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文化政策部会(第13回)議事録

1.日時: 平成16年12月8日(水曜日) 14時〜16時

2.場所 如水会館2階 オリオンルーム

3. 出席者:
(委員) 高階委員,富澤委員,川本委員,熊倉委員,都築委員,根木委員,山野委員,米屋委員,神崎委員,吉本委員
(事務局) 河合文化庁長官,加茂川文化庁次長,森口文化庁審議官,寺脇文化部長,吉田政策課長,他

4. 議題:
(1) 「地域文化の振興と発信について(仮題)」報告書(案)の審議
(2) その他

5. 議事:
高階部会長 それでは時間になりましたので,ただいまから文化審議会文化政策部会第13回を開催いたしたいと思います。
 本日はご多忙の中,皆様ご出席いただきましてまことにありがとうございます。
 それでは議事に入りますが,まず,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

吉田政策課長 今回の配付資料は2点でございます。
 資料1は,文化審議会文化政策部会第12回,前回の議事録の案でございます。
 それから,資料2が「地域文化の振興と発信について(仮題)」報告書(案)という形になっています。

高階部会長 ということでございます。ご確認をお願いいたします。
 資料1の前回,第12回の議事録(案)につきましては,委員の皆様にご確認をいただき,ご意見がございましたら1週間以内,12月15日,水曜までに事務局にご連絡いただくということにお願いいたしたいと思います。
 それでは,本部会の報告書(案)につきましては,前回での部会の方針どおり,熊倉委員,根木委員,吉本委員,米屋委員,4名の委員の方に提言案作成チームをお願いいたしまして,報告書案を作成していただきました。委員の4名の皆様,大変ご苦労さまでした。
 それでは,資料2,「地域文化の振興と発信について(仮題)」報告書(案)について,事務局からご説明をお願いいたします。

