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著作権分科会 私的録音録画小委員会(第8回)議事録・配付資料

1. 日時
平成19年7月26日(木曜日)13時31分〜15時35分

2. 場所
アルカディア市ヶ谷 3階 富士(東)

3. 出席者
(委員)
石井,井田,大寺,華頂,亀井,河村,河野,椎名,津田,筒井,土肥,苗村,中山,野原,生野,松田,森田の各委員
野村分科会長
(文化庁)
吉田長官官房審議官,山下著作権課長,川瀬著作物流通推進室長ほか関係者
(オブザーバー出席者)
野方(日本音楽作家団体協議会顧問)

4. 議事次第
1   開会
2 議事
(1) 制度の枠組みについて
(2) その他
3 閉会

5. 配付資料一覧
資料1   前回の意見概要

参考資料1 私的録音録画に関する制度設計について
(※(第6回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料2 現行制度の概要について
(※(第6回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料3 検討の進め方
(※(第6回)議事録・配付資料へリンク)

6. 議事内容
(中山主査) ただいまから文化審議会の私的録音録画小委員会の第8回を開催いたします。本日はご多忙中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容から考えますと特段非公開にするには及ばないと思慮されますので、傍聴者の方々には既にご入場いただいておりますけれども、このような処置でよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

(中山主査) ありがとうございます。
 それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々にはそのまま傍聴をお願いいたします。
 なお、本日は小六委員がご欠席でございますが、小六委員の申し出によりまして、日本音楽作家団体協議会顧問、野方英樹様がオブザーバーとして出席をされております。
 それでは、議事に入ります。
 まず事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

(木村課長補佐) 配付資料の確認の前に、前回会議でもご紹介させていただきましたが、事務局の人事異動者について改めてご紹介させていただきます。
 7月11日付でございますが、文部科学省初等中等教育局教科書課長より著作権課長に異動しております山下和茂でございます。

(山下著作権課長) 山下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

(木村課長補佐) それでは、恐れ入りますが、配付資料の確認をお願いいたします。
 本日の資料1でございますが、前回会議の意見概要でございます。そのほかに、参考資料1から参考資料3までございますが、これは前回お配りした資料と同じものでございます。あと、目の前にあります青色の冊子でございますか、この中には、前回まで各委員よりいただきました意見書等をとじ込ませてもらっております。漏れ等ございませんでしょうか。
 ありがとうございます。

(中山主査) それでは、初めに議事の段取りについて確認をしておきたいと思います。
 本日は前回に引き続きまして、参考資料1、私的録音録画に関する制度設計について議論をちょうだいしたいと思います。なお、意見を提出している委員もおられますけれども、これまでと同様、項目ごとの議論の中で各委員のご意見を説明していただければと思います。
 それでは、前回の議論に続きまして、2(2)「録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計について」の2であります「対象機器・記録媒体の決定方法について」、この項目から議論を始めていきたいと思います。
 何かご意見がございましたらお願いいたします。前回はここで激しい議論の途中で終わりましたけれども、何か追加でご意見がございましたら。どうぞ。

(野方オブザーバー) 小六委員の代理で出席させていただいております野方でございます。
 オブザーバーから発言をさせていただくのはちょっと恐縮なんですけれども、皆様がお考えいただいている間に、小六委員の意見ということで申し上げたいと思います。
 対象機器等の決定につきましては、小六委員の意見書にもございますように、基本的にはすべての私的録音録画が可能である機器、記録媒体について対象にしていただきたいと考えております。
 ですので、この考えに基づけば決定方法を決める必要がないというのが極端なところなのですけれども、もし決めなければならないということであるとしましたら、これは額の決定とあわせてということで、小六委員の意見書5ページにございますとおり、フランスの例に倣いまして公的な評価機関にゆだねるということが現実的であるのではないかと考えております。
 従来のように、政令で定めたり、あるいは、メーカーと権利者との協議等にゆだねたりしますと、決定までに非常に長い時間を要するということになりまして、そのような方法をとっている国ではどこも補償金の管理団体は苦労しているということも聞いております。
 そうした中で、対象とするかどうかということを決定するまで、例えば機器・記録媒体を販売せずにとめておいていただくということなのであれば、早く世の中にそういうものを出していくということのインセンティブが双方に生じることになりますので早く決まるという方向に向かっていくのかもしれません。が、そうでないとすれば、やはり渦中の機器・記録媒体が市中で非常に多く売れている一方でこのように何年も委員会で議論をしなければならないということも起こり得てしまうということは著作者としては問題であると考えているところでございます。
 この間に、メーカーは利益を上げ、消費者の方は非常に利便性の高い中で私的複製を楽しむことができるにもかかわらず、私たち著作者が何の恩恵にもあずかることができないという状態は私どもには理解できないところです。
 ましてや、今のように急速に技術等が発達して音楽の楽しみ方も変化する時代にはこういった事態は避けたいと考えております。このような事情から諸外国の実例に学び、フランスの例に沿うことが現実的ではないだろうかと考えております。
 以上でございます。

(中山主査) ほかに。どうぞ、亀井委員。

(亀井委員) ありがとうございます。
 今ここの参考資料ですと、対象機器を汎用機器・媒体に広げることを前提にして問題点を解決するかのようなご提案がされているわけですが、機器の対象を広げるかどうかということについては以前より申し上げているとおり、私も反対をしております。
 政令を指定する、政令指定によるという方式そのものの問題点ととらえたときに、ここにありますように新たな対象の追加に迅速に対応できない、あるいは、消費者から見て決定プロセスの透明性が確保されていない、あるいは、1番目、現行の政令指定方式では難しいというこの問題そのものをとらえて議論する余地があるのではないのかと思われます。
 JEITAといたしましては、法的安定性ですとか明確性を担保するために政令指定方式は維持すべきであるという意見でございますが、ここに挙げられている個々の課題につきましてはもっと違う解決の方法もあるんだろうと、透明性が確保されていないのはなぜかということもきちっと分析をして考えるべきで、プロセスをオープンにする、あるいは、関係者の検討に対する迅速な検討への努力を促すであるとか、あるいは、現行の技術を指定する方式がわかりづらいと書いてございますが、これは私どもメーカー自身、あるいは、そのほかの方々もそうかとは思いますが、よほど技術をおわかりの方でないとわからないという点はこれは消費者だけではございませんので、消費者の理解を妨げている一因という意味では全く違うファクターではないかと考えております。
 以上でございます。

(中山主査) ありがとうございます。
 ほかに何かございましたら。どうぞ。

(井田委員) 井田でございます。ありがとうございます。
 先ほど亀井委員からも言われましたように、現行制度はいろいろ問題があるとここには挙げられているかもしれませんけれども、かなりの部分は運用を改善することで解決できるようになるのではないかと、そういうことをもっと議論していくべきではないかなと考えております。
 それから、政令において技術的な方式を記述するという現行の方式は何が対象になるのかということについて非常に明確で、紛争防止機能が高いという点は評価されていいのではないかなと考えております。
 そういう意味で、今の現行のいろいろな課題については運用を検討するという形で改善が図れるのではないかということで意見を述べさせていただきます。

(中山主査) ほかに何かございましたら。どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) 現行の政令指定の方式が、機器と媒体が別体であることを前提とするような書きぶりであって、なおかつ、汎用と専用という概念を中心に構成されているというところから考えると、今の私的録音録画の実態が必ずしも専用機器で行われるわけではない、多くの汎用性を持った機器がそういう用途に使われていくという実態がある以上、まず政令指定するという方式自体の問題ではなくて、政令指定するための要件が現実に合わなくなっているという問題としてあるんではないかと思うんですが、それを見直そうとする際にやはり、これは前回も申し上げたんですが、政令による指定という方式ではなく法律には私的録音録画に供される機器というふうにだけ定義をして、それに実際補償金をかけていくときの課金の仕方についてはさまざまな要素を勘案して決めていくという方式が一番望ましいんではないかと思います。

(中山主査) ほかにございましたら。どうぞ、野原委員。

(野原委員) 前々回の第6回のときに発言したことの繰り返しにもなるんですけれども、やはり今のこの制度は著作権ビジネスを考えた場合にそれを保護する保護政策の一つという性質が強いと思うんですね。私的録音録画の範囲を決めるのは確かに法制度で行うべきですけれども、それを補償する、また、幾ら補償するといったことを法制度で決めるという考え方に私は違和感を感じます。
 その理由は前々回もご説明したとおりで、今、IT化の進展によってデジタルコンテンツの利用のあり方ですとか、それを取り巻くビジネスのあり方が大きく変化しているわけで、その中には新しいビジネス形態があらわれたり、これまでのビジネス形態が変化していったりということが起こっているわけですね。
 新しい体制をつくっていくという中で、法制度でこういった形でお金を動かすというのはやはりいかがなものなのかなという気がします。しかも、エンドユーザーから見た場合にはほとんど実質的によくわからない状態で、税金のようにお金を回して、その結果、実際に私的録音録画の回数に従って個々の著作権者に支払われているというわけでもなく、非常にわかりにくい形で徴収、そして、分配が行われているということが、しかも、それが自然のビジネスの中で契約関係で合意されるのならばまだ私はそれはそれでありだと思うんですけれども、それを法制度で決めるということに非常に違和感を覚えます。
 そういう意味で、今回のどの機器がということ以前に、法制度で何をすべきかということをきちんと議論をし、それを位置づけた上で考えるべきだと思います。
 もう一つは、やはりこの小委員会で皆さんのご意見を伺っていて強く感じるのは、著作権というのはもちろん著作物をつくったり、あるいは、演奏等をされるということでかかわられた方の権利ということで非常にそれはよくわかるんですけれども、と同時に、今回のような補償制度ということを議論しているということは、それに対するビジネスという側面がきちんとあると思うんですね。著作権ビジネスが実際にどういうふうになっているのかというビジネスの実態をきちんとみんなで共有すべきではないかと思います。
 例えばJASRAC(ジャスラック)さんの場合、どういうような形で今は著作権ビジネスが動いているのかということを、市場規模ですとか、どういうコンテンツに対してどういうような著作権者があらわれているのかとか、その著作権を、制作、つくる人と演奏する人、あるいは、メディアをつくる人とかいろんな段階でどういうふうに支払われてどう動いているのかということもきちんと共有した上で、その中にこの制度がどう入るのかということをもっと共有すべきではないかと思います。というのが2点目です。

(中山主査) それでは、大寺委員。

(大寺委員) 対象機器の範囲とその決定方法についてですけれども、録画機器については記録媒体を内蔵している一体型の機器、ハードディスク録画機とか、あるいは、最近売り出されつつありますブルーレイディスク録画機などが補償金の対象外になっています。これは明らかに録画専用機器ですので、早急に補償金の対象にしていただければと思っています。
 それから、汎用機器なんですけれども、やはり録画機能を持っているというところに着目し、さらに、ユーザーに不公平感というものがないような形で補償金の制度の対象にしていただければなと考えております。
 それから、こういう機器の決定の方法として、政令により指定変更するということを迅速に対応していただくということは望ましいのではないかなと思っておりますけれども、やはり当然政令で一定の何らかの一般的な基準というのが定められると思うんですが、それについては可能な限り透明、具体的なものであってほしいと希望しております。
 以上です。

(中山主査) それでは、椎名委員。

(椎名委員) 対象機器の指定方法等の話からちょっとずれてしまうかなとも思うんですが、ちょっと野原委員にうかがいたいんですが、私的複製が無許諾で行えるという状況に対して補償をするための制度があるというときに、その制度のその30条1項の受益者である人が権利者に対して何らかの補償を行っていくわけですよね。その場合に、これは僕の考えですけど、ユーザーも受益者であると思うし、メーカーもまた受益者であると思っているんですね。
 そうしたときに、メーカー及びユーザーの得る利益を権利者に還元していくような、いかなるビジネスや契約があるのか、そこを伺いたいんですけれども。

