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著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第4回)議事録・配付資料

1. 日時
平成19年6月26日(火曜日)10時〜12時

2. 場所
如水会館3階 「松風の間」

3. 出席者
(委員)
上野、梶原、金、久保田、佐々木(隆)、里中、椎名、瀬尾、津田、都倉、中山、野原、野村、生野、平田、三田の各委員
(文化庁)
高塩文化庁次長、吉田長官官房審議官,甲野著作権課長,亀岡国際課長
ほか関係者

4. 議事次第
(1)  開会
(2)  主査代理の選任について
(3)
1 ヒアリングの総括及び検討課題の整理について
2 今後の議論の進め方について
(4)  閉会

5. 配付資料
資料1   文化審議会著作権分科会過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会委員名簿(平成19年6月26日現在)
資料2 ヒアリング等で出された主な意見の整理(案)
資料3 過去の放送番組等の二次利用に関する論点整理(法制問題小委員会第4回配付資料)
資料4 今後の議論の進め方について(案)

参考資料1   知的財産推進計画2007(2007年5月31日知的財産推進本部決定)(抜粋)
参考資料2 過去の放送番組の二次利用の促進に関する報告書(平成16年6月)(PDF:91KB)
参考資料3-1 日本における戦時加算に関するCISAC総会決議(2007年6月1日)(和文)[英文(PDF:99KB)]
参考資料3-2 戦時加算問題の早期解決に向けての要望書(著作権問題を考える創作者団体協議会)(PDF:599KB)
参考資料4 第2回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会議事録
(※(第2回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料5 第3回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会議事録
(※(第3回)議事録・配付資料へリンク)

6. 議事内容
 野村委員を本委員会の主査代理として選任したことについて、報告があった。
 以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成十八年三月一日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。

【野村主査代理】 それでは、事務局から人事異動の報告と配付資料の確認をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 6月18日付で人事異動がございましたので、御紹介させて頂きます。文化庁長官官房国際課の国際著作権専門官として、千代の後任に高柳大輔が就任しております。

【高柳国際著作権専門官】 高柳でございます。色々とお世話になるかと存じますが、よろしくお願いします。

【黒沼著作権調査官】 引き続きまして、配付資料の確認をお願いしたいと思います。議事次第の下半分に配付資料一覧が記載してございます。こちらと照らし合わせながら御確認をお願いできればと思います。
 資料1はこの小委員会の名簿で1枚紙でございます。資料2がヒアリング等で出された主な意見の整理(案)、資料3が過去の放送番組等の二次利用に関する論点整理、資料4が今後の議論の進め方について(案)。それから、参考資料として全部で6点配付してございます。参考資料1は、先月末に知的財産戦略本部で決定されました知的財産推進計画2007、参考資料2として、過去の放送番組の二次利用の推進の報告書、参考資料3が2つございますが、3−1は日本における戦時加算に関するCISAC総会決議文書、3−2は著作権問題を考える創作者団体協議会より提出された、戦時加算問題の早期解決に向けての要望書です。参考資料4と5は、前回、前々回の議事録になっております。過不足がありましたら、事務局まで御連絡下さい。よろしいでしょうか。
 もしよろしければ、この場をお借りしまして、知的財産推進計画について、一部、若干補足させて頂ければと思います。

【甲野著作権課長】 参考資料1の知的財産推進計画2007、お手元に配付しておりますけれども、この内容につきまして、確認的に1点だけ御紹介させて頂きたいと思います。
 この推進計画2007は、先月、5月31日に知的財産戦略本部におきまして決定されたところでございますけれども、実はこの5月31日の直前でございますが、この内容につきまして、ある報道がなされました。この小委員会の検討事項にも関わる話でございますけれども、デジタルコンテンツの流通促進の法制の一環で、この計画にはこういうことが書いてあるんだというような報道だったんですが、それは過去のテレビ番組につきまして、流通を円滑化させるために実演家などの権利者の権利を制限し、うまく流れるようにするという方向性が含まれているんだというものでございました。
 しかし、この資料の17ページを御覧頂きたいんですけれども、ここの一番最初の項目のところに、デジタルコンテンツの流通を促進する法制度を整備するという部分がございます。ここのところでは、特に一定のそのような方向性が書かれているわけではなくて、著作権等の保護や利用の在り方に関する新たな法制度や契約ルール等々を検討するという形になっておりますので、報道が流れて随分昔になってしまいましたけれども、ちょっと驚かれた方もいらっしゃったかもしれませんが、このような状況でございますので、御理解頂ければと思います。
 なお、本小委員会に関係する事項といたしましては、18ページ4に権利者不明の場合におけるコンテンツの流通、あるいは21ページの63のところで保護期間の問題、22ページ212のところでデジタルアーカイブ、あるいはNHKアーカイブスの話も書かれておりますし、23ページの3では、意思表示システムなどが盛り込まれておりますので、御覧になって頂ければと思います。以上でございます。

