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資料2
平成16年7月21日改訂版

文化多様性に関する作業部会課題の整理(案)

  文化多様性について
  (1) 文化多様性の意義
定義)
文化多様性とは,民族,地域及びコミュニティが独自の歴史的文化的背景を有する様々な文化を有すること,或いはそのように様々な文化が存在する状態を意味する。
(なお,世界的な視野で文化多様性という言葉が使われる場合もあれば,国内での民族,地域,コミュニティについて文化多様性という言葉が使われることもある。)

意義)
平成13年に公布施行された文化芸術振興基本法では,その前文で「文化芸術は,多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するものであり,世界の平和に寄与するものである。」と述べている。

平成12年の沖縄サミットにおけるG8コミュニケで「文化の多様性は,創造性をかきたて,革新を刺激するため,21世紀の人間生活を豊かにする可能性を有する社会的及び経済的な活力の源泉である。」とされ,また,「異なる文化間の接点の増加は,文化間の創造的な相互関係を促進する。ITにより,個人が安価かつ世界的に,文化の内容や考え方を創造し共有するための空前の機会が開かれる。」と述べている。

文化財に関しては,世界遺産条約の制定が世界的な枠組みを作る大きな力となった。また,ヨーロッパは石の文化にしか価値を見出さなかったが,木の文化の価値が認識されることとなり,文化多様性が認められるようになった。

グローバリゼーションによる問題
このようにグローバリゼーションの進展により,文化の多様性の認識が広まる一方で,言語の急速な消滅,及び製品,法規範,社会構造やライフスタイルの画一化により脅かされているといった指摘がある。

また,途上国は,グローバリゼーションによって自国の文化が平準化されることを恐れている。国民経済が世界市場の中に飲み込まれていく状況の中で,先進国の文化産業が途上国の市場に浸透し,それぞれの地域の歴史や文化の土台の上に発展してきた土着の地域文化が根こそぎにされ,地域文化の創造性が失われてしまうといった,自国文化の平準化を危惧する声もある。(その根底には欧米中心の考え方に対する反発も伺えるが,グローバリゼーションが相互に理解し合える場を提供していると肯定的に考える側面もある。)

国内的には,文化多様性について意識して文化行政が行われるようになっている。また,国際的にも,西洋的なものの見方から,より多元的なものの見方や価値観を重視する文化多様性の意識が生まれている。

グローバリゼーションによる問題を過度に意識すると,地域や国,民族のアイデンティティに固執してかえって一種の文化障壁を作り出してしまう恐れがある。文化の障壁を乗り越えて,それぞれの立場を尊重し、認め合い、共存していくにはどうしたらいいかが大きな問題である。

むしろ,全ての人々が自らの文化と価値観をこれまで以上に理解し,他の人々の文化と価値観を尊重しつつ,共存できるような魅力ある社会を構築することが必要である。

平成14年の文化審議会答申では,「文化の交流を通じて各国,各民族が互いの文化を理解し,尊重し,多様な文化を認め合うことにより,国境や言語,民族を超えて人々の心が結び付けられ世界平和の礎が築かれる。」と述べている。

  問題点】
グローバリゼーションと多様性の関係をどう考えるか?
映画,音楽等がインターネットを通じて個人のレベルで国境を越えて配信することが可能となったブロードバンド時代において,コンテンツの流通に関する国の関わり方についてどう考えるか?

  (2) 文化と経済との関係
文化の二面性)
平成14年文化審議会答申では,「文化のあり方は,経済活動に多大な影響を与えるとともに,文化そのものが新たな需要や価値を生み出し,多くの産業の発展に寄与するものである。」と述べている。

文化的財・サービスは,単なる商業的価値とは区別されるべき特殊な地位を持っており,他の財・サービスとは異なる独自の価値体系を有している。

産業構造の変化等により、文化と経済の関係が深まっている。しかし、経済の面から文化を考えることは限界がある。文化の観点から理念づけた上で、経済との調整を図ることが必要。

自由貿易との関係)
文化的財・サービスを全て市場経済に委ねた場合,普遍的でないが,文化性の高い文化が衰退してしまう恐れがある。

GATT(ガット)の中では,自由無差別な貿易の例外として,映像フィルムとか,歴史的,美術的または考古学的な価値のあるものを保護するための措置は認められている。

WTOのサービス貿易交渉では,ECやカナダが音響・映像サービスは固有の言語,民族の歴史または文化的遺産の維持に重要な役割を果たすものであり,文化的価値の保護のための措置は例外とすべきと主張したが.米国等の反対により認められなかった。この結果,EC諸国等はWTOのサービス貿易交渉において,音響・映像サービスの貿易自由化を約束しないことで妥結した。現在AVについて明確な規律は設けられていない。

