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資料3

裁定制度の現状について

(1) 現行の裁定制度の概要
 裁定制度とは、著作権者が不明の場合、相当な努力を払っても著作権者と連絡することができないときは、文化庁長官の裁定を受け文化庁長官が定める額の補償金を供託することにより、著作物を利用することができる制度である(別紙1参照)。
 これまで31件(著作物数89,524)の裁定が行われた(別紙2参照)。



標準処理期間   3ヶ月(行政手続法第6条 標準処理期間)
手数料 13,000円(著作権施行令 第11条)

「相当な努力」について(『裁定申請の手引き』より)
 平成17年に手続きの簡素化、手引きの書の作成・公表を行った(別紙3参照)。

1. 著作権者と思われる人の名前などがわかっている場合
1 名前からの調査
 原則として公表当時の「人名辞典」、「人事興信録」、「著作権台帳」、「まるまる名鑑」等の名簿・名鑑類(少なくとも2種類以上)による調査
注) 著作者でもあると思われる場合には、没年も調べてください。
 インターネット上の情報による調査
注) 著作者でもあると思われる場合には、没年も調べてください。
 その人の住所が明らかな場合については、住所地の市町村役場等への照会による調査
 その人の経歴等が明らかな場合については、勤務先、所属団体等の機関への照会による調査

2 利用者を通じた調査
 当該著作権者と思われる人の作品(利用しようとする著作物以外のものをむ。)を出版したことのある出版社、CD化したことのあるレコード会社等が明らかな場合については、その出版社等への照会による調査
注) その出版社等が現存しない場合には、承継会社等がないことについて可能な範囲で確認してください。

3 一般又は関係者への協力要請
 インターネットのホームページ又は新聞・雑誌等への広告掲載による調査
注) なお、調査は次頁のア又はイのいずれか一方の方法で結構です。
 インターネットのホームページによる調査
 著作物の題号、著作者名、著作物の種類及び内容又は態様など、分かっている範囲で著作権者を捜す上で有益と思われる項目を掲載し、次のいずれかの方法により2ヶ月以上の広告期間を確保する。
a) 裁定申請予定者がホームページを持っている場合
ホームページに掲載するだけでは、効果的な周知ができない場合もありますので、社団法人著作権情報センターが開設する不明な権利者を捜す窓口ページにリンクを貼ってもらうことが必要です。
なお、同センターによらず広く一般の人からアクセスのあるポータルサイトにリンクを貼ってもらうことでも代替できます。
b) 裁定申請予定者がホームページを持っていない場合
同センターの窓口ページで広告掲載をしてください。ただし、他のホームページで広告掲載をすることも可能ですが、この場合、上記a)の方法により、リンクを貼ってもらってください。
注) 社団法人著作権情報センターへ依頼をする場合の手続きの詳細は、直接お問い合わせください。
〒163-1411 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー11階
電話 03-5353-6921(代) FAX 03-5353-6920 E-mail  search_info@cric.or.jp
基本料金: 21,000円
加算料金: 1 当センターのHPに詳細広告を掲載する場合 1ページあたり10,500円
2 広告依頼者の指定するHPにリンクする場合 2,100円
 新聞・雑誌等による調査
 一般紙又は一般雑誌を原則としますが、利用しようとする著作物が特定の分野のものである場合は、専門新聞又は専門雑誌等(音楽情報誌、経済情報誌、美術専門雑誌など)に広告掲載すれば足ります。

4 専門家への照会
 その著作物に関する造詣が深い研究者や機関(学会、作家団体など)が存在する場合については、研究者や機関への照会による調査

5 著作権等管理事業者等への照会
 その著作物と同種の著作物の著作権を管理する「著作権等管理事業者」がある場合については、著作権等管理事業者等への照会による調査

2. 誰が著作権者なのか全く分からない場合
 上記の(1)1を除く調査

(2) これまでの裁定制度改善に関する検討
「著作権法に関する今後の検討課題」(平成17年1月 文化審議会著作権分科会)
(備考)
2.  裁定制度の在り方に関しては、法制問題小委員会における検討に先立ち、契約・流通小委員会において、著作物の利用を促進する観点から権利者の保護の観点にも留意しつつ検討を行うことが適当である。
「著作権分科会報告書」(平成18年1月 文化審議会著作権分科会)
4  検討結果
(1)  著作権者不明等の場合の裁定制度(第67条)
1  制度の評価
 この裁定制度については,貴重な著作物を死蔵化せず,世の中に提供し活用させるために有効なものであり,制度は存続すべきである。
 ただし,制度の存続に異論はないものの,制度を有効に活用するためには,制度面や手続面での改善を行う必要があるとの意見があった。

