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資料4

補償措置が必要である理由

小六 禮次郎

1   私的複製に対する受忍限度と補償金制度

 私たちの私的複製に対する受忍限度をもし表現するなら、昭和45年(1970年)に当時の状況を踏まえて日本の著作権法30条が制定されたときの私的複製の総体です。
 以後、カセットテープによるアナログ録音が普及、さらには平成4年(1992年)にミニ・ディスク(MD)が登場し、デジタル録音が家庭内でも当たり前になりました。こうした技術の進化による消費者の音楽の利用形態の変化、私的複製の総体の拡大に伴い、私的複製の総体のうち受忍限度を超えてしまった部分をカバーする解決策として、メーカー、消費者、そして私たち権利者の三者による15年もの長きにわたる話し合いの結果、平成4年、私的録音録画補償金制度が欧米諸国の例に倣い導入されたわけです。
 では、その後の状況はどのように変化したでしょうか?
 今の法律が前提としている私たちの受忍限度は当時とは変わっていません。
 一方、私的複製の総体はどうなったでしょうか?
 こちらはパソコンや携帯音楽プレイヤーの爆発的普及により拡大していることについて異論を挟む方はいらっしゃらないと思います。
 とするならば、私的複製の総体に対する受忍限度を超えてしまった部分をカバーする解決策としての補償金制度の重要性、必要性は、今日においても小さくなるどころかなお増す一方であることはおわかりいただけると思います。

2   購入したりレンタルしたCDの私的複製から受ける不利益

 よく引き合いに出されるプレイスシフトやタイムシフト等も含め、私的にではあっても複製することにより消費者にとって使い勝手良く音楽を楽しむことができる、ということは、それらの私的複製のソースが購入したCDであれレンタルしたものであれ、消費者にとって利益があるということであり、それはつまり著作物の利用により利益が生じているということだと思うのです。
 そして、一方に利益があるのであれば、私たち著作者もその利益から生ずる恩恵に与ることができる、と言えるのだと思っています。今はそれが得られずにいるのであって、つまりここにこそ私たち権利者にとっての不利益があるのです。
 このような考えは、音楽がそのような新しい使い方によって広まり、親しまれているのである、という私自身も支持する考えと共存できない性質のものではありません。現にそうした消費者の利益の対価として、文化先進国と言われるフランスやドイツでは、200億円を超える補償金が支払われているのです。なぜ日本はそれらの国と考えを一つにできないのでしょうか。私にはそのことの方が理解できません。

3   私的複製を禁止することについて

 私たちは、一方的に自分たちの権利に固執しそれを主張しようとしているのではありません。もし利害得失だけで考え、私的複製を認めることが私たちにとってデメリットでしかないのであれば、30条を廃止し許諾権行使の対象とするよう主張するか、技術的に私的複製を禁止すれば済むことです。
 ですが、この委員会で繰り返し申し上げているとおり、私的複製を禁止するという考えも私には全く理解できません。私自身一消費者として私的複製ができる環境の恩恵に与っており、私的複製ができなくなったら大変困ると思います。
 こうしたことからも、先ほど述べたように、私的複製できることが消費者にとっての利益であることに目を向けるべきです。この利益は守るべきものなのです。そしてそうした利益を守るからこそ、お互いがお互いの利益を認め合うことが必要なのです。そして、それらを上手に調整することが、消費者の誰もが文化を身近に享受できる社会の形成に必要不可欠なのであり、お互いが従来通り恩恵を受け続ける最良の方法であると考えるのです。

結論: 補償措置としての補償金制度は必要です

   以上、縷々述べて参りましたが、当初補償金制度を導入するに至った経緯と、その後の現状からは、いささかも補償金制度を不要であるとするような理由を見いだすことはできないこと、そして補償金制度に代替する実効性のある解決策も存在しないことがおわかりいただけると思います。
 今は、例えて言うなら平成4年にメーカー、消費者、権利者の三者が協力して作りあげた土俵が揺らいでいるときです。だからといって今、この土俵を壊して一から作り上げることが果たして望ましいことなのでしょうか。これまで、私たちはこの土俵の上で共同生活を送ってきました。メーカーは私的複製できる機器・媒体を販売し、消費者は複製して音楽を楽しみ、私たちは補償金を受け取ってきたのです。こうした長年にわたり培われてきた社会的慣行は簡単に否定できるものでもありませんし、ましてや否定してよいものでもないと思います。
 本資料で述べたことにご理解をいただき、一日も早く新しい補償金制度(平成18年6月28日本小委員会配付資料3参照)を定め、実施していただくことを強く望みます。
以上


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