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著作権分科会 私的録音録画小委員会(第3回)議事録・配付資料

1. 日時
平成19年5月10日(木曜日)10時〜12時

2. 場所
アルカディア市ヶ谷6階 会議室

3. 出席者
(委員)
石井、井田、大寺、大渕、華頂、亀井、河村、小泉、河野、小六、椎名、津田、筒井、土肥、中山、野原、生野、松田、森田
(文化庁)
高塩次長、吉田審議官、甲野著作権課長、亀岡国際課長、川瀬著作物流通推進室長ほか

4. 議事次第
(1) 開会
(2) 委員及び文化庁出席者紹介
(3) 議事
レンタル業界からのヒアリング
制度の枠組みについて
その他
(4) 閉会

5. 資料
資料1   レンタル業界からのヒアリング事項
資料2 日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合提出資料(PDF:279KB)
資料3 私的複製にかかる規定の国際比較(PDF:327KB)

参考資料1 私的録音録画により権利者が被る不利益と著作権保護技術の関係について
参考資料2 ベルヌ条約の3ステップテストと30条の権利制限の関係について(PDF:83KB)
参考資料3 30条の範囲の見直しと補償措置の必要性の関係について(PDF:65KB)
参考資料4 私的録音録画問題に関する検討の進め方

6. 議事内容
(中山主査) それでは、時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第3回を開催いたします。
 本日は、御多用中、御参集賜りましてありがとうございます。本日の会議の公開につきましては、予定されております議事内容を参照いたしますと、格段非公開にするには及ばないと考えられますので、既に傍聴者の方々には御入場をしていただいておりますけれども、この扱いで特に御異論ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

(中山主査) ありがとうございます。それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々はそのまま傍聴をしていただきたいと思います。
 それでは、早速議事に移ります。はじめに事務局より人事異動の報告と配付資料の説明をお願いいたします。

(木村課長補佐) それでは、事務局の人事異動について御報告させていただきます。4月9日付で前任の秋葉国際課長でございますが、国際連合教育科学文化機関日本政府代表部参事官(外務省への出向)として異動となっております。また、後任でございますが、5月1日付で亀岡雄が文部科学省大臣官房文部科学広報官より国際課長に就任しております。
 続きまして、本日の配付資料の確認をお願いいたします。本日の配付資料でございますが、議事次第の用紙1枚ものがございます。この中ほどより下段のほうに配付資料一覧を示させてもらっております。本日、資料が3点と参考資料が4点ほどございます。順次御確認をお願いいたします。
 資料の1でございますが、レンタル業界からのヒアリング事項、1枚ものの資料でございます。資料2でございますが、日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合様からの提出資料でございます。資料3でございますが、私的複製にかかる規定の国際比較に関係します資料でございます。 そのほかに参考資料といたしまして4点ほど配付させてもらっております。
 配付漏れ等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

(中山主査) それでは、本日の議事に入ります。本日は音楽CD等からの私的録音に関連いたしまして、レンタル業界の契約実態等につきましてヒアリングを行いたいと思っております。ヒアリングの経緯や内容等につきましては、事務局からまず簡単に御説明をいただいた後、日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合若松修専務理事からお話を承りたいと思います。それでは、お願いいたします。

(川瀬著作物流通推進室長) それでは、ヒアリングの前に私のほうから少し御説明したいと思います。資料1をご覧ください。レンタル業界と私的録音録画の関係につきましては、前期の小委員会、今期の小委員会においても、たびたび委員の方々から御意見を頂いております。また、委員の方から直接レンタル業界の方からお話をうかがいたいという御要望もございましたので、本日、ヒアリングを行うことにさせていただきました。本日の審議事項とは直接関係はございませんが、今後さらに議論を進めていく中で、御参考になればと思っております。資料1は、文化庁からレンタル商業組合にこういうことをお聞きたいと提出した資料でございます。基本的には、この項目に沿ってお話いただくことになると思います。以上でございます。

(中山主査) それでは、お願いいたします。

(若松氏) 御紹介いただきました日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合で専務理事を務めます若松も申します。
 私ども通称CDV-JAPANというふうに略称で申しておりますけれども、CDレンタル店とビデオレンタル店の業界団体として昭和49年、当時の通産大臣によって認可された商業組合でございます。以降座って説明させていただきます。
 ただいま川瀬室長からございましたように、資料1に基づきましてあらかじめヒアリング事項をちょうだいしております。それに対しまして資料2で配付していただいておりますCDレンタルに関する資料、これに沿っておそらく一番目と二番目のヒアリング事項につきましては、この資料の説明によって代えさせていただけるものと思っております。
 早速でございますが、若干駆け足になるかと思いますけれども、資料2に沿ってまず説明させていただきたいと思います。1ページ目をめくっていただきますと、最初に「貸与権」制定の経緯ということで、これは専門の先生方を前にしてあんまり詳細の説明は省かせていただきますけれども、貸レコードといいますのは1980年(昭和55年)に三鷹駅前で大学生が始めたということで知られているビジネスでございます。
 この背景といたしましては、実はその前年、1979年にソニーからウォークマンというものが発売されまして、いわゆる音楽を聴取するスタイルが、インドアからアウトドアへ移ったという非常に劇的なシーンの変化というのがありまして、それを受けてこういうレンタルビジネスというものがやや必然的に発生したいのではないかなというふうに考えております。当然のように既存のレコード会社、レコード小売店との間でさまざまな摩擦が生じまして、それを受けまして著作権改正という動きがあるわけでございますけれども、1983年の著作権審議会第1小委員会の報告をベースにしまして、1ページ目から2ページ目でございますけれども、基本的には報酬請求権というふうにしつつも、これは一応、隣接権者への権利という意味でございますけれども、短期間に限って許諾権を認める等の特例措置が必要ではないかという、こういった趣旨の報告がなされまして、それが3ページで「貸与権」創設に至ったと。3ページ目は当時の加戸文化庁次長が「著作権法逐条講義」等で整理されたものを一応参考までに添付しております。
 そういったものを受けまして4ページでございますけれども、「貸与権」というものが創設されたわけでありますが、それと前後いたしまして許諾条件というものが設定されたということでございます。1984年、これは3月、4月、5月と月を追っておりますけれども、この辺の流れが非常にドラスティックだったということでございますけれども、84年の結果的には5月に国会で著作権法改正が成立しまして貸与権が新設されるわけでありますけれども、それに先立ちまして、その3月に通産大臣によって、私ども当時日本レコードレンタル商業組合と言っておりましが、この商業組合が認可されました。それを受けたようにして、4月にまず3団体のうちJASRAC(ジャスラック)との間で貸与使用に関しての合意にこぎ着けたと。それをもって5月の著作権法改正の国会審議に私どもとしても臨みまして、少なくともJASRAC(ジャスラック)との間で使用料に関する合意ができたということが最終的には貸レコードが市民権を得るきっかけになったのではないかなと思っております。
 それで、この4ページ目の下のほうにちょっと書いてございます、ここが1つのポイントになるわけでございますけれども、このページのタイトルといたしましては、その使用料はJASRAC(ジャスラック)がプライスリーダーだったと書いてございますが、この使用料の設定にあたりましては、当時、何せ貸レコードにかかる使用料というのはどう取り決めていいのかと。私どもはもちろん全くの素人でございました。少なくとも3団体の中でJASRAC(ジャスラック)とは何としてでも合意にこぎ着けたいと。そうしないと国会での審議がちょっともたないのではないかという危機感が大変あったものですから、JASRAC(ジャスラック)との間では相当精力的に交渉をしました。
 その際に、JASRAC(ジャスラック)は当然さまざまな使用料規定などはお持ちでございましたので、この貸与使用料を定めるにあたりましては、その先例となるものがなかったということから、当時の録音使用料というものを参考にしつつ、当時はLPアルバム1枚あたり12曲というのが収録されていたわけですけれども、それに当時の使用料規定の中にございます録音使用料1曲あたり5円80銭という単価があったのですが、それを掛けまして、そうするとLP1枚あたり70円で、「えいやっ!」で50円と、業界紙で当時のJASRAC(ジャスラック)の担当理事がそのまま発言されたものなのですけれども、こういう形でアルバムを1回貸し出しするごとに50円払うという単価が決まりました。これは今日に至るまで、この単価がすべての使用料の基礎になっているということでございます。
 5ページ目、そのJASRAC(ジャスラック)の合意を踏まえまして、実は残りの隣接権者でございますが、レコード協会及び芸能実演家団体協議会(芸団協)との間におきましては、ちょうど1年後に契約を締結するに至るわけですけれども、その際におきましても、このJASRAC(ジャスラック)との間で決めました1回の貸与につき50円ということが基礎になりまして、その後いろいろ使用料の支払いシステムとか契約のスキームが大分異なっていますので、すべての金額が同じということではございませんけれども、一応1回の貸し出しについて50円という単価がすべて基礎になっているということでございます。その際、JASRAC(ジャスラック)との間では当時の録音使用料というものを参酌して決めたという経緯があったわけですけれども、レコード協会、芸団協との協議におきましては、こういう複製を前提とするという話は一切ありませんでした。当然貸与協約契約書にもその複製ということが一切明記されてないということでございます。したがいまして、これは2番目の問に対する答えになろうかと思いますけれども、JASRAC(ジャスラック)を含む3団体との契約書には複製にかかる記述は一切なく、貸与にかかる使用料及び報酬の支払いに関する契約であることは事実であるということでございます。
 これをもうちょっと裏付けることとして、次にございますレコード会社との間のレンタル禁止期間の設定ということがございますが、当時レコード会社におきましてもレンタルにおける複製の問題というよりは、レンタルの出現によって新品レコードの売り上げが減少すると。つまりマーケットの上で競合するということに相当の危機感がございまして、レコード会社との間におきましては使用料もさることながら、レンタルの禁止期間、レンタルを発売からどの程度の期間禁止するかといったところにかなりの交渉の力点があったということでございます。その辺の経緯につきましてはここに書いてございますけれども、ちょっと本日のあれとは直接関係ございませんので参考までにということにで、6ページにありますように禁止ルールというものが1次合意、2次合意、今現在はアルバムを発売から3週間禁止するというのが現在のルールになっております。
 一方、参考までに申し上げますと、洋楽につきましては91年に著作権法改正によって対象が洋楽にも及んだのですが、これは海外のレコード会社のあの圧力によりまして、結果的には今もって発売から1年間洋楽のレンタルはできてないという状況でございます。
 7ページ以降は、レンタル業界における様々な数値を取りまとめたものでございます。参考までに御覧いただければと思いますけれども、7ページにありますのは、赤い折れ線がレンタル店の店舗数、大体バブルのころをピークにいたしまして、今現在CDレンタルをやっているお店が3,100強ということでございます。青線がオーディオレコード、残念ながら8年連続でダウンしていると。それに対してCDレンタルの売り上げというのは、若干過去のデータがわからないのですけれども、ここ数年は600億前後で推移しているという、一見オーディオ全体が落ちているわりにはレンタルは落ちてないのではないかというのがちょっと見て取れますけれども、それはいろいろな要因があるということであります。
 8ページ目は主要国のオーディオレコードの推移ということで、アメリカ、ヨーロッパのそれぞれを俯瞰しておりますけれども、特段これによってどうということではございませんが、少なくとも世界の中でCDレンタルが認められているのは日本だけでございます。あえて言うならば、だからといって日本の売り上げが落ちているのでしょうかということをちょっとは言いたいなというところがあります。
 それから9ページ目でございますが、CDレンタル店の店舗の状況というのは大分変わりまして、1980年当時は本当に小さい貸レコード屋ということだったのですけれども、最近はどんどん複合化が進んでおりまして、ビデオレンタル、DVDの販売、書籍の販売、50パーセントはもう書籍の販売との複合、それから45パーセントは新品のCDを販売しているということで、大分店舗形態も様変わりしているということでございます。
 10ページ目でございますが、それを1つ裏付けるかのように店舗面積、私どもに加盟しているお店ですが、店舗の全体の面積は着実に上がっている、つまり拡大化傾向が見て取れます。それに対しましてCDレンタルの面積でございますけれども、おおむねそう大きな変化もなく50から60平方メートルということで推移しているということでございます。
 最後でございますが、CDレンタル店の利益構造ということで、これは特段これによってどうこうということはございませんが、おそらく一番最後にございますように、CDレンタルのみならず最近のエンターテイメントというのは、単一アイテムでの商売はなかなか難しいということが、このCDレンタルでも言えるということを、ざっと1つのモデルとして参考までにということでここでお出しいたしました。
 ということで、大分駆け足で説明させていただきましたけれども、したがいましてヒアリング事項の1番目は今のもろもろの説明によって代えさせていただきたいと思いますし、2番目の二重取りになっているのではないかということにつきましては、少なくとも3団体との契約の経緯、それから現在の契約書にも今は複製という概念が全く組み込まれていないということが事実として言えるのかということでございます。3番目でございますけれども、私どもレンタルCDからの私的録音という問題についてでございますが、基本的にはこれは貸レコードというものが発生した当初から、先ほどのグラフにもございますけれども、CDの売り上げが98年をピークに8年連続でダウンしてきていると。そういう最中にありまして、レンタルしたCDから利用者が私的録音するという、そういった実態には特段の変更がこの間あったわけではないのではないかなというふうに思っております。
 したがって、CD売り上げ減少の大きな原因にレンタルしたCDからの私的録音があるということとは、必ずしも言えないのではないかなと。それから、一部にはP2P等の違法に流通している音楽ファイルですとか、それがレンタルしたCDからリッピングされているのではないかということですとか、そのレンタルしたCDから数十枚のCDRに焼き付けてばらまいているというような、そういういろいろな指摘も聞くわけですけれども、そのような推定する根拠というのは今まで全く明らかになっておりませんし、そういったデータも私どもは見たこともございませんので、おそらく事実無根ではないのかなというふうに思いますし、レンタルCDのユーザーといいますのは、CDを購入している層が最近は30代から40代というシニア層にシフトしているのに対しまして、まだまだやはり10代から20代を中心にしたユーザーが多いです。
 したがいまして、そういったレンタルCDからの仮に私的録音を制約するということになったとしても、それがCD購入にシフトするとはちょっと考えにくい。むしろそうすることによって、レンタルからの使用料を含めて、逆に権利者等に利益が還元されないということになりかねないのではないかなと思っております。私どもとしては一貫して著作権法を遵守し続けてきておりますし、CDレンタルの事業者の100パーセントが私どもの組合に加盟して著作権使用料というものを支払っているということでございますので、こういった経緯であるとか実態を正しく評価した上での今後の制度等設計にあたっていただければ幸いであるというふうに思います。
 大分駆け足で恐縮でございましたが、以上、私からの説明にかえさせていただきます。

