。それから先ほど申し上げたOMBとかNAS、これも全部国家機関という言い方もできるかと思う。

【葦名委員】

 このExpanded Authorityというのは見直しをするのか。1回権限を与えたらそのままずっといくのか。8ページ目のところで「本来、配分機関が判断し、許認可すべき事項を大学に権限委任し」というふうに書いてあるが、そういう仕組みをいったん作ったら、ずっと大学に任せたままにするのか。

【高橋主監】

 繰り越しとか、予算費目の流用とかいったものは、毎回その都度、ある必要性が発生するわけであるけれども、その必要性に対して大学側のURAという責任者に判断を任せている。

【石井主査】

 質問の趣旨は、それを任せているのを時々チェックしているかということであると思う。

【高橋主監】

 それについては、大学で不祥事が起きるとそれは剥奪されると聞いておる。ただ、不祥事が起きた後、もう一回もらうためにどういう手続が要るのかとか、そこまでは調べていない。

【葦名委員】

 不祥事が起きない限り、ずっと権限は委任されたままなのか。

【高橋主監】

 そうだと思う。ただ、最初にもらうときには一定の審査があると聞いておる。

【石井主査】

 それではお待たせした。久保参事官、ご説明をお願いする。

【久保参事官】

 今、アメリカの例についてJSTの高橋主監からお話があったが、実はこういうルールの統一化や運用の弾力化については、もちろん文部科学省が行った、この研究費の不正対策の研究会の報告書にもしっかりと書いてあることで、不正対策をきちっとやるとともに、やはりルールの統一化や運用の弾力化等々必要だというのは、その両面必要だという書き方で、たしか報告書は書いてあったかと思う。
 それから総合科学技術会議で言うと、私どもの中に研究資金のワーキングというのがあり、中村先生にもご参画いただいたけれども、昨年は6月に競争的資金の拡充と制度改革の推進についてというのをまとめておる。ここでもルールの統一化、運用の弾力化を促進し、あわせて手続の簡素化、合理化に取り組むべきであるということが書いてある。ここではそういうルールの統一化、運用の弾力化とともに、研究費交付時期の早期化をさらに徹底するとも書いてある。こういった提言はなされており、ある意味では総論は皆さんご理解いただいているし、だれも反対もないということかと思っている。
 ただ、実際に総論から各論にどのように行くかということになると、なかなか進んでいないというところが現実かと思う。交付時期の早期化ということに限って言えば、今まで比較的遅かった厚労科研費のほうも、今年はすでに6月には交付決定がほとんど終わっているから、今非常に交付時期が早くなっていると思う。それ以外のルールの統一化、運用の弾力化というのは、それぞれが少しずつ努力をいただいているのだが、それを目に見える形でとか、研究者の方に実感いただく形でというのが、まだ少し足りないと思っておる。
 私どもの総合科学技術会議というのは、本来はいろんな提言を出し、それを各省であるとか各機関が、その提言に沿ってやっていただくというのが私どもの仕事であるから、個々にこれを私どもが実際にやるということは本来はしないのだが、この状況を見ると、もう少しお手伝いをする必要があるのではないかと思っている。
 今少し考えているのは、こちらにいらっしゃるJSTとかJSPSとか、さらにはNEDOであるとか、そういった研究費を配分されている機関と、それから大学というのが幾つか集まっていただいて、現行のルールに関して具体的な課題をリストアップいただく、もしくはその課題を分類していただく。その結果、分類すれば、これは制度の制約なのか、それとも各配分機関が直せばすぐ済むことなのかとかいうことが整理できると思うので、おのずと解決方策の道筋もできていくのではないか。そういう意味では、配分機関と大学が集まるような会合があったほうがいいのではないかと思っている。その会合の立ち上げには、総合科学技術会議も少しお手伝いをさせていただきたいと思っており、幾つか私もこういう配分機関、大学等を回っている。
 学術会議のもとに組織をつくったほうがいいのではないかとか、全省庁が入る必要があるのではないかとか、配分機関も全部必要なのではないかとか、大学で言うと、大学の組織団体を通さなければいけないのではないかとか、そういうふうに始めていくと、どうしても形式的になってしまうのではないかと思う。先ほどのこのアメリカのものでも、もともとの発端はかなり自発的なところから出てきている。組織としての立場ということではなく、自発的に直していく流れをつくるためには、あまりそういう形式にとらわれずに、配分機関と大学が集まり、直せるところはどんどん直していこうというものができればよいと思っている。
 そうしていくと、おそらく繰り越しのように会計制度と非常に連動していて、制度改善をどうしてもしなければいけないものもあると思うが、同じファンド機関の中でもなぜか両者が違っているというものも多々あるので、ある意味で、並べてみれば、これはこれに合わせられるというものもたくさん出てくると思っており、そういう簡単なところからでもいいので、自発的に直していく、改善していく組織というか、もっとインフォーマルな会合というのを立ち上げるお手伝いをさせていただければありがたいと思っている。

【石井主査】

 それでは、まず久保参事官のご発言に対する質問というのが先行することになろうかと思うが、実質的には今参事官がおっしゃったように、高橋主監の話と裏腹の関係にあるようなご発言でもあったので、ご自由にご発言、ご質問をお願いしたい。先ほどの高橋主監へのご質問の継続でも構わない。

【佐藤主査代理】

 高橋主監にお伺いしたいのだが、ここにResearch Administratorと、それからプログラムオフィサーと出てくる。これは違いがあるのか、それとも事実上同じものが2つの呼び名になっているのか、それがまず第1点と、それから日本の研究制度を変えていくため、よりよくするためには、そのResearch Administratorの養成というのがほんとうに重要だと思うのだが、アメリカではもう50年前からできている。どういう形でリクルートというか、養成が行われて現在に至っているのか、その仕組みを教えていただきたい。

【高橋主監】

 まず最初の部分だが、プログラムオフィサーとかUniversity Research Administratorに対する、いわゆる定義みたいなものは私も見つけておらず、いろいろ読んでいると、私の判断としては、プログラムオフィサーもUniversity Research Administratorも、研究のことも競争的資金のどちらもわかる人間であるという意味では共通部分は多いかと思う。ただ、そういう人たちがファンディングエージェンシーで仕事をしているというか、所属しているとプログラムオフィサーと呼ばれるケースがほとんどだと思う。ただ、大学にプログラムオフィサーが1人もいないかというと、時々見つけることがある。同じような機能を持った人が大学側で仕事をしているとURA、University Research Administratorと呼ばれているというのが私の理解である。
 このURAに関しては日本にない専門職だが、私はとても重要なことだと思っており、この今日の資料にも添付させていただいたが、2月22日にプログラムオフィサーセミナーというのを開かせていただいて、今回はFDPのご紹介という位置づけになっておるが、同じプログラムオフィサーセミナーが6月27日にも開かれているけれども、このときには、シカゴ大学とメリーランド大学のURAを30年やっているという方をご招待して、講演していただいた。そのお二人の経歴を見ると、30年もやっておられるご年配の方なのだが、若いころは短期間、研究職にあった方々であり、何らかのいきさつでAdministrationというか、管理部門に移られて、その後、URAとしてのキャリアをずっと積んでこられた。お二人だけの例であるが、ご紹介させていただいてお答えにかえたいと思う。

【佐藤主査代理】

 そうすると、やはり大体学位を持っているような方が多いと考えてよろしいのか。

【高橋主監】

 持っている方は必ずしも多くないという印象である。実はこのFDPの年会が今年の1月10、11日とワシントンであり、私と隣におる小間主監ともう一人と3人で参加してきた。250名の参加者がおり、参加者リストが手渡されるので、その肩書を見るとかなりの情報が含まれているのだが、ドクターを持っている人は3分の1くらいという印象がある。