(野原委員) 直接的なお答えになるかちょっとあれですけれども、例えば先日、日経新聞でヤフーのユーザーの動画投稿のサイトにJASRAC(ジャスラック)さんで管理されている著作物、音楽が利用されたときには、ヤフーがかわって著作権料を支払うというような方向で契約が進められつつあるということが記載されていたと思うんですけれども、あれはもちろん私的録音録画ではなくて、音楽という著作物の利用に対してどうやってその著作権料を回していくかということの一つの試みだと思うんですね。私はああいったことは一つの解決策としていいんじゃないかと思うんですね。
 それは何が言いたいかというと、あれは決して法制度で決めていることではなくて、ビジネスとして両者がどうやってやるかを検討して契約を進めていこうとしているわけで、資本主義の原理に基づいてその当事者たちが契約関係をもってするという自主的な動きだと思います。
 もちろん、あれはコピーのことではないんですけれども、あれも一つのこれまでなかった著作権料の支払い方の模索の形だと思うんですね。私的録音録画の場合に、先ほど申し上げたように、どういうものが私的録音録画で、何が著作権料を支払うべきで何を払わなくてもいいかといったことを制度で考えるということは、やはりそれはあることだと思うんですけれども、それを補償する制度自体が、さっき申し上げたように、非常に税金のような形で、しかも、どういう機器に対して何パーセントということも制度的に決まるといったことが、それはやはり不自然ではないか、そして、それが保護的、保護政策的ではないかと申し上げているということです。

(中山主査) どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) ヤフーの話というのは著作物のひとつの利用形態として新しく生まれてきたもので、そこに関して何らかの利益調整ということが契約によって果たされたということで理解すればいいと思うんですが、ここで私的複製に関連する機器・媒体を販売することによって得られる利益、それから、私的複製が可能になる機器・媒体を使って複製することによって得られる利益、そういうものを調整する仕組みは、補償金制度しかないと思うんですね。例えば私的な契約、相対の契約でこの問題が解決されるんだったら補償金制度ってなかったと思うんですよ。例えば、私的なエリアにまで細かく分け入って個別の契約をするわけにもいかないだろうし、それは機器や媒体をつくっているメーカーも同様であって、それを大きく包括的に処理するためにこの制度ができていると思うんですね。
 だから、ヤフーのようなやり方で、機器や媒体のメーカー、及び、それを使って利益を受けるユーザーの方と権利者の間の調整に当てはめられるような契約形態というのを僕は思いつかないんですよね。

(中山主査) どうぞ、亀井委員。

(亀井委員) ありがとうございます。
 政令指定の話から少し脇道ですが、ちょっとせっかく出た議論ですので参加させていただきますが、野原委員ご指摘の保護政策的なことに陥るんではないかという点について、私も全く同じ感想を持っておりますが、それは補償金制度自体が契約で届かない範囲を補償するんだという前提であるということである場合に、今回の審議の中でもいろいろご意見が出る中で、現状は契約はそうしていないんだということから出発するというようなご意見、お考えも提示をされています。
 じゃあ、なぜ契約ができないのかと、どこに障害があるのかというところは実はあまりよくご説明をいただいていないんではないか。それから、適法配信は今回の議論の中では30条の範囲から外して契約にゆだねるという仕切りでご提案をされていまして、従前こちらの審議会、あるいは、前の法制問題小委員会のときもそうだったと思いますが、JASRAC(ジャスラック)さんのお考えは、これは配信のところまでは契約で処理しているが、それ以降については処理をしていないというご主張だったであろうと。それと、今の適法配信を除外するというところではご意見が変わられたのか、あるいは、ご主張は変わらないけれども、評価としてはそうではないということになるのかということになりますので、補償金の前提として一体契約行為がどこでできない、何が障害であるのかということがきちっとやはり説明をされていかないと、それは何を補償すべきかという議論につながりますので、そういう議論が必要だと考えます。

(中山主査) どうぞ、河野委員。

(河野委員) ありがとうございます。
 今の亀井委員のご意見の補足なんですけれども、まさに契約が届かないところに補償措置というのを考えていくのか、それとも、補償があるからそこは契約でない世界にしようというのか、多分その立ち位置の違いが明らかに2つに分かれていることによってなかなか話がかみ合わないということなんだろうなと思います。
 ですから、まさにその2つについてどういうふうに考えるかということを議論することが必要だと思いますし、前回の繰り返しになってしまいますけれども、本日お配りいただいた資料1の最後の丸2つというのは前回の私の意見だったと思われますが、機能ではなくて用途というものに着目したときに、どういう用途が補償が必要なものかという前提を、まずここにいる皆さんで共有した上で話をするべきかと。契約と補償の関係、あと、補償が必要な領域、ほんとうに無償で行える領域はないのかといったところについてもまずは議論すべきだと考えます。

(中山主査) じゃあ、すみません、椎名委員と、次、石井委員、お願いします。

(椎名委員) ちょっとその補償すべき部分というところの話をしたいんですけれども、例えばJEITAさんが主張されている契約とビジネスで解消できるという部分について、適法配信なんかもその考え方に立って配信の対価の中に含めて利用者から徴収して権利者に与えることができる、という理屈であろうかと思うんですが、それでは、その30条1項が無償無許諾で私的複製が可能であるということで上がってくるメーカーの利益については調整する必要がないというお考えなのか、そこをうかがいたいんですが。

(中山主査) それでは、亀井委員。

(亀井委員) 30条1項によって上がってくるメーカーの利益とおっしゃるのは何かということだと思うんですが、以前、プロダクトと、前回か前々回に市場の伸びということをおっしゃっていましたが、あれが椎名委員のおっしゃる利益だということでしょうか。

(椎名委員) はい。

(亀井委員) 還元する必要があるかと言われれば、補償という形で必ずしも還元するのは制度上求められていないと私は思っています。

(椎名委員) プロダクト市場規模はあくまでもプロダクト市場規模であって、デジタルコンテンツにかかわるいろんな機器・媒体の売り上げの市場規模ですけれども、その中には、私的複製ができることを標榜して売っている機械が、音声系でも映像系でもたくさんあるわけで、そこから上がってくる利益というものは、権利者の権利が制限されていることと無関係だとご主張なさっているんですか。

(亀井委員) 複製する機能がある機器であるというのは多分事実であります。それで、売れることによって何らか利益を得られるというのも事実だと思います。しかしながら、その利益を還元しなくてはいけないというところのロジックにつながるかがちょっとすみません、よくわかりません。

(椎名委員) いや、どっちかはっきりしてくれませんか。必要ないのか、必要あるのか。

(亀井委員) 利益を還元する必要はないと思います。

(椎名委員) ないんですか。

(亀井委員) はい。それは補償金という形でということですよね。

(椎名委員) いや、補償金という形じゃなくて、例えば契約でやることだって可能ですよね。

(亀井委員) それは複製機能を持たせることで個々の権利者の方々に契約で還元すると。

(椎名委員) 例えば放送事業者が二次使用料を権利者に払うように、機器メーカーが権利者に直接契約によってその部分を払うことも可能だと思うんですよ。それは補償金によらなくたっていいかもしれないけれど、そういう因果関係があるのかないのか。

(中山主査) それはもしあるとすれば、それはメーカーが複製をしているか、あるいは、複製の幇助をしているかというどちらかになるのでしょうね。

(椎名委員) 幇助している。

(中山主査) 幇助しているから法的義務がある、椎名委員はこういうご主張ですか。

(亀井委員) 30条1項が複製すること自体が問題といいましょうか、違法行為であればその違法行為の幇助ということになって法的理由もあるということだと思いますが、それとは離れて、契約上そういう契約があり得るかと言われれば、それはないことはないとしか申し上げられないと思います。

(中山主査) 石井委員、どうぞ。

(石井委員) 今の契約の問題なんですけれども、おそらく2とおりあるんではないか。放送事業者を中心にして考えた場合に、視聴する、あるいは、録画する人との契約が1つありますね。それから、反対側に権利者の方との契約、2とおりあると思います。
 録画しようとしている人との契約なんですけれども、これはそういう契約関係をつくることがいいのかどうか、契約をつくるということは逆に言いますと、この録画を30条の範囲から外すことになる、自由な私的利用はもう認めないことにするということになっていくのではないかと思います。やはり私はこれは私的な複製というものが今までいろいろなところで文化の発展、あるいは、経済の発展にも寄与してきたところをみると、あるいは、個人の楽しみというところを考えると、やっぱり私的録音録画の自由といいますか、権利者の許諾なくできる範囲というものは残しておくべきではないかと、そういうふうに思います。そうなりますと、そこで、一々の、録画しようとする人とコンテンツを配信する、例えば放送事業者との契約というものは、これはほとんど現実的には意味がない、はっきり言って契約のコストと管理のコストばっかりかかるし、管理をしているとこれはほんとうの意味の私的な複製と言えるかどうか怪しくなってくるということであまり意味のないことではないかと思います。
 そうなりますと、どれだけ録画されているかということが、当然こちらも把握できないというか、むしろ把握することがいいかどうかという問題になってきますので、権利者との間での契約、例えば1つ録画したらこれだけ払いましょうと、そういうこともなかなか難しいということになってくるのではないかと思います。
 しかし、一方で、そこで録画という行為が行われているのは確かでありますし、消費者もそれで、私もいろいろ録画しますけれども、楽しんでいるということもある、あるいは、機器が売れているということもあります。そこで、権利者だけそこから阻害されていいのかという、これは前にも述べましたけれども、そういう問題が起こってくると思うんですね。
 そういうところで、一つの全体的な知的創造のサイクルの一環として権利者に何がしかの経済的なメリットというものを生じさせる、これはやっぱり必要じゃないかと思う。それで、現在、考えられるのはおそらくこの私的録音録画補償金、決してベストとは言いませんけれども、今の段階ではベターな選択肢であるのではないかなと、そういうふうに考えます。

(中山主査) それでは、華頂委員、どうぞ。

(華頂委員) 映画の場合は、もう再三申し上げていますけど、原則コピーネバーなんですが、無料地上波放送のタイムシフトのみ補償金の運用の前提で許容しているというか、せざるを得ないというか、そういう状況なんですけれども、契約というふうになると誰とどのような契約をするのか、目の前にいる放送事業者さん、今石井さんのお話もありましたけれども、放送事業者さんと複製も込みにした契約を結ぶのかということになるんですけれども、契約ということになりましたらコピーネバーで契約せざるを得なくなりますね、間違いなく。そういうこともできないので補償金制度というのがあるんだと思うんですけれども、じゃあ、一方その放送事業者を飛び越して視聴者の皆さんと、さっき石井さんもおっしゃいましたけれども、一々録画の契約を結ぶのか、それはもう現実的には不可能ですよね。
 ですから、映画の場合はコピーネバーというのが無料地上波放送にはなじまないので、タイムシフト視聴するなら、一回コピーして見てください、そのかわり補償金の運用でそこら辺のバランスをとってほしいという非常に単純なシンプルなことなんですけれども。
 以上です。