吉田政策課長 資料2をごらんいただきたいと思います。
 「地域文化の振興と発信について(仮題)」報告書(案)ということで表題をつけております。全体が42ページということで,大部になりました。この内容につきましては,事前に資料を配付させていただいておりますので一度ごらんになっていただいたかと思いますが,事例の部分が全体で30ページほどを占めておりまして,そこのところで分量が多くなったとご理解いただければと思います。
 目次をごらんいただきたいと思いますが,ここにこの報告書の全体の構成が書いてございます。「はじめに」というのがございまして,第1章が「地域文化を振興する意義」,第2章が「地域における文化の現状」,それから第3章が,ここが事例の分析などをしたところでございますけれども,「地域文化の振興に当たっての課題と方策」,それから第4章が,ここが提言ということになると思いますが,「地域文化の活性化に向けて」という形にしておりまして,最後が「おわりに」ということでございます。
 それでは,「はじめに」は省略させていただきまして,第1章から簡潔にご説明をさせていただきたいと思います。
 第1章の「地域文化を振興する意義」は,地域文化振興の重要性というものを理念論として展開をしていく部分でございます。
 その際,1といたしまして,地域文化を振興する本来的意義ということで,本質的な部分をここで述べておきたいと思っております。ここでは見出しだけを言わせていただきますが,まず,「心の豊かさの創出」ということで,文化そのものが持つこういった要素から始めまして,地域文化ということになりますと「住民の身近な文化芸術活動の機会の確保」というような視点,それから少し広がってまいりまして,「地域社会の連帯感の形成」,そして(4)のところでは,その冒頭にありますように,地域文化が有する文化の厚みが日本文化の基盤をなしていると,こういった認識の上に立ちまして,「地域文化の振興による日本文化の振興」と,こういった形でまとめております。
 それから,ページをめくっていただきまして,「世界的な視野での文化多様性の確保」ということが言われておりますけれども,地域文化の振興ということが,こういった世界レベルでの文化多様性の確保にもつながるということを述べております。
 それから,2のところでは,「地域社会を活性化させる文化」ということで,文化には人を動かす力がある,「文化力」というような言葉でくくれる部分もあるわけですけれども,こういった文化の持つ力というのが,文化芸術以外のさまざまな分野で地域社会の活性化に貢献し得るのではないかという視点から,幾つか整理しております。
 まず1番目が,「地域経済を活性化させる文化」,そして2番目が,「観光資源としての文化」,この中では,内閣府がことし行いました「観光立国に関する特別世論調査」の結果なども盛り込んで記述をしているところでございます。
 それから,ページをめくっていただきますと,3番目に,「教育や福祉の分野でも大きな効果を持つ文化」ということを挙げております。
 それから,第2章の方に移っていただきますと,ここでは統計やあるいは世論調査,そういったものから浮かび上がってまいります「地域における文化の現状」を記述している部分でございます。
 1が,「地域文化をめぐる現状」ということで,少しここは定量的な部分も含めての記述をしております。
 1番目が,「地方公共団体の文化関係予算の推移」ということでございます。平成5年度と平成13年度を比べてみますと,大幅な減ということが出ております。その中の主要な要素といたしましては,文化施設建設費,いわゆる箱物の整備という関係の予算が大幅に減少しているということが注目されること。それに対して,ソフト事業の経費であります芸術文化事業費ということについて,これは横ばい状態にあるというようなことを述べておりまして,こういったところから,その下のところにありますけれども,今後,地方文化の振興に当たりまして,多様な資金源の確保といったものが重要になってくるのではなかろうかという視点を打ち出しております。
 それから(2)は,「地域における文化施設等の現状」ということでございますが,平成2年の1,010館から平成14年の1,832館ということで,ここ12年間で約1.8倍の増加をしているわけでございます。一方で公立文化施設のメインホールの稼働率が52%であるとか,あるいは自主文化芸術事業を実施している割合が76.3%であるとか,そういったことでの運営に関する人材の問題あるいは事業企画能力の問題,そういったことについて課題として取り上げております。
 それから,6ページの方をお開きいただきますと,ここは内閣府が平成15年に実施いたしました「文化に関する世論調査」の中から,地域文化振興に関するものを抜き出したものでございます。
 まず,「地域の文化芸術活動の振興に関する要望」,そして「地域の文化施設の整備等に関する要望」,そして「文化が息づくまちづくりのための要望」,こういった3つの質問がございましたので,その概要をここに整理して載せております。
 結論といたしましては,先ほどの文化施設整備の関係につきまして触れさせていただきましたけれども,地域における文化施設等のハード整備が進んだことを受けて,住民のニーズというものが文化芸術活動に接する機会の増大や地域の文化芸術団体,サークルの育成・支援,文化財の活用にまちづくりなどのソフト事業の充実や地域振興政策における文化的側面の重視と,そういった側面に移行しつつあるということが明らかになっているのではないかと,ここでは述べております。
 それから,ページをめくっていただきますと,次は地域文化に対する企業等のメセナ活動の状況でございます。そこでは,企業メセナ協議会の「メセナリポート2004」にあらわれました企業の意識といったものについて述べております。注目すべきは,地域社会の芸術文化振興のためといった,そういった目的が急増しているということがあろうかと思います。そういったところから,この部分のまとめといたしましては,こういった趨勢を受けまして,メセナ意識が高い企業の協力を得ることがますます重要となってきているという形にしております。
 それから,2は,「地域の文化振興に関する取り組みの質的な変化」という形で整理しております。まず1は,文化振興の主体について質的な変化が起こりつつあるのではないかということで,「行政主導から関係者の連携・協力へ」という要素が強くなってきているのではないかということ。
 それから,2番目には,「地域振興政策における文化の重視」ということがなされるようになってきたのではないかということ。
 それから,8ページの方に移りますけれども,「他分野の政策との連携・協力」ということがより重視されるようになってきているのではなかろうかということついて記述しております。
 それから,3のところは,「国における地域文化振興施策」でございまして,これについては,これまでいろいろな資料で説明させていただいたもののうち,柱となるべきものだけを抽出しております。
 そこで,10ページの方に移っていただきますと,第3章が「地域文化の振興に当たっての課題と方策」ということで,事例の分析と提言につながる部分の記述でございます。
 7つの課題に整理をいたしました。課題の1が,「地域文化を振興するために地域の「文化力」をいかに結集するか」でございます。それと,その地域の文化力の結集に関わってまいりますが,課題の2として「文化以外の分野に「文化力」をいかに活用するか」,課題の3が,人材の問題でございます。課題の4が,拠点あるいは資源の活性化の問題でございます。課題の5が,子ども・青少年の文化芸術活動への支援の問題,そして課題の6が,情報収集・発信の問題,課題の7が,資金的援助の問題というような形で柱を立てまして,27の事例を取材いたしまして,その結果を整理したものでございます。
 課題の1のところでは,地域の「文化力」をいかに結集するかということでございますけれども,方策の1として,住民の参加意識を高める。その際の方法といたしまして,文化振興条例ですとかあるいは文化振興計画,そういった地域のグランドデザイン,そういったものをつくる過程で住民の参加をより深くしていただくことによって,住民意識の向上といったものを図れるのではなかろうかということです。長久手町の「文化マスタープラン」というのがこういった取り組みの先駆だったというふうに理解しておりますけれども,最近の事例としまして,福岡県春日市の「文化振興マスタープラン」の策定過程について分析をいたしまして,記述をさせていただいております。
 次に,12ページの方に移っていただきますと,「地域の特色ある文化資源を掘り起こす」ということで,地域住民が外部の方の手も借りながら,また行政と連携しながら,地域でそれまで余り目立たなかった文化資源といったものを掘り起こした例ということで,NPO法人「ひがし大雪アーチ橋保存会」の事例につきまして,記述をさせていただいております。
 次に,13ページでございますけれども,「文化資源を地域住民が中心となって創出し,まちづくりにつながった事例」ということで,これはヒアリングをさせていただきました日立市のケースをこのコラムの中で取り上げております。
 また,その下の記述の中では,これもヒアリングをさせていただきましたが,「イトヨの里」,それから静岡県の「グランシップ」の取り組みの事例,こういったものにつきましても記載させていただいております。
 それから,14ページをごらんいただきますと,「文化以外の分野に「文化力」をいかに活用するか」ということでございますが,まず,「福祉分野との連携により,文化力を福祉分野に活用する」ということで,奈良市音声館の「シルバーコーラスによる健康と生きがいづくり」を取り上げております。
 それから,15ページの方に移っていただきますと,方策の4でございますが,「教育分野との連携により,「文化力」を教育分野に活用する」ということで,NPO法人「STスポット横浜」アート教育事業部の取り組みを取り上げております。これは学校における指導計画の策定段階からこの文化芸術団体が参加し,実際にその授業に現役の芸術家を講師として送るためのコーディネート活動を行っているところでございます。この関連では,このコラムの下でございますけれども,NPO法人「芸術家と子どもたち」の取り組み事例ですとか,あるいは神奈川県相模原市のNPO法人「さがみはら教育応援団」,こういうところについても紹介することとしております。
 それから,16ページの方をお開きいただきますと,「観光分野との連携により,訪れてみたいまちづくりに「文化力」を活用する」ということでございまして,ここでは重要伝統的建造物群保存地区に指定されております「千葉県佐原市」のケースを取り上げております。
 それから,17ページに移っていただきますと,課題の3ということで,人材の問題でございます。
 最初に取り上げましたのは,「地域において文化芸術活動を実際に担う人材を全国に還流させる仕組みをつくる」ということで,これはヒアリングをしていただきましたダンスボックスの大谷さんからご紹介いただいたJCDNの「踊りに行くぜ!!」というプロジェクトについて紹介をしております。
 それから,18ページの方策7のところでございますが,「地域における文化芸術活動を支える人材の育成・登用を行う」というところで,アートマネジメントについて触れております。アートマネジメントにつきましても二面ございまして,1つは,第2段落にございますが,文化施設や文化芸術団体の運営に当たって必要とされる能力,それからもう1つは第3段落にございますように,もう少し広く,住民や文化芸術団体,そして行政等との連携を図っていく能力というものがあるということです。それに応じた現職者向けの実践的なアートマネジメントの研修の事例として,「芸団恊セミナーにおけるマネジメント関連講座」について触れております。
 なお,18ページの一番下の段落につきましては,地域文化を担当する行政部局の人事の問題について触れております。これはなかなか難しい問題でございますが,地方公共団体においては文化芸術担当者の異動に関して,その専門性と経験を十分考慮して,専門的知識,人脈や事業ノウハウの継承等が円滑になされるよう配慮すべきであるというような表現にさせていただいております。
 19ページをお開きいただきますと,同じ人材の育成・登用の(その2)の例でございまして,今度はもう少し広い意味でのアートマネジメントになりますけれども,アートマネジメントに関するインターンシップを実施している大学の事例ということで,「東京芸術大学の大学院「応用音楽学」のインターンシップ」の事例を取り上げております。
 それから,同じ人材の育成・登用ということで,20ページでございますが,「文化財とまちづくりをつなぐ専門家の育成・登用の事例」ということで,兵庫県の「ヘリテージマネージャー制度」という地域の建築士などの人材をこういった文化遺産の保存活用に役立てている事例として取り上げさせていただいております。