【佐藤主査代理】

 そうすると、ある種プロフェッショナルスクールみたいなものがあるわけではないのか。そのAdministratorを育成するようなプログラムとか。

【高橋主監】

 先ほどご紹介したNCURA、National Council of University Research Administratorsは、そういったURAという専門職の団体なのだが、その団体がいろいろな講習会、ラジオ、テレビを通じた通信教育みたいなものをやって育成を図っており、言い忘れたが、最終的な確認はしていないが、資格制度もあるようである。

【佐藤主査代理】

 そういう客観的な資格というものが存在するわけなのか。

【高橋主監】

 資格を与える組織の名前までホームページで見つけているのだが、その中までまだ勉強していないので、断定的なことは申し上げられない。それから、そういった専門職であるので、大学を移動して、移動するたびにランクが上がっていく現象はあるようである。リクルートという点ではそういうことが言えるかと思う。

【長谷川委員】

 高橋主監にお聞きしたい。アメリカの支出負担確定主義会計についてご説明いただいたが、日本の場合だと、支出予算に計上されることによって債務負担なり、支払いの権限が付与されるという仕組みになっているが、その仕組みとアメリカの支出負担確定主義会計というのはどのように違うのか、おわかりであったら少しご説明いただきたい。

【高橋主監】

 それについては、添付の13番目の図を開いていただくとよろしいかと思う。そこにNSFのGrantsの仕組みというタイトルがあるけれども、この図を使って支出負担確定主義会計のエッセンスだけを、私の理解の範囲内でご説明すると、まずアメリカの予算はAppropriationと呼ばれている。予算というと普通、バジェットという言葉を使うかと思うが、アメリカの予算はAppropriationと呼ばれている。このAppropriationが何かというと、1,000ページのドキュメントがあり、全部読み切れないのだが、権限予算であると私は理解している。
 NSFというファンディングエージェンシーがあるが、国家から権限としての予算をもらう。権限に対して反対言葉というか、現金主義、あるいは現金会計という言葉があるが、NSFがもらっているのは権限だけである。そうすると、NSFが次に大学にファンディングとして渡すわけだが、大学に渡すのも権限だけである。この権限を渡す行為をObligate、Obligationと呼んでいる。NSFだけを見ると、国家から権限をもらって大学に権限を渡すと、そこで収支ゼロになる。大学側は権限だけもらっても物は買えない、キャッシュが要る。キャッシュは必要に応じて、例えばシカゴ大学とメリーランド大学の例だと、1週間分を毎週送金してもらっている。つまりObligateされた予算の範囲内で、キャッシュは毎週のように送金される。

【石井主査】

 どこからか。

【高橋主監】

 FRBからである。つまり現金はFRBという、日本で言うと日銀が持っていて、あとの仕組みは全部権限だけでアメリカ社会を動かしているという、そんな言い方ができるかと思う。私も基本的には元研究者であるので会計について極めて詳しいわけではなく、この部分を会計の人に説明してもらうとまるでわからない。私の今の説明は、本当は不正確なのだろうと思うが、わかりやすい説明にはなっているかと思う。

【長谷川委員】

 それで、使った分だけが研究資金として交付されるという形になるわけか。

【高橋主監】

 NSFはObligateした途端にそれで支出は完了したことになるので、Obligateされた予算を現金執行する行為はDisbursementと呼んでいるが、それに期限がない。だから予算の繰り越しが自由自在になる。ここはかなりわかりにくいところである。

【石井主査】

 そこが大事なところで、予算単年度主義の縛りがかかっているのはファンディングエージェンシーまでだ、これがアメリカの基本的な原則であると言っていい。

【高橋主監】

 正確ではないのだがとりあえず。

【石井主査】

 正確ではないのだが、とにかくそういうことで。そこに現金が来るわけではない、権限だけが来て、それで右から左へ大学に渡せばそこでちゃらになる、そういう仕組みということか。

【高橋主監】

 平たく言うとそういうことになる。

【小間主監】

 つけ加えると、1週間ごとにという仕掛けは、大学に現金が長くあると、その利子の部分を大学が払わなくてはいけない。大学にはできるだけ置かないようにするので、先週払った分の現金をもらうか、来週払う分を現金でもらうかを選んで、短期間で全部処理し、現金は大学の中にないようにして動かしている、そこが随分日本の仕組みと違う感じがする。

【石井主査】

 キャッシュカードを渡せばいいという、俗な言い方をすればそんな話も、実は雑談ではJSPSの中ではしている。例えばこの先生に基盤Bで500万ごとだとすれば、500万分のキャッシュカードが使える。それが支出されるたびに記録が全部銀行で残るから、お金をぼかんと振り込んで、それを事細かに経理をして、後でトレースできるようにするというよりは、はるかに簡便なのではないかと。現金が一々動くわけではないという、日本としては今のところ夢物語であるけれども、そういうことも雑談ではしている。それはそれでデメリットもあるかもしれない。これはまた研究のこと。

【長谷川委員】

 それこそ事務手続からすると、相当頻繁に資金を要求して配分を受けてという感じにはなるわけだね。

【石井主査】

 ただ、実を言うと先日、サイズ的には中クラスの某国立大学に実地に伺って、システムを伺ったのだけれども、研修は物が通っていくわけだから、これは本当に研修しなければいけない。発注した先生、研究者が一定の範囲内―100万円だったか―ならば発注権限を持っている。発注した途端に電子的に経理部のほうに連絡が行って、会計処理がそこでオンラインで行われるというような仕組みができている。だから物を注文して物が来て研修して、それではお金を払おうというあれが、実をいうと発注と同時にシステム化されていて、実際の現物が通るときだけチェックすればあとはいいという、基本的にそのような仕組みだったと思う。
 なので、経理の担当のところに行って、そのコンピューターを見せてもらうと、その画面に、各先生のプロジェクトのお金というのはこう動いているというのが、ほとんどオンタイムで発注などが載ってきているということのようであった。そのように、片方で経理の仕組みが合理化されれば、お金の問題もキャッシュレス化できる可能性は随分高くなるだろうという感想は持った。

【高橋主監】

 石井先生がおっしゃったとおり、電子システムができていないと、これは非常に大変というか、無理だと思う。FDPの活動も20年間やっているといっても、後半10年間から最近にかけて、この電子システムの構築に相当な労力を払っていると理解している。

【石井主査】

 何かご質問、ご意見どうか。

【中村委員】

 感想であるが、確かに私たちがよく知っているアメリカの研究者を見ても、私たちみたいに細かいことを何も気にせず、だれかがやってくれている。我々が話しても、なぜそんなつまらないことをいつもやっているのだと言われるので、とにかくそういう仕組みになっているのはよくわかる。

【石井主査】

 ほかに何か。

【清浦競争的資金調整室長】

 私のほうから文科省として、今、久保参事官からご紹介いただいた考え方に全面的にもちろん賛同するけれども、我々も文科省の中でも、もちろん個々の制度改善はしてきたのである。資金の中に補助金、委託費、それから法人経由で支出する場合の、大きく言えば3パターンがある。その3つのパターン、もともと根っこが違うところの中で、文科省の中での整合性を図ることももちろん大事なことであるが、各省に同じような根っこが違うものがあるわけで、大学のほうの目線から見ると、それはほかの省庁のものも含めて並べてみて、例えば補助金なら補助金の中で、国の委託費なら国の委託費の中で、法人経由であれば法人経由の中でというところを、まずは見てみるというのはすごく有用なのではないかと思っており、実際にこういう場の設定を含めて、積極的に取り組んでまいりたいと思っている。