(中山主査) 河野委員、どうぞ。

(河野委員) ありがとうございます。
 先ほどの石井委員のご意見の中で「自由な私的利用」というのがございましたが、その自由にできるということについての考え方というのもこれまた多分委員の中で立ち位置が違っているんだろうなと思います。
 自由ということですけれども、コピー禁止であればそれは自由はないということはだれの目にも明らかと。じゃあ、一方で全く制限がないというのはこれも自由であろうというのもだれの目にも明らか。では、その真ん中にある、ある一定の技術的なコントロール下で許諾なくできる領域というのをどう考えるのか、これが有償であるのか無償であるのか、それが有償であるとしたらなぜ有償であるべきで、無償であるとすればなぜ無償なのかという話を多分しているのだろうなと思います。
 この許諾なくできる領域というところの考え方なんですけれども、私どもはこれはこの範囲であれば都度許諾をいただくことをしなくても複製をしていいということが了解された範囲であろうと考えていて、それはある種包括的な許諾というような観念でも考えられるのではないか。この領域について、これは複製権を行使している領域と見るのかどうかという話ではないかなと思います。

(中山主査) 椎名委員。

(椎名委員) ちょっと亀井さんとの話に戻っちゃうんですが、契約でやる余地があるといわれてうれしくなっちゃったので、そこから先を言うのを忘れちゃったんですけど、要するに、契約とビジネスで処理できるだろうというふうにJEITAさんが主張なさったり、あるいは、野原委員がおっしゃったりすることの中には、メーカーの利益の部分が何も入ってこないんですよ。その点で僕は調整の機能として不十分だと思っていて、メーカーの利益を何らか調整するということを回避する方向でのご主張でしかないように思われてならないんですが、その点、どうですか。

(亀井委員) 余地があると申し上げたのは、現実的だとは思いませんし、そうなるかどうかわかりませんが、机上の理論としては契約する可能性、契約が全くあり得ないのかというと、それは検討するだけのことはあり得るとお答えしたんですけれども、今最後に何を聞かれているのかちょっとわからないままなんですが、利益を還元するということで非常に前々からおっしゃっているんですが、それはこの補償金制度を考える上で、今の制度もそういう制度だというお考えということなんでしょうか。それであれば、協力義務を果たしているわけですし、協力の際に、今の法では協力をしているというところがある意味利益を還元しているところだと思って、現行もそういうふうにできているんじゃないかと理解をいたします。

(椎名委員) 一言。契約の余地があるということは、メーカーの利益を調整するという選択肢もあり得るというふうにうかがったので、そうだとしたらば、例えばメーカーの利益が一切関係なくなってしまうような録音録画源の提供に着目した制度設計なんていうものは、そこでは、メーカーの利益が出てこなくなっちゃうわけでおかしいなと、そう思って質問しただけです。

(亀井委員) 例えばアップルさんがiPodを売られることを前提にiTunes Music Storeを開設してレコード会社と契約をするというビジネスだというときに、その中ではおそらくアップルさんのビジネスの中ではそういうものを含めた形で契約で処理をしたことになっているという意味では、それはビジネスの結果としてはあり得ると。その中に複製の対価というものも含まれた形で取引がされているということだろうと思います。そういう意味であり得ると。

(椎名委員) そういう意味では聞いてなかったですけどね。

(中山主査) それでは、野方オブザーバー。

(野方オブザーバー) 先ほどの野原委員のご発言に一言申し上げておきたいと思うのですが、椎名さんの直接の回答ではなかったかもしれませんが、ヤフーの件を一つの例として挙げておられましたけれども、やはりヤフーがJASRAC(ジャスラック)と契約をしている背景には許諾権があって、その許諾を得なければ著作権侵害が起こるという前提があって、その責任をヤフーさんも負いかねないという現実があるからあのような契約が成り立つのであろう、と思っております。
 そういう意味で、JASRAC(ジャスラック)のいろいろなビジネスモデルを検討してみてはということもありましたけれども、JASRAC(ジャスラック)も著作権法上に認められている著作者の許諾権を行使する団体であって、その許諾の行使に関してはここの議論とはちょっと違う話なのではないかと思います。ここは許諾権のないところでどうするかという議論をしているのではないかと思っております。
 以上です。

(中山主査) では、野原委員。

(野原委員) ヤフーの例を出したのは、もちろんそれが今回と同じものを指し示しているということは申し上げてなくて、まだ今まで契約の形ですとか解決の形がなかった状態に新しい著作権料の支払い方としてそういう解決策が出たということも起こっているというふうに申し上げただけなんですね。
 私が一番申し上げたいのは、ほんとうに法制度で決めるべきことと市場に任せるべきことというのをどこに線を引くべきなのかという議論が欠けているのではないかということです。なので、先ほどのメーカーとの議論の中でも、メーカーがコピーのデバイスですとかメディアを販売することの利益をシェアするかどうかということを当事者同士で例えば契約関係をつくって、じゃあ、何パーセントかは著作権者にペイバックしましょうということを話し合われるというのはもちろん可能性としてあるんだと思うんですけれども、そういうことをしなさいといって法制度で設定するというのはまた全然違うことではないかと私は考えていまして、私の発言の趣旨はそちらにありまして。なので、幾ら払うべきかという議論とか、何に対して幾ら払うべきかというふうにこの場の議論が最初からなっているという状況に対して、私はむしろ何は法制度で決めるべきで、何は自由市場に任せるべきなのかということをきちんと考えるべきではないかということが1つ申し上げたいということです。
 それと、もう一つ、先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、私的録音録画の範囲については、法制度で決めなくてはいけないと思いますので、それはもちろん検討すべきですけれども、それと、補償制度が常に一緒になって議論されているということに非常に違和感を覚えているという、その2点の趣旨で発言しているということです。

(中山主査) 現行法ができるときは、市場に任せたのではおそらく全く動かないということを前提に法律で決めていると思います。その後の技術の発展によっていろいろ状況が変わったと思いますけれども、具体的にはだれとだれが契約を結ぶんでしょうか。

(野原委員) それは一つの解決法だけを求めるものではないと思うんですね。私も法律の専門家でもないので、間違った例の出し方をするかもしれませんが、例えば以前にこの委員会でしたか、別の委員会でしたか、CDレンタル業界ととJASRAC(ジャスラック)が協定を結び、レンタルの収益の何パーセントかを著作権者にフィードバックをかけるという新聞記事のご紹介があったと記憶しているんですけれども、そういう利益の配分調整を当事者同士が相談をして決めるという行為はそれは別に法制度ではない。この方法がいいかどうかは別にして、というようなこともあるので、だれとだれがどこを調整すべきということもここで言わなくていいんじゃないのかなと。

(中山主査) 究極的には権利者と個々のユーザーとの契約にならざるを得ないと思うんですけど。

(野原委員) もちろん、一番シンプルな理想形はそういう形が一つあると思いますし、ただ、実際にそういう形で一個一個の契約ができるかというと非常に煩雑になるので、例えば先ほどのヤフーの例なんかはヤフーという間に立つサイトがそこを代替したりするわけですね。そういう考え方でいくと、先ほどの放送局のようなそういうメディア側が代替するということもあるかもしれないし、メーカーサイドがそのデバイスと一緒にそこを包括でやるということだってあるかもしれないと思っていまして、それはだれとだれがどこでやるべきという話でもないと思います。

(中山主査) 松田委員。

(松田委員) 現行制度がないとして、そして、どこかで話し合ってこの問題を解決できるとしたら、権利者と個々の個人、視聴者との間で解決することはできませんよね、これはだれが考えても。そうすると、その間に立つ人というのは結局何かというと、多くは機器メーカーでしょう。
 実は、この制度ができる前も、機器メーカーと権利者団体はヨーロッパでは話し合ったんです、何とかできないだろうかと。そして、問題が鮮烈にならないようにするために解決する方法として何か契約関係みたいなものを、協定でしょうかと考えたようです。できればそれは解決できたんだろうと思います。しかし、それは自分たちがコピーするわけではないからということで、結果的には野原委員が言うような契約関係では完成できなかったんです。
 それで、契約関係もなし、今のような現行制度もない状態のままで継続したらどうなったかということになります。多分権利者は非常にデジタルコンテンツの複製が大きくなって、権利の通常の利用を妨げる、それから、損害も大きい、その原因は何かというと、それは複製機能を内在したオーディオ機器等が市販されているからではないかということになる。契約でできなければ紛争になってしまいます。著作権を権利として、その機器が侵害物なのか、ないしは、侵害するための幇助なのか(先ほどそこ委員長と椎名委員が議論していたように、幇助なのかどうか。直接侵害者なのかという問題)議論になってしまいます。
 それをもし決着をつけるとなるとイエスかノーしかない。要するに、オーディオ機器を売ってはいけないか、権利侵害ではないからオーディオ機器を売ってもいいかということになります。それで決着をつけたとしたらどうなるか。権利の実質的侵害がないとして、何の負担もなくオーディオ機器が多く売られる。又は、オーディオ機器が侵害(幇助)機器だということになったらこの差止め等が認められることになる。この状況で一番の被害者はオーディオ機器メーカーと視聴者だと思います、個人だと思います。著作物というのは最終的に個人が聞いたり見たりできない状態、それを自由にできる状態を確保しなければ、著作物の利用はないのだと思っています。そういう利益を失うことになるでしょう。
 だから、契約関係とか協定とか、それができないのであれば鮮烈な状態になる、鮮烈な状態になるとしたら、いずれにしてもいい解決にならない。そこで、消費者もメーカーも著作権の権利者も、隣接権も入りますけれども、その関係の方々が知恵を出してこういう制度をつくろうとしたのです。
 それをもう一度契約関係にゆだねてみたらどうでしょうかというのは、もし可能であれば私はいいアイデアだと思いますが、今聞いてみるとどうしても契約関係では出てこないと見受けられます。もしそういう案があるのであれば、野原委員、こういう解決方法がありますよと言っていただきたい。私は究極はDRMしかないと思っております。DRMが徹底的に進んで、そして、30条の場面というものがほとんどなくなって、補償金などゼロにすればいいと思っています。そういう社会をつくるためにどうしたらいいか。そういう社会を進めることもこの委員会の、著作権審議会の私は役割ではないかなと思っています。
 そういうことになりますと、今皆さん方が議論していたことはやっぱり何か協定とか話し合いでできないことからスタートしたということの議論をお忘れになっている。それから、みんな片方が利益を得て、片方が利益を喪っているというような意識になっていますけれども、消費者を含めてこれは利益を得るための方策として考え出されたものだということをあえて、主張したいと思っております。

