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資料2

第5回私的録音録画小委員会における意見の概要

1.全体について

  前提条件の整理の中で補償の要否について一切触れられていないのは問題。

著作者の立場から、新たな補償金制度の確立は必要だと常々主張していたところ、これから具体的制度設計を議論していただけることになり、大変評価している。

理想社会においては補償金はゼロになるかもしれないが、過渡期としてはラフジャスティスの制度も必要である。問題は、そのラフの部分を出来るだけ小さくするかであり、それを審議会で考えるべきである。

30条の範囲も変更せず補償金制度は現状維持が一番いい結論だと思う。

30条を変えるのか、それとも補償金を残すかという二択であれば、エンドユーザーはある程度補償金があることによって自由にコピーできるほうがいいと思うだろう。

権利者の不利益の立証論が問題になっているのは私的録音録画から誰が利益を得ているのかということだが、消費者が得ている利益、メーカー等が得ている利益について再三意見を述べたがそれに対する回答はなかった。本日提出した資料からみて、メーカーはデジタルコンテンツ関連機器により大きな利益を得ており、このような点についても考慮する必要があると思う。

2.私的録音録画に関する制度設計について

1. 前提条件の整理
(1) 第30条の範囲の縮小

有料放送についても30条の対象外にするということであるが、レンタルからの私的複製について、関係者から実態は聞いたが、これをどうするかについて議論が不十分である。

海賊版からの私的複製や違法配信からのダウンロードを規制したとしても、家庭内の複製行為を取り締まることは実質的にはほとんど不可能。ユーザーが接している著作物が、許諾を得て提供されたものなのか判断する手がかりがないとユーザーは常に不安な状況でインターネットを利用しなければならず悪影響が大きい。情を知って行なう場合のみ違法にするという規定も、利用者保護に役立つか疑問。ユーザーの行為にまで立ち入るべきではないという気がする。よくわからないでダウンロードしているユーザーにまで萎縮効果をもたらすことに疑問を持っている。

著作権侵害の非親告罪化と組み合わせたら、インターネットを使うこと自体が常に犯罪行為に近くなってしまうことを大きく懸念している。

違法サイトからのダウンロードを30条の対象外にするのは、海賊版対策と思われるが、これは送信可能化に関する権利で対応できると考えられ、30条の範囲の見直しまでは必要ないのではないか。

ダウンロード規制が伴って初めて海賊行為に対する対策が可能になると考えている。

30条の範囲の縮小は、3ステップテストとの適合について、今後のDRM技術の普及動向や私的録音録画実態の変化を見据えて不断に検証していかなければならない。

ネットでの違法配信を根絶するには多大の費用がかかる。違法なものは違法であるということを明確にしなければいけない。

適法なものとそうでないものをわかりやすくしてほしい。ある程度明確に違法なことがわかっていたら、それに接近しないように法律制度を作っていくということのも重要ではないか。

(2) 著作権保護技術と補償の必要性との関係

「著作権保護技術の効果により私的録音録画の総体が減少し、一定の水準を下回ったとき」の条件はもう成就しているのではないかと考えているが、その点に触れていないのは問題。

「権利者の総意に基づいて複製をコントロールできる場合に補償の必要性がなくなる」という考え方は危険。プラットホームからユーザー端末のハードウエア、ソフトウエアまで独占しているような事業者が優越的地位を利用して、権利者に一定の配信価格や保護技術レベルなどを認めさせる場合にも補償の必要性がなくなるとすると、事業者の独占的利益が全く調整されなくなる。

地上波デジタル放送のコピーワンス見直しについては実演家も放送事業者もあくまでも補償金制度の存在を前提に一定の妥協を検討してきたが、今後提案される着地点について、権利者としては、権利者の意思でコントロールできるものとは考えておらず、補償金を前提としていないのであれば議論は白紙に戻ると考えている。

補償金制度の廃止を求めているのではなく、私的録音録画によりどのような損失があるのかを説明してほしいと思っており、その説明がないまま何となく損失はあるという前提に立って話が進むのは納得できない。

コピーワンスの議論が決着をみようとしている時に、補償金がないと私的録画を許さないということを権利者が決められるのであったら、何のために審議会の場で議論しているのか疑問。

著作権保護技術と補償金制度は保護技術の内容によっては併存可能という意見には賛成。

暗号化されていないコンテンツに著作権保護信号を付けるタイプの保護技術は、法律等による強制がない場合は著作物利用のエンフォースをすることが難しく、補償措置の検討が必要だが、コンテンツを暗号化して契約を通じて著作物の利用をエンフォースするような場合は、流通過程で契約によって適切な対価の還元の仕組みが出来る。現在はそのような契約実態にはなっていないので、全部末端の私的複製の段階で補償金を取ろうとするのは疑問。