 それから,21ページの方に移っていただきますと,方策の8としまして,「地域住民がボランティアとして参加しやすい仕組みをつくる」ということとして,まず,事例の11でございますが,これはヒアリングをさせていただきました滋賀県の「能登川町立博物館」の例ということで,住民を「地域学芸員」として活用し,文化芸術活動に参加してもらっている例を挙げております。
 それから,22ページの方には,地域住民が文化ボランティアとして参加しやすい仕組みの(その2)として,文化ボランティアとして活動するインセンティブを付与している事例があります。これは岐阜県可児市の文化芸術振興財団が実施しております地域通貨「ala(アーラ)」ということで,地域通貨を活用しながらボランティアの方に報いていこうという取り組みを取り上げております。
 それから,23ページに移っていただきますと,方策の9でございますが,「大学等の高等教育機関と連携し,大学の地域貢献を促す」ということでございまして,事例といたしましては,東京藝術大学の「取手アートプロジェクト」について,これは市民と大学,行政の共同プロジェクトとして実施されているものを紹介させていただいております。
 それから,24ページに移っていただきますと,方策の10でございますが,これは公立文化施設の運営の問題に触れたものでございます。まず,第1の事例といたしましては,事例14ということで,「文化施設の運営をNPO法人に委託している事例」として「ダンスボックス」のケース,公設民営のケースについてここでは取り上げさせていただいております。
 それから,25ページに移っていただきますと,同じ公立文化施設の運営の問題でございますが,ここでは指定管理者制度の問題について触れておりまして,指定管理者制度を活用した事例として,北海道富良野市のNPO法人「ふらの演劇工房」の事例を取り上げております。
 なお,指定管理者制度の運用ということにつきましては,このコラムの下,4行ほどに文化施設等に指定管理者制度を適用する際には,文化施設が本来有する使命や目的,地域における役割を踏まえ,その文化的側面について十分に配慮することが必要であるという一文を加えております。
 それから,26ページをお開きいただきますと,「文化芸術活動を支える拠点・資源をいかに活性化するか」ということでございますが,方策11としまして,「文化施設のネットワーク化を図る」ということで,地方の文化施設が県境を越えて事業連携を図っている事例ということで,九州で行われております「C−WAVE(シーウエーブ)」というものを紹介しております。これは大分,宮崎,両県から始まりまして,今現在は鹿児島,福岡の方も巻き込んでこういった文化会館が共同プロジェクトを進めている事例でございます。
 それから,27ページをお開きいただきますと,拠点という意味で,文化財を活用して文化芸術の拠点をつくっていくという試みといたしまして,「よこはま洋館付き住宅を考える会」の取り組みをここで紹介させていただいております。
 それから,28ページをお開きいただきますと,これは「学校や社会教育施設など既存の遊休施設を有効活用する」ということで,廃校を転用したケースといたしまして,「京都芸術センター」の事例をここで取り上げております。
 それから,29ページをお開きいただきますと,課題の5でございますが,子ども・青少年の文化芸術活動への支援の問題でございます。
 この課題の中では,民間と行政・学校の連携・協力によりまして子どもたちの文化芸術活動が一層促進され,子どもの体験活動が深まったり地域文化が継承されている事例を取り上げるということにしております。
 30ページをお開きいただきますと,学校との連携により子ども・青少年の文化芸術体験・表現教育を推進するということで,博物館との連携のケースといたしまして,大阪府立「近つ飛鳥(ちかつあすか)博物館」の例を挙げております。
 それから,31ページのところでございますが,これは企業との連携によりまして,子ども・青少年の文化芸術体験・表現教育を推進するということで,TOA株式会社によります中学生職場体験「トライやるウィーク」に対する協力。「トライやるウィーク」自体は,兵庫県教育委員会が実施しているものでございますけれども,それに対してTOAという音響機器メーカーがさまざまな自社のノウハウや施設といったものを用いて活動をしていただいているということでございます。
 それから,32ページをお開きいただきますと,これは教員へのサポートの要望というところが強くなってくるわけでございますけれども,学校と美術館の連携をNPO法人がコーディネートして,子どもたちに美術により親しむ機会を提供している事例ということで,NPO「子どもの美術教育をサポートする会」の取り組みを掲げております。また,そのコラムの下に熊本県立美術館と「わーくしょっぷの会」の連携についてもあわせて紹介をしているところでございます。
 それから,33ページをお開きいただきますと,学校以外での子ども・青少年の文化芸術活動を支える仕組みということで,高齢者と子どもを結びつける取り組みの事例ということでございますが,兵庫県の小野市立好古館「わたしたちのまち・阿形(あがた)」展という,これは一種のプロジェクトでございますけれども,それを通じて高齢者の方と青少年との交流が実現されたケースでございます。
 それから,34ページをお開きいただきますと,課題の6として,文化芸術活動に関する情報収集・発信の問題でございます。インターネットを活用した情報発信の事例ということで,「広島県立美術館友の会ボランティア」による美術館ホームページの運営の事例を掲げております。
 なお,この情報収集・発信につきましては,私どもの方でも提言案作成チームの先生方のご協力も得ながらいろいろ調査してみたのですが,なかなかいい事例,特色のある事例というのが今のところ余り見つけられておりません。
 それから,35ページをお開きいただきたいと思いますが,課題7で,資金的援助の問題でございます。方策19は,公的支援の活用を図るということで,これは「地域再生」のプログラムを利用して地域文化を振興した事例ということで,小松市の「町人文化のまち再生構想」について紹介しております。
 それから,36ページは,民間資金の活用を図るということでございますけれども,まず最初に,地元出身者に対して長期にわたる企業メセナ活動を行っている事例といたしまして,NPO法人「山梨メセナ協会」の取り組みを紹介しております。
 また,37ページをお開きいただきますと,同じ民間資金の活用でございますけれども,社員の自己啓発や文化芸術活動を支援する企業の事例ということで,「株式会社フェリシモ」,こちらは「神戸学校」というものを実施しておりますけれども,その事例を取り上げております。
 それから,38ページをお開きいただきますと,個人による支援の活用を図るということでございます。
 前回,この部会の中で,市川市の事例をご紹介いただいたところでございますが,市の方で条例制定作業が現在進行中というようなこともございまして,事例として取り上げるのはまだ早いかということで,別の事例を探しましたところ,愛知県春日井市の「市民メセナ基金条例」というものがございました。これは個人からの寄付が参りますと,その分を市が上乗せして基金をつくっていると,こういった特色のある取り組みをしておりますので紹介させていただいております。
 以上が第3章の概要でございますが,最後に第4章でございます。これが提言というような形につながっていくものでございますが,最初の1の地域文化を担う関係者の役割の部分は,平成14年の「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の中に,民間,地方公共団体,国について役割をそれぞれ記述してございますけれども,それを抜粋したものでございます。従いまして,2以下の部分が本日この部会においてご議論いただきたいと思っているところでございます。ここの部分はまだ文章化をしておりませんで,どちらかと申しますと項目を並べてあるというようなことでございます。本日の議論を踏まえまして,改めて文章化をしたいと思っております。
 2の,今後関係者に期待される具体的役割と方策というところでございますけれども,第3章において地域文化の振興における特色ある事例を取り上げたが,これらは先進的な事例であり,全国的にまだ一部で行われているにすぎない。地域文化の振興は,我が国が今後一層取り組まなければならない課題であり,関係者には以下に掲げたような役割を果たしつつ,地域がそれぞれの特色を生かして地域文化を振興することが期待されるというように書いてございます。まず地域住民ということで,これは地域住民が主体であるということをまず書きながら文化芸術活動に積極的に参加すること,それだけではなく,政策形成にも参加するということが望ましいのではないかということを書いています。
 それから,文化芸術団体等に期待する役割でございますけれども,まず文化芸術団体の自主性・創造性は十分に尊重しつつも,他の文化芸術団体や教育,福祉,観光に関する団体・機関などとも積極的な交流や連携の必要性を書いております。
 それから,2つ目のポツ(・)は,住民に対する的確な情報発信の問題を取り上げております。
 40ページに移っていただきまして,同じ文化芸術団体の役割でございますが,学校や社会教育施設等と連携し,子どもの文化体験の場を提供すること,それから,アートマネジメントや現場研修等,研修機会確保の問題を掲げております。
 それから,大学等の高等教育機関の問題でございますけれども,ここは文化施設や文化芸術団体と連携しながら,地方文化の担い手や文化芸術団体と住民とを結びつける人材(コーディネーター)の育成を行うこと,さらに,現職者に対する研修等の機会を提供すること,そして,大学の専門知識や人材,設備等を生かして地域文化の振興に組織的に参加すること,そして,大学や教職員等の評価といったことについても,そういうものを活用すべきではないかということを述べております。
 それから,民間企業についてですが,これは地域の文化芸術活動に対する支援ということについてまず述べまして,その際,みずからの事業ノウハウや人材等の経営資源を生かすという視点を挙げております。
 また,フェリシモの事例などにございましたように,社員が文化芸術活動に参加しやすくする方策ということについてもここで挙げております。
 それから,地方公共団体でございますけれども,ここは幾つかございますが,まず最初は,文化振興計画ですとか文化振興条例とか,そういった策定の問題を課題の最初のところで取り上げましたけれども,長期的な視野で地域文化振興のあり方を明らかにすること,そして「文化力」を文化以外の分野にも活用するという意味では,行政の縦割りを越えて連携・協力を図ること,そして,地域においてさまざまな主体がございますけれども,そういった主体との調整役の役割といったものが期待されること。そして,相談機能の充実というものも必要ではないかということ。加えて,文化ボランティアの活用のための環境ですとか,あるいは個人や企業の寄付を促進する仕組みの整備といった問題を取り上げております。
 それから,下から2つ目のポツ(・)でございますが,第3章の一部でも触れましたけれども,指定管理者制度の活用についての考え方を示しております。
 最後のところは,文化振興財団,いわゆる地方公共団体の外郭団体と言われるものにつきましても,従来以上に積極的な役割を期待するという形にしております。
 41ページをお開きいただきますと,今度は国の方でございますけれども,まず文化振興条例や地域文化振興計画を策定する地方公共団体に対する支援の問題,それから,全国的な情報収集・発信の問題,そして,文化芸術による創造のまち支援事業など「地域再生」と連携した施策の充実の問題,それから,文化施設の活性化のための支援の問題,そして,大学の役割を期待するということがあったわけですが,ここでは芸術系大学や文化政策学部等を有する大学等との連携・協力の場の提供などを通じて,高等教育機関に対する支援を行うことについて述べております。それから,その次のポツ(・)は,国民文化祭などの全国的規模で地域の文化芸術活動を発信する場の提供を行うことを述べております。それから,その下は少し包括的になりますが,子どもや青少年の文化芸術体験活動の推進,学校教育における文化芸術活動に対する支援,さらにその下のポツ(・)は,文化財の保存,活用に対する支援,それから,その下には顕彰の問題,それから,一番最後には税制上の優遇措置の問題,そういったものを事項として挙げさせていただいております。
 それから,ここまでずっと主体別に書き分けて参ったわけですが,その中でもお互いに絡み合っていく部分がございますので,3のところでは,「連携・協力により解決すべき課題と方策」という表題で,特にこういった事項につきましては,連携・協力が必要であろうということをもう一度ここで強調しております。
 まず,地域の特色ある文化資源の発見,そして人材の育成,子ども・青少年の文化芸術活動への支援,そして文化芸術活動に対する情報発信,こういったところが関係者の連携と協力によって,より強力に進めるべきことであろうということで整理をしております。
 42ページは「おわりに」ということでございまして,ここで終わるという形になります。
 以上でございます。