2  制度面の問題
 特定機関による裁定の実施
 裁定制度を簡便化するため,例えば,氏名表示が無い写真や著作物の複写等のように頻繁な利用ではあるが,小規模な利用分野において,特定の機関に裁定の権限を委ねるような仕組みを求める意見があった。
 これについては,例えば現行制度においても,著作権に関する登録業務を民間の指定登録機関に実施させる仕組みはあるものの(プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律第5条),裁定のように他人の私権を制限し,他人に代って利用者に許諾を与えるような業務について民間の指定機関に運用を任せるというような制度設計は難しいところであり,慎重に検討すべき課題だと考える。
 著作権の制限規定での対応
 一旦許諾を受けて利用したものの限定的な再利用(例えばデータベース化)等特別な場合については,裁定制度ではなく,著作権の制限規定で対応すべきという意見があった。
 これについては,現行の著作権制度においても,たとえ著作権者が不明等の著作物であっても,例えば,私的使用(第30条),教育目的の利用(第33条,第35条等),図書館等における利用(第31条),障害者の福祉の増進のための利用(第37条等)等の著作権の制限規定に該当する場合には,著作権者の許諾なしに利用できるのはいうまでもない。
 しかしながら,例えば,著作物の再利用に限定するとはいえ,商業目的の利用も認める著作権の制限規定を新たに創設することは,国際著作権関係条約や制限規定の趣旨に照らし問題が多いと思われるので,慎重な検討を行う必要がある。
 なお,現行制度の枠組では,このような結論はやむを得ないと考えられるが,インターネット時代における著作物の利用促進という面から,将来的には制限規定の導入を積極的に考えた方がよいという意見があった。

3  手続面の問題
 次に手続面の改善であるが,この裁定の手続については,厳格すぎて利用しづらいという意見があり,政府の「知的財産推進計画2004」においてもその見直し等が求められたところである。これについては,文化庁で見直しを行い,不明な著作権者を捜すための調査方法を整理した上で,従来新聞広告等を要求していた一般や関係者の協力要請については,インターネットのホームページへの広告掲載でも可とするとともに,併せて,社団法人著作権情報センター(CRIC)では,不明な著作権者を捜す窓口ホームページを開設したところである。なお,裁定の手続きについては,「著作物利用の裁定申請の手引き」を作成し文化庁ホームページで公開している。
 この裁定制度の手続きの見直しにより,利用者に求められる調査の方法が明確になり,また従来に比べて調査にかかる事務的又は経済的負担も軽減されたと考えるが,今後の利用状況等を踏まえ,より良いシステムの確立に努めるべきである。
 当面はこの手続に従い,裁定事務を行うことで問題はないと考えるが,裁定事務の実施の過程で実務上の問題点が生じた場合,手続の見直しを行い,より利用しやすいシステムの構築を図っていく必要がある。
 なお,個人情報保護法に関連し,不明な著作権者を捜す作業の困難さを懸念する意見もあったが,このことを理由として,著作物を利用しようとする者が通常行うであろう調査方法に足りない方法でよいとすることはできず,例えばインターネット上の尋ね人欄に掲載しただけで調査を尽くしたとすることは難しいと考える。
 ただし,CRICの事例のような著作権者を捜すための手段を提供してくれる仕組みの創設,専門家や問い合わせ先の団体を紹介してくれる窓口等の充実,調査を代行してくれる団体等の設置等により利用者の事務的負担の軽減が図れると思われる。

4  その他
 第67条第2項では,裁定を受け作成した著作物の複製物に,裁定で作成した複製物である旨等の表示を義務付けている。最近では著作物のデータベース化にかかる裁定の申請が増えているが,送信された著作物が裁定で利用された旨を周知させるために,当該著作物の画面表示やプリンターで印刷した際にその旨の表示がされるよう,文化庁は制度の運用を考慮する必要がある。

【関係法令条文】

著作権法
(著作権者不明等の場合における著作物の利用)
第67条  公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。
2  前項の規定により作成した著作物の複製物には、同項の裁定に係る複製物である旨及びその裁定のあつた年月日を表示しなければならない。