(中山主査) 津田委員、どうぞ。

(津田委員) 小六委員も椎名委員も、先ほど石井委員のほうからもお話がありましたけれど、この私的録音録画補償金制度がある種エンドユーザーの私的複製、補償金制度があるからユーザーのコピーがある種担保されている面があるという考え方があるというご発言が何度かこの委員会の中でも出ていると思うんですけど、僕個人の感覚だとそれってほんとかなと思う面もちょっとあって、例えばレコードが例えば数年前ぐらいにコピー防止CDという、コピーコントロールCDというのが登場してきたときに、あれは要するにユーザーの私的複製をDRMで制限するようなものだったんですけれども、あれで僕が取材活動とかしていると、レコード会社にお話を聞くと、ユーザーはその私的録音補償金を払っているのに何でCDコピーできないんだ、私的録音補償金があるのに私的コピーできないのはおかしいんじゃないのみたいなことを言うと。それは別に法制度の話とかも含めて、別にユーザーには私的複製できる権利というものは存在しないと。要するに、家庭内で行われる小規模なコピーに関しては権利者が捕捉できないから、それはお目こぼしをしてやっているんだと、そういう言い方をされたことがありまして、実際そういう面もあるでしょうし、先ほど華頂委員のほうからもありましたように、映画協会は本来的にはコピーネバーにしたいというような意向があるということも考えると、じゃあ、補償金制度があることがほんとうにユーザーのコピーすることを担保しているのかというやっぱりちょっと根本的な疑問というのが僕はあります。
 実質的にその制度があることによってある種緩衝材になっていて、ユーザーのコピーを確保しているというところは僕も認めはするんですけれども、といっても、それはやはり補償金制度があることでユーザー側の私的複製が、じゃあ、担保されているのかというと、担保されているわけではないと。でも、やはり補償金制度があるからユーザーはコピーできるじゃないかということを権利者の方がおっしゃるのであれば、やはり僕はその制度の中にきちんとエンドユーザーが自由にコピーできる、補償金制度があることによって自由にできる権利も補償しますというようなことを明確化する必要がある。要するに、それは権利者というエンドユーザーの間で何かのバーターをつくらなきゃいけないんじゃないかなと思うんですよね。
 例えば、それが明確に今のこの補償金制度の中で、エンドユーザーは補償金があることによってある程度の制限された範囲の中でコピーが可能になるということであれば、それは多分今ここの委員会で話し合われているような30条の幅を狭めるような、そういう議論ももしかしたらユーザーとしてはのみやすくなるかもしれないですね。
 ただ、もちろんどういうふうにすればユーザーのコピーできる権利が補償されるのかというのは、やり方というのは多分すごい難しくて、じゃあ、著作権法の条文を変えればいいのか、それとも、じゃあ、SARAHとかSARVHのホームページのトップに明確にそういうこういった補償金制度を払うことによってユーザーは自由にコピーできるんですよと書けばいいのかみたいな、多分そこは議論があると思うんですが、ちょっとそこのところはやはりあいまいなところではなくてはっきりして議論をする必要があるし、逆にその権利者の方にその辺もまたちょっと伺いたいなというのが1点あります。
 もう一点は、前回、前々回あたりから小六委員とか椎名委員のほうから出ている議論として、その補償金制度をある種税金のような広いシステムにしていくべきではないのかなという議論があるんですが、ただ、本来的にこの私的録音録画補償金という制度は私的録音とか録画によって権利者に経済的な不利益が生じていて、それを補償するためにつくられた制度ですよね。これって結構やっぱり多分重要なところで、音楽やテレビとか映画とか、ある種国民の生活の一部の分野の話ですから、この補償金制度というのができても国民もよくわからないとか、それこそ認知度の問題とかも含めてよくわからなくても、そのままの状態で今こうやってこの制度が存続してきたという部分があると思うんですが、やっぱりこの委員会で最近話し合われている方向を聞くと、椎名委員なんかの意見なんかもお聞きしていると、要するに、私的録音とか録画可能な機器を所有すること自体から対価を徴収するべきじゃないか、何か補償するべきという議論が、録画機器を所有することの対価徴収制度にしなきゃいけないんだというような議論に多分変化してきているように僕はちょっと聞こえるんですよね。
 録音に使えるかもしれない機器を買ったら幾らかお金を徴収するかという、これは多分おそらく何か自動車税みたいな話なのかなと僕は思っていて、やはり機器を買ったら税金が上乗せされている、これが自動車税みたいな話だというと、もうそれはほんとうに税金の話であって、もうこの委員会で扱うような大きな話題ではないだろう、もっと大きなテーマになってしまって、当然消費税率が今、じゃあ、5パーセントなのが10パーセントになるんだみたいな話になったらもう国民的議論になりますよね。それこそ政権がどれだけ交代するのかみたいなそういった話、議席にも与えるような大きな話になるわけで、当然そうなると、税率が変わるというと国民の同意はすぐ得られるようなそんな小さな話ではないわけで、やはり提案として新たな税金のような制度に広くしていくべきじゃないのかなというのは議論としてはわかるんですけれども、やっぱり個別具体的な議論を行うこのような小委員会で提案するのが適当なのかなという疑問がちょっとあります。
 なので、権利者の方々にちょっとお伺いしたいのは、従来の経済的不利益が生じていて補償するという本来のこの補償金制度を拡大していくという枠で考えるのか、それとも、録音録画機器を所有することから対価を徴収するというそういった大きなところに拡大していくのかという、このあたりをちょっと僕は伺いたいなという気がします。
 以上です。

(椎名委員) 2回ぐらい名前が出たんで、まず僕からお答えしたいんですけど、CCCDの問題は、これはもう津田さんも知っていると思うし、僕は何度も説明したし、何度でも説明しますけれども、補償金制度の大枠の中でSCMSというDRMがあった。そのSCMSというものが有効であったのがいわゆる制度の中で規定している専用機器であったわけですが、そこからはみ出てパソコンで自由にコピーがされてしまう状況が生まれて、それを防ぐためにCCCDが採用された。CCCDはパソコンでのコピーを禁じただけであって、補償金のかかっているMDとかへの複製を禁じるものではなかったわけですよ。だから、補償金制度がきちっと機能していかないところに対する危機感を反映する形で、CCCDというものが権利者側の試みとしてあったわけで、それは結局失敗してしまったわけですけれども、CCCDが補償金を払っているのに録音を禁じているという話にはならないんだと思います。
 それから、機器を所有していることにお金をかけるんだという主張になっていっているというのは全く僕には身に覚えのない話であって、機器とか媒体を売って利益を上げるということについて、そこの利益の調整が必要だという発言はしましたけれども、機器を持っていることから、要するに録音録画という行為ではなくて、その機器を持っているだけでお金を払うべきだという主張をしたつもりは一切ありません。
 それから、税みたいなものにしていくという遠大な構想を持っているんじゃないかということについて言うと、この制度が私的な利便性を担保するためのインフラとして非常に有効なものだということは考えていますけれど、私的録音録画小委員会で私的録音録画補償金制度を論じる上でそんなことまで話せるとは思っていないから、今は補償金の話をしていますけど、私的な利便性を確保することと、権利者の逸失利益をカバーすることは必要だし、それを調整する機能として、やっぱり補償金制度がリーズナブルな制度なのではないかなと思っているわけです。

(中山主査) どうぞ、華頂委員。

(華頂委員) 津田委員からの質問に対する直接の答えになるかどうかわからないですけれども、映画は前回も申し上げたんですけれども、私的録音録画補償金を受け取ることを第一義的に考えたことは一度もないんですね。松田先生もおっしゃいましたDRMというものが非常に完成されて、放送された映画のみコピーネバーにしていただけるのであれば、補償金の運用も複製もなく、それが映画製作者の理想なんです。だから、地上波デジタル放送もコピーネバーにしていただければ補償金の運用は全く必要ない、それが映画の著作権者の一番理想の世界なんですが、残念ながら、映画の一番厳しいそういう制限にほかの番組を合わせることができないということなので、補償金制度の運用ということを前提に苦渋の決断をしているという現状です。

(中山主査) 松田委員。

(松田委員) 津田委員のご意見に私はちょっと質問したいんですけれども、先ほど国民全部にコピーする自由をとりあえず補償して自由に使えるようにしろと言っているわけですけど、これは現行法で完璧に補償しているじゃないですかと私は言いたいんですけどね。だって、30条はそうでしょう。それで、コピーコントロールが出たら、それは権利者がコピーしては嫌だよということで入れたら、消費者はそれを買わない自由もあるわけですからね。
 それから、このコピーコントロールについているコンテンツについては私的補償金はかけられないわけですから、配分を受けられないわけですから。そういう意味では、完璧に補償しているし、補償金制度に矛盾はないんじゃないでしょうか。

(津田委員) ほんとうに松田委員のおっしゃることは僕もそう思いますというか、現行の30条の枠内で全然僕も問題ないと思っているんですけれども、ただ、このユーザーの補償金の議論でそのように聞こえることを僕はちょっと申し上げているというのがあるというのが、やはりそれは私的複製というのは本来であれば30条で補償されているんであるけれども、いわゆる例えばDRMが今現状不十分じゃなかったりですとか、あとはPCでのパソコンのコピーの現状とか、インターネットのコピーとかも含めて、非常にいろんなものがあいまいでにじむようになっていて、コピーとまたイコール再生というところとか、あとはストリーミングだったりとか、いろんなコンテンツを楽しむ上でのところの利用形態というのは非常にパソコンとインターネットを通したところでユーザーにとっても非常ににじむようになってきている部分というのがものすごく僕はあると思っています。
 それで、その状況の上で、コンテンツホルダーの方が、今コピーは例えばじゃあ法律的にどうなんだということではなくて、ある種のプロパガンダとして例えばユーザーコピーコントロールCDを出したときに、ユーザーはそんな自由にコピーできる権利はないんだ、私的複製できる権利はない、お目こぼししているんだみたいなことを実際におっしゃる方もいらっしゃったし、そういうものがメディアに掲載されたりもしたんですよ。
 そういった現状があったときに、ユーザーのほうもよくわからないまま、いけないのかなと思っている人も多分いるという意味で、僕はそういう意味でこういった補償金制度というのが確保するんであるということをある種ユーザーの側にも訴えていく意味というのはそれなりにあるんではないのかなということである種の問題提起として言ったという部分があります。
 先ほどの椎名委員のことからの答えというと、完全にさっき僕が言った意見というのは、今完全にエンドユーザーの立場から今ここ数回の議論を見ていると、そういう何か大きな話にいっているように聞こえているという話であって、僕がそういうふうに理解したというわけじゃないですし、そういうふうに聞こえ、多分おそらくこういうものは今例えばここに取材されているメディアの方もいっぱいいますけれども、例えばきょうの議論にしても多分記事が載るわけですよね、どこかのメディアに。そのメディアの記事を見てユーザーはどうとらえるのかというところで、そこでの意識の話で、そういうふうに聞こえがちなので、そこに誤解があるんだったら解いてくださいという、そういう話で言ったつもりです。

(中山主査) 生野委員、どうぞ。

(生野委員) 津田委員から先ほどCCCDの話がありました。コピーコントロールをかけておいて何で補償金を払わなきゃいけないんだということなんですが、椎名委員の指摘のとおり、CCCDに関してはパソコンにおける複製をコントロールするもので、MD等の現行の補償金の対象機器、メディアに関しては何ら問題なくコピーできましたので、言われている話と実態とは違います。
 それと、津田委員から、補償金を払うかわりに、ユーザーの複製の自由を認めることとして、一種ユーザーの私的複製権的なこととの引きかえみたいな話が出ましたが、それは違うと思います。ユーザーに私的複製をさせなければいけないといった、ユーザーの権利と補償金との引きかえの議論というのは違うのかなと。あくまでもDRMの普及によって補償金の範囲等も今後変わっていくべきものと思います。
 それと、対象機器や記録媒体の決定方法についての議論から大分広がってしまいましたけど、この決定方法に関しては対象範囲をどうするのかという議論をある程度尽くさないと、なかなか決まってこないように思います。対象範囲によってどう指定すべきだというようなことが自然と出てくるのかなということを考えると、ここはあんまり詳細に議論しても、その前の段階での議論がある程度されていないとなかなかやりにくいなというのが実感です。
 それと、対象機器・記録媒体の範囲をどうするのかということを考える場合、主査からも平成4年と現在とではコピー実態、技術の発展によって状況がどう変わっているのかということをとらえて、そのための制度をどうしなきゃいけないということを検討する必要があるというお話がありました。実態の変化に関しましては、事務局のほうからも資料が出ておりまして、コピーの量、それから、質の大幅な変化というのがあったと思います。コピー量については当然増加しておりますし、それから、質的なものに関しても、平成4年に制度ができた段階ではほとんどデジタル録音録画というのはなかったと思うんですが、現在ではほとんどデジタルによる録音録画になっているということによって、コピーの内容が商品の購入に代替するような性格に変化しているということが考えられます。特に、私的複製の中でもここで議論している領域で象徴的にあらわれているということが言えると思います。
 今後は政府の方針としても、流通を促進していかなきゃいけないと。配信ですとか、放送番組のマルチユースの促進等をやっていかなきゃいけないという中で、ユーザーが同じコンテンツを享受しているのに対して、片一方は有償で片一方は無許諾無償でというところについては、ユーザーの受益に対する利益の還元の面で甚だしくバランスを失しているということと、そもそも30条の制限というのはほかの制限規定と違って私益と私益との調整だと思います。私益と公益との調整ではなくて、私益と私益との調整であれば、制限する場合のハードルというのは当然高くないといけないと個人的には思います。
 そういった、現在いろいろ出ている現象面、問題点を解決する一つの便法としては、私は事務局からたたき台として出された資料が、対象範囲をどうするのか、対象機器、記録媒体の決定方法ほかに関しても、今考えられる方策としては非常に合理的といいますか、常識的な範囲内のものなのかなというふうに思っています。
 以上です。