(中山主査) ありがとうございました。それでは、ただいまの説明いただきました内容につきまして質問等ございました、お願いいたします。どうぞ、河村委員から。

(河村委員) 主婦連合会の河村です。
 今の発表の中で、事務局から提出されたヒアリング事項の2番、二重取りになっているのではないかという指摘ということに関して、その使用料を取り決める経緯においても、契約書を見ても、録音する、複製を作るということを前提にしたということが全くない、というようなことをおっしゃっていたのですけれども、契約書というのは見ればはっきりそれがあるかないかもわかるかもしれませんが、決める経緯においても複製を前提とする話は一切されなかったとと結論づけておっしゃる根拠というのは何なのでしょうか。

(若松氏) 1つには、先ほど説明させていただきました資料の4ページ目から5ページ目にかけてのところでございますけれども、1つには確かにJASRAC(ジャスラック)との使用料を定めるにあたりましては当時の録音使用料を参考にして算出したということがあるのは事実でございます。ただ、では私どもが今支払っている使用料の中に、つまり複製に対する対価というものが含まれているかどうかということにつきましては、少なくとも3団体との間で私どもがこれは複製への対価ですということを確認し決めたという経緯もありませんし、その契約書にも一切そういう記述がないと。1991年に私的録音録画補償金制度ができた際も、つまり私どもの契約というのはそれ以前にもう既に締結されていることでございますので、仮に複製の対価が含まれているとするならば、私どもとしては91年の私的録音録画補償金制度がスタートした時点で何らかの議論をすべきだったろうとは思うのですけれども、ですから、そういう認識は当時も持ち合わせてなかったということであります。

(河村委員) 大変申しわけないのですけれども、ちょっと読み上げさせていただきたい資料がございます。今日発表してくださいました団体、日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合さんのホームページなのですが、先月、4月27日の時点に書かれていて、今朝私がチェックした段階で削除されていた項目を読み上げさせていただきます。今日なかったところのみを読みます。CDレンタルの著作権使用料という項目なのですが、CDVネットというこの団体の方のサイトです。
 「CDレンタルに関する著作権使用料は、レンタルユーザーのコピーをすることへの代償及びレコードレンタルビジネスに使うことに関する使用料の2つの観点から決定されました。昭和59年に貸与権が創設された当時は権利者にレンタルはコピーを助長するといった考え方が強くあったため、使用料金額についてはユーザーがコピーを行うことを踏まえて当時の録音使用料をベースとして決められました。」
 削除されてないところは飛ばします。「しかし、私的録音補償金制度が導入された現在、各権利者はユーザー及びレンタル店双方からコピーに関する代償を二重に受け取っていることになるため、CDレンタル使用料の早急な見直しが必要です。CDレンタルに関する使用料はユーザーのコピーの代償という観点から決められた経緯からしますと、平成5年に私的録音補償金制度が導入され、デジタル式のハードやソフトを購入するユーザーが各権利者に対してコピーに関する補償金を支払うシステムが構築されたことにより、各権利者はユーザー及びレンタル店の双方からそのコピーに関する補償金を受け取っていることになります。よってCDV-Jでは早急な使用料の見直しが必要であると考えております」、と書かれておりました。つい4月27日まで。
 今日、私が、朝チェックしましたら、今のところは削除されておりました。どういう記載が残っていたかといいますと、使用料がいくらであるというような項目と、あと、それをどういうふうに支払うか、ブランケット方式とか、何とかチャージ方式であるとか、そして総額年間何億円であるというところだけが残っていました。つまり、決定の経緯、決定の根拠、二重取りであるという主張、すべて削除されていたわけですが、それについてなぜなのか教えていただけますでしょうか。

(若松氏) 実はその指摘が、4月20何日かにホームページにそういうふうに記載されているではないかという指摘がございまして、私の責任で削除いたしました。その記述があったのは事実でございますし、それを書いた経緯といいますのが、実は6年前にCDパッケージの市況が非常に低迷しまして、実はそのCDシングルのレンタルが急激に落ち込んだ際に、JASRAC(ジャスラック)に対して使用料の減額交渉をしたという経緯があります。そのときに減額をするための理屈立てとして実はそこに、ホームページに今紹介していただいたその理屈を私どものほうとして立てまして、それがさっき言いました録音使用料を参酌してというところを引っ張りだしまして二重取りの可能性があるのではないかという、そういうことでJASRAC(ジャスラック)に交渉し軽く一蹴されたという経緯があるのですけれども、その際の私どもの主張というものがそのままホームページに残ってしまったということで、これは確かに私どもの管理責任ということでございますが、ちょっとみっともないことでございましたが、指摘されるまで私どもホームページにそういうことが記載されているというのは全く知りませんでした。そういう意味では大変みっともないことだったと思いますけれども、今現在、一応先ほど私が説明したことでもって事実関係を御了解いただければありがたいというふうに思います。

(井田委員) 今日はどうもありがとうございました。井田と申します。
 単純な質問ですけれども、ここにCDに関しての内容が書いてありますが、ビデオ等映像関連についてはどういうふうになっているかということと、それから、この資料の内容からいいますと、例えば1枚1回お借りすると150円かかるということでよろしいのでしょうか。理解としてちょっと御確認をお願いします。