【野村主査代理】 どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。本日は前々回、前回のヒアリングを踏まえまして、本委員会の検討課題を整理し、今後の議論の進め方を含めて議論したいと考えております。まず、事務局から御説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 それでは、資料の2から4に基づきまして御説明させて頂きます。少しお時間がかかるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
 資料2は、前回、前々回と、この小委員会が検討に当たって留意すべき点や、検討の視点などを洗い出すために関係団体から幅広く意見を伺ったところでございまして、それに第1回で出された意見を加えまして、今後検討、検証すべき事項と思われるものを洗い出したという資料でございます。
 まず、目次に沿いまして、柱立てだけ御紹介させて頂きたいと思います。検討課題の1番目として、過去の著作物等の利用の円滑化方策がございますけれども、そちらにつきましては、総論、集中管理や関係者間協議の推進、権利者情報の管理やデータベースの構築について、権利者所在不明の裁定制度に関する意見、権利者が複数存在する場合、その他の利用円滑化方策、放送番組の二次利用についてと、こういう柱立てでまとめさせて頂いております。
 2番目は、アーカイブの関係でございますけれども、こちらは総論の他に、アーカイブを何をどのような基準で集めるのかという項目、アーカイブを行う上での課題、実際に作ったアーカイブをどう利用させるか、そういう形で整理させて頂いております。
 次の保護期間ですが、こちらは、まず検討の視点についてという形で、そこだけ取り出しまして、(2)は延長の議論の契機となった事項について、その次に、(3)は延長によって得られる効果、弊害等にどのようなものがあるのかを個別に検討する項目、(4)はこれらを踏まえまして、どういう結果になるのかということを、それぞれ4−1は著作物の創造サイクルに関して、4−2は貿易上の利害などについてという形で、それぞれの側面ごとに分析するという項目立てにしてございます。その他、こういった分類にうまくはまらなかった事項について、(5)として、文化行政による保護と著作権制度との関係、(6)は著作隣接権の問題、(7)は戦時加算、(8)は、単純に延長するという御提案以外の御意見について、その他としてまとめております。
 4の意思表示システムは、基本的な考え方と利用促進のための措置との柱立てで整理してございます。
 それぞれの柱立ての中で、今まで出た意見を記載するという形でこの資料を作らせて頂いておりますが、この資料は事前に各委員に送らせて頂いておりますので、逐一の御意見の御紹介は省略させて頂きまして、どういった観点でそれぞれの項目に意見を載せたかという観点で簡単に全体を御紹介させて頂きたいと思います。
 なお、それぞれの意見の後ろに簡単な発言者名を付してございますが、正確な氏名や団体名については、最後の21ページにまとめておりますので、適宜御参照下さい。また、再掲はなるべく減らすという方針で作っておりまして、たくさん意見が出ている項目はあるのですが、最も典型的なものを、最もぴったり来る項目に当てはめておりますので、もっとここは意見が出ていたはずではないかと、そういったところはあろうかと思いますが、御容赦頂ければと思います。
 それでは、1ページから順に御説明させて頂きます。まず、過去の著作物等の利用の円滑化方策の総論の部分ですが、流通阻害の原因に何があるのかという原因分析でございます。それぞれ1番目の「なかぐろ」では、使用料を支払うための作業費用、契約コストといったものが流通阻害の原因ではないかという根本的な提示がございまして、その次の2番目から4番目までは、著作権が阻害要因だというのは誤解であるとか、流通促進のための仕組みがあるといった御意見でございます。5番目からこの項目の最後までは、それ以外の原因について言及されている意見でございます。5番目については、団体に属していない方の著作物、もしくは団体がない分野の著作物の交渉には時間、労力がかかるといった点についてでございます。その次の点は、著作者不明の場合、権利者が誰か分からない場合というのが、流通阻害の原因だという御意見。その他、7番目から9番目までは、多くの権利者のうち一人でも利用を拒否したらという場合、もしくは、相続により権利者が分散した場合とか、権利を管理する自覚のない権利者、そういったものが流通阻害の要因になっているという御指摘。最後は、戦時加算があると、適用の有無などを調査する費用が更に必要になるという御指摘がございました。
 それに対する対応の基本的な考え方として記載させて頂いておりますのは、基本的には、円滑化方策が必要だという意見は、上の流通阻害の原因のところでもたくさん出ているわけでございまして、そこに入っていないものとしては、適正価格の著作物が提供されることによって購入者が増える、そめに利用の円滑化が必要なのだと、そういう別の観点からの御指摘もございました。下の2つでございますけれども、円滑化だけではなく、バランスをとって円滑化方策を進めるのが必要だという御指摘でございます。
 次のページでございますが、この円滑化方策と保護期間問題との関係についての御意見ということで、こちらに5点ほどまとめさせて頂いております。まず1点目は、この円滑化方策というのは、延長するために必ず達成しなければならない課題だという御意見、2番目は、それとは逆で、そういった方策は必要ではあるが、保護期間とは別個の問題として捉えるべきだという御意見でございます。3番目から5番目については、保護期間延長の議論の前提とすべきではないという御意見で、3つほど掲載しております。
 (2)でございますけれども、集中管理、関係者間協議の推進に関する御意見をこちらでまとめております。1番目は、集中管理を一層推進すべきだという基本的な考え方の御意見、2番目は、そういった関係者間協議の取り組みでは、例えば放送番組の二次利用などについては限界があるといった御意見、3番目は、一元集中管理を進めるのは便利だけれども、逆に手数料、使用料の高額化を招くといった御指摘もありました。
 その次は、権利者情報の管理やデータベースの構築に関する意見としてまとめている部分でございますけれども、まずは、権利者情報等の管理はどうするのかという点で、4点ほど御意見を整理してございます。
 1点目は、コンテンツホルダーが権利者情報を含めたコンテンツ情報を管理するというルール作りが必要という基本認識でございます。2番目は、そういった余力がない会社については支援が必要ではないかという御指摘、3番目と4番目については、管理の実態についてどうなっているのかという、放送業界と脚本の分野と、2つの業界について御紹介いたしております。
 その次のページですけれども、権利者情報のデータベースの構築をすべきという議論について、3点ほど御意見を御紹介しております。
 1点目は、権利者の所在情報のデータベースを構築すべきだという御意見、2番目は生没年のデータベースを構築すべきだという御意見、3番目は、コンテンツの利用に当たっての一元的な交渉窓口となる機関を整備すると、こういった一定の機関やデータベースを構築すべきという御意見がございました。
 一方で、そのデータベースの実現性、有効性に関する議論もございまして、1つは、権利管理をしない権利者はデータベースに登録されないので、そういった者については別途検討が必要であるという御指摘。2番目は、登録制度に一定のメリットを持たせることも考えるべきであるということ、3番目から5番目は、実現性に対する懸念等についてですけれども、個人情報の問題があって取り扱いが難しいので、構築が本当に可能なのかといった御意見。それから、莫大な予算がかかるが、それはどうするのかといった御指摘もございました。
 (4)の権利者所在不明の裁定制度についてですが、現行制度の改正について、1番目で、手数料の減額や迅速化などの措置が必要であるということで、多数の御意見を頂いております。2番目としまして、著作者を探索するときに、写真をホームページに掲載して捜索する場合には、そもそもそれができないといった矛盾があるという御指摘。3番目は、裁定制度がその後の経済的価値に見合わない場合などには限界があると、裁定制度の限界についての御指摘がございました。4番目は、利用の実態について、難しい場合があるという御指摘でございます。
 その次のページでございますが、裁定制度の改善の一環としまして、ある人が裁定制度を利用した場合に、他の人もその効果を活用できるようにすべきではないかという御意見がございまして、1点目は、裁定を終了した後に、後から同じ作品を利用する人は、料金の支払いのみで裁定を認めるべきという御意見。2番目は、そこまではいかなくても、調査結果、調査をしたということは、他の人も成果を活用できるようにという御意見。3番目は、国立国会図書館が権利確認した情報は公表すべきという御指摘がございました。
 その他、著作隣接権に関する裁定制度についても御意見がございました。現在は、制度がないわけでございますけれども、そういったものも必要であるという御意見。それから、コンテンツホルダーがそもそも権利者情報を管理すべきという観点から、権利者が誰か分からない場合に裁定制度を求めるのは不合理ではないかといった御意見もございました。
 その次の(5)の権利者が複数の場合についての御意見でございますが、1点目は1つの権利が共有になっている場合で、権利行使に当たって一定の条件のもとに利用が可能となる仕組みについて検討が必要という御指摘。2番目、3番目は、1つのコンテンツに複数の権利が関係している場合で、共有著作権と同様の仕組み、正当な理由がない限り、同意を拒否できないようにすべきと、そういった御提案がございました。
 5ページの(6)他の利用円滑化方策ということで、一番目は、運用上で更に努力する余地があるという御意見でございますけれども、2番目、3番目は、裁定制度以外で、十分な調査をした上で利用できる制度、例えば、イギリスやアメリカなどで提案されているような制度について検討が必要なのではないかという御指摘がございました。その他、利用円滑化方策としては、フェアユース規定のようなもので対応すべきであるとか、利用拒絶を制限すべきであるとか、そういった御指摘も出ております。
 最後の(7)は放送番組の二次利用についてということで整理しておりますけれども、こちらは実は、多くは再掲でございます。他のところと重なるものを、あえて放送番組の二次利用についてということで特出ししたものでございます。
 といいますのは、資料3でございますけれども、こちらは、経済財政諮問会議などからデジタルコンテンツの流通促進法制を検討すべきということで、法制問題小委員会で検討していたものです。デジタルコンテンツの流通促進とは一体何なのかということを議論する中で、経済財政諮問会議の提言などを見ますと、過去の放送番組などをインターネット上で流通させると、そういった御提言でありました。このようなことから、過去の放送番組について、法制問題小委員会で論点整理を行って頂いたものでございます。
 先ほどの資料2とこちらは重複するところが結構ありますので、こちらの方で代えて説明させて頂きたいと思います。法制問題小委員会では、資料3の一番下の注のところにございますが、文化庁で過去に放送番組の二次利用がなぜ進まないのかという原因分析をした報告書がございまして、それを御紹介しつつ御議論頂きました。その結果、こちらの資料3の論点整理がされたわけでございます。
 まず、放送番組の二次利用が進まない現状の原因といたしましては、(1)の下のところ、著作権に関する問題の他に、放送に関するビジネスの実態であるとか、著作権以外の権利の問題を含めて色々な問題があるということでございます。それぞれ簡単に御紹介いたしますと、放送に関するビジネス上の課題として、まず、放送では1回の利用だけでほとんどの利益を回収する仕組みとなっていて、そもそも二次利用が想定されて契約されてきていないという問題があるということ。それから、二次利用するためには、それぞれ契約コスト等がかかるわけでございますけれども、インターネットで二次利用する場合には、これに見合う収入が見込めないと、それで二次利用が進んでいないというような御指摘もあるわけでございます。
 そういったことから、二次利用を想定して契約していないことが原因であれば、当初から二次利用まで含めて契約すればいいのではないかという御指摘もあるわけですが、2番目であったように、必ずしも見合う収入が見込めるかどうか分からないので、その時点に応じて二次利用の契約を事後にしているという実態があるということでございます。
 それから、なぜネットに流通しないのかということに関しましては、放送局自らが再放送の予定があったり、他のメディア、DVDなどで販売する予定があったりと、競合する場合があるので流れていないという場合もあるという御指摘がありました。
 また、業界の実態として、キー局中心の系列が強くて、コンテンツの多様な流通ルートが育っていないことが一因ではないかという御指摘もございました。
 次に、インターネットに関する技術的な課題も原因としてあるという御指摘もございます。1番目は、パソコンの性能のばらつきですとか、回線速度のばらつきですとか、そういった配信インフラ、回線容量の問題などの技術的な問題が原因になっているという御指摘。2番目として、そもそも放送番組の保存というのがされていない場合が多い。1980年代以降からしか意識的に保存されていないという現状がある、もしくは、あっても保存状態が悪くて、二次利用にそもそも耐えられないといった原因もあるという御指摘がございました。
 それから、著作権以外の権利の問題、肖像権やプライバシー権等の調整の必要もあるというのも原因になっているということでございます。
 1−4が著作権関係の課題ですけれども、著作権に関する契約が問題で二次利用を拒まれる場合としまして、大きく2点、御指摘をまとめております。1点目は、著作権の管理団体に権利を委託している者と、もしくは権利者団体と利用者団体の間に協定があるような場合には、所定の規程や協定のルールに従ってほぼ自動的に許諾が得られるようになっているわけでございますけれども、そうではない場合というのは、下の2つでございますが、団体に権利を委託していない者、もしくはルールが整備されていない者の場合、それから、権利者の所在不明な場合、専らこういったものが二次利用ができない場合の原因ではないかという御指摘でございます。
 2番目の「まる」は、実演家のイメージ戦略、露出を減らして経済的価値を高める等の戦略、もしくは、権利者の思想信条の問題、インタビューの後で考え方が変わっているので、もう二次利用しないで欲しいといった問題があって許諾が得られない場合があると。こういった2点を大きく整理させて頂いております。
 こういった原因を踏まえて検討すべきではないかということで議論を進められたわけでございますけれども、1番目の「まる」のところで、著作権以外の課題については、それぞれ関係業界の取り組みで、今後解決を目指すべき問題であるというような部分も多いところでございますけれども、2番目の著作権に関するもの2点については、ビジネス戦略や思想信条のものについては尊重すべきものでありまして、主として前者について検討すべきということで、論点整理をさせて頂いております。
 そう考えますと、法制問題小委員会の課題というのは、こちらの過去の著作物等の小委員会の課題と重なってくる部分がございまして、法制問題小委員会では、こういった前提を踏まえて、こちらの小委員会で引き続き御議論頂ければということで、議論の進め方が整理されているとことでございます。
 なお、次のページ以降は、同じく法制問題小委員会の資料でございますけれども、デジタルコンテンツの流通促進について民間から色々御提案があったもの、例えば登録制度ですとか、そういったものについて、法制問題小委員会で論点整理をして頂いたものでございます。こちらの委員会の御参考になる部分があるかもしれませんので、後々適宜御参照頂ければと思います。
 それでは、恐縮でございますが、資料2のほうに戻って頂きまして、7ページでございます。今度はアーカイブの関係の御意見の整理でございます。(1)総論の基本的な考え方の部分ですけれども、上から2点の御意見は、基本的に推進すべきというものでございまして、その要旨としましては、新たな創作は過去の文化遺産の土台に依拠するものであり、多様な著作物へのアクセスのしやすさという点が非常に重要だという観点が示されております。
 下の2つでございますが、これではアーカイブは誰が取り組むべきかという御意見でございます。コンテンツ事業者がコンテンツを提供するという協力支援の仕組みが必要でありますとか、管理事業者などの団体が民間レベルでアーカイブ事業を推進すべきだという御意見もございました。それから、保護期間問題とこのアーカイブの問題とをどう捉えるべきかという御指摘でございますが、まず1番目は、保護期間の問題とは別に、そもそも公益性のある取り組みであるから別に考えるべきだという御指摘、2番目は保護期間延長すればアーカイブの活動が制約されることになるということで、関係があるという御指摘でございます。3番目から5番目については、そもそもアーカイブができるかどうかは著作権と関係ないのではないかなどの御意見も幾つかございました。
 (2)は、どのようなものをアーカイブするのかといった基準や対象物についての御意見でございます。1番目は、日々大量に制作されている中で、一体どのようなものをアーカイブするのか選択することが必要ではないかということで、その選択の方法についての御指摘。2番目、3番目は、保護期間を経過したものに限るべきであるといった御指摘と、基準について、絶版かどうかを基準にするとしても、実際には絶版になっているかどうかという判断は難しいのではないかという御指摘でございます。