(中山主査) 時間もかなり経過してきましたけど、それでは、野方オブザーバー。

(野方オブザーバー) 申しわけありません。先ほど津田委員から小六委員の名前も二、三度出たと思いますので、申し上げておかなければいけないと思います。FCAは小さな団体であまり予算もないところですけれども、FCA私的録音録画補償金キャンペーンと称してこのようなチラシをつくりまして、会員のコンサート会場で配付したりしているのですが、チラシには私たちの意見としては「私たちは私的なコピーの禁止に反対します」、「私的録音録画補償金制度は私的にコピーできる環境を守ります」ということを私どもの団体の気持ちとしてあらわしているということが1点です。
 それと、可能な機器を所有することに対する対価徴収ということに関して、先日、小六委員から出させていただいている意見書の4ページに、各国のデータ用CD−Rがどのように取り扱われているかというのを調べまして載せてある表がございます。そちらには金額の多い順に並べて、フランスから10カ国ほどが並んでおります。音楽用とデータ用それぞれ、日本では音楽用のCD−Rから1億円のSARAHの収入があるわけですけれども、フランスをユーロから円に換算しますと、音楽用は3億円でデータ用は87億円もあったりするんですね。
 これは決して各国が税金としてとか、税金のような考え方でかけているのではなくて、実態の総体をとらえてこのような汎用機器・記録媒体に補償金をかけていると理解しております。決して日本だけ特別な利用形態があるとも思っていませんし、日本だけ特別な主張をしているとも考えていないということを申し上げたいわけです。

(中山主査) それでは簡単に、河野委員、どうぞ。

(河野委員) 議事が押しているところを申しわけございません、1点だけ。30条によって複製の自由が担保されているかというところで1つだけ申し上げさせていただきたいと思います。
 現行30条は技術的保護手段の回避を伴う複製というのは認められておりません。これは理論的には技術的保護手段をかければ複製できる範囲がゼロになると、私的録音録画の範囲がゼロになるということをあらわしているんだと思います。
 権利者、著作権者の意志、あるいは、市場にすべてをゆだねて、30条の範囲が広がったり縮まったりするというのが現行の法制度だというふうに私は理解しています。なので、30条によって法律による複製の自由が担保されているというところは私どもは異なった認識を持っています。
 そういう状況であるということと、30条2項で補償金、補償措置というのがあるということをどう考えるのかということが、ずっと以前からこの場でぜひご議論いただきたいとお願いしてきたことでございます。
 以上です。

(中山主査) どうぞ、松田委員。

(松田委員) まず価値の問題として、技術的保護手段の回避を30条から除いているということ自体は、これはおそらくどなたもやむを得ないとお考えではないでしょうか。

(河野委員) それに反対はしていません。

(松田委員) それはいいでしょう。そうしたら、それ以外のことでは30条でみんな補償されているんじゃないでしょうか。やむを得ないものはこれはどうしたってプロテクションをかけなければしようがない。これは別に音楽や映像だけじゃありませんからね。コンピュータ・プログラムだってそうですからね。
 そういう技術的プロテクションが片方にあって、そして、私的録音補償金制度があると、音楽や映像の場合どうなるかといったら、プロテクションのかかっているものについては私的補償金の配分がないということですよ。それはお間違えないじゃないでしょうか。

(河野委員) コントロールがかかっているものは配分がないのでしょうか。

(松田委員) コピー禁止がかかっているものに配分はないのでしょうか。華頂委員に聞いてみてください。

(華頂委員) 映画はあれです。

(河野委員) プロテクションと仰っているのはコピーネバーのことですね。

(華頂委員) 映画は、もう再三申し上げていますけど、タイムシフティング視聴のための一時的なコピーという建前で、そこしか認めてないんですけれども、これはプロテクションがかかってないからですよね。DVDはプロテクションをかけているんで、補償金は発生していません。
 それと、ちょっとついでに、先ほど究極のDRMができて放送の劇場用映画のみコピーネバーで放送して複製禁止にしたらそれが映画の著作権者の理想だと申し上げましたけれども、もちろん世の中のコンセンサスがとれた上でということをちょっとつけ加えさせていただきます。

(中山主査) それで、河村委員。

(河村委員) 華頂委員がおっしゃっていることについてですが、あと、松田委員のおっしゃるDRMという言葉に当てはまるかどうかはともかくとして、例えば地上波の放送にアナログ放送のときには全くコピー制限がかけられていなくて、地デジになったときにコピーワンスとなって、今、緩和策が打ち出されたとはいえ、現状はコピーワンスですけれども、複製制御がかけられていてもなお、DVDのお皿に焼く部分にはメディアにも機器にも補償金がかけられております。
 地デジの普及度は30パーセントですか、70パーセントの人は今でもアナログ波で受けていますが、録画でDVD録画をすれば、それはデジタル録画ですから、補償金の対象になります。つまり、現状であればコピーワンスというのに縛られたまま補償金を払うことになります。ですから、コピー制限があっても補償金は今、有無を言わさず払うということになっております。今までコピーワンスを検討する委員会でも決してこういう言い方はしないようにしようとしてきた言葉があるんですけれども、ずっと以前に私がここでCDの売り上げの損害のことを言って、何人かの方から非常に不興を買ったことも含めてなんですけれども、華頂委員が本来はコピーネバーであるとおっしゃる。でしたら、コピーネバーの放送にだけ流せばよろしいではないですか。私はそう思います。
 ただ、それを言わないようにしたのは、全国の地上放送の視聴者の方に、やはり映画を見たいと思っている方がいっぱいいらっしゃると。だけど、どうしてもコピーネバーだとおっしゃるのなら、コピーネバーの有料放送にだけ流すという選択だってできるはずです。公共に福祉のために流しているわけではなく、ビジネス上、その映画のDVDを売るというビジネスの観点から見て視聴率の高い地上波に流そうと思っていらっしゃるから出すわけですよね。そして、現実に今も70パーセントの人がコピー制限のかけられないものでデジタル録画ができている、それでもビジネスが成り立っていらっしゃるではないですか。それを私は何度も申し上げています。
 そういうことを言うとすぐに、盗撮による複製がどうのなどと、複製被害のことをおっしゃいますが、それは全く別の話だと思っております。地上波の放送の、ごく普通の人の私的録画によって何か非常な損害が出ているということがあるのかどうかが問題なのです。今70パーセントの人がアナログ波を受けている状態で運営可能であるにもかかわらず、コピーネバーだとおっしゃるなら、もう地上波には流さず、コピーネバーの有料放送にだけ流し、ビジネスをなさるということも選択の中にはあると思います。

(中山主査) 華頂委員。

(華頂委員) そのことなんですけれども、フリーテレビでオンエアする劇場用映画のみをコピーネバーにして補償金をなくすというようなことがまずできれば、そういう技術的な解決策ももちろん必要なんですけれども、そういう世間一般への、要するに、無料地上波放送で劇場映画を流さないと今おっしゃいましたけれども、そういうふうなことをぜひ河村委員のほうから世間一般へのコンセンサスをとってください。それで、河村委員がそういうふうなことでコンセンサスをとっていただければ、映画の著作権者としてはそういう諸問題が解決された上で、河村さんのリードでそういう問題が解決すれば、それに従う意志はありますよ。
 それから、もう一つ、今の現状のコピーワンスとおっしゃいましたけど、それで補償金が発生しているとおっしゃいますが、映画はゼロかそれ以外なんです。コピーネバーか1枚以上の複製でというもう2つの、前回も申し上げましたけれども、2つのセグメントしかないんですね。だから、1枚でも複製されれば補償金の制度の運用をしていただきたいと。ゼロだったら当然要らないということです。
 ぜひ河村さんのほうから皆さんに、世間一般に、劇場用映画のそういうことをコンセンサスをとってくださいよ。そうしたら、それに従いますから。

(河村委員) そのような回答が出てくると思ったので今まで言わないでいこうと思ったのです。でも、ここで聞いていらっしゃる方は、私がそういう趣旨で言ったんじゃないということは十分おわかりだと思っております。華頂委員がおっしゃるように、私がコンセンサスを得るか得ないかなどということは全く問題外だと思っております。華頂委員の業界の方が地上波で流すことを選択するかしないかというだけのことです。例えば消費者のこれからの大運動によって、もしかしたら、アナログ停波が回避されることだってないことはないかもしれません。そしたら、コピー制限がかからずにこれから何年もいくかもしれません。そのときに、私的複製されるからという理由で地上波では流さないことを業界として選択なさるならそうなさればいいことであって、私がなぜコンセンサスを得なければいけないのでしょうか。私は、選択肢があるのではないですかと申し上げたまでです。

(中山主査) 映画のことはちょっとさておきまして、本来、徹夜ででも議論していただきたいところですが、予定した時間も過ぎておりますし、この問題は今すぐここで統一したコンセンサスを得るということは非常に難しいかと思います。
 今日の議論は一応このくらいにいたしまして、事務局でまた整理したペーパーを出していただいて、両論併記になるかどうかは別といたしまして、大体議論はほとんど出尽くしていると思いますので、一応今までの議論を整理してまたペーパーを出していただき、そこでもう一回議論をするということにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。時間の都合もあり、申しわけございません。
 それでは、そういうことにさせていただきます。
 次は2の(2)3の「補償金の支払い義務者」、4の「補償金の額の決定方法」、5ページ、6ページでございますけれども、この点につきましてご意見をちょうだいしたいと思います。どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) もう何を言うかは想像ついているかと思いますけれども、かねてから主張をさせていただいておりますとおり、また、意見書にも書きましたが、まず支払い義務者に関して言いますと、今回の事務局の整理で見ますと、返還制度との関係からメーカー負担というような選択肢も、というふうに書いてあるわけですが、もっと根本的な問題として、30条1項の存在によって利益を上げる者としては、メーカーと消費者が挙がっているわけですが、メーカーが支払い義務者となることによって、結果的に消費者も支払い義務者となる、間接的に支払い義務者になるわけですので、この際メーカーを支払い義務者にすることが適当であると思います。