(若松氏) まず1つ目のビデオのほうでございますけれども、ビデオにつきましてはやっぱり権利関係が、御案内のように映画会社が一応権利を総括しているということがございまして、具体的にどうなっているかといいますと、例えば今ほとんどDVDでございますけれども、DVDが販売料として大体例えば3,000円で店頭等で、それは物によっては違うでしょうけれども、2,000円とか3,000円で店頭によって販売されているものがあるとしますと、それをレンタル事業者はおおむね8,000円から1万円、これを業務用価格と業界では言いますが、そういう値段で購入しております。当然その差が、つまり1万円と例えば3,000円の差額7,000円がいわゆるレンタルに伴う使用料という考え方で今運用しております。
 2つ目のCDレンタルの料金でございますけれども、単価が1回あたり50円、それを3団体が単純に合わせるともちろん150円ということでございますけれども、そこは単価を決めた後に、それぞれの団体ごとにちょっと使用料の徴収方法ですとか団体の割引であるとかいろいろな措置をとっておりますので、必ずしも150円になるというわけではございません。中身をパッと言えないのですけれども、平均しますと売り上げの20パーセントから25パーセントぐらいを使用料として払っているというぐらいの感じだと思います。こんなことでよろしいでしょうか。

(中山主査) ほかに何か御質問のある人は。どうぞ、亀井委員。

(亀井委員) ありがとうございます。亀井でございます。
 実は4月24日の日経産業新聞でレコード協会さんとレンタルCD商業組合さんが需要拡大協力金を設けることで合意したという報道がなされておりまして、私、この記事を見たときに、交渉は非常に大変なご苦労をされるのですが、非常に試みといいましょうか、考え方としてあるなと思いましたので、今日はその御説明がありませんでしたので、少し御質問させていただきます。
 新聞記事ですのでこれはどこまで事実かということも私はよくわかりませんが、この記事によりますと、この需要拡大協力金というものについては、レンタルしたCDがコピーできる携帯音楽プレイヤーの普及が議論の背景にあり、レンタル店側が年間10億円程度の協力金を払われるということになったそうなのですが、これは使用料に上乗せということに対しては商業組合のほうは反発されるということで、一方でこういう協力金という上乗せの形によって、事実上の使用料値上げで決着した格好だというのがこの記事の内容でございます。
 先ほど川瀬室長からは、法制度の議論にはあまり関係がないという、直接かかわらずということがあったと思いますが、私はこういう著作物の流通の上流のところでのある程度の処理というものが、やはり補償金の議論でもかなり影響があるのではないかと思いますので、こういう試み、これは交渉当事者の皆さんは非常に大変だという気はいたしますけれども、この報道にあるこの協力金について、こういう公開の場ですとちょっとむりかもしれませんが、交渉の経緯などをお差し支えない範囲で少し教えていただければと思います。

(若松氏) 確かに私どもとレコード会社との間で需要拡大協力金の支払いということについて合意いたしました。実際はこの問題は、必ずしも著作権の問題と関係するのかとは私も若干判断しかねるのですけれども、もともと先ほどちょっと資料の5ページ目でも御説明しましたように、レンタル事業者とレコード会社との間におきましては、もちろん間にあるのは著作権、貸与権というものでございますけれども、どちらかと言いますとやっぱり音楽マーケットにおいて、セルとレンタルというものの経済的不公平感をどう調整するかということが、一貫してレコード会社とレンタル事業者との間に存在しているというであります。
 したがいまして、20年前は禁止期間をどう設定するということで調整しました。それから20年たって、実は2年前にレコード会社のほうから、率直な言い方をすると音楽マーケットに対するレンタルの負担がはっきり言ってまだ少ない、という問題提起がなされました。一方で、レコードの売り上げがどんどん低迷してレコード会社の経営もかなりきつくなっていると。そういったときに1つ事実関係として出てまいりましたのは、ここ数年誕生しておりますネット配信、つまり音楽のネット配信というものから得られるレコード会社の利益と比較すると、レンタルからの得られる利益が若干少ないのではないか、そういった問題提起がレコード会社のほうからされました。私どもは、そういう意味では著作権にかかる交渉をしたという認識はあまりありませんで、先ほど資料でも申し上げましたように、既にもうレンタル店の半分近くがセルCD、CDの新品を売っております。ということで、私どもも非常に音楽産業全体について関心が高うございまして、そういう意味で最終的にはパッケージ産業を振興するという意味合いで需要拡大協力金という、そういう性格の解決を図ったというのが経緯でございます。

(中山主査) ほかに何かございましたら。どうぞ、松田委員。

(松田委員) 松田でございます。
 5ページのところで50円・50円・50円で150円まではいかないけれども、売り上げのおよそ20から25パーセントぐらいを三者の使用料で占めているという御指摘でしたね。11ページを見ますと著作権使用料(三権利者)15パーセントと書いてあるのですが、これとの関係はどうなるのでしょうか。このままいっちゃうと25パーセントだと利益が全然出ないで全部CDレンタル店はつぶれていなければいけなくなっちゃうのですよね。

(若松氏) 失礼しました、20パーセント弱です。ですから、11ページのほうがやや実態に近いと思います。ちょっと私の25というのは多すぎました。

(椎名委員) その20パーセントの中には、今おっしゃった協力金というのは含まれていないということですね。

(若松氏) 含まれていません。

(河村委員) すみません、先ほどのホームページの話に少し戻ってもよろしいでしょうか。私の質問に対するお答えの中で、当時、何年でしたかしら、JASRAC(ジャスラック)に二重取りではないかというようなことを持ちかけたときに一蹴されたというふうにおっしゃいましたね。一蹴するのはJASRAC(ジャスラック)の御勝手といいますか、JASRAC(ジャスラック)はそう考えた、そういう主張であったということかと思います。その後でホームページを削除すべきところ、それを気がつかずに、二重取りではないかというCDVジャパンの主張が残ってしまったというふうにおっしゃいましたね。JASRAC(ジャスラック)が一蹴したのはわかりましたが、一方のCDVジャパンさんの主張は全く間違っていたということを何か客観的事実として確認したから、これは誤っているので削除したということでしょうか。私が先ほど読み上げた、削除されていた部分には、そちらの団体の主張が載っていると思うのですが、削除し忘れて残ってしまったという問題ではなく、考え方はどう変わったのか、それがどういう客観的事実の確認によってされたのかということを教えてください。

(若松氏) これはちょっと確かに釈明が非常に苦しいのですけれども、ここへきて特段考え方を変えた、意図的に削除したんですが、ちょっと私もそれがそのまま残っているとは本当に思いませんで、ちょっと私もびっくりしたということでありますけれども、確かにホームページを作成したときに、当時のCDレンタルと著作権というものを私自身が書きましたので、それをまとめた記憶は確かにありますし、今御披露された文章は紛れもなく私が書いた文章であります。それがずっと7年間残っていたというのもちょっと大変恥ずかしい話ではあるのですけれども、少なくともその後、取り立てて私どものほうでそういう検証をしたということでもございませんで、ただ、やはりこれはJASRAC(ジャスラック)さんがいらっしゃればあれですけれども、JASRAC(ジャスラック)さんに対して7年前にそういう申し出を行い、JASRAC(ジャスラック)さんのほうから使用料には複製というものは全く含まれてないと。したがって、それを前提とした値下げ交渉に応ずるわけにはいかないという対応といいますか、少なくとも文書でいただいたわけではございませんので、そういう対応をいただいというのは事実でございます。したがいまして、そのままホームページに残してしまったというのは、これは本当に私の不徳の致すところということを申し上げるしかないのです。本当に申しわけございません。

(生野委員) ホームページの件は私、何ともお答えできないのですが、レンタル使用料に複製使用料が入っているのかどうかということに関しては、若松専務がおっしゃったとおり事実入ってない、契約書でもあくまでも貸与に関する使用料という形で、客観的なデータとしてそれしかないということ。それと、利用者が家庭内でコピーすることに関して30条1項の範囲内ということで許容されると解釈されている中で、実質的にユーザーがその料金を負担しなければいけないところを、その権利者とCDV-JAPANがユーザーを抜きにしてそのことを合意できるのかというところでもあり得ない話で、そういった理屈からも客観的なデータ、契約書からも、複製使用料は入っていないことは、これはクリアだというふうにレコード協会としては考えています。以上です。

(中山主査) 私からちょっと伺ってもよろしいでしょうか。貸与権ができる前に御存知のとおりレコード会社とレンタル店で訴訟がありました。そのときレコード会社の主張は、ユーザーが借りたらほとんど全部コピーしているので、結局レンタル店とユーザーとがその実態としては一緒になって複製している、というものでした。だから、レンタル店は複製権侵害となるのだ、という訴訟だったわけですそれがいろいろな経緯により、議員立法を経て現在の貸与権になったわけですけれども、そういう経緯からして、契約文言にに書くかどうかは別として、ユーザーは当然複製するということを前提として、話し合いをしたということはないわけですか。

(若松氏) 少なくともJASRAC(ジャスラック)との間で、JASRAC(ジャスラック)が録音使用料を参酌してという流れの中では、なぜ録音使用料を持ってきたのか。それは逆に私どものほうもそれは聞きましたから、それに対しては借りていった人の多くがやっぱり録音するということなので、これ以外に先例がないということから録音使用料を参酌してという、そういうふうな経緯は確かにありました。