 次のページ、今の2つは出版でございましたけれども、こちらは音楽配信事業についても影響が出ないようにすべきだという御指摘。それから、収集する内容としましては、コンテンツそのものではなくて、その元になった脚本、もしくはコンテンツに附帯する文献的価値を持つ情報、そういったものも保存すべきだという御指摘がございました。
 (3)アーカイブを行うに当たっての課題でございますけれども、1番目は、現行の規定を駆使することによって推進すべきだという御指摘で、2番目から4番目は、それでは無理ではないかという御指摘でございます。下の2つ、5番目、6番目は、それ以外で、劣化した資料の保存や再生方式の変更などへの対応が可能になるような措置を検討すべきだという御意見がございました。
 (4)はアーカイブされたものをどのように利用させるべきかという関連の御意見でございます。1番目は、音楽配信事業などの妨げにならないように、利用方法については制限が必要だという御意見がありまして、逆に、2番目から4番目については、アクセスのしやすさという観点から、広く公開すべきという御意見でございまして、教育機関や障害者については特に御意見がございました。
 9ページからが、保護期間に関するものでございます。まず、検討の視点として挙げられているものでございますけれども、1番目は、まず、延長することと、しないことのどちらが創作者にインセンティブを与えて、情報の豊富化を招いて、結果として社会全体の文化の発展に役立つのかと、そういう観点から議論すべきということで、こちらには多数の御指摘を頂いております。
 2番目については、そういったものの他に著作権ビジネスに与える影響の観点、経済学的な観点からの分析が必要であるという御指摘。3番目は、創作者の創作意図への配慮の視点からも論じるべきという御指摘がございました。4番目は色々書いてございますけれども、今の3つと重ならない部分では、著作権継承者が受ける利益の妥当性といったものからも議論すべきだという御指摘がございました。5番目は、市民の情報アクセスを制限しないようにという観点から御意見がありました。6番目、7番目は、欧米が死後70年に延長した理由と、我が国固有の国益に合致するのかどうかという観点も必要であると、それから、国益はもちろんあるけれども、その他に短期的に国益にかなわなくても、あるべき立法を検討すべきと、そういった検討の視点が示されております。
 その次の括弧は、大きくは検討の視点の中の項目ではございますけれども、特に意見としてありましたのが、今後の情報流通の見通しとの関係ということでございます。インターネットの発展などの状況がある中で、50年後の情報流通の姿というのは想像がつかないということの御指摘でありまして、どのように情報流通がされるのかという姿を見定めてから議論すべきだという御指摘がございました。
 その次ですが、今までの利用円滑化方策やアーカイブなど、他の要素とはどのような関係になるのかという御指摘でございます。1番目は、延長するにしても、利用円滑化のための方策は十分に措置される必要があるという御指摘、延長の条件として、一般の利用者や事業者に分かりにくい部分の解消が必要であるといった御指摘がございました。
 次のページでございますけれども、戦時加算が消滅した後にすべきであるという御意見、障害者への情報保障が条件だという御指摘でございます。その他は再掲でございますので、省略いたします。
 (2)は保護期間延長の議論のきっかけとして提示されている事項について、それぞれの御指摘でございます。まず、(2-1)は、寿命の伸長や遺族との関係に関する御指摘でございますけれども、成果が還元されるべき遺族というのはどのようなものなのかという観点で、御指摘が6点ほどございます。1番目から4番目は、そもそも家族に還元すべきものなのかどうかということに関する御指摘でございます。自らの著作物によって家族の糧を得ているけれども、その家族の長寿高齢化が進んでいるのでという御指摘でありますとか、逆に、創作者の創作を支えているのは家族だけではなく社会全体であって、家族だけに還元するべきではないといった御指摘であります。また、そうはいっても、創作には家族の犠牲が伴うんだという御指摘等様々ございました。
 5番目、6番目、下の2つですけれども、こちらは、遺族といってもどの世代までの遺族を考えるべきなのかという御指摘でございます。5番目は孫世代の収入保障をする必要はなく、子供が大学卒業するまでの25年間という観点でどうかという御指摘。6番目は、創作の意識を共有できる範囲の遺族、子供が亡くなるまでの期間にすべきといった御指摘でございました。
 その次のページでは創作者の意図と遺族の権利行使とがそぐわない場合があるという御指摘も御紹介しております。
 寿命の延長と保護期間との関係でございますけれども、寿命は妻子だけではなく、著作者自身も延びているので、理由にならないのではないかという御指摘がございました。次は、創作者が若死にした場合には、創作者の一世代の生存中に保護期間が切れる場合があるという御指摘がありました。
 その次、(2-2)諸外国の保護期間との関係でございます。基本的な考え方として、世界と著作物の交流がある中で、共通ルールでやるべきだという御指摘ですとか、一方の国で保護期間が残っていて、自国で切れているという状況というのはなかなかやりとりしにくいという御指摘、3番目としては、ある時代では特に評価されなくても、別の場面で突如として評価される例もあるので、合わせておくべきという御指摘もございました。4番目ですが、欧米の水準に合わせることがなぜ望ましいのか、メリットがあれば合理的に述べるべきという御指摘がございました。
 飛ばしまして、その次の括弧で、平準化する内容として何に揃えるべきなのかという御議論でございますけれども、1番目は、70年が国際標準とは言えないのではないかという御指摘。2番目は、国際的には死後50年が標準であって、むしろ延ばしている国が調和を乱しているのだという御指摘。3番目は、70年に延長した場合には、かえって50年の国との調和が問題になるのではないかという御指摘もございました。
 その次のページでは、対象として考えるのは、我が国の文化交流が盛んな国を考えるべきであるという御指摘。最後は、権利を強める方向は国際的潮流とは言えないのではないかといった御指摘がございました。
 次に、保護期間が異なるとどのような弊害があるのかという御指摘でございます。上の1番目から5番目、ほとんどは海外の取引において弊害があるのではないかという観点の御議論でございました。ピックアップして御紹介しますと、3番目では、保護期間が異なることでビジネスが止まることはあり得ないという御指摘があった一方で、4番目は、音楽配信のような世界では、日本では保護期間が切れていて、海外では存続している場合には、海外の権利者が日本の配信事業者との契約を拒む恐れがあるといった御指摘で、両意見がございました。下の2つ、6番目と7番目では、著作物の管理の観点から、保護期間がまちまちだと、管理コストが増えるのではないかとか、増えないはずといった御指摘がございました。
 その次の諸外国の保護期間延長の背景については。まだあまり意見がないところですけれども、観点だけ示されております。
 (3)では、延長によって、具体的にそれぞれどういう効果、弊害があるのかという論点ですけれども、(3-1)では、基本的な観点といたしまして、1番目は、20年延びたことで、インセンティブが生じるということはあり得るのかという御指摘。
 その次のページの2番目、3番目の御意見を紹介しますけれども、こちらは作者が死んだ後、過去のものについて保護期間を延長しても、創作者のインセンティブは増進されないという御指摘がございました。4番目、5番目は、今後のものでございますけれども、今後のものについては書籍の例で御紹介があったわけでございますが、創作者のインセンティブの増加は1パーセントから2パーセントであるといった研究結果が紹介されております。6番目、7番目は、今度は個人のインセンティブの問題ではなくて、別のインセンティブがあるという観点の御意見です。6番目は、出版社やレコード会社に対価が集積されることによって、それが新たな創作への投資に向けられて、新人の創作機会の発掘、意欲、インセンティブになるといった御指摘ですとか、7番目は、企業のビジネスの戦略ツールとして著作権が使われている場合には、投資のインセンティブになるといった御指摘がございました。
 (3-2)は、逆に、延長してどういうコストがあるのかという点でございます。こちらは、利用一般に関する支障の問題と、二次創作の支障について、大きく分けて整理しております。
 一般のところですけれども、まず、取引費用の問題として、許諾を受けなければいけない人数が増える、もしくは利用拒絶の可能性が高まるといったような御意見。3番目は、死蔵する可能性が高まるという御意見がございました。
 飛ばしまして、次のページでございますけれども、二次創作に関しましては、こちらも先人の文化的遺産を土台として創作が行われるという観点から、延長すると取引費用が増大させて、こういった活動の阻害が生じるのではないかという御指摘。2番目から4番目については、アイデアは保護されないので、阻害されないのではないかという御指摘や、翻案権があるので、そうではないといった御議論がございました。
 (3-3)は、著作権保護が切れることによって、どのような利用促進効果があるのかという論点でございます。1番目と2番目は、死後50年ぐらい経って、なお流通するような作品はどの程度あるのかという御議論がございました。3番目、4番目としましては、切れた後の実例といたしまして、実際に新たな流通ルートの開拓とか、二次著作物の流通量が増えているという実例の御紹介がございました。6番目から8番目については、ネット社会では、パブリックドメインになることによる効用が更に大きくなっていくのではないかといった御指摘に関する御議論がございました。
 その次のページに参ります。そういった御議論を踏まえまして、それぞれ文化的側面、経済的側面について、どのような影響があるのかということです。(4-1)の最初は、創作に先立つ環境としまして、コンテンツのアクセスが大事だという御意見がございまして、こういったものに影響を与えるのではないかという御意見。3番目、4番目は、創作活動を支える環境についての御意見でございまして、出版社、レコード会社などの団体が創作を支えるという御意見や、最後のものですが、公的支援によってやるべきだという御意見がございました。
 その次に、実際に創作にどのような影響があるのかということですけれども、既存の創作物を土台とした創作について影響が出るという御意見や、その次の括弧のところで、高い創作性を有する作品については、そうではないという御意見がございました。
 すみません、時間の関係でその次のページに参りまして、そういった個々の話ではなくて、社会全体の文化に関する考え方に影響があるという御意見でございまして、利用するために社会全体が努力するということが文化を育てるのだという意見が、1番目と2番目でございます。一方で、あまり保護がない方が個々のチャレンジ精神や将来の表現力を育てるという御意見もございました。4番目としましては、保護を訴えるよりも、生存中の公的支援がされる世の中であった方がいいのではないかという御指摘がございました。
 (4-2)は貿易上の利益などに関するものです。1番目は、海外進出が進む中で国家的な財産を確保するという観点からの御指摘、2番目は、逆に保護が薄い分野のほうが世界に通用しているという御指摘がございました。4番目の1国だけの知財収入を目指すべきではないという御指摘ですとか、5番目では、実際に相当な赤字が出ているので、欧米の作品の延命になるだけではないかという御指摘がございました。
 その次のページに参りますけれども、(4-3)経済分析ということで、延長による利益はほとんどない中で、パブリックドメインになることによる利益は明らかに存在しているということで、延長しないほうが社会のためになるという分析の御紹介がありました。
 その次は、(4-4)創作者の人格的利益に関するものでございます。創作者がどのような人格的利益を求めているのかという議論に関しまして、多くの人に作品を聞いて欲しい、読んで欲しいという人の方が多いのではないかとか、逆に、思想・感情と向き合って創作する人の方が多いのではないかという御意見があったり、ケース・バイ・ケースであるという御指摘があったりと。最後のところでは、そういった創作者側の意識だけではなくて、エンドユーザーのことも考えて、そういったものを考える必要があるという御指摘がございました。
 実際に延長によってどのような影響があるのかというところですけれども、同一性保持が容易になる利益ということで、著作者人格権は、実際には複製権などとセットとなっていないと、訴えることが難しいということで、延長が人格的利益の確保に繋がるという御指摘がございました。
 その次のページでございます。今度は逆に、広く流通・認知されることによって、利益を感じる創作者の場合という観点でございますけれども、延長によって読み継がれる機会が減るのであれば、それこそ創作を軽視するものであるといった御指摘がございました。それに関しまして、自由に使うためにはどういう手続をとればいいのかということで、2番目は、自由に使ってもらいたい人が意思表示すべきだという御指摘、3番目は、延ばしたいという側が、逆に手続を取るべきだといった御議論もございました。
 (5)は、著作権保護行政と文化行政の関係でございます。横山大観記念館の御紹介がございまして、著作権があることによってこういった施設が維持されているという御指摘がございました。その一方で、そういったものは著作権制度の問題ではなくて、文化財行政で対応すべき問題であるという御議論がございました。
 (6)は著作隣接権の問題ですけれども、著作権と著作隣接権とで格差を設ける合理的な根拠はないという御指摘で、それぞれ調和的に延長すべきだという御指摘がございました。
 (7)は、戦時加算について解消を図るべきという御指摘ですが、一方で、10年の戦時加算を解消するために、20年の延長をするという交渉は不合理ではないかという御指摘もございました。
 (8)で、単純に延長する以外の御意見が幾つかありました。下の3つでございますが、50年から70年の間は報酬請求権にしたらどうかといった御指摘ですとか、3番目は、更新料を支払って登録して延長するというような制度はどうか、最後は、20年分については国庫が徴収して、文化振興基金など公的資金に充ててはどうかと、そういった御指摘もございました。
 最後の意思表示システムについては、(1)基本的な考え方として、進めるべきという御指摘が幾つかございました。一方で、一番上ですけれども、意思表示システムについては、ライセンスを付けるためには、その時点では通常の権利処理手続が必要なので、そういった問題点を回避できるわけではないという御指摘がございました。
 (2)利用促進のためにどのような措置を採るべきかということに関しましては、流通関係者にそういったシステムを使うような義務等、何らかの工夫が必要ではないかといった御指摘ですとか、2番目の、虚偽表示に関する措置や、表示を信じた者に対する免責のような措置を規定することによって、信頼性を高める必要があるといった御指摘もございました。4番目では、ライセンスの種類の標準化ですとか、異なるライセンス間の相互互換性の確保が必要、5番目は、権利者情報を保持する活動との連携が必要である、そういった御指摘がございました。
 以上のような形で整理させて頂きましたけれども、こういった項目立てでいいのかどうか、意見の要約の仕方がおかしいのではないか等、さまざま御指摘があろうかと思いますので、御指摘を頂ければと思っております。
 次に資料4でございますけれども、こういった検討課題の設定に基づきまして、今後どのように議論を進めていくかという御提案なのですが、基本的な考え方としましては、今回、検討課題をこういう形で整理して頂けましたら、順番に従って1つ1つの項目について議論を深めていったらどうかということでございます。
 2番目のアーカイブと4番目の意思表示システムは、課題項目の量が少ないようでございましたので、こちらについては、併せて第2回目で御議論頂いてはどうかという御提案でございます。
 なお、上から3つ目の8月22日については日程調整中でございましては、申し訳ございませんが、仮の日程でございます。
 資料については以上ですが、先ほどの戦時加算に絡んで、参考資料の3−1と3−2だけ、御紹介させて頂きたいと思います。参考資料3−1でございますけれども、著作権協会国際連合、CISACから、日本政府について通知が来たわけでございます。どのような内容かと申しますと、その3ページ目にございますが、著作権協会国際連合が、戦時加算について、今月1日に決議されたということで、中ほどでございますが、日本国は60年以上にわたって一貫して戦時加算義務を果たしてきたということや、解消を強く希望しているということにかんがみて、CISACの加盟団体が各会員、各国の権利者ですけれども、そちらに戦時加算の権利を行使しないように働きかけるという行動を取るということを決議したということでございます。ただ、各国の団体がそれぞれどの時期からそれをやるかというのは、それぞれの御判断だということでございます。
 それにあわせまして、参考資料3−2でございますけれども、そういったものを契機といたしまして、民間団体間の国際的合意があったので、政府においても戦時加算の解消について取り組むべきだという要望書が提出されておりますので、簡単に御紹介させて頂きました。詳しい議論は、保護期間を議論するときに、こちらの資料も再度御紹介させて頂いた上で、と思っております。
 長くなりましたが、以上でございます。

