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文化審議会

2003年5月27日 議事録
文化審議会文化政策部会(第1回)議事要旨

文化審議会文化政策部会(第1回)議事要旨


1. 日  時:平成15年5月27日(火)11時〜12時40分

2. 場  所:霞が関東京會舘シルバースタールーム

3. 出席者:
(委員) 高階部会長,中村(紘子)委員,川本委員,木村委員,熊倉委員,佐藤委員,都筑委員,根木委員,山野委員,米屋委員
(文部科 学省・文化庁)池坊大臣政務官,河合文化庁長官,銭谷文化庁次長,森口文化庁審議官,寺脇文化部長,高塩政策課長,河村芸術文化課長ほか関係官

4. 概要
(1)    部会長の選任が行われた。

(2)    運営規則が決定させるとともに,議事を原則として公開することが決定された。

(3)    池坊大臣政務官,文化庁長官,部会長より,挨拶が行われた。

(4)    事務局より,文化政策部会の概要及び検討事項等について説明がなされた後,以下の意見交換が行われた。
   芸術文化の頂点を引き上げることと裾野を広げることの両方が必要であるが,頂点を引き上げることは重点支援の形で充実している一方,裾野の拡大については,芸術文化振興基金の助成支援が縮小傾向であり,特に演劇の裾野を広げる基金の支援は,単なる赤字補填として,裾野を広げる上で効果不十分な面もあったのではないか。
       平成11年に作成した「アーツプラン21による芸術創造活動の推進について」を礎にして,音楽,舞踊,演劇などの現状を認識しながら支援の方策を矛盾がないように考えていってはどうか。
   
   予算の単年度主義が,支援を受ける側には非常にやりにくい。例えばヨーロッパの演奏家に出演依頼をするには2年前に行うのが通常である。
       各支援事業の基準を検討してはどうか。
   
   アートマネジメントが1990年代から盛んに言われるようになってきたが,例えば諸外国では,芸術家の表現をどのような方法により社会的なものとして位置づけているのか。支援をする際には,行う側と受ける側双方の満足度を高めるにはどのようにしたらいいのか,また,それが芸術の世界全体について意味があるということをどのように組み立てたらいいのか。
       裾野を広げるに際しては,芸術文化のNPO等への支援も検討してほしい。
   
   芸術分野は中長期的な視点が欠かせず,その視点に立ってどのような支援を行い,評価を行うか。
       芸術文化の頂点を引き上げるのと裾野を広げるのは,簡単にどちらが頂点,どちらが裾野と割り切れるものではなく,一体となって進むべきではないか。芸術の創造者側の問題もあるが,享受者の視点を支援なり評価にどうやって盛り込むか。日々の生活の中で人々がどのように芸術を受け入れ,育てていくのか,観客,聴衆をどのようにして発見し育て,支援していくのかという視点を検討したい。
   
   広く支援情報が知れわたっておらず,支援事業の際の公募の限界を感じている。また,実際の配分結果を見ると,大概出演料の上昇にしか使われていなく,支援されたものが一般のお客さんにどのように還元されているかについて,全く見えてこない。他国の取り組みを参考に検討したい。
   
   芸術家に対し広く支援する方法の他に,地道に頑張っているところへの活躍場所の提供や,観客への還元等の支援策について,考えていく。
   
   頂点の伸長と裾野の拡大は,国の文化芸術活動に対する支援施策において,基本的,原則的な役割である。
       頂点の伸長については,例えば分野ごとにメリハリを効かせることも考えたらどうか。劇場については多少区分けして,メリハリを効かせた形での支援策ということもあり得るのではなかろうか。例えば多面舞台を持っているホールが7つほどあるが,こういう極めて優れた機能を持ったホールに対し,国の立場からの地域文化の振興と絡めて,何らかの手を打てないか。また,個々の文化会館,ホールに対する支援のみならず,相互に連携がとれるような体制はとれないか。
       裾野を広げる部分については,地方公共団体と国の役割をどのように捉えるかという問題がある。平均的な水準の文化を全国的に普及することは,国の責任であるが,それを基礎にしながら地域の独自性,主体性のある文化創造をどのように行うかは,地域の課題であり,その間のバランス,調和をどのようにとるか。国と地方自治体との適切な役割分担が必要ではないか。
       外国においては,一般的に劇場とバレエ団は不可分一体として活動しているが,1997年に日本でも初めて新国立劇場バレエ団が誕生した。民間のバレエ団は練習も追加公演も劇場費を払わなければならないため,劇場付きのバレエ団が回数をこなすほど1回当たりの公演費が下がる一方,日本の民間バレエ団は赤字が出るという逆の結果になる。そのため,動きに差が生じる。もう一つ外国と比べて,大きな違いは,バレエ団の数。外国では,1国でバレエ団が4つか5つ,少ないところでは2つぐらいなので,支援をしやすいが,バレエ団の数が多い日本では,薄く広い支援になり,効果が出づらい。こうした現状を踏まえ,我が国においては,劇場にバレエ団を引き合わせることと,多数あるバレエ団を外部から誘導により整理統合して水準を高めることが必要なのではないか。
   