高階部会長 ありがとうございました。
 大変大部な報告書の原案を作成いただいて,作成チームの方,ありがとうございました。
 では,ただいまのご説明の質問も含めまして,この資料2に基づきこれから議論をお願いいたしたいと思います。
 特に最後の第4章,まだ文章化もされていないところでいろいろ項目があがっておりますが,その4章にこういうことを入れたいとか,この方面はもっと強調したいとか等々,今後の提言案を実際に作成する上で,ぜひこういう点をというようなポイントについてご意見をまずいただきたいと思います。もちろん第1章から第3章までに関することも出てきて結構でございますが,まず第4章中心で,あと1章,2章,3章について後ほど議論に移りたいというふうに考えております。それでは,第4章の「地域文化の活性化に向けて」のところ,これは具体的な提案が含まれておりますが,こういうことをということをぜひ,それぞれどなたからでも結構でございます。ご発言いただきたいと思います。
 いかかでございましょうか。
 山野委員。

山野委員 文化庁の行っている事業の中で,地域文化活性化に非常に働いていると思われるものに,拠点形成事業がございます。そういうものは外国の場合ですと,その拠点となっている劇場とか何とかというのは王様がうんと昔につくり上げて,そこへ自然にバレエ団がいたりオーケストラがいたり,歌劇団が入っていたりということで,自然にでき上がっているわけです。ところが,日本はそういう歴史を持たないものですから,それを人工的に拠点としてつくり上げていくという必要性があると思います。
 そのためには,地域にある稼働率52%のオペラハウスをもう少し使う。つまり拠点として使っていく。そのためには,バレエ団や歌劇団,あるいはオーケストラというものとのフランチャイズ契約のようなものをつくりまして,地域に根をおろすという形をとっていかなくてはならないと思います。そういう点を,第4章のどこかに入れてもらったらいいかという気がいたします。

高階部会長 ここでも事業が話題になりましたね,具体的に。これは一方,地方公共団体への要望でもあり,あるいはまた民間のそれぞれの団体へということでもあり。

山野委員 事例としては,新潟の「リュートピア」というところが小さい舞踊団をこしらえているのですね。それは金森穣という若い芸術監督を立てまして,数名のダンサーをオーディションで採用して舞踊団をつくる。とても新しいいい作品をつくり出すという作業をしています。
 それからもう一つは,江東区の「ティアラこうとう」という劇場がございますが,そこは「東京シティバレエ団」と「東京シティフィルハーモニーオーケストラ」のフランチャイズになっています。フランチャイズ契約を結んで,劇場で練習ができるというようなこともありますので,根をおろす,そういう事例がないわけじゃないということです。

高階部会長 なるほど。そういう事例も参考にしながら,箱物はかなり整備されてきたというご報告がございました。そこへおっしゃるとおり,向こうだと座つきのバレエ団もオペラ,オーケストラもある。日本はなかなかそれがないということのようですので,それをどういうふうに,どこに入れていくか。これは,両方で取り組むべき問題です。地方の公共団体,つまり箱物を管理している方もそれをするし,逆に劇団などもそういうことを考えておられるところがあれば,積極的にしばらくそこで根を生やしていくということを考えていただくということですね。
 その件に関して,何かございますか。
 逆に,劇団などの方ですとあちこち回って歩くというのが主体なのでしょうか。米屋委員,いかがですか,どこかで根を生やすような考えというのは。

米屋委員 17ページのJCDNの事例が取り上げられていますが,この前後に既に地域で芸術監督ないしは芸術上の責任者を置いて,その地域にふさわしいプログラムを提供しているという事例が増えているというような言及と,今,山野委員がおっしゃいましたような「リュートピア」のことですとか,そういった関連のことを少し入れておいていただきたいと思います。巡回型が舞踊においては最近の動きですけれども,演劇はもともと巡回から始まっていますので,むしろ演劇としてはフランチャイズであったり,レジデント・カンパニーとして根をおろす方を推進していただきたいと思っております。

高階部会長 それは,どこかで提言に入れておいた方がいいですね。
 ほかにいかがでございましょうか。地方での特に地域文化の活性化の問題ですが。
 どうぞ,神崎委員。

神崎委員 地方の芸術文化活動というのには,一つに創作芸術があります。これは中央からそれなりの支援がないと,なかなか地方で独自に発生というのは難しい。もう一つ,伝統芸能のようなもの,あるいは民間芸能のようなものがあります。こちらの方にも少し国から手を差しのべないと,もう地方の「文化力」というのが,本来,それは地方が維持して,地方が何らかの手を打ってきたのですが,もうその力がなくなりかけている地方が多いと思います。それをどうするかということで,可能性があれば追求していくべきではないでしょうか。
 そこで私は,既に取り上げていただいているように,アートマネジメントあるいはコーディネーターの育成のために大学などの教育機関との連携することも大事ですし,それを大変高く評価いたしますけれども,まず演劇者を通して地方のそういう民間芸能あるいは芸術を学問的に整理してもらう,あるいは研究者を通して演劇を,あるいは芸能を評価するというようなことが,それを維持していくために有効なのではないかと思っています。ここへ文言を入れるか入れないかはわかりませんが,将来的にそういう地方の大学への地方文化芸術学科のようなものの設置は可能なのでしょうか。もちろん今でも沖縄県立芸術大学などで少しはありますけれども,例えば韓国で,私の記憶に間違いがなければ,42の大学にそれに類似する学科の設置がありまして,芸術から,それから考古学から,それについて演技を通して演技者と研究者が一緒になるような形での進み方があると思います。それは国の事情が違いますから一律には言えませんが,そういう可能性が将来もしあれば,どこかへ希望を取り入れていただければと思います。

高階部会長 そうですね,関係者に対する期待,役割,こういうことをやってほしいという具体的役割,方策,40ページの大学等の高等教育機関で,現在,大学にいろいろ文化芸術団体と連携してほしいとか,研修等々があります。そして,改めて大学でそういう学科なり部門をつくってほしいということ。これは特に伝統的なもの,研究の要素が必要でしょうから,それと実践舞台とが協働できるようなことを期待できる方策,特に大学などに要望したいということは,できれば入れていきたいと思いますね。歴史学科などではやっているかもしれないのですが,そうした研究を地域文化の活性化に結びつけるためには,実際にその辺の連携がうまくできる方策を考えてほしいということだと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 地方でご活躍の,川本委員,いかがでございますか。

川本委員 地域がいろいろなレベルで連携することが大事であるということを繰り返しうたっている部分はよいと私は思いました。実はもっと言いますと,こうした提言というのはどうしてもやっぱり理念的なところに重きを置きますので,我々のように実際に仕事をしている身としては,このもう一歩先の具体的なこと,同じ成功事例にしても,こうやったら文化ボランティアのグループができ上がってきたとか,何かそういう物事の手がかりのようなものが具体的に書かれていると有り難いと思います。ただ,それは通常の提言の仕事ではないかと思います。おそらく,文化審議会の仕事でもないし,長官官房政策課の仕事でもないだろうとは思いますが,何かそういうアドバイザーというか,コーディネーター的なものを生み出す政策があるとありがたいと思います。

高階部会長 そうですね。

川本委員 この地域ではこういうことから始めた,そうしたら成功したというような成功事例ですね,もっと具体的な。例えば地域通貨を発行した地域がありましたけれども,誰がそういうことを発想して,どういう形で出したのかとかいうことがわかると,各地域に参考になるのではないかと思います。

高階部会長 ここで随分いろいろ多くの事例を集めていただいて,これは事例集として私は大変役に立つと思います。そして,これをもっと発展させて総合的に行っていくといいと思います。例えば,国で参照事例を全部データベース化するとかいうようなことをしていただく。そうすると,何かやりたいけどどうやっていいかわからないという人が,あるいはこういうことをやりたいけどどうすればいいかわからないという団体なんかにも参考になるということですね。また,それぞれに地方公共団体がやるのか国がやるのかは別にしても,何か調べたいというときにすぐわかる窓口をつくるとか,相談する相手がすぐ見つかる仕組みをつくるとかいうことも考えられます。
 どうぞ,富澤委員。

富澤委員 文化の持つ力というか魅力というか,そういうものがいろいろな面に大きな影響をもたらすわけですけれども,この中にも書いてあるのですが,観光資源としての文化ですね。これは今,政府が進めている観光立国の大きな提言が近く出るということですけれども,その中でも日本が観光立国として外国人にたくさん来てもらう,あるいは国内の観光客をもっと振興するという過程の中で,文化の力というのはすごく大きいのですね。もちろん歴史的な建造物,神社,仏閣ですとか,あるいは自然とか,あるいは伝統芸能,お祭り,こういうものなのですけれども,それが魅力となって多くの観光客が訪れる。あるいは訪れるだけではなくてリピーターとなって何回も訪れて,住みたくなるような地域と思ってもらえる。そのもとはやはり文化だろうと思うので,せっかくその意義が強調されているわけですし,提言として観光との連携というものの項目を設けて提言していいのではないかというわけです。
 それで,先ほど来出ている事例集などもつくって,民間の特に旅行業者ですね,そういう人たちに知らせるということはひとつの大きなPRになるし,また,案外知らないのだろうと思うのです。そういうことを知ってもらうことによって,また多くの人たちがその地域を訪れると,それでその地域の活性化につながる。そういうことになっていくと思うので,観光との連携のようなものを強調していただければいいのではかと思います。