【野村主査代理】 どうもありがとうございました。
 それでは、先に、先ほどのCISACの決議、著作権問題を考える創作者団体協議会からの要望書について、何か御質問、御意見等ございますでしょうか。
 都倉委員、何かございますか。

【都倉委員】 付け加えることは特にありません。

【野村主査代理】 それでは、また保護期間の問題のところで触れることもあろうかと思いますので、この資料2、ただいま御説明頂いたところでございますけれども、この小委員会としての検討課題を整理して、次回以降、順次、個別の課題ごとに議論していきたいということでございます。資料2と3で、検討課題ごとにヒアリングでの意見が整理されておりますけれども、こういう整理の仕方でいいのか、更に課題として分けて検討したほうが良いものがあるのか等、御自由に御発言をお願いしたいと思います。

【瀬尾委員】 実際の議論に入る前に、一言申し上げておきたいと思います。実は、大変時間の厳しいヒアリングでございました。また、その中で色々な論点が出てくる、たくさんの方が御発言なさるという時間的制限があった中で、私の出身である写真も発表させて頂きました。その中で、中山委員と金委員から御指摘頂いた件に関しまして、それは後ほどということで、お時間の関係でお答えできなかった分がございますので、冒頭に、もしよろしければ、それを簡単にコメントさせて頂きたいと思います。
 それは何かというと、デジタルネットワークの時代に当たって、国際的な平準化が必要であるということについて、なぜそれが繋がるのかが理解できない、御説明をという質問を頂いたところでございますが、それについてよろしいでしょうか。

【野村主査代理】 どうぞ。

【瀬尾委員】 基本的にデジタルの時代ということになりまして、日本が50年で、欧米が70年の状態にあったときに、今までは、例えば日本で50年は50年と、ものを作ったり何かして、他の国はそれを止めることも、物流として阻止することもできた。けれども、今はネットの時代で情報が流れます。日本国内にサーバを置いて、音楽でも、映画でも、発信した場合、それを諸外国は止めるすべがないんです。ということは、つまり70年の国は、自分の国では保護期間のあるものを、日本のサーバから自由にダウンロードできたりしてしまう。こういう差異が生じてしまうということです。
 つまり、ある意味で海賊版的な配信を、外国では行ってしまうようなことがある。そして、更に、デジタルデータですので、一度ダウンロードされたものは、複製が非常に容易です。それを次々に複製されて一度広がってしまったものは取り返しがつかないと。そういう意味で、国際的なルールは共通であるべきだということを申し上げたということを、まずお話ししておきます。
 また、実際に物流にしましても、例えば50年で切れたものをプレスしたソフトを海外に輸出しようとしたときに、それは阻まれる規定がかなり多くの国にあると聞いております。ただ、阻まれるんですけれども、それによって大きく物流が阻害される、そのために、EUでの一番長いところに合わせた統一が行われたという話も聞いております。ですので、物レベルでも阻害されるんですが、今度は全く食い止めようもなく、日本発で50年で切れたものが発信されていってしまうことに対して、まだそうならないうちに、今そういう配信がスタートについた時点でルールを同じくしておくべきだということで、国際的な標準、平準化ということを申し上げました。
 また、実際ネットゲームや何かで色々な議論がありますが、IPを制限して国外からのアクセスを食い止めたらどうなんだという御議論もあるかと思いますが、これはプロキシを通すなり何なりして、大変難しいことであると。事実上、現時点での技術ではかなり不可能に近いような状況であるということを聞き及んでおります。
 こういう状況が今回の意見の整理の中にも、実は他の方からも出なかったことですので、今日本が海賊版撲滅ということを国策として挙げている中で、それに類するような行為を行ってしまう可能性があることに対して大変危惧するし、今それをしておかないと大変なのではないかという意見でございました。以上です。

【中山委員】 よろしいですか。ネットの時代はそういう時代であるということは、私も十分承知しておりますが、それがなぜ20年延長と絡んでくるのか。現在のように死後50年の状況においても全く状態は同じで、サーバを外国に置いておくとか、全く同じ問題が起きているわけです。ですから、20年延長と、このネット化とどう絡んでくるのかということをお聞きしたわけで、現在だって問題ですね。

【野村主査代理】 中身の問題はいずれまた議論する機会がありますので、一応質問にお答えしたいということでございましたので、とりあえずそこまでにさせて頂きます。
 本日、先ほど事務局から御説明のありましたような、こういう項目立て、意見の整理の仕方、そういった点について御発言はございますでしょうか。
 三田委員、どうぞ。

【三田委員】 この小委員会は、第1回、このメンバーで顔見せをして、それから2回、3回は意見を求めるためにヒアリングをしたということであります。そのときには、大変発言者の人数が多いということで、我々委員は、質問は許されるんですけれども、意見を述べてはならないと言われましたので、発言者に関連することしか言えなかったわけであります。ですから、この委員の中で、ヒアリングの発言者として発言された方は意見を述べられたわけでありますけれども、そうでない委員の御意見というのはまだ十分に集められていないのではないかと思いますので、ここにあるように各論、項目立てた整理に移るより前に、ヒアリング等でまだ十分に発言されていない委員の方々の御意見をもう少し集めて、議論を煮詰めていく必要があるのではないかと。そうでないと、これだけのメンバーを集めている意味がないと思うんです。いかがでしょうか。

【野村主査代理】 事務局の考えは、おそらく、このヒアリングの意見を整理して、それをもとにして、委員の意見を出して頂くということで、その上で、最終的な整理をするということではないかと思うんですけれども。そういう意味では、三田委員のお考えは生かされるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【三田委員】 それは、先ほど言いましたように、ヒアリングのときも意見を述べた人に対して、質問の形で何か言うということであります。それから、このように項目を立てますと、項目について何かを述べるということなんですけれども、そもそも過去の著作物の利用と保護について、総論としてもう少し意見を戦わせてもいいのではないかと。
 例えば、本日残りの時間、それに当てても結構ですが、そこで、まだ十分に議論がなされないということであれば、次回は、この権利者不明の場合について議論する前に、その他みたいなものを先にして、もっと一般的な議論を先にやるべきではないかと。各論に移るのはその後でいいのではないかと。もちろん、委員がもう言うことがないということであれば、それで結構なんですけれども、まだ十分に御意見を言われていない方もいらっしゃるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