【久保参事官】

 今の中で、私も幾つかの配分機関の方ともお話をさせていただいた。そうすると、補助金だから委託だからといろいろおっしゃって、根っこは違うというのもあるのだけれども、私自身は、本当にその補助金とか委託とかの性格によって、この扱いが違うのだろうかというところまで、やっぱりきちっと見ていく必要があると思っている。だからそうやって説明はしているけれども、本当にそれが制度の制約なのだろうかというところも含めて、実は検討していく必要があるのではと思っている。

【石井主査】

 大事なことである。問題は形式ばらずに自発的にみんなが集まって、ぼちぼちできるところからやればいいではないかということでは、おくれているところはまず出てこない。そこが一番の問題なのではないかという気がするので、どこか多少は音頭をとっていただかないと。
 それともう一つやはり、学術会議がどれだけ――学術会議なのか、とにかく研究者の団体が熱意を持って、どうしてもここのところをやってもらわなければ困るのだという声が上がってこないと、後進省庁がなかなか動いてくれないのではないかと、これは勘ぐり過ぎかもしれないが、そう思っている。

【久保参事官】

 これはある程度、自発性がないとできないことも確かである。つまり、何か上からやろうといっても多分始まらなくて。と申すのは、こちらからこうしようといっても、変えないでいいという理屈は幾らでも出てくるのである。先ほどみたいに、いや、これは委託だから違うみたいな形で、変えようと思わなければ変えない理屈は出てくるというものなので、やはり自発的にやっていくというのがまず大切なことではないかというのが1点目である。
 それと、確かに自発性ということであれば、すべてをいきなりカバーするわけにはいかないということは事実だと思うけれども、ある程度やっていって成果が見えてくれば、おのずとどんどん参加者も増えるのではないかと思っている。もちろんそうでなければまた考えなければいけないけれども、まずはできるところからやってみようと思っている。

【石井主査】

 どうぞ、石渡委員。

【石渡委員】

 今の問題なのだけれども、久保参事官のほうから、自発的にインフォーマルにというお話があったが、各大学とか研究機関とかエージェンシーが集まって議論しても、やはりその一番根底の基本的な部分が変わらない限り、幾ら議論してもちょっと無理なのではないか。

【久保参事官】

 今、いろいろな制度の中で、すごく制度的な制約があるものはもちろんあるかと思う。そういう制約のあるものは、総合科学技術会議の中で、またワーキングを開いてやることは考えているが、今、制約になっているというものの中に、制度的にはそれほど制約ではないが、たまたまいろいろな制度がそれぞれ個別に考えているので、その結果扱いがばらばらになっているというものも、実は多数あるのではないかと思っている。そういうものは、むしろ並べてみることによって改善することもたくさんできると思うし、それぞれそう決めた理由も多分おありだと思うので、そういうご意見も大切にしながらやっていく。一種、すべてが自発的で解決できる問題だけではないと思っている。
 なので、その中である種検討していく過程で、これは制度の制約だというのが見えてくれば、これは制度の改善としてやっていくことかと思う。現時点で言うと、そういうものとそうでないものが、ただ混然一体となっていて、皆さん、使いにくいという声だけになっているようなので、少しそういったことを整理するという意味もあるかと思う。

【中村委員】

 1つ、高橋さんにご質問があるのだが、研究機関の現場で私たち研究者に近い事務の人は、最近はほとんど、最初からもう会計検査をというところから話が始まって仕組みをつくっている。アメリカにおいては、日本における会計検査院のようなものの審査というか、検査というのは、同じような仕組みで行われているのか。私は会計検査院がどういう意図でどういう仕組みでやっているのか、よくわからない。やはりアメリカの会計検査と日本の会計検査というのは、同じような概念で行われているものなのか。

【高橋主監】

 私も完璧に理解してはいないが、現時点での私の理解でお話しすると、基本的な考え方は同じだと思う。やはり不正があるかどうかというのをチェックする必要はあるわけであるが、その具体的な方法として、日本の場合はすべてお金を出す側というか、会計検査院側というか、ファンディングエージェンシーも含めて、そちらで全部チェックするという仕組みに対して、アメリカの場合は大学側の、先ほど申し上げたURAという専門職に、かなりのところまで任せているという部分が一つあるかと思う。
 あともう一つは、日本の場合、基本的には全数検査というか、すべてチェックするというのが建前になっていると思う。ただ物理的にそれは実行できないので、書類だけで済ませているとか、いろいろな便宜的な方法が使われているかと思う。そういった点でアメリカは、抜き取り的に検査、オーディットと呼んでいるが、抜き取り的にオーディットをやっている。私の印象を一言で言うと、一罰百戒というか、全数を見ないかわりに、もし不正を見つけたら、数年間すべてのファンディングが応募できなくなるとか、先ほどのExpanded Authorityが取り上げられるとか、かなりのペナルティーが科されると理解している。

【中村委員】

 では別の聞き方をすると、つまり国の税金がよりよく使われているという目的に沿っているかどうか。例えば今、ここにいいことが書いてあったけれども、Scienceがよくできるようにするというのが目的に違いないのだが、この際徹底的に検査して、Scienceも何もできないがごとくに検査すれば、検査的にはすばらしいわけである。バランスがおそらくあると思うのだが、アメリカの会計検査というのは、ある一定のお金を費やしたときに、これくらいの成果が出たというようなところと、それから手続どおり行われているところのバランスは、検査するときにどうやって評価しているのか。

【高橋主監】

 その部分については、(研究開発の評価に関する議論で別の議論になると思うので)今日は……。

【中村委員】

 今の日本はそうではないかと思って心配だが。徹底的にやると何も研究者は研究しないという状態に例えばなったとする、会計的には完璧であるけれども。そういうことはどこでだれが判断しているのか。

【高橋主監】

 だれが判断しているということになると、ちょっとお答えに詰まるのだが、(社会全体の良識というか)FDPというような場でみんなで判断したというお答えになってしまうかと思う。それからもう一つは、FDPの考え方というパワーポイントの図が1枚あって、それを今日は省略してしまったのだが、原点は税金を使っていかにScienceを振興するかということで、不正を全くなくすことによってScienceが死んでしまってもいいということではなくて、まさにおっしゃった、そのバランスをどうとるかだと思う。

【中村委員】

 日本ではそのバランスをだれが考えているのかよくわからないのである。

【高橋主監】

 それは、私は1つには、研究者があまり発言してこなかったというか、個々の研究者は発言するのだが、組織として発言する場がなかったという部分もあるかと思う。

【中村委員】

 よくわかる。

【佐藤主査代理】

 もう一つ。不正が起こった場合、Expanded Authorityは責任を厳しく問われるわけか。日本では不正を行なった研究者のみが処罰されるのが通例だが、アメリカではExpanded Authorityも処罰の対象となるのか。

【高橋主監】

 わかる。やはりその不正の中身とか、ケース・バイ・ケースで相当違うようなのだが、1つ聞いた話としてご紹介すると、極端な例だと思うが、ある大学の医学部の先生が不正をした。国からもらったお金で採用したポスドクに、企業からの委託研究をやらせていた。当初は先生が悪いということになったのだそうだが、基本的にアメリカの競争的資金は先生個人が受け取るものではなくて、大学という組織が受け取るという建前になっており、途中は少し省略するが、最終的に先生ではなくてURAが牢屋に入った。そういった例も紹介されている。その後、いろいろ情報を集めてみると、そこまで行くのは相当極端な例で、やはり内容をよく審査した上で、先生が罪を問われることも皆無ではないだろうと思う。
 ただ基本的には今申し上げたように、アメリカの場合と日本の場合の違いとして、アメリカはあくまでも大学がグランティー、即ち受領者は大学である。日本も一見大学がもらっているような形はとっているけれども、実はやはり研究者がもらっているという側面が非常に強いと思う。