高階部会長 旅行会社などがいろいろツアーを組むときのセールスポイントが,お料理だったりお土産だったりするのを,文化があればもっといいということですね。それが意外に通じていないということがあるかもしれません。うまくそれを取り入れる方策は必要だと思います。
 ほかにいかがでございますか。
 どうぞ,根木委員。

根木委員 この案の40ページの,大学等の高等教育機関のこれに関連したことで伺いますが,ここでは地域文化の担い手や文化芸術団体と住民を結びつける人材,つまりコーディネーターの育成を行うこと,それからアートマネジメント等の現職者に対する研修等の機会の提供ということで,一応両者ひっくるめた格好で書いているわけです。けれども,これは私の個人的な理解ですが,アートマネジメントの機能の中に広い意味と狭い意味との,2つがあるのではなかろうかと思うのです。1つは,上の方に書いているような文化芸術と社会をつなぐという機能が1つ,これは広義の意味であろうかと思います。狭い意味では,文化施設あるいは文化芸術団体の管理運営といいますか,そのマネジメントという狭い意味と2つあろうかと思います。
 広い意味に関しては,上の方のことで一応対象に置いていると思うのですが,狭い方ですね,狭義のアートマネジメントの担当者に関しては,2つ目のポチ(・)ですと,現職者に対する研修等の機会の提供だけになっておりますので,アートマネジメント担当者の養成及びその現職者に対する研修といった両者ひっくるめた方がベターではなかろうかという感じがしております。それと,その場合の狭義のアートマネジメントに関して,先ほど神崎委員がおっしゃった伝統芸能等の保存継承の機能ですが,もちろんそれは広義の意味でもつながってはくるのですけれども,これも狭義のアートマネジメント機能の中に含めるということであれば,先ほど神崎委員のおっしゃったことも大学の役割として位置づけられるのではなかろうかと思うのですが,その点はいかがでございましょうか。

高階部会長 神崎委員。先ほどお話の外国の例は,学科にやはりあるセクションをつくるということですか,人材養成だけではなくて。

神崎委員 と申しますか,研究者と実技者が結びつく,あるいは重なるというようなところでの大学の教育機能ということです。

高階部会長 それは,今のアートマネジメントに携わる人の養成のところにもそういう趣旨を入れて,あるいはそれは機関をつくるかインターン制とするのか,つまり現場との交流が必要だということですね。それは考えていただいて入れていく,明示をした方がいいと思います。
 それから,いかがでしょうか。
 どうぞ,山野委員。

山野委員 外国,特にアメリカなどの場合,州立大学がみな劇場を持っていまして,そこが公演を地元で行える拠点になっています。日本では,劇場を持っている大学というのは極めてまれでございまして,自分のところでいろいろ勉強をしても,それをすぐやってみようというときに場所がないわけです。ですから,大学のそういう授業を行ってできた成果を,地方公共団体の劇場と結びつけて発表できるようにするということも必要なのではないかという気がいたします。

高階部会長 そうですね,本当はこのことをカリキュラムにしてもいいくらいですね。確かに,劇場等と定期的に成果が発表できるような何か取り決めがあれば,なおいいかと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ,都筑委員。

都筑委員 事例集をずっと拝見しますと,対象は文化芸術団体ということになっているようです。この技術を持つ人はこの人で最後だというような,伝統工芸に関する事例というのはなかったのでしょうか。

高階部会長 個人的にですか,技術の継承者で。

都筑委員 今回は割とステージ関係に集中しているような気がするのですが,技術保持者がどんどん減っているという工芸部門の事例というのはなかったのかという質問です。

高階部会長 なるほど。地域でそれが非常に重要だという,それは先ほどの神崎委員のお話にもつながりますね。それもぜひ何かの形で。
 何かございましたか,舞台芸術が確かにメインだったかと思いますが。

吉田政策課長 伝統工芸ということで,いわゆる人間国宝になっていらっしゃるような国宝レベルまで行きますと別ですが,重要無形文化財などになっているものの中にはいわゆる保存団体ということで,染色ですとか,あるいは陶芸ですとか,地域で無形文化財を保存するために非常に重要な活動をされている団体があるということは当然私どもも知っております。そういうものを活用して地域文化の振興を図るという意味で特色ある事例を,いろいろと探してみたのですが,なかなかいい事例がなかったものですから,残念ながらこれはこの中では取り上げておりません。

高階部会長 都筑委員,何か具体的にございますでしょうか,こういうのはぜひ取り上げてほしいという。

都筑委員 具体的な名前は挙げられないのですが,機械による計測を遙かに超えた精度で手作りによる,ものづくりをする方がいらっしゃる。そして,その方が日本で最後の方だというようなことを,ドキュメンタリーで拝見するようなことがあります。

高階部会長 これは神崎委員が言われたように,研究の対象としてまずそういう文化としての技術を見ていくということを押さえておいて,その中でそういう方々の技術を見い出し,かつどのように保存していくのか,継承していくのかということを考えていくべきですね。

都筑委員 その意味で,自分の地域のそういう優れた技術保持者を調べるというのも,一つの動きとしてあるべきではないかと思ったものですから。

高階部会長 それぞれ地方公共団体などにとっては,地域資源の発掘ということに当たると思います。そういう名称があってもいいかもしれませんね。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ,吉本委員。

吉本委員 第4章のところに,これはどういう形で入れたらいいのか,明確には私もわからないのですが,この中でアートマネジメントの専門家を育成するとか,それからコーディネーターを育成するということが再三うたわれていますが,その人たちがきちんと仕事になる環境をつくるということが重要だと思うわけです。だから,地方自治体もそういう人達をきちんと雇用すべきというふうに書くべきなのかどうか,その辺はわからないのですが。アートマネジメントをやろうと思うすごく情熱のある若い人間がいて,例えば企業から支援を得たり,あるいは公的な助成を得たりして何かの事業をやっても,自分の人件費は一切出ないというのが今の状況だと思います。ですから,そういう人たちがきちんと仕事になる環境をつくるというようなことをどこかに入れられるといいかと思うのです。
 ここには芸術団体とかアーティストが,例えば学校などに行ったときの話も出ているのですが,そういう場合も学校側に全然予算がなくて,暗黙のうちにボランティアでやってもらえることを期待しているようなことが間々あるというように聞きます。ですから,そうしたことがきちんと仕事になるというようなことを,何らかの形でここに盛り込めないだろうかと思います。ひょっとしたらこの提言の後で具体的な政策として,今の事業助成という枠組みだけではなく,アートマネジメントの仕事に対しても,きちんとある種の報酬が出るような仕組みというのができるといいかと思います。

高階部会長 これはどういう形がいいのか,外国の事例なども私はよくわかりません。けれども,それは,ちょうど今40ページ,41ページ,地方公共団体や国もそれに含めるのですが,今回は特に地域文化の活性化ですけれども,期待される具体的役割,方策で,事例集の中でも行政の担当者が短期間に変わっては困るというような人事の問題が出てきました。確かに,十分によく知っている人がある程度そこで実際に活躍してもらえるような場をつくるという,これは行政に対する要望で,それを私は地方公共団体等のところに要望としてはっきり入れていいような気がいたします。システムとしては難しいかもしれませんが,そういうことが必要だということ。そして,今の吉本委員のお話のような場合,ある年限で契約するとか,どういうのが適当なのかわかりませんが,アートマネジメントに携わる人の就業をある期間保障するというようなことですね。

吉本委員 その事例で,15ページに「STスポット横浜」の例が出ているのですが,この神奈川県の「かながわボランタリー活動推進基金21」というのは,これは「STスポット横浜」の人件費が認められる制度でして,この事業のために人を雇っているのです。それも含めて神奈川のボランタリー基金で賄われるようになっていますので。ただ,こういう制度というのは本当に少ないと思うのです。ですから,現在の助成金が人件費などにも使えるというようにするのがいいのかどうかわかりませんが,いずれにしてもそういうことはどこかで考えるべきだというようなことが第4章の中に含まれれば,ということです。