(中山主査) ほかに何か。どうぞ、野方オブザーバー。

(野方オブザーバー) やはり現状の私的録音録画が行われている実態の総体のことを考えますと、椎名委員のおっしゃっていらっしゃったことに賛成いたします。
 さらに申し上げますと、やはり過去にCDがSCMSという曲がりなりにも著作権保護技術に辛うじて守られていたことがあるわけですが、もしパソコンでCDがコピーされるときにこのSCMSが働いていれば、パソコンにコピーされてできたものが子供のコピーであって、そのパソコンのコピーから次のコピーというのは孫に当たるわけですから、iPod等へのコピーはできなかったはずだと思うんですね。そうだったとすれば新たな違う音楽の楽しみ方というものがあったかもしれませんし、現状のような状況には陥らなかったのではないかと思っております。こうしたことからも、結局今後も日進月歩で発展していく技術を握っていらっしゃるメーカーの方の社会的な責任や影響力は絶大なものがあると考えております。
 先日、小六委員が提出しました亡くなられた芥川也寸志先生の意見書の13ページから14ページを改めてお読みいただきたいと思うのですけれども、メーカーの方がこのような問題を円満に解決して、消費者の方、権利者、そして、メーカーの方の三者共通の利益を確保するための社会的に重要な役割を果たすという責任が今改めてより大きく求められているのではないかと思っております。
 このような点をご認識いただきまして、大所高所に立ってこのようなメーカーの方にお支払いいただくことの合理性をご理解いただきまして、世界の範を示していただきたいと考えております。
 以上です。

(中山主査) ほかにご意見ございましたら。どうぞ、津田委員。

(津田委員) 野方委員、椎名委員の今のメーカー義務者というところでちょっとお伺いしたいというか、僕が思うのが、今現行この補償金制度は支払いの負担者がユーザーという形になっていますけれども、例えばこれがメーカーという形に負担をする対象が変わったときに、実際に、でも、そのコストを負担するのってユーザーですよね。基本的にはやっぱり価格にはね返るという形になりますから、メーカーが負担するという形になっても、実質的な補償金の負担というのはある種ユーザーが払うという意味では多分今とほとんど変わらない状況になると。
 ただ、それがもしメーカー負担になったときに、こういった文化審議会でユーザーとかこういった消費者団体の方って呼ばれるようになるのかなというのが僕の根本的な疑問としてあるんですけど、この辺というのはどうなんですか、メーカーがあれになったことによって。

(中山主査) 呼ばれるというのは。

(津田委員) 要するに、対象から外れるじゃないですか。今はユーザーとメーカーと権利者というある種三角関係の中で議論があるのが、もうメーカーと権利者の話し合いだけの話になってしまうから、そこでの話し合いで決めればいいじゃないという流れになってしまって、ユーザーの意見がこういった文化審議会ではじかれるようになるのではないのかなということが、これはだれにお聞きするのがいいのかはちょっと僕もわからないんですけど。ないですか。

(中山主査) それはおそらくあまり関係なくて、現在、個人のユーザーに課金していたのが個々のユーザーでなくなるという点でやはり関係ありますし、最終的には商品の価格にオンされてユーザーにかかってくるわけですから、ユーザーをのけてしまうということはないだろうと思いますけども。

(津田委員) わかりました。

(中山主査) 椎名委員。

(椎名委員) 結局メーカー負担になれば消費者が結局全部負担することになるというのはよく言われることなんですけど、それはメーカーのやり方次第だと思うんですね。例えばの話、いい例えかどうかわからないですけど、シャープの亀山工場の固定資産税は結局ユーザーが負担しているのだ、というふうにも言えちゃうわけですよね、そうなってくると。やっぱりこの問題の考え方というのは、消費者に間違いなく負担が行くことは確かではあると思うけれども、メーカー負担にしても結局消費者の負担で何も変わらないではないか、という話にはならないと思います。価格への転嫁の仕方は、それはメーカーが幾らでもいろんな方法をとれるんだと思います。

(中山主査) どうぞ、野方委員。

(野方オブザーバー) 各国、ヨーロッパの例では製造業者の方、輸入業者の方が支払い義務者なわけですけれども、その中で、先ほど小六委員の意見として、評価機関はフランスの例に倣うことがよろしいのではないかと申し上げています。そのフランスの評価機関の構成の中には権利者と消費者の方とメーカーの方の代表が入っている公的な機関であるということを申し上げておきます。

(中山主査) 亀井委員、どうぞ。

(亀井委員) ありがとうございます。
 シャープの亀山工場の固定資産税の負担という例がちょっとよくわからなかった例でございますが、ここで事務局がまとめられているペーパーで補償金制度の支払い義務者をメーカーにされるというご提案の大きな根拠として挙げられているのは、返還制度がうまくワークしないということに尽きるわけでございまして、その前提が汎用機に拡大するという前提、流れになっていると。そもそもそういうここに拡大するかどうかという議論があって初めてこれが成り立つんだろうと思います。
 私は津田委員のご意見に賛成で、アドオンするかどうかはメーカーの勝手だと言われれば勝手かもしれませんが、おそらくこれは原価として見るんであれば、これはやっぱり乗っかっていくことにこれはなっていくのは必然だろうと、これはメーカー、このように申し上げるのは非常に心苦しいですが、おそらくそうなるだろうと。
 そうなったときに、この補償という発想ででき上がっていたシステムが、これはまた補償、録音録画しない人の返還を認めていてバランスが成り立っていたものが、そこのバランスが一切なくなるということになるわけですから、これは非常に大きな議論だろうと考えます。
 返還制度がワークしないということが原因であるんであれば、それはもっと違う観点の議論というものもあると。今104条2項だったでしょうか、ちょっと条数は忘れましたが、そこの運用の仕方、あるいは、今後規定の仕方を変えるということだってあるべき解決ではないだろうかと考えます。

(中山主査) 椎名委員。

(椎名委員) 議論のやり方として全く理解ができないと言われたので、ちょっとくどくなりますが説明をさせていただきます。
 シャープの亀山工場が例えば固定資産税を払うのは、シャープの亀山工場を運営していくために必要な経費であるわけです。また光ディスクの装置を製造販売しようとするならば、光ピックアップが必要であって、それを仕入れて装置に実装しなければならない、その仕入れのコストは装置を作るうえで必要なコストとしてメーカーが負担しているわけですけれども、それらメーカーが負担すべきあらゆるコストのすべてを必ずしも消費者に転換しているわけではないでしょう、という意味で申し上げたわけです。よろしいでしょうか。これでもご理解いただけないですか。

(中山主査) おそらく現行システムだとメーカーは単にお金を預かっているだけだから、明らかにそれをオンするが、今度は仮にこういう制度にすると、メーカーが自分で自由に裁量で吸収するなりオンするなり、あるいは、冷蔵庫等の他の製品にオンするなり勝手にできる、こういう話ですか。

(椎名委員) はい。

(中山主査) 要するに、返還システムをなくせますよと、そういう趣旨だと思うんですけれども。
 どうぞ、華頂委員。

(華頂委員) 前回申し上げたんですけれども、製造販売元が録音録画機能を大きくセールスプロモーションして消費者の購買意欲を誘引しているような機器、これらの機器はそれを製造販売してメーカーが利益を上げているわけですから、その利益の中から補償金の原資を還元するのが最善の方法ではないかなと私も思います。
 極端に言えば、そのような機器を購入したユーザーがその手の機器のコレクターで、購入した後一度も起動しないままコレクションとして飾っておくことも考えられるわけですよね。製造販売元が企画段階から私的録音録画に供する目的で製造販売した機器については、ユーザーの手に渡った後に一度もスイッチが入らない運命をたどったとしても、現実に私的録音録画を根拠に金銭的利益がメーカーさんのほうに発生しているわけですから、私的録音録画を目的として販売した瞬間に、その利益から補償金の原資を捻出するのが妥当なのではないかなと思います。

(中山主査) どうぞ、森田委員。

(森田委員) 先ほど津田委員がおっしゃったことは、私は現行制度の理解として全くそのとおりじゃないかと思ったので確認したいのですけれども、現行の104条の5の協力義務というのは一体どういう義務なのかという点です。著作権審議会第10小委員会の報告書を読み直してみますと、この協力義務を履行しない場合には民事訴訟でメーカー等を訴えることができるとされていますが、民事訴訟で訴えることができるという場合に、その請求内容としては金銭の支払を求めることになりますので、金銭債務が立つのだと思います。
 金銭債務が立つということは、要するに、現行制度上も協力義務と呼んでいるけれども、法的には金銭の支払義務をメーカー等が負っていると理解することができるし、そういう前提でできたのだろうと思います。メーカーが支払義務者であることは、その名称が協力義務という名称で呼ぶか、支払義務と呼ぶか、このあたりはいろいろ政治的な妥協があったのでしょうから、名称にこだわるという意味はあるのでしょうが、法的に見ますとメーカー等が支払義務者であるという点では、今回の提案は何ら現行法と変わらないという整理になるのだろうと思います。
 そうなりますと、ユーザーが今までは法律上支払義務を負うという形になっていたのを、今後はそれを免除するといいますか、支払義務を負わないという形にするかどうかという点が今回の提案のポイントであると思います。先ほど議論されましたように、ユーザーが支払義務を負わないからといって、補償金制度の運用においてユーザーは関係ないということにはならないということさえ確認しておけば、ユーザーが法的な支払義務を負わなくするということでよいのではないかというのが、まさにここで検討すべきことだと思います。
 ユーザーの支払義務に関しては、補償金の返還制度が現行法にはあります。これはおよそ私的録音録画を一切しない場合にはユーザーは支払った補償金の返還を請求することができるというわけでありますが、現在だけではなくて将来にわたっても私的録音録画をしないということの証明がどういう場合に可能かというと、これは普通に考えても難しいのは当然でありますので、これを拡充するといっても拡充の方法はないのではないかと思います。
 また、私的録音録画にどの程度利用するか、実際にはヘビーユーザーからほとんど利用しないユーザーまで利用の頻度はさまざまでありますが、補償金の支払について、ユーザー間の利用の頻度ないし軽重というのは現行制度でもつけていないし、今後もつけることはできないだろうと思います。そこが不公平だということになってきますと、個々のユーザーごとの利用頻度に応じた課金制度というのができれば不公平を解消することができるかもしれませんけど、そういうことが可能であるのならばおよそ補償金制度を設ける必要はありませんので、補償金制度においてはユーザーの利用頻度を問わず一律に課金するということにならざるをえません。そうしますと、補償金の返還制度というのは一体何のためにあるのか。ユーザー間の負担の不公平を解消することにあるとすると、これは私的録音録画への利用頻度に応じても実際上も不公平はあるわけで、ヘビーユーザーは得しているのかもしれませんけれども、そこはユーザーには私的録音録画に利用しうる権利が一様にあるわけでありますので、実際に私的録音録画に利用するかしないかが考慮されないのは不公平だという批判は当たらないのではないかと思います。
 ですから、補償金の返還制度を機能させるというわけですけれども、これは機能させる方法は論理的に考えてもないのではないか。したがって、ユーザーを支払義務から免除し、メーカー等の支払義務一本に絞るということには十分合理性があるのではないかと私は考えます。

(中山主査) ほかにご議論ありませんでしょうか。どうぞ。

(井田委員) 先ほどから椎名委員のほうから亀山工場とかいうことなんですけど、やっぱりよく理解できません。
 私どもはもちろんいろいろ製造販売しているんですけれども、どう考えてもその製造したコストというのは販売でしか回収できないわけですし、その販売というのは何かというとユーザーの方々のお支払いで賄われているということで、どう考えましてもこの補償金というものが存在しますと、私どもはそれを負担した場合、当然ユーザーの方が間接的か直接的、別にしまして、もとをたどればユーザーの方の負担になるというのに変わりはないと認識しています。
 そういう中で考えますと、やっぱりメーカーを支払い義務者にすると、私的録音録画以外の用途で使う人には返還必要がなくなるということについてはやはり違和感がございまして、やっぱりユーザーの方が製品を購入して補償金を支払うという構成が全く変わらないということであれば、この返還制度がなくなるということはかえって現在の制度よりもユーザーの方の権利をなくすという方向に動く話ではないのかなと感じます。
 以上です。

