ここからサイトの主なメニューです
科学技術理解増進政策に関する懇談会(第1回)議事要旨

1. 日時   平成17年2月9日(水曜日) 16時〜18時

2. 場所   KKRホテル東京11階「丹頂の間」

3. 出席者   【委員】
 有馬座長、伊藤委員、佐々木委員、高柳委員、中川委員、毛利委員
【オブザーバー】
 國谷 独立行政法人科学技術振興機構理事、長崎 文部科学省国立教育研究所総合研究官、今井 文部科学省科学技術政策研究所総括上席研究官
【事務局】
 有本科学技術・学術政策局長、村田科学技術・学術総括官、榊原基盤政策課長、佐藤基盤政策課企画官

4. 議事    
 (1)  有本科学技術・学術政策局長より挨拶が行われた。
(2)  事務局より委員及び出席者の紹介が行われた。
(3)  有馬座長より以下のような挨拶が行われた。
 
 理解増進というのは色々なところでずいぶん言われているが、それぞれ努力はするのだけれどもなかなかまとまらないところがあるので、知恵を出し合おうと今回当懇談会を立ち上げた次第である。是非マスコミの方にも積極的に宣伝をお願いしたいと考えている。

(4)  事務局より懇談会及び議事要旨の原則公開、会議運営事項、議事内容に応じた関係者の出席依頼について説明が行われ、了承された。
(5)  事務局から配付資料の説明が行われた。
(6)  事務局より資料1について説明が行われた。
(7)  科学技術理解増進政策・施策の俯瞰的把握について事務局より、資料2−1〜4、資料3−1、國谷 独立行政法人科学技術振興機構理事より資料3−2、長崎 文部科学省国立教育研究所総合研究官より資料4、今井 文部科学省科学技術政策研究所総括上席研究官より資料5を説明後、自由討議が行われた。(○委員、△事務局等)

 
委員  文部科学省の理科大好きプランは成功といえる。まず第1に、PISA(生徒の学習到達度調査)、TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)の結果より理科の成績は下がっていないこと、もっと積極的にいえば理科好きがわずかだが増えたことがあげられる。それから、日本において物理、化学、生物などの科学オリンピックは学者の抵抗が強く、評価されていないので、学術会議にスポンサーになっていただいてはどうか。物理学会でも随分努力して、物理オリンピックをやろうとしているが、結構反対が多い。平等に反するという考え方が多いのが現状であり、具体的には、「飛び級入学」は千葉大と私大が少しあるだけだし、オリンピックで優秀な成績を得た学生を優先入学させるために学会の支持を受けることも必要である。

事務局等  物理オリンピックは8月に物理チャレンジとして日本国内のコンテストが行われるので、そこでの結果を踏まえて選抜し、平成18年度世界大会へ派遣する。生物学オリンピックは今年度はスーパーサイエンスハイスクールを対象として、世界大会へ試行参加する方向で進めている。

委員  オリンピックについてはどういう意味があるのかしっかり議論すべきである。「オリンピックは金メダルの獲得が目的」としていいものか。オリンピックで金メダルをとっているのはアジア周辺国が多い。欧米は他を目指しており、オリンピックの成績はそれほどでもない。そういうところに日本が加わる必要があるのか。
 嫌いな人たちの底上げや刺激を与えるというのでも良いと思うが、何のためのオリンピックなのか、日本が目指すものは何か、この場でその辺りのコンセンサスを得ていくのが必要ではないか。

委員  化学の世界からの立場でいうと、化学オリンピックはトップ層の育成を目的として始め、学会の反対もなく成功している。平成10年より化学グランプリと称して国体に相当する大会を始めている。それから徐々に参加者が増え、一方ではオリンピックへの参加も視野に入れ色々検討してきた。ここでの問題は学習指導要領とは関係がないので、その場で考えればできる問題をつくろうという発想で続けたところ、それに対応する生徒が現実に日本にも多いことが見えてきたのでオリンピックに参加することになった。当初は金メダルを獲得することなどは考えていなかったが、参加させてみて国際レベルで十分通用することが実証された。これはScience for Societyという観点からは少し別な視点だと思うがこれはこれで必要である。やる気のある子どもを拾い上げる仕組みとしては大事である。ただし、ステータスが上がっていくことで進学校の底上げになるようではおもしろくない。それに対するもう少し本来の趣旨に則った形にする仕組みをこれから考えなくてはいけない。