高階部会長 それは,そういうことで知恵を絞ってほしいということを,どこかに入れて提言したらよろしいと思います。
 続いて,まず米屋委員,それから山野委員。

米屋委員 今のことに関連しますが,多分人件費を対象に含めるといったときに,人件費イコール事務費だというような今までの区分けで受け取られることが,根強く起こってくると思います。人件費ではあるのだけれど,そこに専門性があるのだということを,どのように認めていくのかということが重要です。これは40ページのところへどう盛り込んでいいのか,私もどのような表現が適当なのかはまだわかりません。恐らくこれは国の役割になっていくかと思いますが,それぞれの地域地域で,もちろん自由な選択を促しながら専門性の担保というものをどうしたらいいのかということです。

高階部会長 これは非常に大きい問題ですね。

米屋委員 地域の方にこのようなことをお聞きすることがあります。専門性があるのだと言うと,ではそれを紙に書いて簡潔に説明をしてほしいと言われる。そこで,それぞれに固有の体験を踏まえてのことなので,そう一般化して書けないと答える。では,何でもかんでも経験ということで,専門性にしてしまえるのか,というようなことになる。そんなところを,堂々巡りしているということになっている。その辺はやはり解決しなくてはいけないのかと思います。
 もう一つ,例えば10ページの課題3の人材をいかに育成し確保するかという,この「確保する」という言葉にずっと引っかかっておりまして,これの主語は一体誰なのだろうかと。私の感覚では,適材適所の人材配置をどのように進めるかということだと思うのです。各地域の中には今もたいへん優れた方で,為すべきポジションでお仕事ができずに苦労していらっしゃる方がある。そういう人たちを,より働きやすくするということを考えなくてはならない。また一方では,あまり適任とは言い難い方がそのポストについていらっしゃるようなこともある。「確保する」というのは,そういうゆがみをどう調整するかという,システムの再構築の問題かと思います。

高階部会長 文言の問題は,確かにあります。「確保」というと,やはりお役所言葉なのかもしれません。
 山野委員,いかがですか。

山野委員 吉本委員のお話を聞いておりまして,まず文化庁の助成金の対象に,アートマネジメントに類するところを入れてもらいたいというのは同感ですね。やはり国で行っていることは,他に波及すると思います。ところが文化庁がまずその部分のお金を対象外ということにしているものですから,広まらない。その辺がまず基本になるのではないでしょうか。だからこの提言とは関係ないことなのですけれども,そういうことをやってくれるといいなという感想でございます。

高階部会長 関係ないわけではなくて,今の山野委員の言われるような形で,例えば専門性を重視して,人材養成なり育成なり,確保か適材の配置を考えてほしい,あるいはその人材に対する保障を考えてほしい,というようなことは何かの形で入れられると思いますが。
 他にいかがでしょうか。
 熊倉委員,いかがでございますか,いろいろ実際に提言案作成をご担当していただいて。

熊倉委員 携わらせていただきましたので,特に何か指摘をすることはありません。ちょうど今回取り上げていただいた「取手アートプロジェクト」が先週終わりましたので,大学人として感じるところを申します。このプロジェクトのように大学が拠点を置いている地域の市民の方々と共同事業を行うということ。これは言葉としてはいいのですが,やはりかなり気を使いますし,いろいろと大変な思いをして拠点形成事業ということを行ってきているわけです。けれども,せっかくこのように拠点形成を文化庁が行ってきたのが,それとは裏腹に指定管理者制度を使って,自治体の一存による指定管理者で,はい,さようならというふうに,これまでの取り組みの積み上げが台無しになるような,あるいははしごを外されてしまうような可能性があります。それはぜひこの提言の中に,せっかくあるハードウェアをただの箱としないように拠点を形成すべしと,きちんと入れていくのがよいのではないでしょうか。
 その1つとして,確かに先ほど山野委員がおっしゃったように,実際にその実演者たちをある文化ホールで育てる,あるいは拠点の一部としてソフトを持っていくということもあり得ると思います。ただ,オーケストラのフランチャイズで言うと,同じ「リュートピア」が「東フィル」とフランチャイズをしていて,箱の中を活気づけるという部分に関してはいいのですが,なかなかその箱の外までは動いてくれない,というようなこともあったりします。従って,フランチャイズはもっと増やした方がいいとは思いますが,でもそれでお金がものすごくかかって,なおかつそれだけの地域の「文化力」につなげていくという手間というものを誰が掛けていくのかというところで,やはりつなぎの部分の必要性があるのだと思います。その意味で,いたずらにフランチャイズだけ増やして,というようなことには懸念があります。リュートピアの金森穣氏の件も私は心配しておりまして,確か段階的に予算が削られていく,つまり少しずつ自分で稼ぎなさいよという方針が当初から決められているわけですが,地域が,新潟市民がどれだけリュートピアやダンスカンパニーを持っていることを,将来的に誇りに思ってくれたり,支えていくことに合意してくれたりするのだろうかと。また,その事に対して,リュートピアの方,あるいはカンパニーの方は今どういうビジョンを持っているのだろうかというようなところについて。詳しいことは知らないのですが,心配をしています。
 各地にある大学は,本当に神崎委員がおっしゃるように,人材と専門性の宝庫だと思います。けれども,これを地域につなげていく,開いていくというのは,金銭面の問題もありますが,やはり非常に手間暇がかかるものです。従って,どんなことに取り組もうとその地域地域,大学,個々それぞれの自由だと思いますし,特にこれをすべしという必要もないとは思いますが,やはりそこに関わってのマネジメント,というと言葉はいいのですけれども,即ち手間の部分をどうするのか。一般に大学の先生は,それに向いているとは言い難いという事実があるのではないかと思います。

高階部会長 取手の場合に,大学と,それから行政も入っているわけで,そこに市民のボランティアも含めて,全体のコーディネーションをするような人がいるのですか。

熊倉委員 いいえ,おりません。

高階部会長 ある程度全部わかっていて,全体をまとめていくような役割の人がいることが求められるわけですが,それにあたるのに大学の先生はなかなか難しいかもしれません。そうかと言って,やはり市民だけで進めるのではなくて,行政の中からそういう力のある人に出てもらう。あるいはそのために改めて人を雇うのでもいいわけです。先ほど言ったように,ある程度職業としての保障をしながら,わかっている人に活躍していただきたいものです。
 今,活動の現場にはいろいろな問題があるとおっしゃっていただきましたが,それにはもちろん極めて実際的・現実的な問題もあるでしょうし,また,それぞれいろいろ考えや理念の違いという問題もあるのでしょうね。特に,後者のような場合のコーディネーションの問題というのは,かなり大きな意味を持つのであろうと思います。

熊倉委員 そうですね。やはり日常的に,例えばせっかくマスコミが注目してくださっても,ボランティアベースだと毎日オフィスを開けていられるとは限らないなどということも起こって参ります。活動の拠点を守る人というのは,取手アートプロジェクトの場合,今はボランティアベースで,3人の若者によって行われています。幸いなことに文部科学省の現代的教育ニーズ支援の採択を受けましたので,1人週に2日間,会期中は月曜〜日曜を通して7日間の活動に対して,年間1人当たり50万円ぐらいはお支払いできることになってほっとしたのですが,やはりスタッフ自身はアルバイトとの両立が大変で,無理をしたスタッフが今1人入院しておるような状況もあります。

高階部会長 地域でもって行政がそれを考えるか,場合によっては企業がある程度の期間保障してくれるとか何かの形がないと,それはボランティアベースだけでは無理だと思いますね。
 ほかにいかがでございましょうか。
 どうぞ,根木委員。

根木委員 先ほど熊倉委員がおっしゃったことに関係してくる,フランチャイズの話なのですが,地元の芸術文化団体と地元のホールとのフランチャイズということは,これはまさに地域文化の主体的な振興ということにつながるのだろうと思います。けれども,現在,一般的に行われていますのは,中央にある団体が地方に,例えば「東京交響楽団」が「リュートピア」に行って数回の定期公演をする。それに対して芸術拠点形成か何かのアーツプランの方で支援しているという,こういう構造です。
 その場合に,地域にとってみれば確かに鑑賞の機会を得るということで,大いに裨益するところはあるのだろうと思います。一方,別の観点からしますと,創造活動の活性化という点では,地域を離れた形での,言うなれば文化の頂点を伸ばす方向での支援ということで国が援助を行っているという,そういうとらえ方ができるだろうと思います。それともう一つは,例えばオペラをあちこちのしかるべき施設を持っている劇場ホールに巡回をさせるという場合も,地域にとってみれば鑑賞の機会を得るということでしょうが,ある意味では地方のそういった水準の高いものを,国の政策として各地に普及させるるという側面が強いわけですね。
 そうした場合に,地域文化振興という範疇でとらえるのか,それとも質の高い創造活動のための支援という形態ととらえるか,とらえ方の違いがあろうかとは思うのですが,そこをどう整理するかによって随分違ってくるのではなかろうかと思います。
 したがって,フランチャイズに関してもそうした両面があるので,どういうふうに中に組み込むかということで,でき得ればご議論いただいた方がよろしいのではないのかという気がいたします。

