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第4章   国際小委員会における審議の経過

1  審議の経過

国際小委員会は、次の事項を検討する小委員会として設置された。
(1) 著作権関係条約に関すること
(2) 途上国との連携協力に関すること
(3) その他の著作権に係る国際的な課題に関すること

   国際小委員会は、平成13年5月31日に第1回の会議を開催し、主として昨年公表された著作権審議会国際小委員会報告書のフォローアップ及び世界知的所有権機関(WIPO)において検討中の国際ルール等について2回にわたり検討を行った。

2  著作権をめぐる国際的な動向

   情報技術の進展に伴い、著作物が国境を越えて自由に流通する時代を迎えており、また、音楽のネット配信のような電子商取引も急速に発展している。これらを踏まえ、国際小委員会においては、我が国及びWIPO等において行われつつある以下のような国際的な取組みについて検討を行った。

  著作権関係条約に関することについて
(1) 放送機関の保護

   WIPOにおいては、デジタル化・ネットワーク化に対応し、放送機関の権利保護に係る新たなルール策定についての議論が行われており、本年5月に開催された第5回WIPO著作権等常設委員会において、我が国より「放送機関に関する条約」案を提案したことについて報告がなされた。また、本年11月下旬に開催される第6回WIPO著作権等常設委員会においては、EUからの新たな条約案等を含めて、放送前送信*1の取扱い、暗号解除権*2等について実質的な議論が行われる予定であることについても併せて報告がなされた。
   この事項については、著作権分科会の他の小委員会等における国内的な議論との整合性をとった形で検討を進めるべきであるとの意見があった。


*1 例としては、スポーツ競技などの生中継を行う際の中継現場から放送局までの影像・音声の送信、全国ネットワーク等で放送を行う場合のキー局からネットワーク局に対して行われる影像・音声の送信がある。
*2 暗号化された放送について暗号を解除して「視聴」させることを許諾する権利。
(2) 視聴覚的実演の保護

   デジタル化・ネットワーク化に対応した、視聴覚的実演すなわち「影像」に関する実演家の権利保護に係る新たなルール策定についての議論がWIPOにおいて行われていること、また、昨年12月に開催された条約採択のための外交会議においては全20条中19条について合意が見られたものの、実演家の権利行使について最終合意が得られなかったこと等の報告がなされた。また、本年9月に開催されたWIPO総会において、1今後も関係者間で協議を継続すること、2協議に進展があればWIPO著作権等常設委員会に報告すること、3本件を来年のWIPO総会の議題に残すこと等を内容とする議長裁定が採択されたことについても併せて報告がなされた。

(3) 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約

   著作権審議会国際小委員会報告書(平成12年11月)の指摘を踏まえ、現在、次期通常国会における「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」締結を目指し、政府内で作業が進められていることについて説明がなされた。
   この事項については、その早期締結が重要であることで意見の一致を見た。

(4) その他

   以上に加え、WIPOにおいては、創作性のないデータベースの保護、遺伝資源・伝統的知識・フォークロアの保護に係る検討が引き続き行われていることについての報告がなされた。
   創作性のないデータベースの保護については、ヨーロッパ諸国の一部においては既に投資の側面に着目した保護が行われており、我が国においても国際的な動向を踏まえた検討を行うことが重要であるとの意見があった。

  途上国との連携協力に関することについて

   我が国の著作物等の複製物で、アジア等の途上国において違法に作成されたものが大量に流通し、我が国の権利者が被害を被っている実態が存在することを踏まえ、アジア諸国との連携・協力及び我が国の著作物等に対する侵害防止についての著作権保護の実効性を高める観点から、従来から実施しているWIPOへの拠出金の活用など、幅広い施策を展開していることについて説明がなされた。

  その他著作権に係る国際的な課題に関することについて
(1) 準拠法及び国際裁判管轄

   著作権侵害に関する準拠法、裁判管轄については、現在までのところ国際的に統一された解釈、ルールは存在しない。本年6月に開催されたハーグ国際私法会議第19会期の第1回外交会議において、裁判管轄等に関する条約採択の交渉が行われたものの、各国の立場の違いは大きく、最終的な採択を行う第2回外交会議の開催は延期されたこと、また、来年前半を目途に今後の進め方についての議論を行うための会合が開催されること等の報告がなされた。
   この事項については、ベルヌ条約における準拠法の解釈についての考え方を整理することが重要である、また、国際私法の検討に当たっては著作権等知的所有権の側面からの検討を行うことも必要である等の意見があった。

(2) 日米の著作権制度における課題

   情報技術の進展を踏まえた適切な著作権保護のためには、先進国間、特に我が国と経済面等の結びつきの強い米国との間で互いが抱える課題について意見交換を行うことが有益である。本年6月30日の日米首脳会談において、「成長のための日米経済パートナーシップ」の立ち上げ及びその下に「規制改革及び競争政策イニシアティブ」が設置されることが決定され、この中の情報技術作業部会において著作権関連事項*3が取り扱われることとなっている。係る枠組み等を活用することにより、日米の間で適切な著作権保護の在り方についての意見交換を進めていく予定であることについて説明がなされた

3  今後の検討について

 国際小委員会では、2回の検討において、主として著作権をめぐる国際的な動向についての検討を行ってきた。本年議論された事項を含め、著作権をめぐる国際的な課題については、諸外国の動向も踏まえつつ、今後とも引き続き検討を行うものとする。

*3 日本側要望事項:1利用可能化権の明確化、2保護を受ける実演の対象、3人格権に関する保護対象の拡大、4放送機関の権利の明確化、5固定されていない著作物の保護
    米国側要望事項:1「一時的複製」の保護の明確化、2インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)の法的責任の明確化 等

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