(裁定に関する手続及び基準)
第70条  第67条第1項、第68条第1項又は前条の裁定の申請をする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
2  前項の規定は、同項の規定により手数料を納付すべき者が国又は独立行政法人のうち業務の内容その他の事情を勘案して政令で定めるもの(第78条第5項及び第107条第2項において「国等」という。)であるときは、適用しない。
3  (略)
4  文化庁長官は、第67条第1項、第68条第1項又は前条の裁定の申請があつた場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、これらの裁定をしてはならない。
 著作者がその著作物の出版その他の利用を廃絶しようとしていることが明らかであるとき。
 (略)
5  文化庁長官は、前項の裁定をしない処分をしようとするときは、あらかじめ申請者にその理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならないものとし、当該裁定をしない処分をしたときは、理由を付した書面をもつて申請者にその旨を通知しなければならない。
6  文化庁長官は、第67条第1項の裁定をしたときは、その旨を官報で告示するとともに申請者に通知し、第68条第1項又は前条の裁定をしたときは、その旨を当事者に通知しなければならない。
7  前各項に規定するもののほか、この節に定める裁定に関し必要な事項は、政令で定める。

(文化審議会への諮問)
第71条  文化庁長官は、第33条第2項(同条第4項において準用する場合を含む。)、第67条第1項、第68条第1又は第69条の補償金の額を定める場合には、文化審議会に諮問しなければならない。

(補償金の額についての訴え)
第72条  第67条第1項、第68条第1項又は第69条の規定に基づき定められた補償金の額について不服がある当事者は、これらの規定による裁定があつたことを知つた日から三月以内に、訴えを提起してその額の増減を求めることができる。
2  前項の訴えにおいては、訴えを提起する者が著作物を利用する者であるときは著作権者を、著作権者であるときは著作物を利用する者を、それぞれ被告としなければならない。

(補償金の額についての異議申立ての制限)
第73条  第67条第1項、第68条第1項又は第69条の規定による裁定についての行政不服審査法(昭和37年法律第160号)による異議申立てにおいては、その裁定に係る補償金の額についての不服をその裁定についての不服の理由とすることができない。ただし、第67条第1項の裁定を受けた者が著作権者の不明その他これに準ずる理由により前条第1項の訴えを提起することができない場合は、この限りでない。

(補償金の供託)
第74条  (略)
2  (略)
3  第67条第1項又は第2項の規定による補償金の供託は、著作権者が国内に住所又は居所で知れているものを有する場合にあつては当該住所又は居所のもよりの供託所に、その他の場合にあつては供託をする者の住所又は居所のもよりの供託所に、それぞれするものとする。
4  前項の供託をした者は、すみやかにその旨を著作権者に通知しなければならない。ただし、著作権者の不明その他の理由により著作権者に通知することができない場合は、この限りでない。

著作権法施行令

(著作権者不明等の場合における著作物の利用に関する裁定の申請)
第8条  法第67条第1項の裁定を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を文化庁長官に提出しなければならない。
 申請者の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人(法第2条第6項の法人をいう。以下同じ。)にあつては代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。以下同じ。)の氏名
 著作物の題号(題号がないとき又は不明であるときは、その旨)及び著作者名(著作者名の表示がないとき又は著作者名が不明であるときは、その旨)
 著作物の種類及び内容又は体様
 著作物の利用方法
 補償金の額の算定の基礎となるべき事項
 著作権者と連絡することができない理由
2  前項の申請書には、次に掲げる資料を添附しなければならない。
 申請に係る著作物の体様を明らかにするため必要があるときは、その図面、写真その他当該著作物の体様を明らかにする資料
 著作権者と連絡することができないことを疎明する資料
 申請に係る著作物が公表され、又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかであることを疎明する資料

(手数料)
第11条  法第70条第1項の政令で定める手数料の額は、一件につき13,000円とする。

(補償金の額の通知)
第12条  文化庁長官は、法第70条第6項の裁定をした旨の通知をするときは、併せて当該裁定に係る著作物の利用につき定めた補償金の額を通知する。

(手数料の納付を要しない独立行政法人)
第65条  法第70条第2項の政令で定める独立行政法人は、別表に掲げる独立行政法人とする。
 (別表略)

著作権法施行規則

(印紙納付)
第23条  法第70条第1項、第78条第4項(法第88条第2項及び第104条において準用する場合を含む。)及び第107条の規定による手数料は、収入印紙をもつて納付しなければならない。


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