高階部会長 それは非常に大きな問題です。地域文化に関わって,私は今,根木委員がおっしゃったような方向性というものが,いくつかあると思います。第1の方向として基本的にまず国が考えているのは,地域へ,地方へ文化を持っていくというもの,即ち普及だと思うのです。外国から日本に入ってきたものの流れも,中央か地方へです。もう一つは,伝統的にある地方の文化ですね,ここにこのままあると,失われてしまうかもしれない地方の文化をどうするか,そういう観点から地域の文化をどうやって活性化させるかということ。これが第2の方向。第3は,地域で創っていくという,ここで新しく文化を創造していくという問題。その3つぐらいが,あるような気がします。今の根木委員のお話は,地方へというのは国がいろいろ普及事業をやるし,それから地方のというのは伝統的な研究も含めて地方と国が一緒にやっていく。じゃあ,地方で新しく創造活動を行うときにどうすればいいかという問題だと思うのですが,ぜひ。
 はい,どうぞ。

米屋委員 いずれも地域の選択,結局はそういうことなのだろうと思うのですが,文化政策が「地域」<へ>であろうが<の>であろうが<で>であろうが,2ページの冒頭にありますように,地域の人々が心豊かになるという目標があるわけです。それのためにオペラを持っていくのがいい場合もあれば,地元の伝統文化を活性化させるのがいい場合もあるということだと思います。ですから,地方へ持っていくことが最終目標というわけではないと思います。

高階部会長 確かにこれまで,持っていくことはいろいろ方策が考えられていたけれども,「<で>つくる」という方策についてはまだ,何かもっと知恵が欲しいという状況があります。

米屋委員 もう一つ,地域で市民グループが活動を重ねていって,それで地元公立文化施設の半ばフランチャイズのようになった例というのも,実はいくつか耳にします。それがマスメディアで全国的に大きく取り上げられるということがないだけで,細かなレベルではかなりあるのではないかと思います。
 ですので,地域で創っているというような活動が地域の活性化に結びついているということは,それほど少なくはないのではないかなと思っております。

高階部会長 そうですね,本当はそういうことに光を当てた方がいい。そういう活動は,我々もまったく知らない,特に地方のことはわからないことがあるので,マスメディアも含めての応援体制をつくっていくことは重要かもしれません。それから,いろいろ事例研究の中でそういう事例があれば,集めてわかるようにしていくということが必要だと思います。
 はい,どうぞ。

山野委員 やはりニュースになりますのは,どうしても新しくて派手な話題ということになるものですから,リュートピアの金森穣氏のような形が,取り上げられるわけです。ところが地元のお客さんにとって金森氏の作品が,果たしてすんなり受け入れられるかどうかというのは,なかなか難しいところがあります。
 やはり国の仕事というのは,かなり泥臭く地味に行っていくべきではないかと思います。そういう意味で言うと,「ティアラこうとう」のくるみ割り人形とか,それから川本委員のところでおやりになっている伴さんという方のくるみ割り人形とか,一番とっつきやすいところで地元のお客さんを引き寄せていくという形がいいのではないかと思います。そういうときに,熊本のオーケストラがくるみ割り人形をとっても上手に弾きますし,そういうものに対する地元の結びつきというのには大きなものがあるわけです。そういう点で,地元<で>というところがまず先に来た方が,何となく地に足がついてくるような気がします。

高階部会長 それをやって,場合によってそれに援助をしてもらうということも考えられます。
 ほかにいかがでしょうか。

神崎委員 企業メセナと民間資金の問題ですが,事例の調査の中で,これは課税か非課税かということが出て参りましたでしょうか。と申しますのは,企業内活動として寄付行為に近いものをしていても,これはあくまで課税枠の中ですから。数社のジョイントでこういう地域文化芸術に支援をするというのは望ましい方向だと思うのです。そういうときの課税枠,非課税枠という問題を制度の上で整備しないと,今の時代では企業というのは乗りにくいところがあると思います。

高階部会長 事例研究の中にそういう話は出ましたか。

吉田政策課長 山梨の事例などを調べておりますが,その中では特段聞いておりません。ただ,税制の問題については,以前からこの部会の中でも固定資産税の問題ですとか,法人税の問題ですとかについてのご指摘はございますので,この第4章の中にも国の期待される役割の中に税制上の優遇措置の検討というようなことは盛り込ませていただいております。

高階部会長 はい,どうぞ。

富澤委員 今の事に関連してですが,やはり民間の文化活動を振興する,あるいは活性化する,それを継続していくという中で,やはり今の税制の問題というのは非常に大きくて,特に文化施設の場合は,固定資産税というのは結構それが市町村あるいは県立のものと比較して,大きいハンディになっているのですね。ですからせめて文化に関するものぐらいは無税にするとか,あるいは軽減するとか,そういうことをぜひやってほしい。津田委員もここでよく言っていらっしゃいますが,そういう意味では,文化施設が今12年間で1.8倍になっていると書いてありますが,多分,僕は民間の155館というのは減っているのではないかと思うのですね,この12年間で。と申しますのは,やはり景気が非常に低迷しておりましたから,その間に固定資産税が大きなハンディになってやめている事例をたくさん見聞きしてきたものですから。ぜひそこのところ,国だけではなくて,やはり固定資産税というのは地方公共団体,地方税ですので,ぜひ地方公共団体も含めて提言の中に強く盛り込んでいただきたいと。

高階部会長 固定資産税の話,ここでもたびたび出ました。それから,企業メセナがそれぞれ地域文化のためにという意識が高まってきているのは大変結構だと思いますが,企業へいろいろお願いに行くときにまず聞かれるのが税金です。これは大丈夫か,課税か,非課税かということがあるので,これはやはり非常に大きな問題です。確かに提言でも41ページ,最後に入っていますが,もう少し強調してもいいかもしれない。これは別に文化庁が言うのではなくて我々委員が要望することなので,地域文化の振興のための税制上の優遇措置について,少し目立つように言ったらいかがでしょうか。事例を挙げるとか,あるいは中身にもう少し触れながら,企業活動を円滑にするためとか,企業のインセンティブの話だとか,あるいは固定資産税という事例を含めてもいいかもしれない。余り刺激的にならないように,しかし提言案作成委員の方でうまい文言で。実際にはかなり大きなハードルになっている部分だと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 さらに専ら,これから作成チームにご苦労をお願いする第4章でいろいろ知恵を絞って文章化していただくのですが,第1章から第3章までのつまり基本的な理念の流れについてももちろんぜひご議論いただいて,具体的な例でも結構ですし,他の中身に関してでも含めてご議論をいただきたいと思います。
 いかがでしょうか。
 どうぞ,米屋委員。

米屋委員 作業部会の一員でありながら今ごろ申しわけないのですが,事務局の方々がこれでもかなりスリムにまとめてくださったのでご苦労が偲ばれますが,18ページのところを作業部会で検討しておりましたときに,舞台技術スタッフへの言及もありましたが,私としましては,「芸団恊セミナー」よりは舞台技術スタッフの事例が入っていた方がいいなと思っていたくらいなのです。本当はその4としてでも1つ何か事例があるといいと思っているくらいですが,それが難しいとしましても,この文化施設の運営に当たって住民や利用者との接点となる職員や舞台技術スタッフ等の専門スタッフというようなことで,何か「舞台技術」という言葉を残していただきたいと思っております。これに関しては,できましたら川本委員の熊本県立劇場でおやりになっている例などをお聞きしたいと思っております。