【野村主査代理】 この点についていかがでしょう。1から5までの大きな項目については、最初からこういう形で整理されておりますので、これについて、1度フリートーキングをして、その後で整理してはどうかと、そういう御意見ということでよろしいですか。

【三田委員】 そうですね。要するに質問の形ではなくて、これに対して直ちに、今瀬尾さんが言われたような、これについては是非とも言っておきたいということが他の委員の方にもあるのではないかということで。要するに、この論点のまとめ方でいいですかということではなくて、このまとめに対して、ぜひともこれだけは言っておきたいという方が他にいらっしゃらないかどうかを、この場でも、次回でも、時間をとって聞いてみたらいかがかなと思います。

【野村主査代理】 それでは、こうしましょうか、あと約1時間ほどございますので、この1から5までの大きな論点について自由に御発言頂くということで、その御意見もこの中に書き込んだ形で、次回以降に、先ほどの4にありますような順番で議論を進めるということでよろしいでしょうか。
 それでは、残りの時間で、委員として色々御意見のある部分について御発言頂くということにしたいと思いますが。
 では、三田委員からお願いします。

【三田委員】 それでは、発言させて頂きます。3項目ほど意見を述べたいことがあります。
 まず第1の点は、ヒアリングの発言者の方の多くが、著作権の保護期間を延長することによってどういうインセンティブがあるのかと問われたように思います。そもそも多くの方がインセンティブというものについて、多くの場合、金銭をインセンティブとすると考えていらっしゃると思います。しかし、著作者として、それは全然違うのではないかと考えております。著作者が、特に作家の場合、作品を書くというのは、お金のためではないんです。
 例えば、現在の文藝家協会の理事長、ヒアリングで発言された方でありますけれども、坂上さんという人は定年までサラリーマンをされた方ですし、その後も、慶応大学の出版部の社長さんをされているという方でありまして、決してお金のために作品を書いた方ではありません。しかし、その作品は高く評価されているわけです。多くの場合、著作者が作品を書くのはお金のためではなくて、みんなに評価されたい、リスペクトされたいということで、作品を書いていくわけです。ですから、お金ということであれば、自分が死んでしまったら、そのお金は自分のものにならないわけですから、決してお金のために保護期間の延長を求めているわけではないのです。
 例えばこういうことがあります。谷崎潤一郎や江戸川乱歩、梅崎春生、特に谷崎は世界的にも知られた文豪であります。この著作権が10年以内に切れてしまいます。私も、うちにある「世界文学全集」をずらっと眺めて、最近は「世界文学全集」はあまり出ませんけれども、一番最後に出された集英社の「世界の文学」なんかには、欧米だけではなくて、南米文学もたくさん収録されております。それを全部見ても、ほとんど100パーセントと言っていいぐらい、既に70年になっている国の作家であります。古い文学全集を見ましたら、魯迅だけ違う。あとは全部70年になっているんです。
 我々が良く知っている、何でもいいですけれども、サルトルでも、ガルシア・マルケスでもいいんですけれども、そういう作家たちの中に、川端康成とか、谷崎潤一郎とかを置いても全く遜色はないと思われるわけですけれども、その中で川端や谷崎の作品だけが50年で保護期間が切れてしまうというのは、これはどう見ても、日本という国がいかにも文化的に貧しい国であると感じざるを得ませんし、日本という国が、作家というものに対してリスペクトしていないという感じがいたします。
 私はリスペクトして欲しいと思いますし、また、自分自身も谷崎をリスペクトしておりますので、世界の文豪たちと同じだけの保護をするということが、過去の文豪に対するリスペクトの意思表示になるだろうし、それから、私自身がそういう文豪になるかどうかは分かりませんけれども、多くの作家は、もしかしたら自分の作品は、死んだ後で急に評価が高まって、そういう作家になれるかもしれないという夢を持って書いているわけです。この夢というものが、創作意欲につながってるわけであります。決してお金ではありません。そういう点で、インセンティブというものの考え方をもう少し幅広くとって頂きたいと考えます。
 第2点は、国会図書館とか、公共図書館、あるいは大学の図書館等で作品をアーカイブしたり、様々な利用をするという場合に、50年以上たったものについては今自由にできているのに、これを延長すると不自由になるという御意見がありました。これについては、裁定制度を簡略化するということで十分に対応できると思います。論点がごっちゃになっていると思いますのは、テレビ番組をインターネットで流すときに出演者について裁定制度を簡略化しろという御意見があったように思うんですけれども、これは保護期間の延長問題とは関係のないことであります。大体50年前のテレビ番組なんて残っていないわけです。
 ですから、それとは別に文学作品、特に、例えば国会図書館が言われていた明治時代の著作物をアーカイブしようとしたときに、いつ亡くなったのかも分からない人がいますという御指摘です。こういうものについては、大幅に裁定制度を簡略化して対応すれば、誰も文句は言わないというものであります。
 もう一つ、作品を二次利用するということがあります。それは、ネットで流すとか、そういうことではなくて、クリエーターがもう一度再生産するということがあります。これについて、現行では50年以上経ちますと、自由にできるということであります。反対意見の中には、これを70年にすると大変不都合になる。二次利用するクリエーターの創作活動が十分にできないという御意見があったんです。例えば、私が学生時代、冨田勲さんがホルストの「惑星」をシンセサイザーでレコード化されました。当時ホルストの著作権は生きておりましたし、未亡人も健在でありました。このときに、当時コンピューターがもうできておりましたので、ぴこぴこというコンピューターサウンドがあって、「プレイバッハ」みたいな音楽はあったんですけれども、それに関して未亡人は絶対にだめだと言われていたわけであります。そのときに冨田さんは、自分が作ったドビュッシーのシンセサイザー演奏を持っていって、聞いてもらったら、未亡人が、ああ、これなら大丈夫だということで許諾したということであります。
 逆に言えば、未亡人の許諾を取るために、冨田さんはいい音楽を作らないと、「惑星」をシンセサイザーで演奏することができなかったわけでありますので、むしろ創造意欲を未亡人という壁が高めたということもできるわけであります。これが、勝手にやっていいということなら、みんながぴこぴこで「惑星」を演奏するということになって収拾がつかなかったし、冨田さんの見事な演奏も出現しなかったのではないかと思います。
 もう一点、松本零士さんが「銀河鉄道の夜」というアニメを作られておりますけれども、これは著作権が切れてから作られたものであります。しかし、松本さんは、宮沢賢治の御遺族の方に、こういう形でアニメを作るんだと、あるいはコミックスを作るんだということを説明に行って、絵を見せたりしますと、御遺族の方も、これは大変すばらしいものだということで感謝をすると。例えば、花巻にある宮沢賢治の記念館には松本さんの絵が掲げられているとか、そういう形で、著作権が切れていても、御遺族に十分に理解されているということがあります。
 ですから、二次利用の創作者というのは、絶えずそういう努力をやり続けていく必要があるのではないかと思います。50年たったから、それ、自由に使えという形で作品を使ってしまうということは、モラルにも反することであります。そう考えると、50年が70年に延びることによって、二次利用が難しくなるということは決してないと、私は考えます。以上です。

【野村主査代理】 それでは、中山委員、どうぞ。

【中山委員】 ヒアリングを聞いていまして、あるいは、今の三田委員の意見を聞いていまして、著作権法の基本的な構造を理解していない方があまりにも多いということに驚きました。今議論している著作権の保護期間というのは、著作財産権の話、専ら財産の話なのです。ところが、多くの方は金ではない、金と言うと下品だけれども財産問題ではなく、レスペクトの問題であるとおっしゃいます。しかしレスペクトの問題は人格権の問題なんです。全く違う。
 例えば漱石の保護期間は切れています。いつ切れたかということをほとんどの人は知りません。しかし、漱石は保護期間と関係なくレスペクトを集めています。だめな作家は、50年を待たずしてもレスペクトがなくなります。要するに、レスペクトの問題は内容の問題なのです。内容が良ければ、保護期間と関係なく永久にレスペクトを受ける、だめな人は、すぐ葬り去られてしまう、それだけの話なんです。
 この財の話として考えた場合は、期間を20年延長することによって、財がどのように移転するのか。その移転によってどういう効果を社会にもたらすのか、これが論点です。世界的に見ても、期間の問題がレスペクトの問題であるなんて聞いたことがない。このような議論は日本特有で、日本においても著作権法に詳しくない一部の方の議論です。もしレスペクトの問題であれば、、期間の問題は著作者人格権の問題であるとして、新しい著作権法の体系を提示してもらいたい。それが世間の大方の賛同を得れば、この審議会に出てくるかもしれない。とにかく著作権法を読めば分かるけれども、保護期間の問題は財の問題なのです。したがって、財以外の問題を議論すべきではない。
 個々の人が思い入れを入れるのは勝手です。つまらないものであっても、親の遺産であれば、その人にとっては非常に精神的に重要なものです。思い入れがある、これは当たり前です。保護期間に対して、個々の作家がどういう思い入れをしようと勝手ですけれども、それは個人の問題であって、法律の問題ではない。したがって、レスペクト、つまり人格の問題、尊厳の問題と財産の問題を混同しているので、話がかみ合わない。ここでは財の話をすべきだろうと考えます。
 人格権については、極めて簡単に言ってしまえば、現行法では保護期間はないのです。したがって、法的にはそもそもレスペクトの問題について保護期間と絡めて議論をする余地はないものです。

【野村主査代理】 他に。それでは、三田委員。

【三田委員】 同じ人ばかりしゃべるのも良くないと思うんですけれども、でも、せっかくこういうところで会って話をしているので、議論を重ねていきたいと思います。私は、心情的に作者の立場からリスペクトが第一であると申し上げたんですけれども、そのリスペクトが具体的な形になるというのはどういうことかといいますと、大きな本屋さんに行きますと、文学のコーナーがあります。そこに「谷崎潤一郎全集」とか、色々な全集が並んでおります。そういうのを見て、自分もこんな作家になりたいなと思って頑張って書くわけです。
 ですから、リスペクトというのは気持ちの問題ではなくて、財としての文学全集とか、文庫にずらっと作品が並んでいるとか、そういうことと密接に繋がっているわけであります。小説家は、まず売れない小説家の場合は、自分の今書いた本を具体的に出版してもらうだけでも大変なんです。でも、すごい文豪の場合は死後何年経っても本が出ている。逆に、生きている間えらい売れて財をなした人でも、死んだ途端に本屋さんから消えてしまうというような作家もいるわけです。
 私は文化的に価値の高い作品というのは、生きている間に売れるかどうかではなくて、死んだ後で読み継がれる作品だろうと思います。そういうことを考えると、文学全集というのは、すごい文豪の場合は何回も新しい全集が編まれ、その間に研究者が研究した成果が踏まえられて、肯定されたり、解説されたり、そのことによって読み方も深まっていく。これがまた文学愛好家にとっては、大変貴重な試みであるわけです。
 これが、やはり50年で著作権が切れてしまうということになりますと、それ以後、自由に本が出せる、ネット上にも公開されますし、100円ショップでも売られる。漱石とか、太宰治とか、100円ショップで売っているわけです。そうすると、新たな視野を持った解説を付けた文庫本を出そうとか、新たにもう一度全集を編もうとか、そういう試みに対して、これは出版社が営利活動でやるわけでありますから、財として価値がなければ作れないわけであります。ですから、リスペクトというものと、経済活動というのは実は密接に結びついているんだということを申し上げたいと思います。