(質問に答えて)例えば音楽CDは著作権保護技術がない方に入れないといけないが、どのように複製物が利用されるか想定ができていないという現状を認めた上で、音楽CDからの録音については、将来補償の要否を検討する必要があるのではないかという趣旨である。

SCMS方式がパソコンで機能しなくなったように、著作権保護技術がどこでどう無効化されるか、ある著作権保護技術が永久に守られ続けるのか著作者側として不安がある。

絶対的な保護技術というのはあり得ないので、補償金制度は別途必要であろうと思う。

音楽CDからの録音について補償の要否を検討する必要があるという立場からすると、補償制度の成立が2〜3年後とすると、制度維持コスト等との関係から、その時に補償金制度を維持するだけの意味があるか疑問に思っている。具体的な基準があるわけではないが、補償の必要な録音録画の総体は減っていることには違いない。

私的録音録画は文化を形成するために有効な役割を持っている。しかし、だからといって権利者を阻害していいわけではなく、その意味で私的録音録画補償金は一定の価値を持っているのではないかと思う。JEITAの意見のように、スクランブルをかけた上でコピーコントロールをやっているから補償金の必要はないということにはつながらないのではないか。JEITAの考え方を突き詰めていけば、録音源、録画源の提供者が補償金を支払うという考え方にどんどん近づいていってしまう。

2. 仮に補償の必要性があるとした場合の私的録音録画補償金制度の基本的なあり方
(1) 制度設計の大枠
  録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計

コンテンツプロバイダーは多様化しており、録音源・録画源の提供者を補償金支払い義務者にした場合は制度設計は単純と記述されているが、放送事業者の立場からみれば、様々な問題がある。

ハードメーカーがビジネスとして様々な複製機器を開発・普及したから現在の私的録音録画実態が生じ、権利者だけでなくコンテンツプロバイダーも不利益を受けているのに、そのコンテンツプロバイダーが補償義務者になるというのはあり得ない。

(2) 録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計について
1 対象機器・記録媒体の範囲について

対象を汎用機器・汎用媒体へ拡大することは、ラフジャスティスの制度をさらにラフにするということであり妥当でない。

消費者の「主たる用途」と書かれているが、現行の著作権法施行令第1条に規定する「主として録音(録画)の用に供される」という表現と一体どこがどう違うのか疑問。

一体型機器、汎用機器を用いた録音録画が増えていて負担の公平性に問題があるとあるが、ポータブルオーディオプレイヤーを買ってネット配信で音楽を聴く人が仮に増えたとしても、このような人は補償金を負担する義務がなくなるので、負担の公平性の問題は生じないのではないか。

パソコン等の取り扱いについてはまだこれからペーパー等で申し上げたいことはあるけれども、その他について諸外国のいい例に沿ってこれからも検討を進めていきたい。

汎用記録媒体も補償金の対象にすべきとすると、特に記録媒体はビジネスユースも多いことから、私的録音録画をしない人からも補償金を徴収するということになる。このような論理はあり得ないのではないか。

2 対象機器・記録媒体の決定方法について

様々な観点から政策調整が必要だという前提で現行の政令指定方式になったと理解しており、法的安定性や明確性のためにも現行制度維持が適当と考えられる。制度変更の理由の一つとして決定の迅速化があげられているが、文化庁が一方的に決めるのではないかという不安がある。

3 補償金の支払い義務者

第10小委員会報告書では、著作物の利用の責任は利用者が負うのが原則になっているが、資料1はその理念がどこにあるのかという疑問がある。

ドイツではもともと機器メーカーが著作権侵害において間接侵害者だというのが議論の出発点。我が国がこの制度を導入したとき、当然そのドイツの状況も勘案しながら決めたはずなのに、その制度を変更するとすれば、どのような事情の変化があるのか説明が必要。

立証責任の問題、補償金制度の認知度等の問題を議論しないまま、支払い義務者を変えれば返還制度の問題点がなくなるというのは疑問。

今のような議論のプロセスでは、現行法の協力義務以上の義務は全く受け入れられない。

4 補償金の額の決定方法

DRM技術の発展によって補償金補償金をかけなくてもよい社会になるというのは1つの理想。そうなるまでの間は、補償金額の決定の方法については、DRMとコピープロテクションとの関係で、複製の頻度を定期的に調べ評価機関によって見定め、補償金率も検討していくということを制度の中に組み入れてはどうか。


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