労働問題、環境問題、文化問題ともに経済と関連するが、労働問題がILOで、環境問題がUNEPで扱われているように、文化の問題について、ユネスコで扱うことに合理性はある。

平成13年にユネスコは、文化多様性の理念・目的をまとめた文化多様性に関する世界宣言を採択しており、文化多様性の保護、促進のための今後の取組をユネスコのフレームワークで検討していくことについては国際的なコンセンサスがあると考える。

(WTO関連は最後のページに移動)

  文化多様性を保護・促進するための我が国の取組み
  (1) 我が国の文化政策の歴史的背景
我が国は,有史以来大陸の文化を受容しつつ,これを消化,吸収し,独自の文化を形成してきた。

我が国の文化政策は,欧米の近代文明を普遍的な原理として受入れることと,我が国文化の固有性を確認する個性化の方向が相互にせめぎ合ってきた。

80年代以降地方の時代,文化の時代が叫ばれるようになり,文化に個性化の方向が求められるようになった。こうした動きの中で文化的中央と文化的地方の解消と,国内における文化多様性の認識が深まりつつある。

無形文化遺産に関しては,我が国は世界に先駆けて文化財保護法を昭和25年に整備し,平成5年には無形文化遺産保護のための信託基金をユネスコに設置して,途上国の無形文化遺産保護に協力を行ってきた。さらに,昨年のユネスコ総会において,我が国は,こうした経験を踏まえて,無形遺産条約の採択に向けてリーダーシップを発揮し,大きな貢献を果たすことができた。我が国のこうした取り組みは世界的に高く評価されている。

近年,他の政策領域で文化関連施策が取組まれるようになり,特に,国際文化交流,産業経済と文化,情報化社会と文化などの問題がある。

  (2) 今後の我が国の文化政策のあり方
平成14年の文化審議会答申では,「諸外国との文化交流を図りつつ形成されてきた我が国の文化について理解することは,他の文化に対する寛容や尊重の気持ちを育むことになる。(さらに,)我が国の文化が国際的に多様な刺激を受けて,新たな創造を加えつつ発展していくうえで重要であるのみならず,国際社会における我が国の文化的地位を確かなものとし,世界の文化の発展に寄与するものである。」と述べている。

平成15年の文化庁国際文化交流懇談会報告では,「日本文化の特質は,文化の多様性の確保に向けた大きな可能性を秘めている.日本社会は.古来より多種多様な外来文化を受容しつつ独自な文化様式を形成してきた。圧倒的な権威や排他的な価値が中心に存在しない中空構造に支えられた日本社会は,多様な文化をバランスよく包み込む,いわば文化の多様性空間として機能してきた。こうした特性を踏まえて,その国土と人材を活用し,世界の多様な文化の劇場或いは博物館,美術館を目指すことは,21世紀日本が誇るべき使命となるであろう.」と述べている。

今後の文化政策においては,文化の受容に一定の配慮を払いつつも,創造の面に力を注ぎ,国際的な評価に値する文化の発信が求められる。

日本は世界の中の文化的地方という意識を克服し,他文化の受容も心がけつつ,国際的評価に値する独自の文化を創造することが必要。

我が国では、文化財(無形文化財を含む)は市場経済にのらず、文化保護法の下に、保護に努め、世界に先駆けて文化多様性の保護・促進に努めてきた。こうした方針は世界的にも高く評価されている。ただし,この分野の保護措置は各国の判断に委ねられるものであり,条約上大きな問題にはならないと考える。

文化財は地域のアイデンティティを生み出すものと言われるが,特に無形遺産,民俗遺産は,かえって芸術的なものよりも地域共同体と結びついて受け継がれているため,上下の別をつけることは非常に困難である。条約の制定により行政が上下をつけることになることを懸念。

文化について分類した上で、文化多様性の保護・促進のためにどのような措置が必要か検討すべき。伝統文化については、国の支援が不可欠であり、我が国では、オペラ、バレエ、オーケストラ等の現代芸術についても、国の支援がなくなると衰退する恐れがある。

一方、アニメ、映画、音楽など市場経済の中で議論されるコンテンツ事業については、文化芸術の水準の向上を図る視点やコンテンツ振興の観点から、各国の判断で財政的支援や国内規制を行うことが必要な場合がある。

(WTO関連は最後のページに移動)

  問題点】
我が国の文化政策の中で,文化多様性をどう位置付け,どのように保護・促進していくか?
日本はどのような文化をどのような方法で保護,促進すべきか?
能,文楽など市場経済にのらない文化を保護・振興し,他国の文化も保護していく観点から,我が国の文化政策はどうあるべきか?
国として文化産業振興と文化多様性の関係をどう考えるか?
映画,音楽,アニメ等の潜在的な輸出競争力のある産業の市場アクセスや内国民待遇の確保をどう考えるか?