【野村主査代理】 それでは、都倉委員。

【都倉委員】 法律が御専門の中山先生と、作家である三田さんとの議論というのは、僕もお互いに一理あるなという感じで聞かせて頂いたんですけれども、私はもう少し現実的な現場の人間としてボーダー、国境を超えて仕事をしている立場の人間、音楽というのはそれがやりやすいわけでして、先ほどの瀬尾委員の冒頭の御発言にあるように、インターネットだけに限らず、日本で著作権の切れたものを日本でCD化して、それをニューヨークに並行輸入して、タワーレコードの棚に二重価格のCDが並ぶという時代は容易に考えられるわけです。
 我々、一生懸命、中国の還流レコード阻止ということを一生懸命やってきまして、何とか向こうで安価なものが入ってくるということに対して、非常に危機感を感じて、それを一生懸命阻止しようとやった時代があるんですが、同じようなことを日本がやると。知財立国とうたっているような日本が、そういうことを率先して、結果的にですけれども、なってしまうのではなかろうかという、多少危機感もあります。。
 もう一つ、私は舞台、ミュージカルを向こうでやっているんですが、日本にはあまりないんですけれども、グランドライツという概念の中の共有著作物、作曲家だけが日本人で、残りがアメリカ人だという状態があるわけです。その場合に、当然、現地主義ですから、その著作権はアメリカで作れば、アメリカの著作権法で有効になるわけですけれども、プロデューサーが、グランドライツの中で、例えば保護期間などでも違うものは嫌うんです。非常に嫌います。ですから、私としては、もしそういう状況になれば、向こうに1つ、自分の著作権を預けるという判断をせざるを得ない。
 となると、日本という国は、ある意味では、新しい著作物を作っていくという著作権の空洞化みたいなことも起こり得るのではなかろうか。ですから、僕は個人的に言いまして、50年が70年になるから僕の創作意欲が増えるということは絶対にないんです、自分では。それだからいい曲が書けるとは絶対思っていないんですけれども、やはり国際的なルール、暗黙の了解でも何でもいいんですけれども、1つの基準合わせというものは、僕たちの仕事には不可欠だということは、現場の仕事をやっている人間としては、ぜひ強調させて頂きたいと思っております。

【野村主査代理】 どうもありがとうございました。他に。金委員どうぞ。

【金委員】 先ほどの三田委員の発言だと、著作者の権利を保護するというのが、著作権制度の最終目的のように聞こえるんですが、私は著作権制度の最終的な目的は、あくまでも文化の発展に寄与することだと思います。その文化の発展は2つの要因によって実現される。1つは、いかに創作を最大化するかということ、もう一つは、創作された産物をいかに広く利用させるかという、創作の活性化と利用の活性化であり、それを実現する手段として、適正な保護水準、保護範囲、そして保護期間を考えるのが著作権制度であると思うんです。
 例えば、著作権の権利保護が強化されることによって、創作や利用が阻害されるのであれば、これは著作権制度から見ると本末転倒な話です。逆に保護がないということによって、創作や利用が活性化されるのであれば、著作権制度は保護なしにすべきであります。逆に、保護を強化することが創作と利用を促進するのであれば、著作権制度は保護強化に向かうべきだと思います。つまり、目的と手段というものを我々は常にそして明確に認識し、それを混同しないこと、そこが大事ではないかと思います。

【平田委員】 ヒアリングの際にも述べたことなんですけれども、二次利用に関しては、劇作家、演劇というのは一般に二次利用が前提になっている表現ですので、一言申し述べさせて頂きます。
 三田先生が、一作曲家の未亡人が芸術に理解があって、大変すばらしいエピソードを残したということは理解しますけれども、そうではないこともたくさん起こっています。例えば、私たちの世界で言いますと、テネシー・ウイリアムズの『欲望という名の電車』を、日本で女形が主役で上演しようとしたときに、これは拒絶されました。テネシー・ウイリアムズの遺族が、テネシー・ウイリアムズが同性愛であったといううわさがあり、それを揶揄しているのではないかということで、日本の演劇界は、学者も含めて、女形の伝統というものがどれほどあって、日本の文化に根づいているのかということを一生懸命説明しましたけれども、理解頂けなかった。色々なことが考えられると思います。
 そして、今三田先生がいみじくもおっしゃられた、未亡人だったから、まだ良かったんだと思います。これが50年から70年になりますと、孫、ひ孫が権利者になります。その場合に、果たしてその人がおじいさん、おばあさんの芸術をきちんと理解して判断する能力があるのかどうか。僕はそうではなくて、ほとんどの場合、それは金銭で動くか、あるいは、もっと悪い場合に、例えば人種的な偏見を持った人が著作権継承者だったらどうなるのか。その可能性が50年から70年になると、非常に大きく広がると思うんです。そちらのほうを私たちは危惧するべきなのではないかと、逆に思います。
 それから、国際協働作業のことで、これもヒアリングの際にも申し上げたことですが、分野によって違うのだと思いますけれども、私はいくつも国際協働の仕事をしていますけれども、グランドライツの場合、劇作家は主たる著作権者ですから、おそらく一番影響が大きいと思うんです。これは、ヨーロッパのエージェントにも何度も確認しましたけれども、日本人だけが権利が50年になることで問題が起こるということは、まず考えられないという答えを頂いています。ですから、具体的にそれが本当に問題になっているのかどうか、私には想像がつかないところでございます。以上です。

【野村主査代理】 他に。津田委員、どうぞ。

【津田委員】 2点ございまして、1点が、先ほど三田委員の御発言であった、いわゆるクリエーターのインセンティブ論というところで、三田委員のほうから、多くの場合、クリエーター、作家は金ではなく創作を行うという趣旨の御発言があったと思うんです。僕自身、著作物を作って暮らしている人間で、はっきり言えば、著作権が存在する文章を書いて、それで出版社とか新聞者から対価を得て暮らしているわけで、それがないと、まさに僕はお金のために著作物を作っているという面がありますし、僕が知っている多くのクリエーターと話をすれば、基本的にプロで職業クリエーターとしてやっている多くの人というのは、暮らすために、お金のために、ある種著作物を作ってやっているという面があるので、多くの場合というところに僕は引っかかっています。三田委員の一般化された、多くの場合、金のために作っているのではないという発言に関して、一般化は危険なのではないかというのがあって、1点、それは訂正をお願いしたいというのがあります。
 もう一つ、瀬尾委員のほうの国際ルールのところで、比較的インターネットと絡めたところで具体例があって、例えば欧米で70年のものが50年を過ぎて切れたものが、日本ではダウンロード可能になる、これが問題だというのは、確かに状況としては分かります。ところが、現実で見てみると、欧米より保護期間が長い国というのも存在します。例えば、メキシコなんかは長いわけですから、メキシコなんかでは、例えば欧米で70年を過ぎたものが、メキシコでは保護されているのに、アメリカとかヨーロッパではダウンロードできるという事態というのが存在するわけです。
 そうしたら、結局、瀬尾委員のほうから、国際ルールに合わせるしかないという話になったら、結局どこに合わせるのかというと、一番長いところに全部合わせるということにしなければ、ある国では切れているのに、ある国では切れていない、だから、インターネットでダウンロードが可能になってしまうという問題を常に抱えるわけです。そういった国際ルール、標準をどこに置くかというのを考えたときに、僕はベルヌ条約というのがあって、そこで最低死後50年というところが決められているわけですから、それに揃えればいいのではないかという気がします。以上です。

【都倉委員】 ちょっといいですか。今の平田委員の国際協働作業についてちょっと付け加えさせて頂きたいと思うんですけれども、私が申し上げているのは、純然たる商業演劇、主にはブロードウェーとかウエストエンドの、私の場合はミュージカルなんですけれども、これは今現に著作物が切れようとしている、商業演劇でまだ非常に再演が行われやすいものというのはたくさんございます。ガーシュウィンなんかは、本人はもう1937年ごろ死んでいます。お兄さんのアイラ・ガーシュウィンというのは作詩をしておりますけれども、この人はえらい長命で、この人の権利はまだ何十年も残っております。
 こういう商業演劇の場合というのは、グランドライツで統一性がなければいうことを、今主に欧米の商演劇のプロデューサーは非常に考えています。ですから、やっぱり私がもしそういう仕事をする場合は、私は向こうのほうの規格に合わせてやったほうが、私たちの仕事はスムーズにいくということを申し上げているわけです。私たちにも選択の余地があると、それは有利なほうに行かざるを得ないということをちょっと申し上げたわけです。

