ここからサイトの主なメニューです
資料6

著作権保護技術の仕様を規制することについて

1. 著作権法上の複製利用に関する回避規制について

 著作権法では、私的使用のための複製に限り、利用者の回避に関する行為規制を定めており、他の制限規定においては、利用者の回避に関する行為規制は設けられていない(30条1項2号)。

 規制理由は、コンテンツは技術的保護手段を回避して複製が行われることを想定して市場に流通しているわけではないので、権利制限の対象とすべきでないと考えたからである。また、他の権利制限について回避規制がないのは、公益性がある利用等であることから、仮に回避が行われたとしても権利者の利益を害さないと考えられたからである。

 なお、以下の者には罰則が適用される(102条の21号、2号)。
回避装置・回避プログラムを公衆へ譲渡・貸与、製造・輸入・所持等した者
回避行為を行う業者

2. 回避に関する行為規制と著作権保護技術の仕様規制

(1) 回避に関する行為規制

    一般原則

  権利制限

日本 特に規制なし

30条のみ規制あり

米国 回避規制あり
(1201条(a)(1)(A))

権利制限(フェアーユース含む)内は規制なし
(1201条(c)(1))

仏国 事実上あり(技術措置の保護)
(331の5条)
権利制限内は規制なし
(同左)

(2) 著作権保護技術の仕様規制

日本   特になし

米国 VOD、有料放送、DVD等からの複製を除き、家庭内の複製を制限する技術の使用禁止(1201条k(2))

仏国 技術的措置規制機関は私的複製等の例外措置を受益者から奪うことのないよう監視、必要な場合は調停等の権限あり(331の8条)

3. 著作権保護技術の仕様規制の見直しについて

(1) 制度改正は必要ないという考え方

 権利者がどのような著作権保護技術を選択するかどうかは、権利者の一存で決まるわけではなく、著作物等の持つ性質、消費者の理解、世論の動向等を勘案して、自然のメカニズムにより、適切な選択が行われる。
 例えば、録音物については、原則として複製を一切禁止しているものはない(CCCDもパソコンでは複製できないが、他の録音機器では複製できる)。映像作品については、パッケージ(DVD等)からの作品は複製禁止だが、放送のうち、少なくとも無料放送については、複製禁止を求めている関係者は誰もいない。

(2) 制度改正は必要であるという考え方

 著作権保護技術がない場合は、著作物を複製する行為が違法かどうかに関わらず、複製をしようとすれば可能であり、それにより結果的に知的創作活動の刺激になったり、国民の知る権利を充足したりしていたが、著作権保護技術はそのような事情を一切無視して複製を一切禁止することが可能である。
 したがって、著作権保護技術の用い方によっては、権利者が意識しているかどうかに関わらず、文化の発展や知る権利等との関連で大きな問題が生じる可能性があるため、著作権法に予めその調整弁を設けておくべきである。

(参照条文)

【米国】

1201条
(a)  技術的手段の回避にかかる違反
(1)
(A)  何人も、本編に基づき保護される著作物へのアクセスを効果的にコントロールする技術的手段を回避してはならない。第1段に掲げる禁止は、本章の制定日1に始まる2年間の終了時に発効する。
1   1998年10月28日
(略)

(c)  その他の権利等に対する無影響
(1)  本条のいかなる規定も、著作権侵害にかかる本編に基づく権利、救済、制限または抗弁(フェア・ユースを含む)に影響を及ぼさない。
(略)

(k)  特定のアナログ装置および特定の技術的手段
(略)
(2)  特定の暗号化の制限
 何人も、以下のいずれかに該当する複製の場合を除き、家庭での複製を妨害しまたは制限するために自動制御コピー・コントロール技術またはカラーストライプ・コピー・コントロール技術を使用してはならない。
(A)  公衆の構成員が送信の内容、受信の時間またはその両方を含め送信を選択した生中継または視聴覚著作物の単一の送信または特定の送信群であって、各単一の送信または特定の送信群につき当該構成員に別料金が課されるものの複製。
(B)  公衆の構成員が当該チャンネルまたはサービスに含まれるすべての番組を受信することができるために受信料として料金を支払うチャンネまたはサービスが提供する生中継または視聴覚著作物の送信のコピーからの複製。
(C)  録音済の視聴覚著作物を収録する有体的媒体からの複製。
(D)  第(A)号に掲げる送信のコピーからの複製、または第(C)号に掲げる有体的媒体からのコピーからの複製。
 送信が第(A)号に定める条件および第(B)号に定める条件の双方をみたす場合、当該送信は第(A)号に定める送信として扱う。

【仏国】

331-5条  ソフトウェア以外の作品、実演、録音物、録画物ないしは番組の著作権者又は著作隣接権者から許可されていない使用を阻止もしくは制限することを狙いとする効果的な技術措置は、本節に定める条件で保護すること。
 第1段に言う技術措置とは、その正常動作の中で本段に定める機能を実現するあらゆる技術、装置、コンポーネントを意味する。これらの技術措置は、アクセス・コード、保護対象物の暗号化、スクランブリング又はその他のあらゆる加工手段等の保護方式、或いはこうした保護目的を達成する複製管理メカニズムの採用により、権利所有者が第1段に規定する使用を管理する場合に、効果的であると見なされる。
 プロトコル、フォーマット、或いは暗号化、スクランブリング又は加工の方法は、そのままでは、本条項に言う技術措置を構成しない。
 技術措置は、著作権遵守の中で、相互動作性の実質的活用を阻止するものであってはならない。技術措置の提供者は、第L.331-6条及び第L.331-7条に定める条件で相互動作性に不可欠な情報の入手を保証すること。
 本章の諸規定は、コミュニケーションの自由に関する1986年9月30日付法律第86-1067号の第79-1条から第79-6条、並びに第95条に定める法律的保護に干渉するものではない。
 技術措置は、本法典が定める権利並びに権利所有者が許可する権利の範囲内における、作品或いは保護対象物の自由な利用に対抗することができない。
 本条項の規定は、本法典第L.122-6-1条の規定を妨げることなく適用される。

331-8条  第L.331-8条 - 個人的な複製の例外並びに本条項に記す例外の恩恵は、本条項及び第L.331-9条から第L.331-16条で定める諸規定により保証される。
 第L.331-17条に定める技術措置規制機関は、技術的な保護措置を実施することで以下に列挙する条項に定める例外措置を受益者から奪うことがないよう監視すること:
  - 第L.122-5条の7号及び8号、更に2009年1月1日以降、同条の2号及び3号のe;
- 第L.211-3条の6号及び7号、更に2009年1月1日以降、同条の2号及び3号の最終段落;
- 第L.342-3条の3号、更に2009年1月1日以降、同条の4号。
 第L.331-9条からL.331-16条の規定を条件として、規制機関は上述の例外措置の実施方法を決定し、とりわけ個人的複製の場合の例外として認められる最低複製部数を、保護の対象物又は作品の種類、公衆への種々の伝達手段、並びに使用可能な保護技術が提供する種々の可能性に応じて制定する。


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