【石井主査】

 金を出すところ、ファンディングエージェンシーであれ、省庁直接であれ、それともらう人、これが大学なのか研究者なのかというのは、今のところなかなかわかりにくくなっている。本来は科研費で言えば補助事業者は研究者だから、大学というのは本来横にいたのだけれども、これではまずいというので、だんだん機関経理をお願いするということで、間接経費もついたこともあって進めてきているわけである。しかし、日本の場合には、原理的には、まだそこのところの整理はきっちりついていないというのが一つあると思う。
 それで、中村委員のおっしゃった会計検査の問題というのは、またもう一つ違う次元の問題なのだろうと思う。日本の場合は2つの問題が、大学の現場では重なって意識されていて、科研費をちゃんと使わなければいけないという、そのファンディングシステム上の信頼関係というか、あるいは大学の責任の問題というのと、会計検査で挙げられる心配という問題とがごっちゃになっていて、しかも会計検査というのは常に全部が検査されるわけではなくて、今年はどこそことか、この問題とか、そういう形で対象を特定してやる。しかし、やり出したら徹底的にやる。だから科研費の例の出版助成の学会費の問題も、結局は会計検査でやられているわけである。
 ところが科研費のほうのシステムから言うと、成果公開で学会が学会の雑誌をつくって、そのうちの大半が事務所に積み上げてあったなどというところまで、一々検査に行かないわけである。だから会計検査となれば、それは何年かに一遍、あるいは確率的に言うとものすごく小さな確率で、まさに現場まで行って証拠をつかんでやってしまうということになるので、原理が違う性質のものをごっちゃにして考え出すと切りがないのだろうと。その辺の腑分けもやはり必要かと思う。
 我々は会計検査のことまでここで考える必要があるのか。これはまさに研究がわかろうとわかるまいと、経理の人がきちんとやるというのが本来のあり方なのだろうと思うので、そこは私は大学の中できちんと解決すべきであり、またできる問題ではないかと思っている。今ここで問題にしたいのは会計検査ではなくて、まさに研究の生産性を上げるためにどうやったらいいのかという、この精神に則ってやらなければならないということで、会計検査とちょっと原理が違うので、問題はやはり腑分けしたほうがいいのではという感想だが、それでいいのかどうか。私は会計検査について現実の実感というのを持っていないものだから。
 しかも昔は行政管理の監査というのもあった。そこに来られて私は、大学の本部の仕事をやっていたときにほんとうに頭にきたことがある。全然違う原理で問題をつっついてくるわけで。だから、実際に行政の担当者というのは、会計検査ではなくて、多分行政管理もあるだろう。原理的にはこれは独立行政法人とか国立大学法人にも及ぶのだろう。いまだに実地に行けるはずだ。

【久保参事官】

 一般的に。

【石井主査】

 だが、我々が一体何を考えたらいいかといったら、行管とか会計検査まではカバーしにくいという実感をもつのだが、その辺はどうか。

【嶋倉調査調整課長】

 一般的に補足させていただくが、会計検査はその会計のルールにのっとって処理しているかどうかを見る。その会計のルールというのは国の財政法からスタートするが、問題はずっと下がって、補助要綱のレベルまでルールが定まっていることになって、それにのっとっているかわかる。なので問題は実は中村先生のお話、先ほどの久保参事官からの話もあったように、この制度、補助金はこういうふうに使っていると補助担当者なり大学が説明してしまうと、ではそれに従ってどうかと見て、そこが少しでも甘いと会計検査院は、それは突かざるを得ない。
 だからこそ逆に言えば、今あるさまざまな、このお金はこういう制限があると、ほんとうにその制限というのはどこからなっているか。その制限が法律からきているのであれば、なかなか簡単には変えられない。ところが、その制限が補助金の交付、端的に言えば担当係がここはこうしておこうかとやったものであれば、その担当者がそう言っている限りは、そのルールを外すと会計監査院は文句を言うが、そのルールを変えてしまえば、それにのっとってやっていれば、会計検査院は文句を言わないはずなのである。
 そういう部分が実は、もちろん法律レベルで各科研費がどうのとか、振興調整費がどうのとかと、全然直ちに出ているわけではなく、そのお金の目的なり、そのお金のさらに補助金の研究目的なりに応じて、いろいろと一つ必要なルールを定めるとともに、必要ないものまで、会計検査院に言われるかもしれないから、若干そのおそれがあるから、あるいは類似しているようなああいう制度が言われたことがあるから、そうやってみようかというふうに、非効率的なルールをつくってしまっている。そういうものをまず見ていかないと、会計検査院がどうかといったら、ちょっとまだ早いのではないかと思う。
 それから、主査からお話があったように、今、評価という形で言っているけれども、研究評価はそれなりに独立した資料を与えられているからいいが、やはりそのお金の使い方というよりは、そのお金を取るときに期待される研究成果としていったものがほんとうにいいのかどうか、あるいは行政的に言うと、そもそもこういう成果を出すためにこの予算を取るといった、この行政分野についてはそういうことをねらってはいけないのではないかというところまで意見を戦わせて、場合によって、その行政のねらう方向すら変えていこうというのが評価の考え方であるので、そこら辺はまた研究に持っていくと、非常に厄介な話になる。
 とりあえずそういうことから、まず久保参事官の話もあったように、今現状、ほんとうにだめというものが、それに従わないと法律違反だと言われるような、ほんとうにだめなものなのかどうかということは、常に意識していかないと。そういうことを意識せずにやってきたから無用な作業が増えているのは間違いないので、まずそこはしっかりとした軸足として一つ置いておいていただきたいところだと思う。

【中村委員】

 よくわかった。そうすると、これはアメリカのシステムのときにさっき、University Research Administratorというのが重要だとおっしゃったけれども、もしかするとアメリカも、この人がいるので現場と上をつないで見通しがよくなったのかもしれない。日本の場合はこの人がいないので、私たちが現場で研究していて、文部科学省があって、途中がいろいろあって、規則をつくるにあたって我々の現場の声は何も聞かれていないので、そうすると違反になってしまうということか。

【嶋倉調査調整課長】

 まさしくそういう事務のルール、お金の使い方をつくって、それを実施させ、その責任をすべて一身に位置づけて出てきたのがこの専門職なのだろうと思う。もちろん日本の場合だと、ではだれができるのかとか、そもそも大学の運営自体も多分若干違って、アメリカの大学は経営と研究教育だの、結構昔から分かれている面があったのが、日本の大学は独法化になってから徐々にそこら辺の整理をつけ出しているというような、大学制度の違いも影響しているのだとは思う。

【石井主査】

 日本の場合、こういう幾層にも問題があって、そもそも最終的に繰越明許をするのがファンディングエージェンシーどころか、文部科学省でもないし、財務省なのである。アメリカはそれに比べると、日本の場合には少なくとも3段階ぐらい、ファンディングエージェンシーがあって、文部科学省があって、主計局の中でも2つ違うところがあるのではないかとさえ思いたくなる節もある。主計局の主計官が言ったことと同じ局の司計課が実際にやったこととはどうも違うのではないかと、去年の例では思わざるを得なかったということもあって、その辺の交通整理もある程度はしていかなければならないだろうと思う。
 どうぞ、小間主監。