【里中委員】 最初に言いたいなということは、主に著作者の方たちが気持ちは言って下さいましたので、後追いみたいになるんですが、様々な意見が出ておりますし、それを参考に考えますと、一に経済効果の面が強調されていると思うんです。つまり、著作者、あるいは相続者に許諾を取らなければいけないことが、コストにはね返ってくる。片や、フリーになったものは、みんなが自由に使えるから経済効果が上がる。こういうお金のことだけで考えていいのかどうか。確かに、今財産権について話しておりますので、お金のことというのは重要なんですけれども、簡単に言ってしまえば、私自身も著作者ですので、保護期間が長ければ長いほど嬉しいなと思うのは、実は著作者の死去とともに消滅する人格権です。
 この人格権を守りたいというのがあります。ところが、これは死去とともに消滅します。消滅しますが、財産権が守られること、許諾をする人、否定できる人、使わないでくれと言う人、あるいは家族なり相続者が存在することによって、結局は利用させないということによって人格権を守るという、そういう安らぎのようなものはあります。実際、作品がどのように使われるのか、私どもの世界では既に著作、人格権は侵されまくっております。若い人たちが発表の場、つまりインスパイアされて自分の創作に生かすという、コミックマーケットを主な市場とする分野があります。
 そこでは、実際に、現在メジャーなところで人気を得ているキャラクターたちを、自分たちは自由に利用して、オリジナリティーには欠けるんですが、こういう席で申し上げるのも恥ずかしいんですが、例えば純情な漫画の主人公がちょっとエロチックなことをするような作品を若い人たちが書いて、また、それを受け入れる土壌があると。それも1つの文化でしょう。けれども、オリジナルなものがあるから、それに刺激されてこういうものができたという言い方もできるでしょうが、明らかに著作人格権、財産権も侵しております。
 そういう若い人たちが、自らの創作意欲をかき立てるために利用することについて、私どもプロの漫画家たちはそれほど口うるさくは言っておりません。なぜならば、財産権はともかく、人格権で嫌な部分はあっても、若い人たちがそれによって伸びるきっかけになるのであればと、そういう気持ちで見ているプロの漫画家が多いわけです。
 ところが、こういう著作物が堂々と世間にまかり通った場合に、非常に傷つく著作者もいます。自分が生み出した可憐で純情なキャラクターがこんな格好をしていいのかと。知らない人が見たら、全くその作者が書いた絵としか思えないもの。最近では、有名なのは「ドラえもん」の最終回事件というのがあります。「ドラえもん」の最終回を書かずして、著作者が亡くなりました。その最終回をファンの方が、御自身では善意で書かれたのでしょうが、書いて発表した。ところが、読者が見ると、本物の作者が書いたとしか思えない見事な出来栄えたったわけです。これは当然、死後50年経っておりませんので、差し止めができました。でも、この最終回の形が、果たして原著作者の願ったものであるかどうか、これは誰にも分かりません。誰にも分からない本人の気持ちをいたずらに傷付けてはいけないということで、様々な権利が存在するのだと思っております。
 ですから、もちろん経済的な面もあるでしょう、クリアする、許諾を得るための高い壁もあるでしょう。だけれども、例えば未亡人が理解してくれないということは、御本人が理解してくれない壁とも通じるわけです。ですから、著作権が生きている間、その作品を利用するには大きな困難を伴うし、理解を得なければできないというのは当然のことだと思うんです。ついつい言いたくなってしまいます。私どもも、とある文芸作品を漫画化したいという場合に、本人が生きていたら、漫画になんて絶対させなかっただろう、だからOKしませんという未亡人なり、お子さんがいらっしゃいます。何と無理解なと思うのは、それはこちらの勝手であって、亡き人の心を推しはかって守るのが相続者の使命でもあろうと思います。
 長くなって申しわけありませんが、様々な海外との絡み、どちらが経済効果があるのか、あるいは、作者はお金のみで書くのではないとは言いながら、それぞれにそれぞれの事情があり、それぞれの現場で様々なケースがあると思います。だから、事はシンプルに考えたほうがいいと、私個人の意見としては思います。ですから、ここは創作物の流通と利用が活発に行われている地域、つまり、欧米諸国の事情に合わせて70年とするのが妥当ではないかと、ただいま現在も考えております。

【瀬尾委員】 最初に私も申し上げましたけれども、色々な意見があるのですが、先ほど金委員の言われた文化の発展に寄与するということ、また、創作を促進して、かつ流通を促進すると、ここが目的であるというのは、私も本当にそう思います。今回の話というのは、単純に創作者の団体、私もそれに加わっていたりするんですけれども、ここでの委員として発言したいと思いますが、創作者の団体が、この前平田委員から、創作者の中でも反対している者もいるんだという御指摘を頂きましたが、少なくとも私ども、写真の分野で10団体が団体正会員という構成なんですが、この前も確認しまして、10団体全てが70年延長を希望していると。また、17団体、急に入った団体もみんなそれを希望しているという、これは現実がございます。それだけの団体は普通はなかなか揃わないんですけれども、今回はそれを希望しているという現実がございます。
 どういうことかというと、インセンティブという言葉が私には違和感がすごくあるんです。それによって動機付けされて、更にたくさん作る、そういうものではなくて、創作環境として、自分に権利を少しでも多く与えてくれたら、創作者は喜ぶという単純な話です。これは、一番最初の議論のときに、金委員からインセンティブというか、創作者はプラスに思うのは自明であるという御発言もございましたけれども、自分の権利が多くなれば、それはプラスに思うと思うんです。それが欧米よりも、今自分たちの権利が創作環境として少し劣っているのかなと。なので、みんなで、これは欧米並みの創作環境、権利を要望したいということで、しているということなんです。
 それと、もう一つ、国内外のバランスということを冒頭に申し上げましたが、ただ、延ばしたときのプラスマイナスと、延ばさないときのプラスマイナスを勘案するということが、今の議論の焦点だと思うんです。これは、精神論もあります。私も精神論、言いたいことはたくさんありますけれども、精神論を言っていると一生終わりませんから、その延ばしたときのプラスとマイナス、延ばさないときのプラスとマイナスに絞って議論していくべきだなと、私自身は思っています。
 そして、延ばしたときのプラスの中の1つには、やはりそういう要望が出ているという現実は加えて頂きたい。もう一つ、延ばしたときのプラスとして、先ほどのサーバのような国際的なネット上の問題、これは中山委員から、それがどう繋がるのかという御質問を頂いておりますけれども、それをプラスにして、私は延ばしたほうが、逆に今後の日本のコンテンツを輸出していく状況に合っているだろうし、流通も促進されるだろうということを考えています。
 ですので、この辺りを論点整理して、また、そうではないという御判断ももちろんあるんでしょうけれども、その辺りをポイントにしてお話を進めていくと、意外と明確なのではないかと思います。以上です。

【野村主査代理】 それでは、先に野原委員どうぞ。

【野原委員】 この委員会は、多くの方が著作権者、著作物利用者の立場で発言されていますが、私は視聴するエンドユーザーの立場で一点コメントを。先ほど金委員からも御発言があったように、著作権というのは著作権者を保護するだけのものではないと。それを利用する、視聴するエンドユーザーの立場も大事だと思うんです。
 けれども、エンドユーザーは著作権料が生活の糧になっているわけではないので、どうしても声が小さくなってしまって、結果的に著作権者の方の意見が社会全体を代表する声のような議論になってしまっていると思います。そこで、この委員会では、その強弱を調整する必要があるのではないかと思います。
 私は基本的に、エンドユーザーの立場、それから、著作物の利用が活性化される環境作りを望んでいます。その立場から考えると、今回の議論で保護期間の延長についての必要性は理解できません。保護期間というのは死後ですから、死後50年から70年に延長する必要はないのではないかと考えています。
 先ほど津田委員も言われたように、インターネットの普及によって、国境を超えてやり取りが発生し、海外との整合性を取る必要性が出てくることはわかります。けれども、整合性を取る際に長い方に合わせる必要はないのではないか。ベルヌ条約で国際的な標準として死後50年というのを決めているのだから、それを基本に考えて議論したらいいのではないかと感じます。
 作った方の思い入れというのも理解できますし、著作物に対するリスペクトも、エンドユーザーにももちろんあると思います。でも、色々な著作物をできるだけ自由に試聴したり、ときには引用したりしながら使う環境を作ることは非常に重要だと思っていまして、その際にできるだけ流通しやすい環境作りを、社会的に困らない範囲で行っていくことが重要だと思っています。
 そして、以前の資料にあったように、エンドユーザーの多くは特に保護期間の延長の必要性を感じていないという事実を、改めてきちんと、意見として言っておきたいと思います。以上です。

【野村主査代理】 それでは、佐々木委員。

【佐々木(隆)委員】 配信事業を行う立場から若干お話をさせて頂きます。音楽配信において、各国で保護期間が異なることの問題点というのは、12ページに、私どもの団体の戸叶氏が真ん中あたりで触れておりますが、やはり国によって保護期間が異なるということで、ビジネスに色々な影響があるということは事実で、特に日本では配信を考えますと、先進国との間で色々問題があります。
 ただ、逆に、日本のコンテンツの海外進出ということでいうと、アジアは非常に巨大なマーケットなので、アジアの国がどのように保護期間に取り組むかということは、非常に大きな問題になるのではないかということです、わが国の著作権がアジア諸国でどの様な保護期間になるのか非常に重要な問題となります。
 また、利用者の立場、配信事業者の立場から言いますと、保護期間の延長によって、現状でもまだ問題が解決されていない色々な問題、特に50年の保護期間が切れたのか、切れないのかという調査、それに関わる権利処理コストは非常に大きい。我々としては、できるだけ古い名作を使っていきたい、もしくは色々な曲なり、作品を広げていきたいということは、ビジネスの上では常に考えているわけです。その経済性に合った、バランスのとれた権利処理コストで実現できるかどうかということは非常に大きな問題でございまして、そういう観点から、50年の許諾権をそのまま20年、許諾権という形で延長するのがいいのか、別の形で延長するのがいいのかも含めて、延長するか、しないかという論点だけではなくて、延長したとしても、利用の促進が円滑にいきますし、また、その需要に合ったコストで使えるという方法論、こういった角度からも議論が進められれば、延長することが、そのまま作品の世の中に対する普及とか、文化、ビジネスの面で貢献するかどうかというのが分かるのではないかということでございますので、ぜひ、そういう角度からも、これから議論を進めて頂ければありがたいなと思っております。

【野村主査代理】 三田委員、どうぞ。

【三田委員】 2点発言させて頂きます。1つは、先ほど津田委員から、多くの著作者がリスペクトを求めているということではないのではないかという御指摘がありました。それから、ヒアリングのときにも、平田委員から、文藝家協会から多数決をとったわけでもないのに、文藝家協会が保護期間の延長を求めるのはいかがなものかという御発言もあったように思います。
 これに対しては、すみませんでした。まず、私は文藝家協会の副理事長で著作権管理部というのがありまして、そこの責任者もしております。文藝家協会の著作権管理部というのは、主に二次利用を扱うものでありまして、普通、作家が出版社と契約を結ぶ場合は自分でやればいいんです。それから、原稿を書くだけだったら著作権法も要らないんです。原稿を書いてお金をもらえばいいだけであります。
 二次利用について、管理部で管理するということと、もう一つは、準会員の方、御遺族の方でありますけれども、これについては一次利用について、全集に入れるとか、アンソロジーに入れるとか、そういうものについては管理するということであります。ですので、私の頭の中で著作権管理というと、大体御遺族の方しか念頭にないわけです。準会員になっている方というのは、一応作家が死んだ後でも本が出ている人ばかりでありますので、もう本が出ていない人は準会員にならないので、ですから、経済的利益をある程度受けている御遺族の方というのが念頭にありますので、話の成り行きで多くの作家が死後、保護期間の延長を求めているという言い方をしたんです。けれども、実態はそうではありません。書いて、書くだけでもいいんだという方が大変多いんだということは、私も認めます。
 もう一点は、都倉委員に質問なんですけれども、先ほど文化庁さんからも御紹介がありましたCISACの総会で、戦時加算について、世界中の著作者の団体が、実際に戦時加算を行使しないというのは戦勝国だけなわけですけれども、しかし、それ以外の国も満場一致でそういうことを決議したと伺っております。
 私は、CISACの会長に手紙を書いて、こういう問題があるんだということを要請した立場ではあるんですけれども、実際には、都倉さんも出席されていたんですね。そのとき、一応満場一致とは聞いているんですけれども、国ごとにどんな温度差があったのかとか、仕方がないから決議したんだとか、あるいは、もっと積極的に決議されたのか、その会場の雰囲気を少しお伺いしたいと思いますが。

