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資料11

文化多様性の保護に関する現状
1.文化多様性とは
 時代、地域によって、文化のとる形態は様々である。人類全体の構成要素である様々な集団や社会個々のアイデンティティーは唯一無比のものであり、また多元主義的である。このことに、文化的多様性が示されている。生物的多様性が自然にとって必要であるのと同様に、文化的多様性は、交流、革新、創造の源として、人類に必要なものである。この意味において、文化的多様性は人類共通の遺産であり、現在及び将来の世代のためにその重要性が認識され、主張されるべきである。(文化的多様性に関する世界宣言第1条)

2.ユネスコにおける取り組み
(1) 文化多様性に関する世界宣言の採択
平成13年の第31回ユネスコ総会において、グローバリゼーションに伴う画一化の危険から世界の多様な文化を守り活かして、異なる文化間の相互理解を深め、世界の平和と安全に結びつけることを目的とする、「文化多様性に関する世界宣言」が採択された。

(2) 文化多様性条約策定に向けた動き
平成14年のヨハネスブルグ・サミットで、フランス・シラク大統領が、グローバリゼーションの進展の中で各国の文化を保護する必要があるとの基本的な考え方の下、「文化的多様性は,言語の急速な消滅,及び製品,法規範,社会構造やライフスタイルの画一化により脅かされている。」として上記「文化多様性宣言」の国際約束化を目指すことを表明。

平成15年10月に開催された第32回ユネスコ総会において、文化多様性に関する国際規範の策定手続を開始することが決議された。

第32回総会の決議を受け、平成15年12月に第1回専門家会合が開催(日本からは河野俊行九州大学教授が出席)。その後、平成16年3月に第2回会合が、同5月に第3回会合が開催され、条約の予備的草案について検討してきた。

平成16年4月に開催された第169回執行委員会において、政府間会合を開催することを決定。

今後、専門家会合の報告と検討された予備的草案がユネスコ事務局から加盟国に配布される予定。早ければ来年秋の次回ユネスコ総会で条約案が提出される予定。

参考>無形文化遺産保護条約
平成15年の第32回ユネスコ総会において、「無形文化遺産の保護に関する条約」を採択。無形文化遺産については、これまで拘束力のある多国間協定が存在していなかった。本条約は、無形文化遺産を保護することを目的として、そのための国際的な協力及び援助体制の確立、締約国がとるべき必要な措置等につき規定するものである。
 無形文化遺産とは、慣習、描写、表現、知識及び技術並びにそれらに関連する器具、物品、人工物及び文化的空間であって、社会、集団及び場合によっては個人が自己の文化遺産の一部と認識しているものであり、口承、芸能、社会的習慣、儀式、祭礼行事、自然万物に関する知識、伝統工芸技術などが挙げられる。

3.我が国の取り組み
 文化多様性については、特に、近年グローバリゼーションの進展により、多様性の確保が重要になっていると認識しており、平成12年の九州・沖縄サミット時に開催された、G8コミュ二ケでは、我が国のイニシアティブで文化の多様性の確保の重要性が明記されるなど、文化多様性の保護・促進に積極的に貢献してきた。今後のユネスコにおける議論においては、文化多様性に関する基本的な考え方を整理した上で、積極的に貢献していく予定。

参考>無形文化遺産に関する取り組み
 我が国は、各国に先駆け無形文化遺産をも対象とする文化財保護法を昭和25年に整備したほか、平成5年に無形文化遺産保護のための信託基金をユネスコに設置し、途上国の無形文化遺産の保護に継続的に協力するなど、この分野の先進国として、従来から文化遺産の保存にあたって無形文化遺産の重要性を唱えてきた。



参考
<国際文化交流懇談会報告−抄−(平成15年3月24日)>

第3章 国際文化交流の理念と目的
1. 文化の相互理解による国際平和、自由な世界の実現
(1) 文化多様性の確保による世界平和の実現
 情報や経済のグローバル化に伴い、「文明の衝突」という言葉に象徴される民族的、宗教的な対立が激化している。一方、東西冷戦の終結以後、従来の国民国家の枠にとらわれない地域的、文化的な運動も世界各地に増えている。
 こうした状況において、日本文化の特質は文化の多様性の確保に向けた大きな可能性を秘めている。日本社会は、古来より多種多様な外来文化を受容しつつ独自な文化様式を形成してきた。圧倒的な権威や排他的な価値が中心に存在しない「中空構造」に支えられた日本社会は、多様な文化をバランスよく包み込む、いわば文化の多様性空間として機能してきた。こうした特性を踏まえて、その国土と人材を活用し、世界の多様な文化の「劇場」あるいは「博物館」、「美術館」を目指すことは、21世紀日本の誇るべき使命となるであろう。
 豊かな地球環境を子孫に手渡すためには、生物種の多様性を保持することが不可欠である。それと同様に、豊かな人類文明のためには、異なる歴史観、宗教観、価値観を有する国々の存在を欠くことが出来ない。文化の多様性の確保は、開かれた自由な世界における友好親善の前提であり、文化国家日本の指針とならなければならない。このような考え方に基づく国際文化交流の実践は、国際秩序や安全保障への貢献ともなり、日本の平和理念を広く知らしめることになるであろう。

第4章 国際文化交流の推進方策
2. 具体化すべき主な方策
(2) 文化の多様性と共生についての理解の促進
1 文化の多様性と共生についての理解の促進 
 異なる文化間、文明間の対話促進のため、海外諸国との間で、有識者、専門家、行政官、市民相互の人物交流を活性化させる。さらに、現代の国際社会において、それぞれの地域が共通に抱える課題(環境、高齢化、医療、貧困、教育、女性、持続的開発、安全保障、国際経済、民族・地域紛争など)を共有し、共同で解決するために、国境を越え、学問領域を越え、政界・経済界・官界・学界・NGOなどの垣根をも越えた知的交流、市民交流を支援する。このような交流を通じて、国際世論形成への我が国の本格的参画を促進する。


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