【小間主監】

 中村委員がおっしゃった、会計検査で指摘されるという問題が、やはり研究者の立場からいったら無視のできないところである。会計検査までは踏み込めないと石井主査はおっしゃったが、例えば端的な例だと、トナーをそれぞれの目的外使用で、この研究費で買ったトナーをよそのもので使うことは、会計検査の立場からいくと明らかに違反しているではないかと指摘されると、大学側は多分反駁できないのだと思う。ただそれを今度の仕組みの中で無制限に外すことはできないと思う。
 大学が大量に教育に使っているもの、あるいは入試に使っているものと一体として、トナーをごっちゃにするなどということはできないと思うけれども、研究目的のための資金の間では共通に使うということを、今回スタートする3つのFAと幾つかの大学の中で試験的にスタートするというのはできるのではないか。JSTとJSPSとNEDOの研究資金について、ここの大学の中ではこういうやり方でよろしいという合意を得たものであることを、適切な場所に公表しておいて、それに従ってやっているということを会計検査院に示すという形で、問題はかなり解決するのだと思う。
 ただその判断が今は、各大学、各部局、各研究者のところでやらなくてはならず、共通認識を持つことはできないことに一番大きな問題があるので、おそらくそういう仕掛けで共有するということが良いと思う。どこまで広げられるかは、議論していかなくてはいけないけれども、合意できるところをできるだけ広げて、不合理と思われる小さな問題は、そういう形で解決するという仕掛けができれば良いと思う。

【石井主査】

 私が申し上げたことが少し適切な表現でなかったかと思うが、そういうことをまさにFDP的なところで議論する、あるいは一つの統一的な見解を持って戦うというのは、それはもちろん重要なことだと私は思っている。ここでガイドラインの問題に関連してやり出すと、話が複雑になるのではないかということで申し上げたにすぎない。

【高橋主監】

 1つよろしいだろうか。1つの問題を解決しようとするときに幾つかのアプローチがあると思うが、先ほどからも議論に出ていたと思うが、ファンディングエージェンシー側で解決するべきことと、大学側で解決できるという部分もあって、大学側で解決したほうが問題解決としては早いという場合もあり得ると思う。今のトナーに関して言えば、間接経費でトナーを買う分には全く問題ないのである。大学によっては間接経費を研究者にかなり渡している大学もある。また大学によっては一銭も渡していないところがあって、そこがいろいろ問題になっているわけであるが、間接経費が今、30パーセントついているけれども、たとえ5パーセントでも10パーセントでも研究者に渡すという仕組みがもしできれば、私は状態は劇的に改善すると思う。根本的な解決ではないかもしれないが、相当解決すると思う。

【中村委員】

 細かいところだが、正確に言うと、研究者に還元しては間接経費の使途は正しくないので、研究機関に還元しなければいけないのが、建前論である。

【高橋主監】

 いや、間接経費の定義は、研究そのものの間接経費という位置づけもある。

【中村委員】

 研究者でもいいのか。

【石井主査】

 研究者のところへ行っている部分も。

【長谷川委員】

 いや、研究者には配分してはいけないと理解している。

【中村委員】

 最終的にその研究者が使うのかもしれないけれども。

【石井主査】

 そうすると、それはつまりどういう性質のものとして行ったかといったら、交付金と同じような性質のものとして行っているはずだろう。

【長谷川委員】

 研究者には直接経費という形で研究費は配分されているということだから、間接経費まで研究者に配分するということは私どものケースでは考えていない。

【小間主監】

 間をとって、そういうトナーとか、幾つかの非常に困っている問題は、大学が間接経費から払うという仕掛けを導入すれば済むと思う。個々の研究者が払うような仕掛けにしなくても解決は可能である。現在はそういう認識は、ほとんど大学の中で共有されていないし、それからそれが問題であるということを認識もしていない人がかなりいるというのが現状と思う。幾つかやり方はあると思う。

【石井主査】

 なので結局、基盤的経費で買うべきものの執行を、全部学部とか本部がまとめてやっているのではなくて、多分、各研究室に枠を与えてやらせているという理解なのだろう。どうぞ、渡邊部長。

【渡邊部長】

 高橋主監からもお話があったように、使いやすい何にでも使えるお金と、目的が定められた補助金や研究費がある。制度的に合算使用をしようというのは、例えば大きいものを買いたいというときは、合算使用はどうかというのを考えていく必要はあると思うが、消耗品のようなレベルだと、制度的に解決する方法もさることながら、使いやすいお金でその辺は処理してしまおうという、実際的に解決する方法で対応していくのが手っ取り早い面がある。逆に、何でも制度的に全部できるようにしようというと、なかなか難しいところもあると思う。
 また、FDPの話を伺って、非常によいものがアメリカにはあるのだなとファンディングエージェンシーとして思った。JSPSでは、ユーザー側にどういう要望があるかというのを聞く方法としては、説明会に行って質問や要望を受け付けるという形で行っている。しかし十分とは言えず、また、あまり整理されていないという感じを持っている。アメリカの場合は、URAという人たちが同じ専門職として、いろいろな大学にいて職業団体も構成している。そういうところで集まって、いろいろな競争的資金を見て問題点を整理できるわけで、非常にうまい仕組みができているという感じがする。そうした基盤があれば、ファンディングエージェンシーと集まる場であるFDPというのができれば、ユーザー側が持っている不満というのはきれいに整理された形で出てくる。この点は、日本の状況と背景が違うところであり、日本はそうした面も強化していかなければならないという気がする。
 また、日本では、会計畑の人はお金の面からうるさく言い、研究者側からすると、そんなことでは研究できないということで対立的な構造になりがちだと思う。アメリカの場合は、URAのような専門職がいるが、大学として研究をいかに円滑にやって、競争的資金をより稼いでくるかという、一つの目的、ゴールが研究者再度とも一致しているからいいのだと思う。しかも専門職として長年やっているから、研究・会計の両面の事情がわかる。日本の場合、ベテランの専門職がいないというところが弱点である。

【石井主査】

 アメリカも20年かかってやってきているのだから、我々もこれから頑張らなければならない。いろいろ議論は尽きないと思うが、議題がもう一つあるので、申しわけないが次に進ませていただく。
 その次は、議題(3)、小規模な機関等における体制整備状況の確認及び指導助言等について、清浦室長から説明をお願いする。