(小泉委員) 同じようなことなのですけれども、今日お話を伺っている趣旨は、おそらく今日の参考資料4の一番最後に出てきています、今の30条を維持したままでもある種のオーバーライド契約として複製の対価というものを上乗せするというような解決もあるのではないか、私的複製の範囲をいじらなくても契約上対応できるのかどうかという例としてお話をお伺いしていると思うのですね。
 その際、やはり複製の対価が入っているか入ってないかというのは、もちろん当事者の意思、あるいは、契約書の表示等も大事なのですけれども、やはりレンタルという新たな経済的な利用行為について、客観的に見て法制度としてどういう利益というものを保護しているかという点が大事だと思うのですね。その点から見て、今日配っていただいた紙を見ますと、1ページのところで第1小委員会の報告の中でも、今、中山主査からお話がありましたけど、レンタルをなぜ保護するのかといえば、1の2行目ですが、商業用レコードの複製によりもたらされる経済的利益の影響ということが明記されていますし、3ページの加戸先生の御本の最初にも貸与権創設の趣旨の1行目の最後でも、やはり複製からもたらされるレコード製作者の経済的利益ということが前面に出ていまして、つまり当時は、30条をオーバーライドするとかしないとかという議論はおそらくきちっとされてなかった、そういう問題意識があまりなかったのではないかと推測するのですけれども、実態的にはある種の私的複製によってもたらされるものについて、新たな権利を創設するというような趣旨があったのではないかと思うのですね。
 そういった客観的な状況というものを考えると、当事者として複製という言葉を契約書に置いているかどうかというのはまた一歩離れた形で、客観的にはある種複製の対価も含まれていると見ることもできるのではないかと思うのですね。これは質問というよりも私の意見なのですけれども、以上です。

(中山主査) ありがとうございます。それでは、このくらいでよろしゅうございましょうか。
 それでは、利用者などから徴収をする料金等の私的録音録画対価に含まれているかどうか、また、そのような取り扱いが不要かどかという点につきましては、ただいまお伺いいたしましたレコードのレンタル業界に限らず、放送業界やレコード業界も考えがあろうかと思われます。そこでどのようなお考えを持っておられるかちょっとお伺いをしたいと思いますけれども、まず放送業界の大寺委員から何かございましたらお願いいたします。

(大寺委員) まず、現在の私ども放送業界、これはNHKも含めてですけれども、権利者の方々でJASRAC(ジャスラック)等との間でも契約がありますけれども、放送は一回放送する。再放送というのもありますが、一応放送という形で複製というのを念頭に置かないでJASRAC(ジャスラック)等と契約を結んでいるというのが今の状況でございます。
 それから、では、利用者との関係でございますけれども、特に民放については無償広告放送という形でやっておりますので、視聴者との間の直接的な契約関係というのはないということであろうかと思います。この私的録音録画制度でございますが、いろいろな意見があろうかと思いますけれども、放送業界としてはやはりこれがベストの制度ではないとしましても、現在の状況、さらにこれからデジタルコンテンツということで放送の場合は放送のデジタル化等の状況もございますし、さらにそうした中での個人視聴者による複製というのも当然さらに増加すると危惧されますので、この制度そのものについてはやはり存続させていただきたいというのが私どものほうの考え方でございます。

(中山主査) 石井委員、何か補足がございましたら、よろしいですか。

(石井委員) 特にございません。今の大寺委員のおっしゃることと同じです。

(中山主査) わかりました。それでは、レコード業界から生野委員、お願いいたします。

(生野委員) CDの販売に関しまして、権利者との契約においてレコード会社が複製の対価を入れているのかどうかということにつきましては、これは従来も今後も含めてあり得ない話だと。そもそも、CDの購入者がコピーを行う蓋然性があるのかという点に関しては、すべての人がコピーするわけではありませんので、当然買って、ただそれを聴くだけというユーザーも多くいるというのも事実でございまして、従来も今後もCD販売において複製の対価を含めるという考え方はあり得ない、そういうふうに考えております。

(中山主査) ただいまの点について何か質問ございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、大分時間も押しておりますので、ヒアリングはこのくらいで終わりたいと思います。若松専務理事におかれましては、御協力をありがとうございました。
 引き続きまして、前回同様、参考資料4の検討の進め方に沿いまして検討を行っていきたいと思います。本日は補償措置の必要性についての議論に入りたいと思います。なお、前回御議論いただきました30条の範囲につきましては、他の論点において議論を進めつつ、必要に応じて適宜検討するという形をとりたいと思います。
 それでは、まず事務局より資料の説明をお願いいたします。

(川瀬著作物流通推進室長) まず、本日の議論の前に資料3ですが、前回お配りした私的複製にかかる規定の国際比較という資料について、委員のほうから、もう少し内容を充実して提出してほしいという御要望がございましたので、私的複製が認められる範囲に保護技術にかかる規制や罰則の範囲について私どもなりに調べたものを追加しております。また、2ページを開いていただきますと、アメリカの私的複製が認められる範囲という事例で、ソニーのベータマックス訴訟の最高裁の判決について言及しておりますので、参考に、5ページから7ページにかけて事件の概要をまとめております。なお、その後に、関係条文の日本語訳と原文とを添付しております。後ほど御参考にしていただければと思います。
 それでは、今回は補償の必要性についての議論をしていただきます。まず、参考資料1、参考資料2、参考資料3について御説明させていただきたいと思います。これは前回既にお配りしている資料で、内容に修正をしておりませんので、参考資料という形で配付させていただきました。
 参考資料1は、私的録音録画により権利者が被る不利益と著作権保護技術との関係についてで、1は、平成4年の私的録音録画制度導入時に、どういう認識であったかについて、これは第10小委員会の報告書より抜粋しております。後ほど議論していただく材料としては、最初の1行目から3行目、つまり私的録音録画は総体とてその量的な側面からも質的な側面からも立法当時予定していた、立法当時といいますのは昭和45年の現行法ができた当時ということですが、想定していた範囲を超えて著作権者の利益を害している状態に至っているという認識でした。続く「さらに」以下でございますけれども、4行目からですが、著作物等の「通常の利用」にも影響を与えうるような状況も予想されうるところであるという、こういう認識もございました。以上のことから、最後の文ですが、著作権者の利益を保護する必要性が生じているという認識で平成4年の制度ができたわけです。
 委員から御要望がございましたので、そもそも論のところについて御議論していただきたいと思いまして、その2を用意しました。まず、不利益に関する考え方の整理で、1つは、これも前期の小委員会、今期の小委員会でも、たびたび言及されておりますとおり、ベルヌ条約の9条2項との関係について整理をしてみました。
 それでは、参考資料2の2ページ目をめくっていただけますでしょうか。その一番上のところにベルヌ条約の9条2項が書いておりますが、特別の場合について、(1)の著作物の複製を認める権能、著作者が有する複製権について言及をされています。それを受けまして2項でその(1)の著作物の複製を認める権能は、同盟国の立法に留保される。ただし、そのような複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とするというベルヌ条約の条文がありまして、これは各国が遵守すべき事項となっています。
 それを踏まえまして、参考資料1に戻っていただき、(1)の一番上の丸ですが、仮に私的録音録画が、著作物の通常の利用を妨げていることが明らかな場合、例えば私的録音録画の影響とCD販売や配信事業の不振の因果関係が立証されたときは、補償措置が必要かどうかではなく、該当行為は30条の範囲外にしなければならないと考えられるが、どうでしょうかということです。参考資料2の1枚目に戻っていただきますと、これは3ステップテストの図となっておりますが、その真ん中のSTEP2は、著作物の通常の利用を妨げずということで、その外に出た場合には仮に30条、私的使用目的の複製という特別な利用であっても、STEP2の外に出れば権利制限は認められないと考えられております。これはその参考資料の2ページ目の解説の9.7ですが、複製が著作物の通常の利用を妨げる場合は、複製は全く認められないというのが、ベルヌ条約の解説です。
 それから、丸の2が仮に私的録音録画が、著作物の通常の利用は妨げないが、権利者の正当な利益を不当に害していることが明らかな場合も、基本的には該当行為については30条の適用外にする必要があるものの、補償措置によって調整することは可能と考えられ、参考資料2の最初の図に戻っていただきますと、STEP3で著作者の利益を不当に害しないという要件があるわけで、通常の利用は妨げてはいないが、権利者の利益を害している状況になった場合に、これも権利制限は認められないことになるが、ただし、2枚目の9.8のところのベルヌ条約の解説のところの一番下の文において、権利者の利益を害する場合については、著作権者に重大な利益の損失が生じる場合は、法律は何らかの補償を著作権者に与えるべきであると記述されています。適当な報酬を伴う強制許諾制度と書いていますが、すなわちSTEP3の外にある状態であっても、補償措置を導入することによって、STEP3の中に入るということが考えられるのではないかというのが、2番目の丸です。これについてそのような認識で良いのかどうかということです。
 それから、参考資料1に戻りまして、(2)の権利者が今後の不利益についてどう考えるか。これは幾つかの視点を用意しております。まず最初の丸ですが、私的使用のための複製は、我が国の著作権法の中でも特異な規定でして、普通は権利者の私益と利用者の公益との調整になっていますが、私的使用の複製に関しては権利者の私益と利用者の私益との調整の結果ではないかということで、仮に権利者が不利益を被っているとすれば、権利者の受忍限度は他の制限規定と比べて低いものであると考えられるが、それで間違ってないだろうかということです。
 次の丸ですが、権利者が不利益を被っているというためには、やはり何らかの経済的損失が必要と考えられます。経済的な損失があるから補償措置が必要だということになりますが、その場合の経済的損失とは何かということが、まず疑問として出てくるわけです。例えば私的録音録画が通常の利用に影響を与えているとすれば経済的な損失があると、これは非常にわかりやすいわけです。私的録音録画によってCDの売り上げが減ったと。配信事業が伸びない。これらとの因果関係がはっきりすれば、経済的損失があったりするのはわかりやすいですが、果たしてそれだけかというと、例えば私的録音録画が権利者の許諾を必要とする利用であったならば、権利者が得られたであろう経済的利益をどう考えるのか。例えば、これが、1の平成4年の私的録音録画制度の導入時の認識ではないかというのが、私どもの整理でございます。昭和45年当時、零細な利用であると、それから閉鎖的な範囲の利用であるということから、昭和45年に現行法が認められ、その際の著作権制度審議会の答申で、将来の改正について言及されていることは、すでに資料でご紹介しているところです。
 昭和45年当時の立法趣旨を踏まえた上で平成4年の1にあるような認識が生まれ、つまり立法当初のキャパシティを超えて、不正な複製が行われているのではないかということです。そうすると、結局、私的複製によってCDの販売も不振であるとか、最近であれば配信がどうのというよりも、本来許諾を必要とする利用であったならば、権利者が得られたであろう経済的、つまり潜在的な利益について、それは一切無視してもいいのかということになるのではないか、それが、1つの問題提起です。
 次の丸は昭和45年の現行法の設定時に権利制限をした理由の1つに、私的録音録画の場合は零細な利用であるということがあるが、現状において個々の家庭内における録音録画だけをとらえた場合に、権利者が被る不利益はどうか。つまり、各種の資料によって昭和45年当時とは家庭内においても、コピーの量・質が大きくなっているわけですが、それでもなお零細な利用であると言えるのかどうか。また、これも平成4年の審議会の認識でございますけれども、我が国における私的録音録画の全体の量と質、つまりこれが複製の総体ですけれども、総体を見た場合にはどう評価されるのかという問題点があろうかと思います。
 また、最後ですが、個々の行為類型についてです。個々の行為類型については、参考資料3で、左下の枠が囲っているところですが、これは昨年から私的録音の形態について、さまざまな分類をして検討を行ってきたところですが、この形態ごとに権利者の被る不利益の違いはあろうかと思われますが、不利益の濃淡は別として、どの行為類型についても権利者に対し不利益を与えていると言えるかどうか。つまり、ある類型については全く被害を与えていない、ある類型については被害を与えているという考え方をするのか、それとも、全体的に複製ができないという場合は別として、濃淡はあるが、被害を与えているということをどう考えるかという問題点があります。
 (3)は、それは今までの(2)はそもそも不利益があるかどうかということですが、平成4年に私的録音録画制度が導入して以降、新たな要因として、著作権保護技術の普及がありますが、平成4年当時は著作保護技術が導入されるかされないかというときであったわけですが、今はさまざまな保護技術が導入されているという違いがあります。これは平成4年の現行補償金制度を導入した以降の新たな要因と考えられます。前期の小委員会の議論から、著作権保護技術と補償措置は併存可能と考えられますが、仮に現状において補償措置が必要として、著作権保護技術の内容とその効果によって、権利者が被る不利益が一定程度解消でき、補償措置の必要性がなくなる場合があると考えられるが、そういうことかどうかということです。
 例えば、次のような場合には、補償措置の必要性はなくなると考えられるかが問題点ではないかと考えます。著作権保護技術の効果により、私的録音録画の総体が減少し、一定の水準を下回る。これは私的録音録画が著作権保護技術によって制限されて権利者の不利益が少なくなる場合、なお補償措置が必要かどうかということです。また、著作権保護技術と契約の組み合わせによって、利用者の便を損なうことなく個別徴収が可能となり、そのような実態が普及した。つまり、個々の契約によって録音録画の対価が確保できるというような状況になったとき、補償措置が必要かどうか。
 それから、3で、著作権保護技術の内容について権利者の選択肢が広がり、コンテンツごとに関係権利者の総意として権利者側が選択権を行使できる。つまり、例えば、このコンテンツのコピーは、1回しかできません、3回まで、5回まで、10回まで、或いは無限大までできる、或いは第一世代は可能である等の多様な選択肢があって、それを権利者が決定することができるような状況になったときまで、とにかくコピーが行われれば補償が必要だとお考えの方もおられるかもしれませんが、本当にそうなのか。権利者がその意思に基づき私的録音録画をコントロールできる場合に、その結果に生じた録音録画は権利者にとって不利益を生じさせないのではないか。そのようなケースを考えることが、1つの課題ではないかと思っています。以上でございます。

