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終わりに

   これまで述べてきたような「国語力を身に付けるための方策」を実効性のある形で進めていくためには,一方で,国語の重要性を認識し,国語を大切にする意識を共有するための国民的な運動の展開や講演会等の啓発活動を同時に進めていくことが不可欠である。

   現在も,文化庁では,「「言葉」について考える体験事業」,「国語施策懇談会」,「国語問題研究協議会」,「国語に関する世論調査」等,独立行政法人国立国語研究所では,新「ことば」シリーズの作成・配布,「ことばビデオ」シリーズの作成・配布等の事業を積極的に推進しているが,これらは今後とも継続し,発展可能なものは拡充して,なお一層進めていくべきである。既に地方公共団体で取り組んでいる事業のうち,国語力の向上に資するものについては,国としても,講師派遣や情報提供などの面で積極的に支援することを検討すべきである。
   また,年齢,地域,職業などの違いを超えて自発的に交流し,演劇,朗読,カルタをはじめとする言葉遊びなどを通して,国語(言葉)への好奇心を育て,国語の魅力や可能性について語り合い,楽しみ合う場を作ることを国としても進めていくべきであろう。
   現在取り組まれている事業の推進のほかに,国語力に資する啓発活動という意味で,
      1    いわゆる「マニュアル言葉」や「公共の場でのアナウンス」,また,外来語・外国語(いわゆる片仮名言葉)の問題を含めた「官公庁の各種文書の在り方」などに対して,適切な言葉遣いという観点から関係者の意識を高めること
2    言葉や国語に対する国民の関心や意識を高めるために,「言葉の日」や「言葉週間」などを設けて,それぞれの地域で言葉に関する取組のきっかけを作ること
などについて,今後の課題とすることも考えられよう。
   さらに,啓発活動とは別に,国語力の向上にかかわるその他の方策という意味では,
      1    パソコンなどの情報機器の普及により,「憂鬱(うつ)」「顰蹙(ひんしゅく)」など書くことはできなくても,日常生活でよく目にする常用漢字以外の漢字の扱いについて,国語施策の面から考える必要があるのかどうかということ
2    学校教育における「漢字学習の在り方」を検討するために,漢字能力の実態調査などを実施すること
3    国語力の効率的・効果的な向上・育成を考えるためにも,実証性を伴った脳科学のような研究を一層積極的に進めていくこと
などについて,今後,更に検討していくことも考えられよう。


   これからの時代に求められる国語力を身に付けること,すなわち国語力の向上に不断の努力を重ねることは既に述べたように,時代を超えて大切なことであるが,現在の我が国の状況を考えるとき,今日ほど国語力の向上が強く求められている時代はない。
   審議会では,ここを踏まえ,国語力の向上のためには,「自ら本に手を伸ばす子供を育てる」ことが何よりも大切であるという共通認識に立って,この答申をまとめた。

 

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