(中山主査) 椎名委員。

(椎名委員) じゃあ、もっと言い方を変えると、補償金もコストとして考えてほしいと。その私的複製に供される機器・媒体を売るためのコストとして位置づけてくださいませんか、というふうに理解していただければいいと思います。

(井田委員) あまりここでコスト論をしようとは思いませんけど、コストと考えたとしても、やはりそれをどこから回収するかといえばユーザーの方から回収するという意味で、ユーザーの負担だと思います。

(中山主査) どうぞ、亀井委員。

(亀井委員) 森田先生から法的にはそれが一番美しい解だろうということでおっしゃられたと理解いたしますけれども、今、井田委員がおっしゃったように、そもそも今の制度がなぜ返還制度を設けたかという、そこの発想だとか考え方というのは全部もうすべてやめるというようなことに立つということなんでしょうか。私はどうもそれは素直にそれでいいではないかと賛成はしかねます。

(中山主査) そのような立場に立つかどうかということ、そういう見解はどうかということを問うているわけですけれども。よろしいですか。

(亀井委員) 私自身は基本的にユーザーといいましょうか、最終的に今法律上義務を負っている複製行為をされる利用者が支払い義務者でやはりあるべきなんだろうと考えます。

(中山主査) 森田委員。

(森田委員) 以前、亀井委員が配付されましたペーパーには、メーカー等を支払義務者とするこの案には「理念・根拠無し」と書かれていたので、それでは現行制度には理念があるのか、その理念とは何かということを知りたくて、第10小委員会の報告書を読み直してみたのですが、確かにそこに「理念」という言葉が出てきたのですけれども、そこでの理念というのはユーザーが「理念上」の支払義務者であると書いてあって、要するに、観念的にはユーザーに支払義務があるけれども、実際にユーザーから個別に徴収することは困難であるので、メーカーに協力義務という形で法的な支払義務を負わせるのが適当であるという整理がされていたと思います。今回の提案は、その「理念上」の支払義務というのが理念的なものであるということを明確にするという意味では、もともとの考え方に、そのほうが沿ったものであるといえます。現行制度というのが「理念上」の支払義務者からの補償金の返還制度が一応あるわけですけれども、これはおよそ1回も私的録音録画は過去にわたっても将来にわたってもしないということを証明することが可能であれば返還するというわけですけど、それがどういう場合に可能かというと、まず機器を廃棄するなど将来にわたって私的録音録画を行わないこと、かつ、過去に一度もそういうことをしなかったということを証明しない限りは返還請求が成り立たないわけでありますから、むしろそこの点にもともとの10委員会の報告書と成立した現行法との間に齟齬があって、その齟齬が具体的な問題として顕在化していると見るのが認識としては正しいのではないかと私は思ったものですから、先ほどのように申し上げた次第であります。

(中山主査) たしかこの返還請求は1回だけ行われたことがあると思いますが、たしか8円だったでしょうか、ネグリジブルな額の返還で、請求する費用のほうがよほど高いという返還でしたけれども。ですから、運用としては森田委員がおっしゃるほど厳しいことは言っていないように思うんですけれども。

(椎名委員) 機器じゃなくて、媒体でしたね。

(中山主査) あれは媒体の事例です。たしか家族の写真、何かそんな利用をするための媒体と記憶していますけれども。いずれにいたしましても8円ですから、実質的はあってもなくてもいいような返還だったわけですけれども。
 ほかに何かございましたら。どうぞ、津田委員。

(津田委員) ほんとうに今の森田委員のお話も含めて、確かに今返還制度が実質的に機能していないというのは僕も感じていますし、じゃあ、返還機能していないものでメーカーが負担者になって、じゃあ、権利者とメーカーの間でというふうになったほうが法的にすっきりするというのは僕も確かに理解はできるんですけれども、やっぱり、でも、実質的な効果というのを考えると、やはりそれは間違いなく価格に上乗せされるということが前提になってしまって、前回も申し上げたように、例えば携帯電話に今録音機能がついてみたいな話になって、非常に専用機器と汎用機器というのは区別がつかなくなっていく中で、じゃあ、通話にしか使わない携帯電話、取材にしか使わないICレコーダ、すべてそういう録音機能があるからという理由で何か、それは多分対象にする、どういうふうに対象機器を決めるのかという議論ともかかわってはくるんですけれども、でも何かそういうやはり汎用機器のかなり多くが対象になっていくようになっていったときに、実際には録音に使わないのに全部それがやはりさっきのまさに税金のような形で、広く薄くメーカーが払っている、でも、それは実質的にユーザーが払うみたいな形になってしまうということは、それが現実になっていくとやはりかなりユーザーとしては納得できないような状況を招いてしまうのではないのかなという懸念があります。
 以上です。

(中山主査) どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) 補償金をコストとして考えた場合に、例えば、コピーワンスでムーブができる機械をメーカーが売りました。コピーワンスでムーブをできる機械をユーザーは買いました。でもその人は、その機械をチューナーとして使っているだけで、HDDにも録っていないし、ムーブもしていないという場合に、その人が録画機能に関するコストの部分をメーカーに返してくれっていいますかといったら、それはないわけですよね。それと同じように考えられないかということです。
 要するに、ユーザーは私的複製のできる機械を買うことによって、私的複製できる権利を留保している、あるいは、維持しているというふうに考えて、かつ補償金をメーカーのコストと考えていくと、返還制度の必要性との関連が整理がつくのではないかと思うんですが。

(中山主査) どうぞ、河野委員。

(河野委員) 恐れ入ります。たまたまここにこの私的録音録画補償金制度が導入されたときの第125回国会衆議院文教委員会議録がございます。その中に、参考人発言ということで、制度の趣旨並びに概要をご説明されているところがあるんですけれども、今の議論に関連するかなと思うところをかいつまんで読ませていただきます。
 国際的にも新しい規定を見ることができるというご紹介の中で、録音録画を行う者が何がしかの金銭を支払うというふうに書いてあると。これは他の先進諸国がなそうとしてできなかった規定だということで、ドイツはこうだったけれどもということでいろんなことが紹介されているんですね。
 なので、少なくとも国会での審議においては、受益者負担であるということがなぜ妥当性があり、こういう法制度になったのかということは説明されているのだと思います。
 この部分を、できましたらば次回お配りいただいて、皆さんの共通理解としてお話ができればいいんではないでしょうか。

(中山主査) ほかに何か。どうぞ、室長。

(川瀬室長) 少しご質問させていただきたいのですが、今の見解といいますのは、齊藤博専修大学教授の参考人質疑の意見ではないでしょうか。

(河野委員) そうです。

(川瀬室長) 政府の答弁ではないのだと思いますけれども。多分、そういうお考えの先生方もたくさん当時おられましたので、そういう方が国会の場に出られて参考人としてご意見を公表されたということは私どもも承知しております。

(河野委員) 申し上げたかったのは、第10小委員会の報告書というのをこの場で紹介をされて、皆さん、共有理解になっていると思います。国会での審議のときに政府見解としてどういうことが出され、参考人意見としてどういうことが出され、それにどういう議論があったのかということをシェアをすると、そもそもある種便宜的に協力義務になって、名前の違いだけじゃないかとか、理念はどこへ行っちゃったのか、もともとなかったのかとか、いろんな話が出ていることの参考になるのではないかと思って申し上げました。

(中山主査) ほかに何かございましたら。どうぞ、津田委員。

(津田委員) 先ほど椎名委員のほうからDVDレコーダの例示があったので、僕もすごく話をシンプルに例示しようかなと思うのが、例えば僕が音楽CDを買ってそれをiPodにコピーして使っている。これは今回の議論とは別として、それはもう音楽をコピーして使うのが主目的であるので、それに関してはユーザーの感覚としては別に補償金を払ってもいいんですよね。
 ただ、例えば僕が使っているこの携帯電話は音楽録音と再生機能がありますけど、それを僕個人は音楽録音にも再生にも使うつもりはないんですよね。ところが、それがメーカー負担が現実になってしまって補償金の対象に、よくわからないけどなっていて、払わされているといったときに、何かやはり返還制度がなくなってしまって、よくわからないけど、取られているという状況は非常に納得しづらいというところがあるので、そこのところはやっぱり非常にセンシティブな問題だと思うんですけれども、やはり汎用機器と専用機器のところの議論をきっちりしなきゃいけないでしょうし、その支払い義務者の議論ともかかわってくるのかなと思いました。

(中山主査) 森田委員、どうぞ。

(森田委員) 津田委員がおっしゃっていることには全くもっともなところがあると思います。それは、現行制度上はユーザーは支払義務者になっているのが、そうでなくなった場合には、ユーザーというのは法律上どこに位置づけられるのかという点の保障がなくなるのではないかという危惧だと思います。この点は、補償金の対象機器でありますとか、補償金の額の決定のあり方のなかで、ユーザーがきちっと法律上明確に位置づけられる必要があると思います。先ほどのユーザーの立場の者が審議会等に呼ばれるか呼ばれないかというのが事実上の問題だとしますと、そこには保障がないことになりますけれども、別の局面でユーザーの位置とか権利というものを明確に位置づけておく、これは法律の中に位置づけておく必要があるだろうと思います。
 それから、先ほどから議論しているメーカーが支払義務を負う場合には、一定の頻度といいますか範囲を前提として私的録音録画ができるという権利のついた形で、つまり権利処理済みで機器を売り出すということになるのだと思います。椎名委員はそれをコストとおっしゃるのですが、私はコストという言葉で表現しないほうがよいと思いますけれども、いずれにせよ、権利処理済みで機器を売り出す場合には、私的録音録画を行う権利を行使する人もしない人もその対価を支払うことになって、それが不公平かどうかという問題が出てくるわけでありますが、これは対象機器の定め方であるとか、あるいは、そもそもどのくらいの頻度でどういう使い方をするのかを考慮した補償金の額の決定の問題の中でその点を反映させていく必要があろうと思います。ごく一部のユーザーがそうした用途には使っているけれども、多くのユーザーは私的録音録画には使っていない機器については、そういうすべての機器を権利処理済みで売り出すということ自体がユーザー間の不公平を招くので適当でないだろう。例えばそういうような形で整理するのであれば、対象機器から外すとか、あるいは、仮に含める場合であっても、多くのユーザーがどういう使い方をするのかということを念頭に置いて補償金の額の決定するなど、これらの点を補償金制度の中に織り込んでいくのをどう工夫するかという中で解決策を見出すのが合理的な方策ではないかと思います。

(中山主査) では、野原委員。

(野原委員) 先ほどというか、その前の津田委員のご発言とも重なるんですけれども、今回の参考資料1の5ページ、6ページのところの支払い義務者の現行制度に対する問題点の記述ですとか改善すべき課題と対応策に書かれていることを拝見すると、やはり基本的に現在の制度が専用機器、専用利用媒体による録音録画を念頭に置いた制度設計で、それがふぐあいがあるからと言われてる。ということは、裏返すと汎用機器を対象としたいからこの制度を変えたいというふうに読める。そこはやっぱり順序が逆なので納得できないということが1つと。
 それから、5ページの一番下の丸印で、今の制度というのは個々の利用者の録音録画行為に着目する方式というふうに記載されていて、だからこそ返還制度というのは不備、十分に機能は果たせないけど置いてあるということだと思うんですね。
 そういう個々の利用者の録画録音行為に着目した制度であることがいけないというのであれば、それを変えるというのはわかりますけれども、その精神はそれはそれでいいはずだと私は理解しているんですけれども、であるにもかかわらず、汎用機器のことを考えると運用しづらくなるから変えましょうというような論旨でこの資料が整理されているという点に、エンドユーザーの一人として非常に納得しづらい。
 結局、自分は全く私的録音録画に使わない機器であっても、結局もうこれはメーカーが私のかわりに払うのねということを言われているわけで、ということは、逆にだんだんと機器の利用状況が変化していっても、その状況に応じて補償金制度を変えるということ自体がなかなかやりにくくなるということにもつながるような気がするので、納得しにくいという気がします。こういう論旨の流れで変えるというのはちょっと違うのかなと思います。