(中山主査) ただいまの室長の御説明について、何か質問、御意見ございましたらお願いいたします。どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) 具体的にまとめていただいたということで感謝したいと思います。1点、(2)の権利者が被る不利益についての最後のところ、個々の行為類型ごとに権利者が被る不利益の違いということに言及されているのですが、この行為類型ごとに経済的な損失を図るということには、やっぱりこれはむりがあると思うのですね。これは30条1項の範囲の議論の際にも申し上げたことなのですが、様々な行為類型によってその線引きをしてみたところで、それを明確に区分けできるようなエンフォースメントは、法的にも技術的にも存在してないわけですよね。これを何かむりやり個別に議論するという意味はあまりないのではないかと思っています。私的なコピーが許されているということから発して、家庭内に大量の複製物がとどまることからこの問題が出てきているわけですよね。いろいろな行為類型に発展するわけですけれども、そういうところでこの問題をとらえていかなければいけないのではないかというふうに思います。
 それからまた、私的なコピーが許されているから、様々な機器や媒体が売られて利益が上げられているという実態がある。むしろそういった点にも着目するべきではないかと思います。実際、機器や媒体のメーカーさんは、ヨーロッパではドイツで231億、フランスで241億、オランダで42億、スペインで92億、そういう補償金を負担なさっていて日本では負担をしていない。こういった不均衡についても考えていくべきではないかというふうに思います。

(亀井委員) まず、今御説明にありました不利益という点でございますが、ベルヌ条約では不当に利益を害さないという要件だと思うのですが、先ほど御紹介のありましたアメリカのベータマックス訴訟など個々のああいった事件においては、司法救済においては、かなり厳密に原告が被った損害を立証しない限り救済は認められない、という仕組みだと思います。
 一方で、この補償金という制度の中で不当な利益というものをかなりあいまいにとらえたままで議論をするということになりますと、これは一方で、司法救済のときに非常に苦労しなくてはいけないのに、こういう制度ができると自動的にそれはお金が入ってくるというような、そういうことになりかねないということですので、不当な利益を害しているかどうかということは、厳密に個々の類型ごとにきちっと議論され立証され、その上でこれは利益が害されているということであれば補償の措置もありきと、そういう議論に進むべきだと私は思っております。以上です。

(椎名委員) やはり個々の類型ごとにきちっとやっていくということで解明していって、それを何か録音使用料に置き換えていくというような趣旨の制度ではないと思うのですね。ざっくりと網をかぶせた上で、利便性を確保するとか消費者のコンテンツに触れる機会を増やすとかということを担保するために、それを補償するための制度ということでせっかく考えられているものを、例えば個別の許諾使用料に置き換えて議論をしていくという、それは補償金制度全体のボリュームを考える上での議論には関係してくると思うのですけれども、補償措置の必要性というところでの議論では、例えば個別にここは薄い、ここは濃い、ここは極めて濃いというふうなことをやりましても、その線を置くためのエンフォースメントが何もないわけですよね、法的にも技術的にも。仮定の議論の中でそういうことをやっていても時間のむだではないかというふうに思います。

(河野委員) すみません、現行の30条というか私的録音録画補償金制度の位置づけについて確認をさせていただきたいのですが、先ほど御説明をいただきましたベルヌ条約逐条解説の中の、最後の2行のところで、著作権者に重大な利益の損失が生じる場合は、法律は何らかの補償を著作権者に与えるというふうに書かれています。これに照らし、日本の私的録音録画補償金制度というのは、複製の行為態様にかかわらず、デジタルによる記録であれば私的複製全般について重大な利益の損失が生じる場合である、という判断をされたという理解でよろしいでしょうか。

(川瀬著作物流通推進室長) 日本の制度はアナログの場合には補償金制度は対象になっておりません。デジタルだけが対象になっております。これは私の考えですが、便宜的に、平成4年当時、これからデジタル時代になるだろうということでデジタルに限定して、デジタルが普及することによって消費者の負担が徐々に拡大すると。つまり激変緩和措置の前提としてデジタルに限定したと理解をしております。したがって、そもそも論のところの議論についてはデジタルかアナログかということは言及しておりません。デジタルかアナログかにかかわらず私的録音録画の被害についてどうなのかということが前提になり、かつ、政策的な判断で消費者負担の激変を緩和するため、デジタルに限定したという認識です。
 また、不利益については、まさしく参考資料1のところの認識そのままだと思っています。つまり、私的録音録画が自由にできるというのは、30条という法律のルールがあるからであり、このルールがなければできないわけです。したがって、そのルールを作った立法者は、当時の実態を踏まえて作ったわけであり、著作権制度審議会の報告書において、将来の見直しを示唆しています。それから、私的録音録画が盛んになった実態をかんがみ、平成4年当時の認識としてはこの1のような認識になったと。それについて、現在さらに変わっているのかどうかということが、私どもとしては議論の対象となるのではないかと考えております。

(河野委員) すみません、頭が悪くて理解できないのですけれども、ということは重大な利益の損失が生じうる場合というのは、私的複製の領域の中であっても、行われる行為はすべて重大な利益の損失が生じる場合だというふうに理解をされているということですか。例えば自己所有のものからのコピーであってもタイムシフトであっても、例えば1つのものがあって、1つのものというのは何でもいいのですが、例えば音楽CDがありましたと。それをMDでも聞きたい、SDからでも聞きたい、メモリスティックでも聞きたい、ハードディスクでも聞きたい、お隣のお部屋にある据え置き型のオーディオCD−Rレコーダーでも聞きたいというような場合に、1つのオリジナルを幾つものメディアにコピーするということが起こるわけですが、そのような場合、1個のコピーが5つのコピーになったからといって著作権者が被る重大な利益の損失が増えたといえるのでしょうか。その精査は特にせず、1かけるnになったのであるからしてそれは増えているのだと結論づけようという判断をもう既にされたということでしょうか。

