確かに、例えば、役員の兼務を認めると同一分野の管理事業者が話し合いをして、一斉に使用料を値上げするなどの弊害も考えられないことはないが、こうした取引については、独占禁止法で一定の規制が行われることなどを考えると、特に管理事業法において制度改正を考慮するような状況には至っていないと考えられる。
また、利用者側でより高度な守秘義務が必要であると考えれば、利用許諾契約の際、その旨の契約をすれば、ある程度対応できる。更に、外部にもらされては困るとする情報が、不正競争防止法上の営業秘密に該当すれば、同法により民事上、刑事上の措置を求めることができる。
以上の点から、現時点ではこの問題は管理事業法固有の問題とは考えられず、管理事業法による規制の必要性は現時点では認められないが、文化庁においては、管理事業者講習会の場等を通じて、情報保護法制等に関し情報提供をしていく必要がある。
なお、現行法が努力義務規定となっているのは、特に新規事業者のような人的・物的資源に欠ける事業者に提供義務を課すのは負担が大きいこと、また既存の管理事業者によっては、作品毎に委託する方法を採用しておらず、管理している著作物等を具体的に把握していない場合もあることなどからである。
しかしながら、現行法が努力義務とした理由にも示されているとおり、例えば、データベースの作成など情報提供システムを整備するコストに全ての管理事業者が耐えられるかどうか、また、著作物等や利用区分の特性、管理事業者の管理方法等に応じ、どの程度の情報提供が必要かなどについては、管理事業者の実態をもう少し見極める必要があるところである。
なお、管理事業者は管理著作物が多くの利用者に利用され、それに応じた手数料収入増を事業実施の目的としているので、そのために、管理事業者は「顧客」である利用者に対し、「商品」である管理著作物等の情報を積極的に提供することは、ある面では管理事業者として当然のことでもある。意見募集における意見は、新規参入事業者についての意見がほとんどであるところから、もう少し長い期間で実態を見ると、事業者間の競争関係を通じ、一定の秩序形成が行われることが考えられる。
以上のとおり、現状では、直ちに制度改正をすべき状況ではないが、特に音楽の分野では混乱が生じているとの指摘もあることから、当面は、文化庁で情報提供の方法についてガイドラインを設けるなどして、各事業者が情報提供を積極的に進めるよう指導・助言をしていくことが重要と考える。
なお、この問題についても、情報提供の義務化の場合と同様、特に音楽の分野でこのような実態が見られるとの指摘がある。また、著作物等には代替性が低いものが多いが、特に映像作品に使われている原作、脚本、音楽、実演等については、原則として代替性がないので、映像作品を二次利用する場合、管理権限があるかどうか疑わしい管理事業者から許諾申請を求められても、著作物等を差し替えることもできず、円滑な利用が阻害される可能性があるとの意見もある。したがって、当面は文化庁でガイドラインを作成し、管理事業者に対する指導・助言を行っていくことが必要である。
なお、管理事業者がインターネットによる公示を行うまでの経過措置としてことができない管理事業者も存在すると考えられるので、このような事業者の使用料規程等については、現在文化庁が実施しているインターネットによる管理事業者の情報提供欄中で公表することにより利用者の便を図ることを検討すべきと考える。また、これに関連して、文化庁は管理事業者に係る様々な情報について積極的に公表するよう努力する必要があると考える
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