委員  トップ層を伸ばすのか、全体平均を伸ばすのか。特に今回のPISAの結果を見ると読解力が下がっているが、分析すると上位は変わっておらず、中レベル以下が増えたのがその原因である。少なくとも読解力に関しては中レベル以下をどう伸ばすかということが課題である。

委員  裾野を相手にした仕事をしてきた立場からすると、オリンピックでスポーツの場合は努力のプロセスが見えるが、科学・技術は成果・応用のみが報道されやすく、プロセスがあまり社会に知られていない。謎解きの楽しさ、感動、取組みの見事さや美しさなどが見えるとオリンピックに参加することの意味がわかる。結果が残らなくても、そのための裾野の広がりも一方では重要である。

事務局等  世界物理年の経験で言うと、関係者が非常に努力した。委員の先生方の問題意識は物理関係の先生方も共通の認識である。これからも継続することが重要であるので学術会議に協力してもらうなどして、そういったコミュニティーを育てる体制の構築が行政に求められる。

事務局等  JST(独立行政法人科学技術振興機構)のサイエンスチャンネルでは科学オリンピックへの取組みを番組制作し紹介しようとしている。プロセス紹介が非常に重要との観点を今後の制作に活かしたい。

委員  博物館の立場から言うと、そういう一部の人に対する質の高い事業ばかりではない。多くの人が科学技術の有効性を理解できるような素地を作ることが大事であり、そのためには実際に経験することが一番だが、現実には困難である。そこで科学技術に携わる者が自らの経験を伝えることや様々な体験活動を提供することが重要である。博物館・科学館においてもそういう活動を実施している。しかし、やはり博物館・科学館に来ない人が多い。来館者をどのようにして増やすか。国立科学博物館では学校と連携し、休館日に学校に来てもらう。博物館を遊ぶ空間とし、自分で楽しみを見つけるとともに、ボランティアが子どもに手紙を書くなどを行った。これらを通じて子どもたちが博物館に親しみリピーターを増やす活動を継続していきたい。
 科学だけでは博物館・科学館に足を運ばないので、芸術や歴史等の他分野と連携し科学に関心を持たない層へのアプローチも必要である。このような視点に立った展覧会も実施したところでもある。大人への働きかけも重要であり、子育てを終えた人たちなどもターゲットにして積極的に取り組むべきである。

委員  日本博物館協会において中高生ターゲットに調査したところ、日本博物館協会に登録している美術館・博物館・科学館全てを含んだ博物館の来館者に占める中高生の割合は3パーセントしかないことがわかり愕然とした。しかしこのうちの80パーセントはリピーターであることもわかった。小学校の時は団体で来るため、全体の30〜40パーセントを占め、当然全体の数もかなり多くなるが自分が理科の好き嫌いに関係なく学校、クラス単位で来る。しかし中学、高校になると自らの意思で来る。そういう中には学芸員よりも知識を持ち合わせている者もおり、こうした人を伸ばすためにはマンツーマンでレベルの高い指導が出来る科学のわかるボランティア的な指導者の協力が必要となる。また、中高生の来館者(3パーセント)を増やすことも課題である。現在来館の意思のある層へのアプローチとして、地域と連携し学校の空教室に博物館の出前出展をすることも検討中である。また、芸術等他分野との協力も非常に大事である。全ての子どもたちを理科好きにすることは非常に困難であるが、増やすことは出来る。その分母を増やすこととその3パーセントしかいないこの子どもたちの才能をいかに伸ばすかという、この2つを今中高生の調査をしながら現実の問題として大きな意味で危機感を持って考えている。

委員  問題は理科を勉強する理由がわからない子どもたちが非常に多い。例えば職業を選ぶうえで理科を勉強しておかなければいけないとか数学を勉強しておかないといけないと思う子どもの割合が世界的に見て非常に少ない。産業界の理系出身の重役の存在がもっと見えるような努力も必要である。子どもたちに理数を勉強することが、国語等の言語や社会学を勉強することと同じく人生において大変重要だということを理解してもらえる様な雰囲気作りが必要である。