(中山主査) ありがとうございます。
 生野委員。

(生野委員) 私的録音補償金がピーク時で40億あったところが、今年度に関しては大体8億から9億と見込まれます。これはもう釈迦に説法になりますけど、これまで専用機器、記録媒体であったMDを中心としたものから、パソコンまで私的録音録画されるようになった、要は対象機器、記録媒体以外での複製の量が圧倒的に増えたというところがあるわけで、その手当てをどうしようかということの議論で、専用機器、記録媒体以外はすべてなしという話がそもそもこの実態から出てくるのかどうかということ。
 それと、補償金制度はいずれにしても100パーセント完璧な制度ではなくてやっぱりラフ・ジャスティスだと思うんですね。ラフ・ジャスティスとしてどこまでが許容範囲なのか、専用機器からPCまでの範囲の中でどこら辺で線引きをしたらラフ・ジャスティスを維持できるのかというところの議論であって、このまま放っておけばいいという話では全然ないと思います。

(中山主査) ほかに何かございますでしょうか。どうぞ、華頂委員。

(華頂委員) 汎用機器という言葉がよく出てくるんですけれども、何をもって汎用機器なのかが最近よくわからなくなっていて、前回も申し上げましたテレビパソコンと称されているものは、あれをオフィスに持ち込んで仕事をしてる人がいるんでしょうか。あれはテレビを見て録画のすごい機能が付加されていて、それをユーザーの方が縦横無尽に使って楽しんでいるんじゃないかなと思うので、それが汎用機器なんでしょうか。そこら辺がちょっとわからなくなっているので、どなたかおわかりになる方がいればお答え願いたいんですが。

(中山主査) 室長、どうぞ。

(川瀬室長) 私どもが専用機器、汎用機器というふうに線引きをしておりますのは、この参考資料1の3ページを見ていただけますでしょうか。そのウの(ア)の「対象機器について」という真ん中に表題がありますけれども、その2つ目の丸の、aとbに分かれていますけれども、一応汎用機器といいますのは録音録画機能以外の機能をあわせ持つ機器というふうに定義をしております。したがって、録音録画とその再生機能のようなものは別にしまして、それ以外の用途の機能をあわせ持つ機器という意味でございます。

(華頂委員) もう一つ疑問なことがありまして、携帯電話なんですけれども、高齢者用の携帯電話は電話するだけでメールもできないようなものが結構流行って売れているみたいなんですけれども、その一方、津田さんがお持ちのような音楽携帯と呼ばれているものもあるんですけれども、これも一くくりで汎用なんですか。

(川瀬室長) 私どもの認識は、平成4年当時はいわゆる専用と言われるもっぱら私的録音録画の用に供する機能を持つ機器、現実にはその周辺機器もございました。例えばラジオ付きのMDとかCDプレーヤー付きのものもありましたが、こういうものも一応専用機器というようにくくっているわけですが、それ以外に時代の進展とともに、これは当然のことながら、消費者にとっていろいろな機能がついた機器のほうが便利でございますから、当然単機能でなくて他の用途の機能をあわせ持つ機械が出現をしてきたと考えています。
 機能が単一であれば、その機能を使う用途が限られていますから、その主たる用途というのは録音録画の用途というのはこれはイコールの関係になりますけれども、汎用機器の場合には幾つかの機能をあわせ持っていますから、その用途が録音録画を主たる用途にしているのかどうかというのは、その機器といいますか、理論的にはそれだけではわからないわけでして、したがって、その主たる用途という主観的な要件になりますでしょうか、そういうものを別の尺度から見て機器を振り分けることも必要なんではないのかと考えています。つまり、従来の専用機、専用媒体のみが対象になるという現行の制度と、それから、平成4年以降のデバイスの進展というものを比較しまして、その負担をしていただく利用者の公平性の問題もございますから、そういう中でどのように考えていくかということです。
 私どもとしては、それでは、汎用機器のすべての場合において、これを対象にしなきゃならないかというふうに考えているわけではございませんでして、まさしくそれはこの場のご議論で関係者のご意見を踏まえた上で決めていけばいいのだろうと思っております。

(中山主査) ほかに何か。どうぞ、津田委員。

(津田委員) これは生野委員と野方委員と椎名委員にちょっと端的にお伺いしたいんですけど、対象をどこにするのかというときにiPodに代表されるいわゆる携帯メモリのこういうものと、あと、いわゆるパソコンですよね、録音録画は今ほとんどのパソコンでできますから、録画パソコン、あと、もう一つ携帯電話、最近の高機能の携帯電話というのを、この3種類があったときに、どれも今の現行のこの私的録音補償金制度の枠内に対象機器として含めるべきというお考えなんでしょうか。パソコンとメモリオーディオと携帯電話について、すべてについて求めていくのかということを、生野委員と野方委員と椎名委員にお聞きしたいんですけれども。

(椎名委員) パソコンとメモリオーディオと。

(津田委員) 携帯電話。

(椎名委員) 携帯。私的複製、例えば録音にせよ録画にせよ、私的複製にかかわる機能を持っていれば、対象機器の選定の方法ではすべて対象にしたほうがいいという主張をしていますので、それらが全部対象になった上で、補償金をかけていくというプロセスで何らか変えていけばいいと思っています。
 それで、今、川瀬さんからもお話があったんですけど、パソコンというものが世の中にあるわけじゃなくて、パソコンみたいなテレビもあるし、テレビみたいなパソコンもあるし、オーディオプレーヤーみたいなパソコンもあるわけですよね。そういったものは当然対象になっていくんではないかと思うし、メモリオーディオでも、メモリオーディオというぐらいだから、メモリオーディオは対象になっていくだろうし、もう一個、携帯電話についても外へ出ないとかというふうなDRMがかかっているというようなことを勘案して考えていけばいいけれども、対象機器としてはすべて対象になるんではないかと思っています。

(中山主査) どうぞ、野方オブザーバー。

(野方オブザーバー) 本日の冒頭で申しましたように、私的録音録画に供される機器、記録媒体についてはすべてが対象になるということが望ましいという意見であることには間違いありません。それで、ここはもう椎名委員と同意見ということになりますけれども、パソコンという言葉一言が意味するものというのは、やっぱりそれはそれで多様なものがあって、そこもそれなりにカテゴライズすることもできるのだと思います。携帯も音楽携帯もあればそうでない携帯もあるという中で、そこは対象になった上での良い解決法というものを評価機関の中で見出していければいいと思っておりますし、そうしたことについて欧州の諸外国がやってきているところにさまざま学ぶところがあるのではないかなと思っております。
 以上です。

(中山主査) 生野委員。

(生野委員) 携帯プレーヤーに関してはこれは対象とすべき、これははっきりしていると思います。あと、パソコンと携帯電話に関しては、例えばパソコンであればオフィス用の使用と個人用の使用との区分け、個人用であっても私的複製の頻度がどうなのかとか、機能上のことを含めて、さらに詰める必要があるかと思います。基本的には外すという考え方ではなくて、どういう考え方でいったらいいのかというのをさらに詰める必要があるのかなと。携帯に関しても同様です。

(中山主査) どうぞ、津田委員。

(津田委員) 一応補足的なことでちょっと言っておくと、やはり今パソコンのほとんどのパソコンというのは今ウインドウズであり、マックもありますけれども、マックにはiTunesという録音ソフトが普通に標準で入っていますよね。ウインドウズも今XPにしてもVISTAという新しいOSにしても、標準でウインドウズメディアプレーヤーという音楽を録音してファイル化する機能というのがもうすべての、ほとんどの、リナックスという例外事例がありますけれども、もうほんとうに市場で流通している九十数パーセントのパソコンが録音機能をOSが有しているという状況になっています。なので、僕はだから、かけるんであれば、どちらかというとそこは0、1の議論になってしまうのかなというのが実態としては1個思います。
 というと、あと、やはり携帯電話に関しても今auさんが出しているものは全部すべての機種がほとんど、高齢者向けの一部のものを除いては、一部、ほとんどが音楽の録音再生機能を有していますし、NTTドコモさんもそういう機能をほとんど今かなりやっています。おそらくソフトバンクモバイルさんもそういった機能をこれから追加する機種が増えていくでしょうから、やはり携帯電話に関してもほとんどが音楽の録音機能も有するようになっていくと思います。
 以上です。

(中山主査) ほかに何かございましたら。どうぞ、河村委員。

(河村委員) 一つ一つの機器の使い方について分析していくということが無駄だとは思いませんけれども、ここに「負担の公平性等の点から、仮に汎用機器等を対象にする場合」などと「ウ」のところに書いてありますけれども、この負担の公平性という言葉ですが、だれが不公平だと言うのか、消費者が不公平だと言ったのかどうかわからないんですけれども、汎用機器に拡大するのが難しいから制度を改善すべきというような方向で話が進むのはおかしいということを申し上げたいとおもいます。これまでの繰りかえしになりますし、もうこれに対する答えはないのかもしれないんですけれども、損害に対して補償しているのか、それとも、どこかに利益があるから還元しろなのか、ということもすっきり回答していただいていません。誰かに利益があるからという場合は、同時に自分にも利益があるかもしれませんから、私はそれだけでは納得できせん。損害についてもよく説明できていないと私は思っておりますし、更には、補償金額が減っているからという理由も、私には理解できません。
 補償金額がこの制度で減っていくと。金額はある一定のところに持っていかなきゃいけないとか、さらに額を上げていかなきゃいけないという、何か理屈もなしにそうなるのはおかしいですね。減っているからということは何の理由にもならないと思います。なぜならば、ここでずっと皆さんがおっしゃってきたように、技術が進歩しているわけですし、情勢は変化しています。補償金額は減っているかもしれませんけれども、ほんとうにクリエーターの方がより多くの損害を被ってているかということが問題なのであって、補償金の絶対額の問題ではないと私は思っております。

(中山主査) 議論も盛んになってきたところなんですけれども、予定されている時間は超過しておりますが、何か最後にこの問題についてここで述べておきたいということがございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 また、この議論は次回以降もこのペーパーに沿ってやっていきたいと思いますので、それでは、本日のところはこのぐらいにさせていただきたいと思います。
 最後に、次回の小委員会の内容も含めまして、事務局から連絡がございましたらお願いいたします。

(川瀬室長) 本日はどうもありがとうございました。
 本日の議論につきましても、事務局で論点の整理、集約に努めたいと思っております。
 なお、一通り議論が済みましたところにつきましては、私どものほうでその議論を整理した整理ペーパーをつくりまして、この引き続きの議論が済み次第、さらに議論をし、論点をさらに集約していきたいと思っております。
 次回の小委員会でございますけれども、ご案内のとおり、8月8日の水曜日でございますけれども、10時から12時、場所はフロラシオン青山で開催を予定しております。
 以上でございます。

(中山主査) なかなかこの議論をまとめてペーパーにするのも大変な作業かと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会の第8回私的録音録画小委員会を終了させていただきます。本日は長時間、ありがとうございました。

―了―

(文化庁著作権課著作物流通推進室)


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