高階部会長 具体的にこの18ページというのは,事例8,芸団恊セミナーの部分ですね。

米屋委員 はい。

高階部会長 これは事務局でもいろいろ苦労されて,1ページにまとめるようにしているのですね。そこのところだけ1行ぐらい増やしても構わないかもしれない。多分この事例集は,読んで使う方にとって非常に役立つものになるように,このように一事例分だけを場合に応じて眺められるように,一事例一ページずつにまとめてあるのだと思いますが,それはどうぞ,米屋委員も含めて,うまい文言ないしは文章化を考えていただければまとめられると思います。ぜひ入れてください。
 第4章以外でももちろん,結構です。今後ともまた作成チームにご苦労をお願いするのですが,政策課長,前の方も直してもよろしいですね。

吉田政策課長 はい。

高階部会長 もちろん前の方もこれで決まっているわけではないので,改善していってください。
 どうぞ。

吉本委員 タイトルは今,「地域文化の振興と発信について」という仮のタイトルですので,これからより内容にふさわしいものになるのかと思いますが,私は個人的に,「発信」という言葉が非常に気にかかっています。何かもう少しメッセージ性のあるタイトル,例えば「地域から文化を生み出すために」とか「文化が地域をつくっていくのだ」とか,そういうメッセージをタイトルに込めるようなことについても,いろいろアイデアを出していただければと思うのですが。

高階部会長 いいですね,何かそういう方が。「地域が文化をつくる」,それはどこかにありましたね。「人が地域をつくる」,「地域が文化をつくる」,「文化が人をつくる」というメッセージ。あるいは「地域で文化を」というように,何かそういう形をメインに出して,それから地域文化の振興と発信についての副題的なものを入れてももちろんいいのですが。いずれにしても,少しインパクトのある題,「地方こそ文化を」などというような,これも作成チームの方々に考えていただければいいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 地域文化に関する第1章は基本理念ですから,それから第2章は現状ですから,それぞれの部分でもいろいろお考えいただく形で。そして最終的には,第4章を報告としてさらに文章にした形にまとめるわけです。それはこれだけの大部のものですから,例えば「要約版」とかあるいは「概要」のようなものはお考えなのでしょうか。

吉田政策課長 きょういただきましたご意見をまたこの後,提言案作成チームの方のご協力もいただきながらまとめてまいりますけれども,何せ第4章の部分はまだ項目だけなので,これを文章化するだけでもある程度の分量になると思います。50ページ近くになってしまうかもしれませんので,やはりその概要版を用意することになります。最近よく,図を使ったポンチ絵などをつくりますけれども,そういったものもあわせて作成しまして,公表の際にはそれらを提供するという形になると思います。

高階部会長 特に事例などは,もちろんゆっくり全部見ていくのもいいけれども,こういう事例を調べたいというときの,家庭医学必携のように,頭が痛いときはここだけ見るというスタイルの事例集としても役に立つと思います。
 それから,前文のところはもちろん理念ですから憲法前文みたいなもので重要なわけですが,人によって特に政策立案者の方など,忙しい人はそれほど読めないと思います。そこで,一,二ページだけでも重要なポイントがわかるようなものを用意しておいて,その上で本編を読んでみようという具合に導いてくれるような役割を持つ「要約版」,「概要」といったものはあった方がいいと思いますので,それについてもお考えいただいた方がいいと思います。例えば,情報を必要としている人が,「概要」的なものでそのエッセンスの部分をまず読み,その上でより詳しくは報告書のどこに当該箇所があって読めばいい,ということがわかるという形がいいと思います。
はい,どうぞ。

神崎委員 41ページのこれからの課題と方策ですが,地域の特色ある文化遺産を発見するという,この発見ですが,発掘,発見と同時に再生ということが,特に先ほど私が申しました伝統的な地方文化芸術は必要かと思うのです。これから申すことは,全く余談としてお聞きいただきたいと思います。
 こういう問題を考えるときに,基本的に文化庁が指定しました文化財というものがございます。民族文化財で有形と無形があるのはご承知のとおりですが,これが指定しっぱなしと言うと,少々語弊があるのですが,その後既に指定物件に相当しないような変化や変質をしているものがございます。このことは別な会議で言うべきだと思いますし,実際私は別な会議でも発言しているのですが,なかなか取り上げられてこないのです。ですから,やはりそういうことをもう一度精査しながら地方文化ということを考えていくということで,ここへ例えば再生というような言葉を入れていただくのはいかがでございましょうか。

高階部会長 文化財保存に関して,発掘,保存,再生というのは大きな流れになっていますから,それを改めて再生し,さらに活性化するということは必要だと思います。
 ほかにいかがですか,どうぞ,川本委員。

川本委員 8ページの,(3)他分野の政策との連携・協力と,その2行目,「文化財の活用や舞踊等の」と,幾つか何か突然舞踊だけが出てくるのは唐突な感じがしないだろうかという気がしますが。

高階部会長 観光や何かでは舞踊は非常にポイントになるのですね,阿波踊りや何かの踊りが皆さんの関心を呼ぶから,ほかのものももちろん大事だと思うのですけれども。

川本委員 それと一番最後の41ページ,3の(3)です。子ども・青少年の文化云々というところですが,その2行目の「子どもたちにより効果的な」というのは,「子どもたちにとってより効果的な」というようなことだろうかと,思うのですが。

高階部会長 少しわかりにくい,子どもたちによりじゃない,子どもたちにより効果的なということでしょうか。

川本委員 「とって」ですとか。以上です。

高階部会長 ほかにいかがでしょうか。
 今の舞踊等の話で,各地のお祭り,青森のねぶたとか阿波踊り,地方に新しいお祭りをつくっているところもあるようで,観光も含めてですが,そうしたものが地方の文化活性化につながっている例,これはかなりいろいろあるはずです。それをどこがやっているのか,行政がやるのか,民間がやるのかという事も,舞台芸術だけではない町の中のそういうお祭りみたいなものも重要なポイントだと思います。これは幾らも事例が出てきそうですね。
 ほかに何かご意見ございますでしょうか。
 実際にこれから米屋委員,吉本委員,熊倉委員,根木委員,作成のお願いを改めてするのですが,原案作成チームの方から何かお聞きしたいことはございますか。あるいはこういうことは,言っておきたいということなどはいかがですか。
 どうぞ。

米屋委員 41ページの最後の連携・協力により解決すべき課題と方策の中なのですが,きょうの皆様のご意見を聞いていて,「地域の文化拠点の充実」というような項目を入れてはいかがかと思ったのですが。

高階部会長 最初に出た文化拠点という言葉が余りなかったですよね,確かに。

米屋委員 (1)の「地域の特色ある文化資源を発見する」という中に入れ込めるかとも思ったのですが,やはり別に1項目立てた方がいいのかなという気がしてきました。

高階部会長 「資源発見」,「人材育成」,「青少年文化活動」,「情報発信」,これはそれと並べて入った方がよさそうですね,文化拠点の形成ということですから。
 それから,何かございますか。いろいろ難しいご注文も出たと思いますが。
 前文から事例のところまでは大変よくまとまっているので,特にございませんようでしたらあとは作成チームにお任せして,改めてまた議論ということにしたいと思うのですが,よろしゅうございましょうか。
 それでは,今後の日程はどうなっていますか。最終的に報告書をこの部会から今度,親会の方に出すことになると思うのですが。

吉田政策課長 次回,第14回を来年の1月13日の木曜日,10時から12時を予定させていただいております。そこまでに提言案作成チームのご協力をいただきながら最終案をまとめたいと思っております。そこで部会として最終的なご議論をいただきまして一応のまとめをしていただきますが,その後,文化審議会の総会が2月の初旬に予定をしておりますけれども,そこで最終的な報告をさせていただいて公表という形になろうかと思います。
 次回は1月13日でございます。

高階部会長 1月13日,これは改めてまたご連絡いただけますか。

吉田政策課長 はい,また改めてご案内いたします。

高階部会長 ということですので,それまでに原案作成チームの方にはご苦労をおかけいたしますが,よろしくお願いしたいと思います。長官,いかがですか,ご注文をいただいたところで何かご感想は。

河合長官 事例をたくさん出してもらったからよかったと思います。ただ,これが絶対的なモデルということにならないようにしないと。

高階部会長 そうですね。

河合長官 載っていないのはだめだ,とか言われるのが一番困るので。

高階部会長 そうですね。このとおりでなくても,もちろんこれらも参考例だと思いますので。
 という形で,それでは特に原案作成チームの委員の方,それからほかの皆様も今後ともよろしくお願いしたいと思います。本日の議題はこれで終了してよろしゅうございましょうか。
 どうもありがとうございました。


(文化庁長官官房政策課)

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