(川瀬著作物流通推進室長) まさしく、今河野委員がおっしゃったような視点についてまとめたのが、この2の権利者の不利益の問題の視点と私は理解しています。これは私の考えですが、その辺りの認識は、平成4年当時、既にあったと思っております。ただ、委員の方からこれについて、もう一度議論をしなければならないという御意見がありましたから、その委員の意見に従って、私どもなりに整理をしているわけで、そもそも、この問題点の視点は、今期の委員会で、新たな発想で出てきたものではなく、平成4年当時の第10小委員会においてまとめられ、この1の括弧の文章の7行の文章の中に凝縮している問題の視点というものを抽出し、整理しただけです。したがって、平成4年当時の問題の視点と同じものを読んだ人に、わかりやすくしているだけだと考えています。
 したがって、その認識が間違っているかどうかというのは議論をしていただければいいと思います。今、河野委員がおっしゃったように、例えば経済的損失、重大な不利益の場合も、確かに現在、例えば、CDが販売されていると、配信によって音源が提供されているというのは、ビジネスでやっておられるのですから、それによって権利者は利益を得られているわけです。そういうものに対する私的録音録画の影響との因果関係が明らかになれば、これは経済的損失があると判断されることは明らかです。
 しかし、立法当初予定していた複製の実態を踏まえ、現行の30条1項は制定されており、当時の実態を超えて複製がなされているのであれば、本来許諾を得るべき行為を、昭和45年当時の規定によって制限していることにもなります。したがって、本来、権利者は許諾を得られたはずなのに、そこで経済的利益が得られたのに、得られていないということを、一切無視していいのか、無視してはいけないのかということです。
 それは、この1の平成4年導入時の認識、立法当時予定していた実態を超えて著作権者の利益を害する状態に至っているというのが、まさしく平成4年当時の認識だったわけです。つまり、昭和45年当時の範囲を超えているのではないか、その部分については、権利者の不利益であるということです。
 確かに現行法は合法です。現行法は、45年当時のルールになっています。しかしながら、現行法で合法であるからといって、経済的な不利益がないということではない。これは制度設計の議論をする場であるということが、私の問題意識です。だから、それについて委員のお考えは一体どうなのかということが、まさしく問題の視点だと思っています。

(河野委員) ありがとうございました。ここからは意見です。ということであれば、重大な利益の損失が生じる場合というのはどういうことなのか、やはりきちんと議論をすべきだと思います。そういう観点で、話がぐるっと戻りましたけれども、個々の行為類型あるいはそれと保護技術との関係、様々な場面において何が重大な利益の損失が生じる場合であるかということを議論をし、それと補償措置との関係を議論すべきだというふうに考えます。

(千代専門官) 条約違反かどうかという話ですので。今ベルヌ条約は違反かどうかという話だったので、一応WIPO担当として意見を申し上げます。条約とか法律というのは幅を持って解釈されるものなわけです。特に、この3ステップテストみたいに定性的なものについて、こういうものなら条約違反でなく、こういうものがあれば条約違反であるということを何かきっちりと線引きできるようなものではありません。日本の国内法であれば、最後は裁判で決めるということになるわけですけれども、この条約に関して言えば一応紛争処理手続きはあることはありますけれども、それというよりは基本的にはまずは各国の解釈でやっているわけです。さらにこういう定性的なものについては、その文言がどうだということではなくて、ベルヌ条約の精神ということから見て我々がどう考えるか、日本国としてどう考えるかというところがまずあるので、こうなったら合法だ、こうなったら条約違反で、こうなったら条約違反でないというのは何かきっちりとその条約の条文の中にあるものではないということはちょっと前提として申し上げておきます。

(河村委員) 個々の個別な問題ではなくて、全体において見るべきだというようなことを椎名委員が先ほどおっしゃっていたわけですけれども、30条はもちろん私的な利用について書かれているわけで、私的な利用の範囲で椎名委員などの主張というのは複製の数が増えていって損害が大きくなっている、損失が大きくなっているということですよね。ということは、30条の範囲での複製の数が多くなればなるほど利益は少なくなる。それでよろしいですか。不利益が大きくなる。ということは、それが単純なグラフだとすると、それを逆にたどっていくと、複製の数がゼロになると、コピーネバーになると、音楽家の方たちの利益は最大になるというふうにお考えでしょうか。

(椎名委員) 不利益は最少になる。もちろん音楽というのはいろいろな形で浸透し愛され楽しまれていくものですので、音楽家の利益といったらばもっと幅が広いものだと思います。ただ私的複製の数がゼロになれば、私的複製から生じる不利益はミニマムになるということで理解すればいいと思います。

(小六委員) 河野委員のお話に、複製が今ゼロになれば我々は利益が上がるということですかと御質問ございましたね。私たちは利益・不利益というとらえ方を限定的に考えるのではなく、もしコピーができなくなると我々も実は不利益、著作者も不利益だと考えます。これは一番最初に私たちの意見表明のときに申し上げましたけれども、我々も利用者でありますので、私的録音のある程度自由な録音というものを享受しながら、なおかつ我々の利益の制限をして、両方の利を取りたいというのが補償金制度の根幹にあるのではないかと考えております。ですから、ゼロになることが決して我々の全部の利益を担保するものではないというのが1つです。
 それから、もう1つ、同じことを繰り返しますけれども、45年の30条の制定時の、我々はコピーを許容しますという制限規定の認識は、コピーが少ないという事実と、質に関しては、その当時はクローンではございませんので劣化もしている、つまり本物ではないものがコピーであると、そういう前提条件で、それだったら全然いいのではないかと考えたと思います。これが一般の人たちの考え方でもあり著作者全体の考え方でもあったと思います。
 その後で出てきました1かけるnというのが、これは全くクローンであり本当にそのままのものがコピーをされていくと。コピーのそれぞれがどのように我々に不利益を及ぼすかということではなくて、コピーの総体が我々著作者に対しての不利益になる、損失になるという考え方をとらなければ、うまくいかないのではないか、というのが基本の考えであると思います。

(河村委員) 音楽家には様々な形態で利益があってということですとか、今の小六委員のユーザーとしては複製できたほうがいいという観点は私が申し上げたこととちょっとずれておりまして、私の言い方が大変悪かったのだと思うのですけれども、もっと限定的な条件でお聞きしたいのですが、コピーがネバーであった、音楽CDのコピーがネバーであったら、音楽CDの売り上げ枚数は今より多くなると椎名委員はお考えでしょうか。

(椎名委員) コピーネバーであったら売り上げが上がるかという単一的な因果関係では語ることはできないと思いますね。コピーネバーであるものなど買わないという人もいるだろうし、そういうところに極限的に質問されてもなかなかお答えしにくいのですけれども、だからCDの売り上げを上げるためにコピーネバーにしたいと主張したことなど一度もありません。

(河村委員) そこのところが一番引っかかるところなのですね。「皆さんユーザーの楽しみを私たち権利者は認めてあげるから、そのかわりその損失をうめる補償金がほしい」というふうにおっしゃっていると思うのですが、複製が増えることによって損失が増えるのだと。では複製がなくなれば売り上げが上がらなければおかしいと思うのですが、でもそれは一概に言えないと、それでは買わないという人もいるとおっしゃるということは、裏を返せば、私的利用の範囲で複製が増えることによって利益が減るということも根拠は薄いということをおっしゃっているのと同じだと私には考えられるのですね。ですから、私の意見としては、自由な利用ができているようなものであるからこそ、その魅力において買っている人もたくさんあって、その魅力的なものを売って利益を得ていらっしゃる。でも、そこが損失だといって補償金も取ろうとなさっている。もしそれが事実だとしたら、繰り返しになりますがそのグラフを逆にたどれば、椎名委員は一概に言えないとおっしゃいましたけれども、コピーネバーになったら売り上げが上がるということでなければおかしいのではないかと私は思うのですが。

(椎名委員) おっしゃっていることがどうもよくわからないのですけれども、私的にコピーをして楽しむ習慣というのは、私的録音録画補償金制度というものを前提に今は維持されてきたわけですよ。その制度が制度疲労を起こしてこのままでは立ち行かなくなる、あるいは廃止をしてくださいという議論もあるという中で、この小委員会が開かれている。そういう中で補償金制度をどうしていくかという議論をしているのであって、コピーネバーをして売り上げを上げてくださいという主張をした人はこの中にだれもいないと思います。そういう議論の場ではないのですよ。

(河村委員) もう一言だけいいですか。おそらく永遠にかみ合わないのかと思いますが、コピーネバーにして売り上げを上げようと言った人はいないということですが、私も言うはずはないと思っております。私が申し上げたいのは、補償金の根拠についておっしゃっていることが、一方は単純にコピーの総体が増えたことで損失であるとおっしゃっているのに、その反対のことは全くそんなことは主張するつもりもなければ説明もできないとおっしゃる。それは補償金を払う側からすると、もしかしたら録音ができることによって利益を得ているかもしれない、売り上げの後押しになっているかもしれないとしたら、それこそ矛盾した制度なのではないかということを申し上げたいと思います。

(野原委員) 今の話と重なるのですけれども、先ほどの参考資料1の2ページ目の昭和45年の現行法制度、最初の丸ですけれども、この昭和45年の現行法制定時には、私的録音録画は零細な利用であると位置づけられたことがあるということですから、この時点では零細だったというふうに考えているということですね。この零細というのは利用のnの平均値が小さいということを言うのではなくて、やはり著作権者の被る不利益が零細だったということではないかと思います。その辺は先ほどの河村委員の議論ともつながってくると思うのですが。私はそういう議論をずっとしているのではないかなと思って伺っているのですが、そうだとすると現状においては、それが権利者の被る不利益は、受容限度を超えているのではないかというふうにここに書いてあるわけで、ということはさっきの議論と関連しますが、権利者が被る不利益が受容限度を超えているという話を議論上していると思うのですね。ということはやはりもうかる・もうからないということでないというようなことをおっしゃいましたけれども、権利者が被る不利益が45年に比べて増えているということをここは言っているのですよね。
 これに対する疑問を申し上げたいと思うのですが、やはりCDを購入した人が自分で視聴するために、それをCDプレイヤーで聞くだけではなくて、タイムシフトをしたりプレイスシフトをしたり好きな曲だけをピックアップしてマイCDを作ったりするということが私的録音録画のわけですよね。その回数が増えたからといって権利者の被る不利益が受容忍度を超えるというふうになるのかどうかが私には全然理解できません。なので、それは私的録音録画補償金制度があるなしということではなく、そもそも私的録音録画が今の状態では権利者の被る不利益が受容忍度を超えているようになっているというのはどういう意味なのか教えてください。