委員  個性を伸ばすのがオリンピックの目的ではないか。そもそも理解増進の達成目標が定まっていないのではないか。理解増進は何のためなのか、トップ養成なのか、国民全体の底上げなのかなど色々な座標軸があるのではないか。多分野に亘る有識者が共通の認識で議論するべきである。

事務局等  それをこの懇談会で示して欲しい。色々な座標軸があると思うので、今日は色々議論していただいて、次回からのテーマを絞っていきたい。今までのレポートを読んでも、広がりがあって集中していないのでその投資効果が出ていない、せっかく議論しても散漫になることを繰り返しているのではないかと思われるのでそこは是非よろしくお願いする。

委員  トップを伸ばす、同時に裾野を広げる、この2つのミッションが理解増進政策の目的である。また、国民全体の理科の力をあげると同時に今後の日本を背負って立つ人材をどのように育てていくかこの2つが重要である。

委員  オリンピックやコンテストは我が国においては徐々に定着してきていると考えられるが、これに対応した高等教育機関での取組が非常に重要になってきている時期だと考えられる。それから小、中の教員養成を含んだ理科教育が非常に大きな影響をもたらすと考えられる。先生に対するゆとりが必要だということはよく言われており、それに対する施策が当然必要である。また、小学校では理科をもっと理解している人の雇用、ボランティア等の派遣を要求しているがそのための予算がないといった声があり、ボランティア的に無償で協力していただける人を探さなければいけないがそういうことを誰か手伝ってほしいという申し出も受けている。各学会で出前授業という形でボランティアの派遣をしてはいるが、派遣するうえで、うまく話せる人が必要である。そこで資格制度、例えばある一定の資格審査を受けて、それをクリアした人がデータベース化され色々な場所に派遣されるような仕組みをつくることを提案したい。

委員  適切な話し方の訓練が大事ではないか。

委員  資格を一度出せばいいといったものではなく、ポイント制などにしてはどうか。

委員  第三期基本計画では是非、科学技術理解増進施策の予算を増やして欲しい。

委員  理解増進政策の必要性のうち国民全体が必要とする理由については、以前科学技術政策研究所において高柳委員を座長とした検討会を開き、まとめたものがあるので、参考にしていただきたい。

委員  派遣された人が喜んで学校に行くようにしたい。資格制度を作るにしても評価されることが資格取得者のメリットとして自分の能力が向上していることが実感できるようなシステムにするべきである。

事務局等  産業界から、ここ10年で企業の求める人材は全く変わった。具体的には平均的で優秀で協調性のある人から、逆にオリジナルなことを自分で提案してどんどん解決策を提示するというような人に変わった。その価値観の変化を教育現場、あるいは研究者の方がほとんど知らないのではないかという声がある。おそらく、こういう問題意識は産業界のトップの方はみんな認識されていると思われるので、今後この懇談会において産業界のトップクラスの方に協力いただき色々意見交換いただける機会をつくっていく。それから科学技術振興調整費について直接経費の3パーセントをアウトリーチ活動(研究者自身が研究活動への興味や関心の向上のために社会に対して行う様々な活動)に充当することを試験的に導入したわけだが、こういった活動が学術会議も含めて、大学の先生、研究者の方にきちんと馴染むようにここで議論していただきたい。そういうプロセスが今後大事であると考えられる。

事務局等  オリンピックも博物館・科学館もひとつの手段ではあるが、やはりひとつの断面にしか過ぎない。どういうパッケージ、ルートを思い描くかが大事である。そういう形が出てくるとある程度のコンセンサスが出てくることが期待される。

事務局等  母親の役割が子どもの将来を左右するようなところが現実的にあるので、その辺をターゲットに進めていくと波及効果も大きいのではないか。

(8)  その他(今後のスケジュール等)
次回懇談会は、3月9日(水曜日)16時30分〜18時30分に財団法人商工会館で開催することとし、会議は終了した。


(科学技術・学術政策局基盤政策課)

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