【清浦競争的資金調整室長】

 それでは、資料5−2に基づいて、小規模な機関等における体制整備状況の確認及び指導助言等についてということで、ぜひご意見をお聞かせいただきたい点がある。
 第4回の会でもご報告しているが、今現在、11月に出していただいた1,600機関からの報告書の分析、それからサンプリング的に現地調査を行っているところである。前回の議論であったが、全般的な傾向分析や、どういうアドバイスをしていくべきかということに関しては、報告書に書き込んでいくということであるが、場合によっては個別に指導していくということもあるという整理だったかと思う。今回、この資料5−2で少しあらわしているのは、個別の指導を考える上でも、小さい機関についてどういう考え方で対処すべきかというのを、いま一度少しご議論いただけたらありがたい。
 1.の検討の趣旨のところに、その下のところで参考1とあるが、この参考1の部分はガイドラインの前書きの部分から抜いているものである。ガイドライン自体が、ある一定規模以上の組織体における内部統制のあり方をどうすべきかというのを、例えば会社法の仕組みなども参考にしながら考えていったという経緯があるので、もとよりある一定規模以上の組織というのがその念頭にあったかと思う。
 だからこの前書きの部分にただし書きのところがあるが、「ただし、小規模な企業、財団法人又は、NPO、あるいは我が国の原則を強制することが無理な外国の研究機関等、ガイドラインに掲げたすべての項目を実施することが困難な団体については、資金配分機関においてチェックを強化するなどの措置によって代替する場合がある」とされていたところであると理解している。また、「また」以下にあるが、企業等のほうが先行して、会社法に基づく内部統制システムの整備というのが求められているわけであるけれども、このような記載になっているというところである。
 参考2のほうは会社法における内部統制のところであるが、会社法自体はすべての会社において内部統制システムを求めているわけであるが、義務づけの明文規定のところで多少、会社の組織規模によって差をつけているというつくりになっているところである。
 3ページ、4ページ目あたりを見ていただいて、実際に1,600の機関の中でガイドラインに対する意見は、最後の自由記述のところで書いてあるところを幾つか抜いて、ここに示した。財団法人、それから独法、地方公共機関、民間企業等でこのような指摘がある。
 最初のほうからいくと、大規模機関と小規模機関を一律にすることなく、何らかの方策がないかと思っている。その次の財団法人であるが、小さい組織、お互いの顔や行動が見える組織にとっては通常の体制で十分管理できているというご指摘。それから、その次の3番目の財団法人であるが、自己責任の徹底と不正使用の罰則を強化したらどうかという話である。その次、4番目であるが、一、二件の採択の小規模機関では実態にそぐわない、小規模機関へのガイドライン等があれば情報提供してほしいという話。というふうに、それ以外のところは少し省略するけれども、このような意見が幾つか上がってきている。
 その上で、1ページ目に戻り、前書きにも少し書いておった、小規模な機関というのをどのようにとらえて、今後個別に当たるときに頭の整理をしていくべきかというところであり、1はその機関自体の種別とか、組織規模の問題をどう考えるかという観点、それから2は、実際にもらっている公的資金の配分規模によって、どのように整理したらいいかという問題を書いているところである。
 5ページ目以降、グラフを幾つかつけているので、ご参考いただきたい。本来、出してきていただいた1,600の機関が、実際にどのような経費を取得しているかというところまで分析できればいいのだが、何分そういうマクロ的な分析が難しいところで、少しイメージをつかむという点で、最初にあるのは政策研、NISTEPの最近出たレポートの中で、これは国立大学だけであるけれども、外部資金をもらっている割合というのが、国立大学の大きいところから小さいところまでこのような分布になっている。小さいといっても、一番小さいところでも十数件の科研費があって、数千万の規模の経費があるというグラフである。
 それからその次の表である。これは文科省の競争的資金だけであるけれども、横軸が採択件数で、縦軸が1件当たりの配分額の分布を示しているものである。小規模のものの中で配分額、配分件数等のところになると、この縦軸で見たところのおそらく低いところが少し議論の中心になってくるのではと思っている。
 それから、その次の表であるが、これは少し統計的に数字がとれる科研費だけであるが、平成19年度の科研費補助金の採択件数が機関当たり10件未満の研究機関が、1件から数えてどういう分布になっているかというのを、機関の種別ごとに並べているものである。1件とあるが、1件のところを下にずっとおりてきていただくと227件であり、こちらが科研費の採択された機関に占める割合としては20パーセントぐらいであるというような見方をしていただければと考えている。
 というのがそのファクトのところであるが、また戻っていただいて、2.(2)であるけれども、それではどのような考え方で対処すべきかというところの基本的な考え方として、少し今考えているところを書いている。基本的には小規模な機関であっても、考え方、特に必須事項については対応が必要なのではないかと考えている。ただし、幾つかの機関のコメントのところにあったように、特別な部署を置くとか、専門の人を新たに配置するとかではなくて、ガイドラインが言っている実質的な機能がどう担保されているかというところが重要であるという趣旨が、必ずしも周知が徹底していないところもあるかもしれないので、そのあたりの説明が今後必要なのではないかと考えている。実効的な体制整備というのが促進されるような形でのアドバイスというのを積極的に行う必要があるのではないかと考えている。
 その下に具体例があるけれども、これは必須事項と挙げている点であり、例えば責任体制の明確化という点においては、小さいからといってわからないということでは困るわけであるので、こういうところは必須だろうと思う。
 それから相談窓口、あるいは不正防止推進部署等については、これは必ずそういう名前の組織を置かなければならないということではなくて、ガイドラインで求めている機能がどう果たされているかというところが問題だというとらえ方で見るべきなのではないかと考えている。
 それから4の発注・検収については、小規模機関であっても、何も牽制措置がない状態で、発注した本人が見るということがないように留意というのを置いている。
  56については、先ほどの23などと同じような解釈ではどうかと考えている。
 それとあわせて(3)のところであるが、こちらのほうはガイドラインにも書いていたが、資金配分機関におけるチェックということで、実地検査、額の確定時におけるチェックをやるというのが1点と、2にあるけれども、実際にこういう小規模なところで不正事案が発生した場合には、きちんとした対応をとっていくということを書いている。
 それから3.であるが、この小規模な機関に対して、ガイドラインの重要性というのを必ずしもご理解いただいていない部分もある。これをどのように理解を深めていけばいいかということを書いているのと、その次のものについては、実は個別の機関をいろいろ指導していくというのは労力がかかる仕事であるが、今回初めての調査をした後に、どの程度小規模な機関に対する個別の対応をするのが合理的かというところも、少し留意しながらやっていかなくてはならないと考えるところである。資料の説明は以上である。

【石井主査】

 小規模な機関からいろいろな反応がある、これに対して、それを受けとめつつ、しかしガイドラインの精神と申すか、重要なポイントをどのように伝えていくか、そしてそれをどのようにそれぞれの機関でこなしていただくかということについてのアドバイスをしていく上での論点、あるいは注意すべき問題点、そしてさらに、ある程度の具体的な考え方の例示、そういったことについて説明があったわけで、これについていろいろな実態についてのご質問もあるだろう。また、これでは足りないとか、あるいはこれは必要ないのではないかというような、さまざまなご意見もあろうかと存ずるので、遠慮なくご議論をちょうだいしたい。

【中村委員】

 1つ質問があるのだが、ここで言う不正というのはどのようなものか。というのは、何を念頭に置いていくかというと、小さい会社があって、私が1人で研究、申請したとする。一度も科研費をもらったことがない。そうすると、今、私たちがずっと議論してきたようなさまざまな事務手続は、多分だれも知らないわけである。そうすると、あらゆるミスをおそらく犯しそうなのだけれども、それは単なる間違いなわけである。だからおそらくここに書いてあるように、そんなものはできるわけはないという感じがする。そもそも何だかちっともわからないわけだから。それにおいて、ここで問題にしている不正というのはどの程度のものを不正と思っているわけか。

【清浦競争的資金調整室長】

 基本的に、国の公的資金を適切に使うという意味でルールがあるわけだが、それを破る形での不適切な使用とか、不正な研究費の使用が不正に当たるということである。

【中村委員】

 そうすると、これはかなり広範にかぶっている。私も長年やっているので、事務ではないがよく知っているのだが、多分これは初めてもらったのでは何もわからないので、やることなすこと、全部不正になりそうである。それがどこか最後の意見に、中小企業ではできっこない、参入障壁だと書いてあるが、確かにそのような感じはする。

【清浦競争的資金調整室長】

 もちろん、なれていないところで、仕組みがよくわからないとかというところはあるかもしれないが、それは当然マニュアルや手引があるし、聞けばよい話であり、そういうことではなくて、広範にわたると、もちろんルール自体が広範にわたっているのでそうなのだが、いわゆる不正使用で、文科省関係で言うと3年間で30件ぐらい返還命令を出しているので、要するにそれに当たるようなものがないようにするという趣旨である。

