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資料3

私的録音録画補償金制度の具体的制度設計について(案)

平成20年5月8日

1 制度設計に当たっての基本的な考え方

  •  本年1月17日の文化庁案では、私的録音録画補償金制度の縮小を原則としつつ、当面補償金制度での対応を検討する必要がある分野として、音楽CDからの録音と無料デジタル放送からの録画をあげている。
  •  これを前提として、今後の補償金制度の具体的な制度設計を検討するに当たっては、次のような点を基本とすべきである。
    • A 補償金制度の縮小を前提としつつ、当面、経過的に存置するものであることから、制度の基本的枠組みを大きく変更することは適当ではないこと
    • B Aを原則としつつも、平成4年の補償金制度導入以降の録音録画源の多様化や著作権保護技術の導入等の録音録画の実態の変化を踏まえ、それらの状況の変化を制度の運用に適切に反映しうるよう見直しを行うこと

2 具体的な制度設計

(1)録音録画機器・記録媒体の提供に着目した制度設計

 現行制度の基本的枠組みを維持するという立場から、録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度を維持すべきである。中間整理においても、この考え方が大勢であった。

(2)対象機器・記録媒体の範囲

1基本的な考え方

 対象機器・記録媒体について、中間整理では、「著作物等の録音録画が行われる可能性がある機器は原則として対象すべきであるという考え方」と「現行法の考え方を原則として維持すべきであるとする考え方」を並べているが(中間整理P129、P130参照)、現行制度は、録音録画を主たる用途としている機器及び記録媒体を対象としているところであり、基本的な考え方に沿って、これを維持するものとする。

2機器等の類型ごとの考え方

  •  中間整理における機器等の類型の区分(中間整理P130〜P133参照)について、前述1を踏まえ、考え方を整理すると次のとおりである。
    • ア 分離型専用機器と専用記録媒体
      •  現行制度の対象であり、当然対象になると考えられる。
      •  なお、録音録画専用機器・記録媒体であっても、第30条の適用範囲から除外された利用形態のみに使用される機器等や補償の必要性がないとされた著作権保護技術だけに対応する機器等は対象外とすべきである(中間整理P130参照)。
    • イ 録音録画機能が附属機能でない機器のうち記録媒体を内蔵した一体型のもの(例HDD内蔵型録画機器、携帯用オーディオ・レコーダー)
      •  録音録画を主たる用途としている機器等である限りは、特に分離型機器等と区別する必要がないので対象にするべきである。
      •  なお、最近の携帯オーディオ・レコーダーについては、録音録画機能以外の機能を有しているものもあるが、製造業者の販売戦略や利用の実態等に照らして、現状においてはほとんどのものが録音録画を主たる用途としていると考えられるので、対象機器に加えるのが適当である(中間整理P130〜131参照)。
    • ウ 録音録画機能を含めて複数の機能がある機器でどの機能が主要な機能といえないもの(例 現在のパソコン)
      •  現状では、録音録画を主たる用途としている機器とはいえないことから対象とすべきでない。
      •  ただし、いわゆるパソコンと総称される機器については、今後様々な仕様の機器が開発され普及する可能性があるところから、仮にパソコンといわれるものであっても、ウに該当しない機器が開発・普及するような場合は、改めて考え直す必要があると考える。なお、このことはエについても同様である。

        • (注)いわゆるテレビチューナー付きパソコンについても、現状では、録画を主たる用途としている機器とはいえないので対象外と考えられる。
      •  なお、パソコンへの録音録画については、第30条の適用範囲の見直しにより、違法録音録画物や違法配信からの私的録音録画や、適法配信からの私的録音録画については、第30条の適用範囲から除外され、別途の対応がなされうることとなること、音楽CD等からの録音についても、携帯用オーディオ・レコーダーへの録音の手段として行われることが多く、その場合には携帯用オーディオ・レコーダーについて補償金の対象となっていることも考慮すべきである(中間整理P131参照)。
    • エ 録音録画機能を附属機能として組み込んだ機器(例えば留守番電話、携帯電話、録音機能付きカーナビゲーション)
      •  現行制度においても本来の機能に附属する機能として録音録画機能を有するものは除外しており、また、ウの考え方との均衡からも、現状では対象にすべきでないと考えられる。
      •  なお、録画機能を組み込んだ録画機能付きテレビについては、先述したテレビチューナー付きパソコンとは異なり、録画源であるテレビに録画機能が一体的に組み込まれた機器であり、いわゆる汎用性のある機器とはいえないことから、対象に加えて差し支えないと考えられる(中間整理P132参照)。
    • オ 専用記録媒体以外の記録媒体
      •  ウと同様であり、現状では対象にすべきではないと考えられる。

3第30条第2項の改正

 以上の考え方を第30条第2項において明確にするため、次の点について所要の法改正を行う必要がある。

  •  現行法は録音録画機能が本来の機能に附属するものではないものを対象にするという機能に着目した規定の仕方をしているが、平成10年の政令改正時に整理された立法趣旨の確認事項(中間整理P127参照)に従い、対象機器等に該当するかどうかの要件として主たる用途の要件をより明確にすること
  •  一体型の機器等についても対象になること