   評判のよいバレエや演劇について,外国では続演や長期公演が可能であるが,日本では早期に終わってしまうことがある。バレエ団が劇場を持つ以外にどういう改善方法があるか。
       また一方では地方の公共ホールが空いて困るということもある。
   
   アーツプランについて,大きな目的には異論はないが,個々の施策に分かれていく過程で芸能の現場の実情に合わない枠組みに変わってしまうというのが実感。
       評価については定量的評価及び定性的評価を含むということであるが,定量的な把握自体,とても弱いというのが現状である。文化芸術団体の状況に関しては,数値化し得る情報,公開すべき情報がまだたくさんあるのではないか。
       文化芸術振興施策の1つ1つの目的は素晴らしいが,いろいろな団体がどのような役割を担い,それが有機的にどのようにつながって,どんな効果を生んでいるかというような視点での分析が足りないのではないか。
   
   文化庁の予算は確かに近年増加しているところであるが,まだまだ足りない。例えば外国と比べてみると,桁違いであり,今後とも我々も併せて努力していきたい。税制上の措置についても,外国によってはそれをうまく利用して,芸術の発展に効果を上げているというところがあり,支援の問題と絡めて国で考えてほしい。また,それぞれの分野における補助のスタッフ等の充実も非常に大きなこと。例えば美術館では,直接業務に携わる学芸員の他に,それを支援する資料係,連絡調整係,コーディネーター等が,まだまだ不足しているため,さまざまな障害・弊害が生じている。
   
   90年代半ばぐらいから地方自治体は音楽,演劇の稽古場に注目して,専用の施設をつくり,成功している例もいくつかあるが,東京は演劇に限れば稽古場は非常に少ない状態。今は各地方自治体の劇場が,自主製作を始め,それぞれの劇場が持っている稽古場を使っているが,劇場を持たない,あるいは劇場をつくらないプロダクションについては稽古場の問題は大きい。
       演劇文化の創造活動を行った人の割合と鑑賞を行った人の割合を見ると,音楽に比べ,演劇鑑賞を行った人の割合が多い一方,創造活動を行っている人の割合が非常に少ない。これは人材育成の問題が係わっていると思う。演劇の場合には,稽古場以前に学校教育を含めてどのようにプロフェッショナルを育てるかということが,まだ確立していない。その意味で支援の問題というのは混乱の状況にある。
       先程バレエ団の数を絞っていくような施策はとれないのかというご発言があったが,演劇の場合も多数の劇団がひしめいているという状況であり,演劇の専門家をどこで線引きしたらよいか。支援をお願いする場合でも非常にわかりにくい。また,東京一極集中の問題は取り上げてみる必要がある。地域振興とは別に,文化の重点的施策の地方分散ということを人材育成を含めて考えるべき。
       頂点を伸ばすところはある意味では目一杯と言われているが,それは東京から見てのこと。各地域の潜在的な人材あるいは活動に対して頂点まで引き上げるような形での施策が行われているかというと,必ずしも十分ではない。
   
   外国では,バレエのスタジオ各々が公演をやることはあまりなく,バレエのスタジオからバレエ学校へ,更にそのバレエ学校からバレエ団へと優秀な人が入り,活躍する。そういう階層構造ができている。日本はスタジオ全部が横並びであり,各々がバレエ団を持ち,各々が公演をやる。その中での質の差がわりと少ない。つまり人材がばらけてしまい,1か所に集まらないという問題点がある。人材を集めるような,階層構造に組み直していくと,底辺が広がった現状が頂点を目指すいい形になるのではないか。
       外国ではダンサーで食べていけるが,日本の女性ダンサーは給料をほとんどもらえない。日本バレエの最大のスポンサーが両親ということも問題がある。
   
   支援の重点化や劇団等の統合を進めるにあたって行う評価については,国がお墨付きを与えるのではなく,民間の機関なりが,しかるべき形で行う必要がある。企業メセナ協議会は民間から支援を受けているが,国の制度を使っている。どのように生かしていくかは今後の問題になる。また,さまざまな国の支援施策を周知徹底して,より多くの人に利用してもらう努力も必要。
   
   地方の文化施設の果たすべき役割はますます大きくなっていくと思うが,その中で予算はどこも削減されている。
   
   税金面での優遇も考えるべきだ。

(5)    事務局より,次回部会については,6月30日(月)を開催予定とするとの説明があり,閉会した。


(文化庁長官官房政策課)

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