  文化多様性の保護・促進のための国際的な体制の構築(または文化多様性の保護・促進のための国際協力のあり方
  (1) 対象範囲
文化的財・サービスとしては,本,音楽,フィルム,ビデオ,から骨董,アンティーク,舞台芸術,アーカイヴ,博物館,図書館まで極めて幅広い内容が考えられる。

文化を文化的財・サービスだけでとらえてよいのか。文化は人間の生活や歴史に根付いており、人間を排除する近代的な流れに危機感を抱く。

もともとGATT(ガット)のウルグアイラウンドやWTOのサービス貿易交渉(GATS(ガッツ))の議論の中でAV(音響、映像サービス)いわゆるコンテンツの取扱いが議論となった。文化多様性に関する条約の審議においても音響・映像サービスの取扱いが課題になると考える。

しかし,文化多様性の保護,促進についての取り組みは必ずしもAVサービスの問題に限られるものではない。

文化芸術振興基本法が、すでに施行されている文化財保護法も取り込んで、我が国の文化芸術の振興の基本的方向を定めたように、文化多様性条約も、先行する世界遺産条約や無形遺産条約(削除WTO協定)等を包括した上で、今後の人類の文化のあるべき姿を理念的に示すものとすべき。


  問題点】
文化多様性に関する条約は必要か?
文化多様性として保護・促進すべき対象範囲をどう考えるか?
例 メディア芸術関係,無形文化財,伝統的文化表現?
文化的財・サービスと他の財・サービスを同様に扱うこととした場合の問題は何か?
無形遺産条約との関係はどう考えるか?

  (2) 各国の権利義務
文化芸術振興基本法では,自国文化の認識が国の存在(アイデンティティ)にとって不可欠であることを認めており,こうした観点から日本文化を保護するために,国は一定の文化政策を取る権利を有すると考える。

文化多様性の保護・促進に関する施策として,芸術文化活動への補助金による助成のほか,国内の映画の上映のうち,外国映画の上映を一定の比率以内とするクウォーター制の導入や投資法に基づく外資の市場参入規制などを行っている国がある。

文化産業の振興と文化多様性の保護・促進の間でどのような調整点を見出すかが問題。

補助金と規制措置は国家の二大政策ツールであり、文化芸術の振興のための補助金の意義は今後も変わらないと考える。


  問題点】
文化多様性の保護・促進のために各国の権利義務として何が認められるか?
文化多様性の保護・促進の観点から,各国に認められる文化政策としてはどのような手法が考えられるか?
例制度的規制(クォータ制など)や財政的補助の取扱い
文化的財・サービスについて,国が保護,促進のためにあらゆる措置をとってよいと考えるか?当該文化の衰退等の一定の条件がある場合にのみ措置を講じることを認めるべきか?
文化的財・サービスと他の財・サービスを同様に扱うこととした場合に問題はあるか?
文化多様性の保護・促進のための政府の組織についてどう考えるか?

  (3) 国際協力
日本と韓国,中国等の間で合作映画の制作や音楽・演劇の共同公演,コンテンツ振興や知的財産に関するシンポジウム・セミナーの開催などの取り組みが始まっている。

文化多様性の保護・促進において、人材育成や教育の果たす役割が大きい。

ユネスコにおいては,各国が行う文化政策について各国が情報を共有することが出来るように,データベースを構築したり,各国の文化政策担当者が情報交換する場を創設するとともに,途上国が文化多様性を保護,促進するための措置を有効に講じることができるように,人材育成プログラムの開発などの能力構築を支援していくことが重要である。

日本にとって望ましい国際協力のシステムのあり方を検討した上で、積極的に実現に努めることが必要。

  問題点】
競争よりも,共同を指向したコンテンツの交流促進のためのスキームを各国の間で構築することが出来ないか?
途上国の文化発展に対して日本としていかなる支援が考えられるか?

  (4) その他
フォローアップ機構,紛争解決機関等とWTO等との関連

  問題点】
WTOの自由・無差別の原則に文化の分野で例外事項をどのように線引きするのか?

文化的財・サービスについて、WTO協定の全くの例外とするのか、または、一定の制約の下に例外的な扱いを認めることとすべきか?
また、WTOの自由無差別の原則の例外として、各国は文化多様性の保護・促進のために、どのような措置を講じる権利が認められるか?


世界的に流通するようなコンテンツの輸出において、国家間であつれきを生じるケースがある。こうした問題を調整するために、国内法をこえて条約で根拠づけることが必要か?文化多様性条約の実質的な効果として、こうした問題について、WTOのフレームワークの例外としてユネスコの紛争解決機関で扱うことが可能か?

クリアリングハウスの内容,設置

フォークロアと文化多様性との関係の整理


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