【野村主査代理】 よろしいですか。

【都倉委員】 このお話は、先ほど主査からも振られたんですけれども、保護期間と戦時加算のタイムテーブルのときに御説明しようと思っていたんです。
 私はCISAC、ブリュッセルにJASRAC(ジャスラック)という立場から行ってまいったわけでございます。これは、四、五年前から、主だった、ASCAPとか、PRSとか、GEMAとか、SACEMとかいう、GEMAは違いますけれども、強力に戦勝国、15カ国とロビーをしてまいったわけでございます。やはり、これは10年間の権利、経済的な利益も放棄するということなので、なかなか全会一致は難しいかなと思っていましたが、我々の経済的な理由というよりも、やはり日本の著作権の戦後はやっぱりまだ終わっていないという、この1つの心情的なものを訴えたということが、一番効果を発揮したのではなかろうかということでございます。
 御承知のように、CISACというのは114カ国、217団体という大きな組織でございますけれども、決議が3つほどございまして、その前には非常に暗いCISACからの除名決議というのが、我々のこの戦時加算の決議の前にありました。これは、中南米のグァテマラという国の問題だったんでございますけれども、彼らのやり方が、あまりにも著作権というものを全く無視した色々な不祥事がございまして、JASRAC(ジャスラック)も期限つきの除名なんですけれども、それに賛成せざるを得なかったわけです。中南米の国というのは一体感がございまして、JASRAC(ジャスラック)がそれの除名決議に賛成をしたということで、みんなじろっとこちらを見るわけです。
 それで、これは次の決議はまずいなと思って、私はちょっとフロアをお借りしてお話をしたんですが、何とその南米も含めて、全会一致で、不平等で日本をねらい撃ちにした、この戦時加算という条項は、本当に不合理であると。日本に対して、ある意味では、ここにも書いてありますけれども、60年間忠実にこの戦時加算を履行してきたし、今は著作権の非常な貢献国であると、ありとあらゆるCISACにとっても大きな著作権大国であると、こういう認識で、この条項は条約ですから削除はできませんが、凍結し、権利行使を停止すると、こういうことを全会一致で決議して頂いたと。この全会一致ということが、私は非常に嬉しかったし、意味があったのではなかろうかということでございます。

【野村主査代理】 どうもありがとうございました。
 それでは、椎名委員。

【椎名委員】 何か、会議は、権利者不明の場合の著作物等の利用の円滑化と、アーカイブ事業の円滑化方策についてという順番で議論されると書いてあるにも関わらず、すでに保護期間の話で思い切り盛り上がっているんですが、そこで、ちょっと僕も発言させて頂きたいと思います。著作者にとって一番インセンティブになるのは何かといったら、保護期間もさることながら、どういう金額のお金を得ることが出来るかということが一番関心事になると思うんです。保護期間が延びるということは、収入を得るチャンスが延びるという点で、それを好ましいと思う著作者が多いのは当然なことだと思います。
 知財推進計画を見ても、クリエーターへのリターンを強化するとか、知的財産の保護を強化するとか書いてあって、権利者の過分な権利主張を抑制するとは書いていませんので、保護期間を延長することは、国策としても決して間違っている方向ではないと思います。海外との取引との関係とか、二次利用が進まなくなるとか、そういったところの議論というのは結構拮抗していて、プラス面、マイナス面があると思うんだけれども、それ以外に創作者のメンタリティーとして述べられている点、例えば創作者たるもの、延ばそうとするべきではない、あるいは延ばしたいという、その辺の信条やメンタリティーに絡む部分というのは、例えば保護期間を延長してそれを上限規定と捉えれば、自分は50年でいいんだという主張も出来るわけですね。
 自分の権利を相続させて、子孫にそういうものの処理を任せるわけにはいかないんだとすれば、そういう選択をすればよいわけで、しかしまた保護期間を延長しなかったらそういう選択の余地もない、という角度から考えていってもいいのではないかと思います。

【野村主査代理】 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に瀬尾委員。

【瀬尾委員】 先ほど、津田委員からおっしゃられた、平準化といったら、一番長いところに合わせざるを得ないのではないかという御指摘がございました。ベルヌ条約というのが、一応条約としてはきちんとございまして、50年ですけれども、実際に今度、韓国も70年に延長する方向にあるということを伺っております。
 そうしますと、日本だけ50年ですけれども、欧米、韓国と、今の流通している著作物のほとんどは、70年の保護を受けている著作物が流通すると。これは、ちょっと理性的な発言ではなくて申しわけないですが、私のイメージだと、これから知財立国で海外にコンテンツを輸出すると言っているのに、何となくスタートラインがみんなより10メートル、一応規約では10メートル前に出ていいんだから、10メートルから出ていいのではないかと言っているようなことも、ちらっと感じます。これは、私の私的な感じですけれども。
 ただ、決してそれを一番長いところに合わせようと私は言っているわけではないし、一番長いところ、もしくは外圧云々によってではなくて、フェアな状態にするために、一番多い70年に平準化していったらいかがなものかと申し上げているだけです。ですので、一番長いということでどんどん延ばしていったら、どんどん著作者が喜ぶという、それはちょっと強欲かなという気もしますので、そういう根拠で私は申し上げたということです。

【中山委員】 1つよろしいですか。前回のヒアリングを聞いていて私が感じたことですが、どうも権利者団体の方は、念頭にあるのが漱石とか、大観とか、いわゆる文豪、巨匠なのではないかと思うのです。私も物書きの一人ですから、三田委員のおっしゃっている心境はもちろん良く分かりますが、実際は金のためだけに創作している人もたくさんいますし、あるいは、コンピュータープログラムのように、あまりメンタルなものは関係なく、完全に経済財として機能しているものもたくさんある。そういうものを全部合わせてみて、相対的に情報の豊富化にとって役に立つかということを議論すべきで、あまり個々的に、あの未亡人がどうしたとか、こちらの未亡人がどうだったか、という議論は、すべきではないと思います。
 また、前回のヒアリングでは、創作者というのは家族を犠牲にして創作しているのだから子孫を保護して当然であるという意見も聞かれました。しかし、創作者の中には家族を犠牲にして、銀座で飲んだくれている人もたくさんいるわけです。ですから、あまり具体的に、個別にこういう話がありました、という議論ではなく、総体として、あるいは一般論として、保護期間の延長が情報の豊富化に役に立つのか否か、そういう議論をすべきではないかと思います。

【野村主査代理】 それでは、最後に上野委員、どうぞ。

【上野委員】 かなり中身の話に入ってきているようですけれども、今後の進め方に関わることといたしまして1点だけ申し上げます。
 先ほど人格的利益に関するお話がありました。確かに、ご指摘になられました通り、著作者人格権は著作者の死亡とともに消滅すると考えられております。ですけれども、著作権法には60条の規定がありますので、著作者が存しなくなった後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならないものとされております。したがいまして、著作者の死後もその人格的利益は守られることになろうかと思います。そして、60条違反行為に対しましては、著作者の孫までの遺族が民事的な差止請求等を行うことができますし、また刑事罰の規定もありますから、たとえ孫がいなくなった後でありましても、刑事罰によっては人格的利益が保護され続けることになろうかと思います。
 その意味では、著作権というのは、あくまでもっぱら財産的利益の問題であり、人格的利益の保護とは関係ないというのは、その通りだろうと思います。
 ただ、著作権というのは、常に財産的利益を確保する目的で行使されるわけではありません。場合によっては、人格的利益の確保のために著作権が行使されるということもあるということは、以前から指摘されてきたところであります。その意味では、保護期間延長に賛成される方のご意見が、著作者の死後、著作権法60条だけでなく、財産権としての著作権もあったほうが、人格的利益を保護するためにより実効性があるというご主張をなさっているものと理解するならば、確かにそのようにいえるところがあるかもしれません。
 ただ、仮に、保護期間の延長が人格的利益を確保することの実効性をある程度高めるといたしましても、そのことは本当に著作権の存続期間を延長してまでしなければ実現できないものなのかということは、やはり問題とならざるを得ないのではないかと思います。
 むしろ、先ほど中山先生からも御指摘がありましたように、過去において諸外国で保護期間が延長されてきた際に、延長の正当化根拠としてどのようなことが示されてきたかと考えますと、リスペクトであるとか、人格的利益の確保とかいうことは、少なくとも表面には出てきていないと思います。
 ですので、今後の議論におきましても、保護期間の延長を賛成する立場をとられるのであれば、過去の色々な議論、とりわけEC保護期間指令において保護期間を延長する理由として示されていたものを分析して、わが国にも妥当するものがあればそれをもっと前面に出してくる方がいいのではないかと思います。具体的には、EC指令におきましては、商品やサービスの自由な流通、平均余命の伸長、戦時加算といった理由が挙げられていたわけでありますが、とりわけ平均余命の伸長という理由は、私もこれ自体、妥当性があるかどうか確信は持てませんけれども、諸外国では、かなり古くから大まじめに議論されていることでありますので、保護期間の延長を賛成されるのであれば、そうした論拠についても、あまり避けることなく分析して、議論するなら議論すべきはないかという気がしております。以上です。

【野村主査代理】 それでは、定刻が参りましたので、今回ほとんど保護期間の議論になりましたけれども、今後、次回以降は先ほどの資料4に沿って、1つ1つの検討課題について個別に議論を深めていくということにしたいと思います。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いします。

【黒沼著作権調査官】 次回の日程でございますけれども、次回、7月9日(月曜日)14時から16時、三田共用会議所の1階講堂で開催を予定しております。出欠については、事前にお伺いしておりますけれども、万一変更等がございましたら、事務局のほうに御連絡をお願いします。以上でございます。

【都倉委員】 この8月22日が、まだ不確定ですか。

【黒沼著作権調査官】 はい、8月22日のほうは、ちょっと調整させて頂きたいと思っております。

【野村主査代理】 それでは、本日はこれで、文化審議会著作権分科会、第4回の過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

─了─

(文化庁著作権課)


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