(3)対象機器及び記録媒体の決定方法

1政令指定方式の維持

  •  (2)の考え方に基づき、対象機器等の範囲が明確であり、法的安定性や予見可能性の点で優れた政令指定方式を維持すべきと考える。

2評価機関の設置

  •  しかしながら、上記のように可能な限り法令上明確化を図るとしても、個々の機種等の評価については、それが対象機器・記録媒体かどうか疑義を生じる場合もあると考えられる。
  •  したがって、関係者間で疑義が生じ、協議によって解消しない場合については、その解決のため文化庁に設置された公平な評価機関により判断する仕組みを導入することが必要である。
  •  この評価機関は、権利者、製造業者、消費者、学識経験者等で構成され、文化庁の要請に基づき、透明性及び迅速性が確保された決定プロセスにより検討を行うものとすることが必要である。
  •  また、当該機関は、対象機器等の決定が円滑に行われるよう、例えば主たる用途の要件を判断する場合の基準作りなど、個々の紛争処理以外の機能を持たせた機関として位置づけるべきである。

(4)補償金の支払義務者

  •  中間整理では、支払義務者について法律的な整理を行ったところである(中間整理P135〜P137参照)。この問題は関係者で大きく意見が分かれているが、1において、現行制度の基本的枠組みを維持するとの基本的考え方に基づき、この点については現行制度のとおり補償金の支払義務者は消費者とし、メーカー等は協力義務者とすることが適切であると考える。

     この点については、制度の国際的整合性や、機器等のメーカー等は機器等の販売等により利益を得ていることから、補償金の支払義務者はメーカー等とすべきという考え方もあるところである。

  •  なお、返還制度については、利用者の立証責任の軽減、返還手続きの簡素化等の運用上の工夫によって返還制度の問題点はある程度解消されると考えられることなどから、課題を残しつつも運用上の工夫で対応することとする。

(5)補償金額の決定方法

1認可制の維持

 現行制度では補償金額の決定にあたり、指定管理団体から文化庁への申請に基づき、文化審議会での審議を経て、文化庁の認可を受けることとなっており、この点についても現行法の手続きを維持することが適当である。

2認可にあたり関係者の意見を反映する仕組

  •  しかしながら、私的録音録画の実態の変化を適切に補償金額の決定に反映しうるように、具体的な補償金額の認可手続の前に、より多くの関係者の意見が反映されるような仕組作りが必要だと考えられる。
  •  具体的には、(3)2の評価機関において、補償金額のあり方について関係者から意見を聴取し、次の補償金額の決定に関して考慮すべき事項も踏まえた上で、一定の方針を策定することが考えられる。

3補償金額の決定に関して考慮すべき事項

 補償金額の決定に関して次のような事項を考慮すべきである。

  • A 補償金額の決定にあたっては、私的録音録画の実態を適切に制度の運用に反映させるという観点から、実態の正確な把握と分析が必要であり、定期的な実態調査を行うことが不可欠である。
  • B 私的録音録画の実態の変化を踏まえて、補償金額の決定にあたっては、次のような点に留意すべきである。
    • 1)録音録画に用いられる機器・記録媒体の機能・用途
    • 2)私的録音録画に用いられる録音録画源の実態
    • 3)機器・記録媒体が補償金の対象となる私的録音録画に用いられる実態
    • 4)機器・記録媒体と著作権保護技術との関係
    • 5)タイムシフト・プレイスシフトとの関係
    • 6)機器・記録媒体の記録容量と私的録音録画の頻度や分量との関係など
  • C 私的録音録画に使用される程度や著作権保護技術の影響、対象機器・記録媒体の機能・用途などの事項は法律上考慮事項として明記することも考えられる。
  • D 2の仕組を活用のうえ、迅速な補償金額の決定が出来るようにすることが重要である。

(6)私的録音録画補償金管理協会

  •  録音機能と録画機能が同一の機器等で併存するものが増加してきたことを踏まえ、また共通目的事業の合理的・効率的実施、管理経費の削減等のため、補償金管理協会は1つにすることが適当と考えられる(中間整理P139参照)。

(7)共通目的事業

  •  補償金制度は包括的な制度であること、個々の利用者の録音録画の実態を詳細に把握することは事実上不可能であり、個々の権利者への厳密な配分には限界があるので、共通目的事業は継続すべきであると考えられる(中間整理P140参照)。
  •  なお、共通目的事業の用途については社会的関心が高いと考えられるので、事業の透明性を確保するため、事業内容の公開を義務づける必要がある(中間整理P141参照)。
  •  また、共通目的事業の割合については、現行制度における2割を維持することが適当である(中間整理P141参照)。

(8)補償金制度の広報

  •  補償金制度に関する国民の理解を得るための広報活動は重要であり、そのため関係者は努力する必要があると考えられるが、とりわけ補償金管理協会の役割が重要であると考えられるところであり、同協会に広報義務を課すことが適当であると考えられる(中間整理P141参照)。