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資料4

私的録音録画に関する制度設計に関する意見

平成19年6月27日
社団法人 日本民間放送連盟
大寺 廣幸

1. 私的録画補償金制度について
 「私的録画補償金制度」は、番組を録画できるという“視聴者の利便性”を守りながら、放送事業者も含めた“権利者の利益”とのバランスを図るために有用な制度であり、存続すべきと考える。

2. 第5回私的録音録画小委員会配付資料:資料1「私的録音録画に関する制度設計について」に対する意見かっこ内は該当記述箇所のあるページ)

1   前提条件の整理−第30条の範囲の縮小かっこ1ページ〕
 私的録音録画の行為類型のうち、「イ 適法配信・有料放送からの録音録画」を第30条の適用範囲から外すこととしている点について、有料放送は、視聴者に録画させることを前提としたサービスではなく、無料広告放送と同様に、リアルタイム視聴が基本である。この点が複製させることを前提としているダウンロード型の音楽配信(適法配信)とは異なる。コンテンツの権利者や視聴者(ユーザー)との直接契約がある点は、適法配信と同様だが、複製させることを前提としていない有料放送では、契約において権利者から視聴者による録画を含めて許諾を得ることや、視聴者から録画の対価を得ることは合理的理由がないため困難である。したがって、「有料放送からの録音録画」を第30条の適用範囲から外すことは妥当ではない。

2   前提条件の整理−著作権保護技術と補償の必要性の関係かっこ1ページ〕
 デジタル放送におけるコピー制御は、導入の際、メーカーが制御信号に反応しない外国製録画機器(無反応機器)が国内市場へ影響を及ぼすことを懸念し、これを排除する目的でスクランブルをかけるよう強く要請したため、双方協議を重ね、スクランブルに否定的であった放送事業者が譲歩するかたちで導入された。しかしながら、こうした経緯を経てようやく運用に至った現在の保護技術も、あらゆる技術的保護手段と同様に絶対的なものではなく、保護と回避の技術開発はいたちごっことなるのが常である。
 この著作権保護技術(コピーワンス)の導入は、視聴者に対し、第30条に定める私的複製の範囲でテレビ番組の録画機会を担保したうえで、インターネットオークションや動画投稿サイトに見られるような、テレビ番組の違法流通を防ぐために行ったものである。しかしながら、私的使用目的で録画されたテレビ番組が違法流通に供される場合も多く、適法な複製(私的複製)と違法な複製(目的外使用のみなし侵害)の垣根は低くなっているのが現状である。
 また、視聴者の録画については、あくまでも第30条の範囲で行われるものであるため、放送事業者は権利者からその複製の許諾を得ておらず、視聴者に対しても録画を“許諾”しているものではない。
 以上のように、著作権保護技術と私的複製をとりまくさまざまな要素が相まった状況において、“視聴者の利便性”と“権利者の利益”のバランスをとるために補償金制度は有用であり、デジタル放送においても、著作権保護技術と私的録画補償金制度は併存すべきものと考える。

3   対象機器についてかっこ3ページ〕
 デジタル録画機器については、記録媒体を内蔵した一体型の機器(ハードディスク録画機)や、ブルーレイディスク録画機などが補償金の対象外となっている。これらは、明らかに録画専用機器であることから、早急に補償金の対象とすべきである。その他の汎用機器についても録画機能を考慮し、ユーザーに多大な不公平感が生じない形で補償金制度の対象とする方策を検討することが望ましい。

4   対象機器・記録媒体の決定方法についてかっこ4ページ〕
 技術の発展に合わせ、私的録音録画補償金制度の対象機器を迅速に追加指定することは重要であり、そのために現行の政令による指定制度を変更することに賛成する。ただし、利害関係者も含めた“評価機関”での審議による迅速な決定を実現するためには、政令で定める判断基準は、具体的かつ明確なものであることが望ましい。

5   録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計かっこ9ページ〕
 録音・録画源の提供者に対しては、その提供行為が消費者に第30条の対象となる私的複製をさせることを目的としていない限り、私的複製に対する補償義務を課すことに合理的理由がない。また、今後、コンテンツ(録音・録画源)の提供者やその流通ルートは多様化し、コンテンツ自体も重畳的に利用されるなど、コンテンツをとりまく状況は複雑化することが想定され、資料1のような“単純な制度”にはなりえない。さらに、第10小委員会報告書および資料1でも指摘されているとおり、仮に放送事業者が私的録画補償金を支払うとすれば、その補償金の原資は、なんらかの形で最終的に視聴者へ転嫁される可能性があり、録画機器を有しない視聴者からも間接的に補償金を徴収するという、公平性を欠いた制度となる。また、放送事業者自身が補償金の分配を受ける権利者でもあるため、補償金の請求者と支払者の両面を持ちながら制度運用に適切な対応をすることは困難である。したがって、“録音・録画源の提供行為に着目した制度”ではなく、“録音録画機器・記録媒体の提供行為に着目した制度”を採ることが妥当である。
以上


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