【中村委員】

 そうすると、だれが見ても常識的におかしいというものに関して。

【清浦競争的資金調整室長】

 はい。

【石井主査】

 どうぞ、大久保委員。

【大久保委員】

 これは事前に資料をいただいたときに文科省のほうには申し上げたのだが、まずここで会社法の規定を参考2で持ってくるのは、僕はちょっと誤解を招くのではないかと思う。明文規定がないからといって、別に中小会社はなくていいという話ではないということをまず確認した上でだが、そもそも今回のガイドラインの趣旨、目的に応じた対応を図っていただければ、その辺の解釈ができるのではないのか。そういう意味ではどうもチェックリスト化していて、このとおりやらなければいけないのか、どうしてもこういうお考えになっているのか、こういうコメントをちょっと感じたのだが、そうはいえどもやはり現実的に、例えば年間1本や2本、あるいは数百万程度の補助金を受けているところまでそれを義務づけるのは、やはり現実的ではない。
 ここはあめとむちの両方が必要なのではないかと思う。逆に、例えば年間数百万円の1本程度の話であれば、特に仕組みをとる必要はなく、それだけ徹底的にきちっとやっていただければいいのであって、それに対しては仕組みの対応ではなく、研究そのものができているかどうかをチェックすればいい。これは従来の施行と一緒でいいと思う。
 今回問題になっているのは、研究機関のかなり本数を多く取られているところが、どうも組織構造的にそういう問題を誘発しているのではないのか、いわゆる郷原先生の言葉で言うならば、カビ的な不正行為だとするならば、それを防止しようとするのがガイドラインの目的になるので、そこをもう少し整理してもいいのではないか。そういうことで考えていくと、受けている補助金の件数、あるいは1本当たりの金額の規模等に応じて、もう少しそういったところは、別に仕組みではなくて本数ごとに、それは1件1件きちっと見ていく。
 ところが帝大、あるいは中規模大学以上になってくると、それだけでは検査官のほうも足りなくなってくるので、そこへの対応として、今度はガイドラインとして仕組みができているかどうか、その中でたまたま何か問題が出てくる案件があったときには、それは組織として問題だったのか、個人の問題だったのか、それが個人の問題であればそれはそこまでの話だし、組織の問題であれば組織にそれなりの改善勧告を出していく、そういうことが重要なのではないか。
 そういう意味では分けるべきなのだが、ただ、私の経験上から言うと、規模的にいくと、予算規模で総額で大体300億から400億ぐらいがぎりぎりの現実のラインなのではと思う。ただ、300億から400億以上の規模になれば、ある程度の仕組みをとることは十分可能なのではないかと思う。そのあたりを一つ目安にご検討いただければよろしいのでないか。ただ、どんな組織でも方針を明確化して、きちんと自分たちがどういうことをしているかという説明をするということの最低限のラインは、やはり必要なのではないか。

【石井主査】

 感謝申し上げる。これはチェックをしようという立場に立つと、どうしても細かいところまで行ってしまうというところにもなるわけであるが、例えば民間機関の一番最後に出てきている、この回答を見ると、やっぱりいろんな誤解があるのではないか。その辺の誤解を解くということがまず必要なのではないか。例えば自分のところはこういうやり方でやって、これを徹底的にやっていけば不正は起きない、社員も、あるいは実際に研究開発に当たっている職員もこのとおりにやるのだと、これを社長だけではなくて、数少ないかもしれないけれども社員全員が自分の精神として研究活動し、そしてお金を使うという、ほんの2行ほどの行動規範をまず定めていただくということで問題をわかっていただくというのが必要なのではないか。
 先ほど少しお話しした某大学で、システムがきちんとできているという紹介をしたが、それだけではなくて、やはり行動規範をきっちり決めていらっしゃる。これはいわゆるお経のような長い文章ではなくて、非常に簡潔な命題が箇条書き的に並んでいるわけで、例えばそのうちの幾つかを時々思い出して、壁に張っておくなり何でもいいが、そういう形でやっていただくだけで随分理解も深まるし、こちらの言うこともそのうちわかっていただけるようになるのかもしれない。どうも制度論、あるいは仕組み論が先に意識されてしまって、これを小さな所でもやれというのかという出発点で話が食い違ってしまっているという感じがするので、これがまず誤解を解きほぐす糸口になるのではないかという感じはする。

【石渡委員】

 今回、現地調査に同行させていただいて、1つの大学は非常に小規模大学だったのだが、専任の教員が30名足らず、職員も10名足らずで、研究費の仕事も、ほかの仕事をしながら兼務で1人の人間がやっている。科研費が今年度1件、90万という金額なのである。そこで感じたことは、当然のことながら、小規模大学であってもやはり大学の内部牽制の一環として、こういったガイドラインに対する体制整備は基本的には必要だと思うのだが、小規模大学にはこのガイドラインどおりの整備を求めてもなかなか難しい。お金の面や人の面でやはり難しい。当然このガイドラインというのはそもそも一律に課すものではないが、特にそういった小規模大学へ伺って感じた。
 ところがまた一方で、小規模大学であるがゆえに、メリットというか、非常に学内のコンセンサスが得やすいとか、現状でも目が届いて特段問題ないとか、そういった意識改革もしやすければ、また学内への周知も非常にしやすいというところもあるし、また、必ずしもこのガイドラインに沿って新たに制度をつくるとか、規定をつくるとかということではなくて、現状でも行動規範とか懲戒規定はきちっと整備されている、そういうものはそれでよしとすべきではないかという気がする。
 要は、制度とか規定がシステム的に機能して、不正が起こらなければそれでいいのではないか。小規模大学なりに工夫をして、あまり人やお金をかけなくても体制整備は可能ではないか、また、それでよしとすべきではないかということを感じた。

【石井主査】

 ほかに何かあるだろうか。

【大久保委員】

 意見だけ少し申し上げたい。不正行為は3つのトライアングルで、起きやすい状況というのは以前にも何回も申し上げてきたが、重要なのは、心と仕組みのバランスをとれて初めて不正行為を防止できるわけであって、研修センターという仕組みだけつくっても、その心の部分がちゃんとできなければ直らない。特に今回大学で問題になっているのは、個人の利得を目的とするケースというのは極めてまれで、どちらかというと組織的な問題に起因するケースが多い。これはまさにカビ的現象と言わざるを得ない。
 まさに心に宿るカビをどうするかという意味においては、もう一度改めて、今やっていらっしゃる大学を見ていても、行動規範をまともにきちっとつくられている大学というのは、実は私はほとんど見ていなくて、先だって、ある大学ですごいなと思うのが1カ所あったが、まずきちんとした行動規範をつくって、そこにトップのメッセージをきちっと出すということが重要なのではないか。これまではこういうことも認められたけれども、これからはきちっとしようという、まず合図があって、それに付随する仕組み、ここは多少の強弱が、今ご説明もあった、さっきも申し上げた。小規模な機関でがっちりした仕組みをつくる必要は全くないと思っていて、それは先ほど申し上げたあめとむちだということだと思う。
 もう一点だけ。先ほど主査がおっしゃられたように、このガイドラインに対していまだなお、現場に対する理解がかなり十分ではないのかと。やはりもう少しきちっとした研修をすべきなのではないのか。担当者をきちっと理解してもらうような、おそらくセミナーのようなものは結構頻繁にやっていらっしゃるようで、しかもそれは付随的に、科研費の合間に1時間ぐらい、あるいは30分ぐらいの説明会はあるようだけれども、それではこのガイドラインはとても理解できないので、ほんとうにやるのであれば、きちっとした研修プログラムを。私は最低でも丸2日ぐらいはかかるのではないかと思う。
 かつ小規模な機関だけに関して言えば、先ほど建前論を言ったものの、具体的にどうするのかということも必要だろうから、中規模以上の大学向けと小規模向けを分けて、小規模の場合なら、例えばこんなのでどうかという、幾つかいい例があるはずなので、そういう研修会をできれば早期に、きちっとした形で対応していただくことをご提案したい。