(川瀬著作物流通推進室長) これは1つの問題提起で、私どもがそう考えているかどうかではないのです。それでこれも先ほどから私が言っていますように、1の第10小委員会の報告書に戻っていただきたいのですけれども、第10小委員会の報告書の一番最初の3行、これは個々の家庭内における複製がその受忍限度を超えているということは言っていなくて、その総体としてということを言っているわけです。したがって、零細な利用であるというのは、実は2つ意味がございまして、個々の家庭内における利用が少ないというのと、もう一つは社会全体として行われる複製も少ないという意味でございます。
 ただ、これはいろいろな各種の資料から昭和45年当時、それから補償金制度が導入した平成4年当時、それから現在において個々の家庭内における複製もやっぱり増えている。例えばカセットテープの時代、MDの時代、それから今の携帯用録音機器の時代になって、そのキャパシティも全然違いますし、操作の容易性も違います。したがって、確実に増えているのは間違いないわけです。

(野原委員) すみません、そういう御説明は今までも何度もしていただいていまして、そういうことを言っているのではなくて、その1かけるnのnが増えると、権利者の被る不利益がどうして限度を超えるかもしれないというか、複製のボリュームが増える。複製といってもそれは私的録音録画の範囲ですから、決して録音録画の総体がという議論ではないと思うのですよね。私的なその自分が自分で聞くために複製するというnが増えると、どうして権利者の被る不利益というのは大きくなるのですかという。

(川瀬著作物流通推進室長) それは昭和45年当時にその立法者が想定をしていた私的複製のキャパシティというものがあると思います。

(野原委員) キャパシティって何ですか。

(川瀬著作物流通推進室長) だから、その複製の量とか質とかという。

(野原委員) キャパシティが大きくなると不利益がどうして大きくなるのですか。

(川瀬著作物流通推進室長) だから、それはここの問題点の意識に書いていますように、法律というのは、その当時の実態を踏まえた上で、立法者がこういう範囲であれば権利制限をしてもいいということでなされたものです。したがって立法者が想定していた想定の範囲内の利用については、これは当然不利益がないというふうに考えられるし、立法者もそう考えたといえます。ただし、その実態が推移して確かに30条の今範囲外の行為が行われているけれども、立法者が予定していた範囲を超えて行われたものについては、30条という権利制限を考えなければ、本来、その超えた部分については許諾を得なければならなかったわけです。そうした許諾を得ればそこに当然その使用料の発生した、それは潜在的な不利益であるのではないかと。したがって本来立法者が予定していたキャパシティを超えて複製されていれば、その分については本来許諾を得る必要があったわけです。

(野原委員) キャパシティというのは数字じゃなくて不利益ですよね、そうですね。

(小六委員) 著作者の利益・不利益に関して申し上げることは非常に難しいのですが。音楽著作物というのは無形です。コピーをするということ自体がコピーライトと言うぐらいですからもともとの我々の権利の発生のもとですよね。コピーが増えるということは利益が上がるということで、我々にちゃんと複製権があるとすれば利益は上がります。これは当たり前のことです。ですから、私的録音のときに制限を受けて複製権の権利をそこで放棄しますということがもともとです。本来なら全部ある。全部ある状況の中で、著作者の、無形のものに対する利益という認識が、有形なものに対する利益、よく比較される、おしぼりとか何か、そういうことと違うという認識が、多分一般の方々よりも強いのですけれども、無形のものは数えられませんので、一般の方々は複製で数えられるというとらえ方をなさいます。ですから、数が増えたときに売り上げが増えれば利益が増えるというのが一般的な考え方だと思います。

(野原委員) ここで結論を出すということではないと思いますけれども、私的録音録画の権利は放棄したということはエンドユーザー、それもここで私が言っている話は……。

(小六委員) 放棄じゃない、留保ですな。

(野原委員) とりあえずは今のところ、そこら辺については利用していいのですというふうに。

(小六委員) それが30条の趣旨だと私は考えておりますし、そのようにするからこそ私的な使用が自由に行える。この自由に行えるというのが一番の双方にとっての利益ということで、その自由に行われつつ双方の不利益を発生させないようにするために30条ができた。しかしながら双方の不利益、あるいは利益に不均衡が生じたので補償金の制度を作ったというふうにとらえるのが順当な考え方ではないかと思っております。ですから、著作物の価値ということに関して言及を始めますと、すべてはそれは数量の考え方になってしまいますので、そこのところをよく考えていただきたい。そうしないと利益・不利益ということに関して説明がなかなかしづらいというのが私の意見でございます。

(野原委員) でも,利用限度を超えたのは数ですよね。

(小六委員) 一時期CDの売り上げが減ったのは、利用限度を超えるといいますか、使用する場面に1つずつCDがもしいったならば、その分のCDの枚数が増えるから我々の利益になるだろうという考え方、私はそういうふうには思っていないのです。そうではないんです。つまり利用限度が増えるのはそこだけの問題ではなくて、利用の限度を超えたと認識するのは総体であるという考え方です。これをどういうふうに説明すればいいかなかなか難しいのですけれども、総体であると言えば、では、その数はいくらということになりますが、数で数えられないからこそ利用の限度、我々の我慢の限度を超えているというと言えると思うんですね。

(中山主査) 次に華頂委員から。

(華頂委員) 私、この議論にちょっと水を指してしまうと思うので、ちょっとどうぞ。一番最後で。

(中山主査) では、松田委員、お願いします。

(松田委員) 2つ言いたいと思います。30条は著作権法上重要な意味を持っている。それは何かというと、製作をしていいコンテンツを作る、著作物を作るということのインセンティブを守りながら、情報としての著作物をあまねくみんなにできるだけ享受する。この両方の役割をバランスよく果たさなければならない条文なのだろうと思います。だから、河野委員が言われるように買ったCDをいろいろな場面で家庭内で使うようにしてそれを享受することを守ってあげて、言ってみれば著作物を楽しむと言ったらいいかもしれません。その状況を作り上げなければいけないと思っています。これは文化の発展にもつながるし、文化の底上げにも私はあると思います。そういう役割が1つあると思います。
 しかしながら、その限度を超えてインセンティブに影響が与えられるようになったときに、やっぱり調整してければならないのだろうというのが30条にもう一つ役割があるのだろうと思います。その総体としての不利益とか利益とかいうふうに言われていましたけれども、これは参考資料3を見ていただきたいのですが、これからの制度としては、この左側の網かけのところが30条で許される範囲におそらくなるわけであります。平成4年の段階ではもっと上まで実は網かけがあったわけであります。そして今言いました文化の享受を担保しながらインセンティブを確保できるかなと言ってきた。ところが技術が変わるにしたがってインセンティブのほうが低下してくるのではないかという判断でだんだん下がっていったということになります。
 もし家庭内で自由に使える部分が大きくて、それが文化が享受されて、なおかつ、だからこそCDが売れるということがあるのであれば、おそらく河野委員や河村委員はそういう考え方があるのだろうと思いますが、技術が進化していろいろな利用ができることによって、なおかつコンテンツが使われる、CDが売れるのではないか、そういう要素もあるのではないですかという御意見があるのですよね。そういうことが実はないのではないかというスタートで平成4年も今の議論もしているわけです。平成4年のときもCDの売り上げに現実に影響があるという調査が確かにあったと思います。だからこそ、ある部分ついては補償金をかけなければならないという制度にした。
 それから、この直近まで議論をした、昨年までと言ったほうがいいかもしれませんが、議論をした中で、網かけの部分で影響が出ているだろうという議論があって、去年からさらにさかのぼる6年ぐらい前までの間のこの急激な変化の中で、CDの売り上げは2分の1になっている、こういう現実があったはずであります。その影響の1つとしては、自己購入CDや友達から借りたCDからの複製が家庭内にあって、それが売り上げに影響しているという大きな因果関係、おそらく不利益として総体としてつかめるというのは、小六委員の意見はこういうことだろうと私は思います。そういう事実がある。であるならば補償金制度はその部分については維持しなければならない、こういうことの議論になっているのだろうと思います。特に友達から借りたCDからの複製というのは、データ的にいうとメディアを買う人の14パーセントに及んでいるというたしか資料がありました。ということは、これは私は対価が払われないでCDが買われないで友達がコピーを持っていると、こういう状態だと。これもデジタル技術ですから、クローンという言葉がありましたけれども、全く同じ性能のものが手に入っている。このことによって権利者の不利益が大きくなっているという、そういう事実を踏まえて補償金制度を維持すると、こういうことになったのではないかというふうに私は考えております。

