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資料10

私的録音録画補償金制度にかかる今後の検討事項

2006年6月28日
社団法人電子情報技術産業協会
社団法人日本記録メディア工業会

 昨年の法制問題小委員会や、パブリックコメントでも指摘されている通り、現行制度には消費者やクリエーター、その他関係者の理解が得られていない、未解決の課題があると考える。制度の抜本的な見直しを行なうに際して、消費者やクリエーターの方々の理解を得るために、次のような進め方とする必要がある。

1. 検討の進め方
  補償措置を施す妥当性のある事項は何か、法制的、立法的観点から整理、検討をした上で補償金制度の存続可否を問い、制度を維持する場合には、同検討結果に基づき、補償金対象、料率、補償金支払い者・協力者、徴収・分配のあり方など骨組みの見直しをおこなう。

2. 具体的論点
  以下、論点1から3について、順に検討を進める。

論点1 補償金制度と技術的保護手段回避規制との関係の検討
<立法の経緯>
1   30条(私的使用のための複製)
   
  著作権者の権利を制限
  なぜならば家庭内のような閉鎖的な私的領域における零細な複製は、ベルヌ条約が複製権の制限を許容する「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しない」ものである。
2   30条2項(私的録音録画補償金制度) 平成4年改正
   
  「私的録音・録画は、従来どおり権利者の許諾を得ることなく、自由(すなわち現行第30条の規定は維持)としつつも、一定の補償(報酬)を権利者に得さしめることによって、ユーザーと権利者の利益の調整を図ろうとするものであり、私的録音・録画を自由とする代償として、つまり、権利者の有する複製権を制限する代わりに一種の補償措置を講ずるものである。」(注1)
  なぜならば個々の利用行為として見れば零細な利用行為であっても、「私的録音・録画は、総体として、その量的な側面からも、質的な側面からも、立法当時予定していたような実態を超えて著作者等の利益を害している状態に至っているということができ、さらに今後のデジタル化の進展によっては、著作物等の「通常の利用」にも影響を与えうるような状況も予想されうる」(注1)。
3   30条1項2号(技術的保護手段の回避規制) 平成11年改正
   
  「著作権者は技術的保護手段を用いることで、家庭内で行われる私的な複製に対しても許諾権を及ぼせる」(注2)(=著作権者の権利は制限されない)こととなった。
  なぜならば「私的使用のための複製を認めている趣旨は、・・・個人や家庭内のような範囲で行われる零細な複製であって、著作権者等の経済的利益を害しないという理由によるものと考えられる。一方、技術的保護手段が施されている著作物等については、その技術的保護手段により制限されている複製が不可能であるという前提で著作権者等が市場に提供しているものであり、技術的保護手段を回避することによりこのような前提が否定され、著作権者等が予期しない複製が自由に、かつ、社会全体として大量に行われることを可能にすることは、著作権者等の経済的利益を著しく害するおそれがあると考えられる」(注3)。

  13の関係については、平成11年改正時に議論され、一定の結論を得た。
 しかし、23の関係については議論が先送りされ、法制度上、並列したままとなっている。
 技術的保護手段を採用することにより家庭内でおこなわれる私的な複製に対しても許諾権を及ぼせるとしたら、技術的保護手段が施されているものについては、そもそも著作権者等の権利が制限されることを前提とした私的複製の領域というものは存在しないのではないか。仮に私的複製であったとしても、著作権者等の利益を不当に害しているかとの観点から、補償措置の必要性について検討が要るのではないか。技術的保護手段の施された著作物について、当該手段の回避を伴わずそのユースルールどおりに複製する行為は、法的にどう考えたらよいのか。
 なお、昨年の法制問題小委員会 契約・利用ワーキングチームにおいて、「いわゆる契約による著作権法のオーバーライド」について、更なる検討が必要、と報告されているが、かかる検討が解決の前提となるのではないか。

論点2 補償措置を施す妥当性についての検討
 技術的な保護あるいは複製のソースの観点から、補償措置を施す妥当性について検討する。次に掲げる行為を補償する妥当性はあるか。あるとしたら、その理由は何か。

(1) 技術的な保護の観点からの検討
   技術的保護手段あるいは/ならびに技術的制限手段(以下「保護技術」)を採用しているか否か、採用されている技術の態様によって、取り扱いを変える必要性の有無および具体的な取り扱い

1 保護技術を採用していない著作物の複製
 
  (例)アナログ放送

2 保護技術を採用している著作物の複製
  本行為は、以下のそれぞれについての検討が必要。
  (*保護技術は、当該保護技術が施された著作物の利用が、ある一定の範囲でしかなされないことを前提に、著作権者等がその意思により、もしくは著作権者等の意思に従って、または著作権者等の了解の下で採用されるもの)

  A. 複製その他の利用について明示的な許諾(契約/規約など)があるもの
(課金の有無にかかわらず)
 (例)音楽配信、有料放送

B. 明示的な許諾はないが保護技術の採用により予め一定の利用範囲が想定されているもの

B-1. 予め想定された範囲外での利用が行われないように、機器の動作につきメーカに対する契約等により法的に強制ができるもの
  (例)VHSビデオ、DVDビデオ/オーディオ、スーパーオーディオCD、デジタルテレビ放送

B-2. 機器の動作につき強制力がはたらかないケースがあるもの
  (例)音楽CD

(2) 複製のソースの観点からの検討
   複製のソースにより取り扱いを変える必要性の有無および具体的な取り扱い

  A. 自己の所有する適法複製物の複製

  B. 適法に貸与された複製物の複製

  C. 適法ダウンロード(複製)

論点3 補償措置を施す妥当性のある場合についての補償制度のあり方の検討
 論点1、論点2の検討を踏まえて、制度維持のための社会的コスト、権利者への有効還元率、公平性、透明性等の観点から、制度維持は適切といえるか。その場合、補償金対象、料率、補償金支払い者・協力者、徴収・分配のあり方などはどうあるべきか。

(注1) 著作権審議会第10小委員会報告書 (平成3年12月)
(注2) 加戸守行「著作権法逐条講義(4訂)」
(注3) 著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループ(技術的保護・管理関係)報告書(平成10年12月)

以上


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