【石井主査】

 ご提案、感謝申し上げる。初めて科研費をもらった、採択されたところというのはすぐわかるわけである。そういうところには何かの形でちょっとしたメッセージが、個別、具体的な状況に応じながら行われるといいという気もするが、それを学術振興会やれと言われたら勘弁してくれよと現場の人は言うかどうか。

【渡邊部長】

 そんな膨大な量になるとは思っていない。

【石井主査】

 ほかに何か。

【長谷川委員】

 基本的なところなのだが、それぞれの研究機関は、ガイドラインが示されて、自分たちのところではこういう対応ができると、報告をしていると思うが、それに対して機関の規模なり公的資金の配分規模で判断して、小規模に該当するとか該当しないとかといって指導法が変わってくるのか、その基本的なところはどうお考えなのか。

【清浦競争的資金調整室長】

 実は今回の問題提起は、その指導のやり方を変えるべきなのか、そうではないのかというところがまさに切実で、ご議論をいただきたくて示したわけであり、我々が見て、画一的なのはもう無理だろうと思っている。それは正直言ってそういう違いがあるので。その上で、どうたがえてやるのかという考え方を具体的にどうすればいいかというところで、実は我々も困っている部分があり、それで今回ご相談した次第である。

【石井主査】

 ここで資料を拝見して気になったのは、必須事項は全部やるのだということがまた受け取り手がそれをどう受け取るかという話である。要するに、必須事項としてこれを挙げたことの意味というのがもう少しわかれば、ではうちはこうするとか、これでいいのだねというコミュニケーションも成り立つのではないかと思う。

【中村委員】

 具体的なことを考えると、先程高橋主監からご説明があった、アメリカでもパイロットプログラムをやっているわけである。だから、小さい研究機関や会社と、これは高校も入っているのか、省令があるから、そういうところなどを何グループか集めて、実際に文科省で検討していただいて、フィージビリティースタディーのようにやるというのは、例えば現実的なのではないかと思う。
 先ほどのはいかにもアメリカらしくて、ステップを踏んで、何度もデモンストレーションというか、実証をやっている。私が今まで見たルールを見ていても、実証が何も起こらないで一方的に決めているルールの研究費が多くて、それが先程何度も申し上げている現場での問題点になっているので、今回も何例か取り上げて、実際に何かやってみてはいかがだろうか。

【石井主査】

 何か事務局のほうからあるか。

【清浦競争的資金調整室長】

 年度末に全体の報告書という格好で取りまとめるわけであるので、今日いただいたご議論を少し総括するような格好で、おそらく分析をしたりアドバイスをしたりする上でも、機関の規模や種類によって違うのだということをうまく表現するような報告書をつくって、今、実際に現地調査と分析をしている中で、小規模なら小規模なりに、非常に適切にうまく趣旨を酌みとってやっていただいているところもおそらくあるので、そういう実例も含めて、少しお示しできるようなものを検討していきたいと思うので、また、ご協力いただきたいと思う。

【石井主査】

 ほかにご発言はあるか。では小間主監。

【小間主監】

 ガイドラインでは、不正をなくすのに、責任を個人ではなくて各研究機関に与えて、研究機関の中で不正があった場合には、罰則として競争的資金がもらえなくなることがあり得るということにしたが、その責任を果たすのにどういう形のものをつくればいいかは研究機関に任せいられていて、ガイドラインはあくまでもやり方の一つを例示しているだけだと認識している。
 将来的には、研究機関にExpanded Authorityと言われるような、ある権限を与える条件として、こういうものが整っていなくてはいけないというのを決めたものが必要になると思うが、現時点でのガイドラインは、Expanded Authorityのためのものではなく、これをやらないと資金がもらえない、これが認定されないと受給できないという認定の条件になっているので、一律に認定条件にしなくてはいけない部分はどこであるかを見るのが、今日の議論の一番のポイントだと思う。
 単なる研究機関ごとの責任で、こういうことをやると良いという例として挙げているのであれば、中小のところであれば、自分が全責任を負ってやるから大丈夫だという判断も許しても良いのではないか。受給する資格として満たさなくてはいけないという事項は、機関の規模によって相当違うわけで、何年かに一度、90万円もらうようなところにとっては、これを整備するよりは徹底的に規則をよく調べて、その規則に従った処理をするという方向に力を出せば、それで十分だと思われる。
 結論が言いにくいのだが、このガイドラインの位置づけを、例示として、こういう例があるからリコメンドするよというものなのか、それともこれを満たさなければいけないということに本当に徹するのか、そのあたりのことを考えなくてはいけないのではないか。

【石井主査】

 問題は、その満たすということの意味なのだろうと思う。つまり、このガイドラインのそれこそ精神というか、基本的な考え方というものが、さしたる煩雑なるシステムなしに守れるようなものだったら、それはそれでいいのだろうというのが、基本的には私の考え方である。問題は、実際にどこまでが許容範囲であるのかというのは、イメージはまだでき上がっていないのではないかと思う。
 しかしいずれにしても、来年度、21年度の科研費の申請について、このとおりにできていなければ受け付けないというところまで一気に行くのは、私は実際問題として無理だろうと思うし、仮にそういう方針をとったとしても、それはペーパープランで終わっている可能性がたくさんあって、実際には何の機能もしないような紙だけが出てきて、それで申請資格ありということで進められたのでは無意味だという感じがするので、これは文部科学省の名において出したわけだから当面そうなるけれども、あとは実際に学術振興会なりと研究機関なり、あるいは研究者なりとの間のコミュニケーション、これを機会にそういう道が開かれていく、それで継続的に行われるというところが必要であり、意味があることではないのかと私は考えているので、気長にいかざるを得ないのではないかと思う。
 これはあるところでガイドラインをつくった、これで報告した、はい、もうこれで終わりという済む話だとは私は思っていないので、片方でこういう非常に小規模なところの誤解を含む、ネガティブな反応に対して、やはりきめ細かい対応を考えていかなければならないだろうし、片方で相当な機関がペーパープランで済ませているということに対する措置というか、それなりの反応も、こちらから示していかなければならないだろう。それがいかなる組織で、あるいはいかなるシステムで継続的に行われていくのかということが、これから一つ重要になってくるのではないだろうか。
 この検討会というのはあくまでもアドホックな会議であるから、これが継続的にこういう仕事をやっていくということではないはずである。そこのところは文科省なり、ファンディングエージェンシーのほうでそれぞれ、それこそシステムを構築していただきたい。つまり、研究機関のほうでこの不正を起こさないシステムを構築するということを要求したら、その半面として、お金を出す側においてもそれをウオッチして、しかるべき形に持っていくだけのシステムをこちらで考えなければいけないと私は考えており、そのシステムをつくるためのきっかけとしてこの検討会が機能すれば結構なのではないか。
 やはり文科省、それからファンディングエージェンシーのほうでしっかり、自分たちの問題として、出す側の責任をきっちり全うするためのシステムを構築するということが課題としてあるのだということになるのかもしれない。
 時間なので、議論はここまでにしたい。

─了─

(科学技術・学術政策局調査調整課)