(津田委員) 権利者の被る不利益というところで今お話が盛り上がっていると思うのですが、僕が1個すごくわかりやすい資料だなと思うのが、今回CDV-Jさんのほうから提出されたこの資料2の7ページのところのこのグラフというのは非常に端的にわかるのかなという気がしていて、これは僕自身の音楽自体をずっと聞いていた経験からいうと、大体89年にちょうどCDレンタルの店舗がどんどんなっていて、これぐらいからちょうどレンタルが増えるのと同時にCDのオーディオレコードの製作金額も増えているというのがあって、本来レンタルという形でレンタルが市場に定着していくのであれば、このレンタルという機会が増えることによって権利者の被る不利益というのが増えるのであれば、当然この89年ぐらいからオーディオレコードの生産金額というのがここまで伸びるはずがないわけだと思うのですけれども、レンタルの伸びと同時に今度はオーディオレコードの生産金額も増えているというのは、まず基本的には注目しなければいけないというのがあって。
 この89年というこの辺というのはなぜ増えたかというのは、当然いろいろな理由があるのですけれども、CDのラジカセというのがちょうど普及したぐらいなんですよね。僕自身も、CDラジカセというのは大体4万円とか5万円ぐらいで買えるようになって、民生用のCDラジカセというのは非常に安い形で普及して、それでテープにダビングできるという形で、そういうのがあってある種音楽ソフトというのがアナログレコードからCDというのに転換して、安価にコピーしつつ購入したものなども楽しめるようになったということがあって、これが伸びていったということがあります。
 92年にミニディスク、MDというのが登場して、川瀬さんの説明もありましたけれども、非常にそれまでに比べてアナログテープよりも簡単にデジタルコピーを行えるようになった。それが一般に広まっていく92年から95年ぐらいまでの過程で、オーディオレコードの生産金額はちゃんと伸びているのですよね。1.5倍ぐらいまで伸びていると。98年に飽和状態になって、そこから下がっていくわけですけれども。それは、やはりある意味、CDビジネス、音楽ビジネスがある種のここで飽和点を迎えたということであって、少なくとも89年のCDラジカセのときには伸びた、MDのときにも伸びたと。98年のときにCDRが増えてインターネットがあったから急に落ちたというのはちょっと、それまでのいろいろな経緯を考えるとまた伸びることもあった。でも、この98年から落ちたというのは、それはどっちかと言えばコピーとの因果関係だけで語られるものなのかというのが、僕の基本的な認識としてはあります。
 やはりそこで今は権利者が被る不利益というところに引きつけて考えると、ちょっとそのことばかりが注目されて、この私的録音補償金というのの維持なり金額を大きくするという話になるのであれば、ちょっとそこのところはやはりこの因果関係があるのかないのというはもっと議論として突き詰めなければいけないでしょうし、先ほど松田委員のほうからの話もあった文化の発展のために、そういった一製作者にインセンティブを与えるためにこういった私的録音補償金みたいなものが存在するのであれば、結構まだほとんど話としては出ていないと思うのですけど、以前、多分椎名委員がおっしゃったと思うのですが、今の現状の私的録音補償金の額は20億円ぐらいですよね。20億円で果たして文化の発展に有効なインセンティブになるのかというのが、それが200億円になればいいのか、1,000億円になれば文化の発展になるのかというのはわからないのですけれども、でも、今例えばこの国の道路行政とかというのに1兆円とか2兆円とか使っているような状況で、果たして20億円でどれだけ創作者に対して文化の発展に寄与するのかというところも多分根本的な議論としてはあると思うのですよ。そういうことも考えて文化の発展に寄与するというのであれば、もっと実効性のあるような制度設計なんていうのも含めて考えていかなければいけないのではないのかなというのを、今日の議論を聞いて思いました。以上です。

(中山主査) ありがとうございます。では、小六委員。

(小六委員) 先ほど松田委員の御発言の中で、僕はCDの売り上げが総体として減っているから我々は利益が減っているという意味で総体を申し上げたつもりは全然ありませんので。著作者の立場からの不利益というのはどういうことなのかという質問がさっきから何度も出てきましたので、これを数量的にとか、これこれこうだから不利益だと考える感覚というのはなかなか申し上げにくいのですが、ものすごく卑近なというか、世俗的な感覚で申し上げますと、つまり複製をただでされているということなのです、基本的に言うと。私的複製であろうと何であろうと複製をただで私的録音の中でされていると。その量が多いということなのです。これなのです、実は。
 つまりCDの売り上げが減るとかということは、実際上は影響があるかもしれませんが、いろいろな数値によると私的利用が増えたことがCDの売り上げが減っていることに明確な因果関係はないということがだんだんわかってきて、今、津田委員もおっしゃったように、はっきり申し上げられないと。それももちろんビデオなんかに関しても影響が大きくあると思います。しかしながら本来的な著作者の感覚といいますと、いっぱいコピーされているんだという感覚です。なおかつ私もいっぱいコピーをしております。ですから、その均衡をとるためにどうすればいいのか、それは個別的なカウントよりも、総体の利益・不利益をかんがみて補償金制度をきちっと整えていって、それを見据えて今現在考えられる一番いい制度を何とか考えられないかという考え方が私の考え方でございます。

(松田委員) 小六委員の意見、私は全くわかりません。コピーがたくさん増えていることを何とか解決しようと言っているのはわかりますけれども、コピーがたくさん増えることによって使い勝手がよくなってCDがたくさん売れて、そして経済的ダメージがなかったら、補償金制度なんかいらないじゃないですか。河野さんたちはそういうふうに言っているんですよね。だから、やっぱり経済的ダメージがないのであれば補償金制度はやめたほうがいいですよ。私はあると思っていますけどね。その点をはっきり権利者は意識すべきで、何だかぼやっととにかく補償金制度を維持しなければいけないというのでは、やっぱりそれは説得できませんよ。利用者側や買う側や機器メーカーは納得しませんよ。と思いますが。

(華頂委員) もしかしたら滑るかもしれませんけど御容赦ください。映画の場合は特殊だと思うのですけれども、映画のことで今の議論にもちょっとかみ合うのかなというのでお話しさせていただきます。映画の場合は私的録音補償金の対象になるのがテレビ放送からのタイムシフティング視聴のための一時的な複製なのですけれども、ただ、以前にも申し上げましたが、映画製作者は劇場映画に関しては原則的にいかなる場合も複製を禁止しているというスタンスです。これは映画のワンソースマルチユースというビジネスモデルがすべてにおいて複製を根幹にしているということなのですね。ですから、私たち著作権者が最初から最後まで当該著作物のコピーコントロールをして投下資本をリクープしていくというふうなことになっています。ですから、映画製作者はいかなる局面においても複製が行われる場合には対価をいただくということが生命線になっているということなのです。
 では、何でタイムシフトの視聴のための一時的な複製を容認しているのだということになりますけれども、劇場用の映画の基準に合わせて無料地上波放送をコピーネバーにしてまっては、これはもうとてもじゃないけれどもやっていけないわけですよね、私たちはそうして欲しいのですけれども。タイムシフトの視聴まで制限してまっては、さすがに私も一ユーザーとして使い勝手が悪いだろうということはよくわかります。権利者と視聴者のお互いのバランスをとって、補償金制度を運用することでお互いのバランスをとろうということになっているわけなのですけれども、これが要するに基本的な補償金制度の運用の基本的なスタンスだというふうに思っています。コピーネバーとなれば当然補償金はいただかなくてもいいのですけれども、こういうふうに無料地上波放送みたいにコピーネバーが運用できないケースもあるわけですよね。そしたらお互いに歩み寄ってこのような制度を使っていかざるを得ないというふうなことになると思います。
 音楽についても同じだと思うのですね。例えば音楽CDはノーガードになっていますけれども、音楽の場合はタイムシフトによる視聴はもちろんですけれども、いろいろな記録媒体に複製してプレイスシフトしたいという欲求がユーザーにはあると思うのですね。映画と違ってそれを規制するのは音楽というコンテンツに非常に馴染まないということだと思うのです。だから、音楽の場合も多くの場合は補償金制度を運用してやっていかざるを得ないのではないかなと思います。

(小六委員) ちょっとだけ言わせてくれますか。

(中山主査) 時間が押しておりますので、ごく限られてお願いいたします。

(小六委員) 著作者はボャーッとして考えているのです、実は。ボーッと考えているかもしれませんけれども、実はその不利益というと、細かいことですが30条がなければ確かに全部複製権で入ってきたという事実がまず厳然とありまして、それを許していたのにもかかわらず許した私的録音のコピーがものすごくたくさん増えていると、そこにはCDが売れるとか売れないとか関係なくて、我々の遺失利益が含まれているという感覚はすごく強いです。ここのところを理解していただかないと、これは著作者みんなの考え方ですので、それはぜひ理解していただきたくて。なかなか明確に論理的に申し上げられませんけれども、それは事実であるということはぜひ皆さんに知っていただきたいことだと思います。

(椎名委員) ちょっと議論のきっかけを作ってしまったので、僕が申し上げたのはいろいろな個別の行為類型ということで切り分けができるのですか?ということ。例えばメーカーさんが作っているCD機器は、友達から借りてきたCDを識別して吐き出しますか?レンタルから借りてきたCDを識別して吐き出しますか?ということを申し上げたいのですよね。だから技術的なエンフォースメントも、あるいは法的にそういうことを摘発するエンスフォースメントもない現状で、個別の事例を挙げて、これはただで、これは有料だという話をしても始まらない。少なくとも今補償金制度があって楽しむ環境ができている中で、その中で補償金制度を考えていく上で、補償金制度のボリュームを議論する議論も材料にはなると思うけれど、補償金制度自体の、必要性の有無に関する議論の材料にはならないのではないですかということを申し上げたまでです。

(中山主査) この問題は当然今日決着をつけるわけではございませんので、これからも議論を続けていくことになると思います。今日のところは時間ですので、これは次回また継続ということでお願いしたいと思います。
 一言申し上げますと、著作権というのは非常に人工的な権利ですので、そこにおける利益・不利益、あるいは損害というのは一体何かというのは極めて難しい問題です。有体物と違って難しい問題で、考えようによってはどのようにでも構成できるような問題ですので、ちょっと一回冷静に頭を冷やして、次回またこの議論を続けてもらえればと思います。
 時間になりましたので、本日の議論はこのくらいにしたいと思います。事務局から連絡事項がございましたお願いいたします。

(川瀬著作物流通推進室長) 本日は長時間ありがとうございました。本日の議論につきましては事務局で論点を整理しまして論点の集約に務めたいと考えております。次回につきまして引き続き検討の進め方に沿って御議論いただくということを予定しております。なお、第4回目となります次回につきましては、5月31日の木曜日の10時から12時まで、一橋の如水会館で開催を予定しております。どうもありがとうございました。

(中山主査) ありがとうございました。それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会の第3回私的録音録画小委員会を終了させていただきます。本日は御熱心な議論ありがとうございました。

〔了〕

(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)


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