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3.著作権等管理事業法見直しに関する検討課題と検討結果について

(1)規制の対象となる事業の範囲

1非一任型の管理事業に対する規制について

  ア.現行制度の概要等
○ 現行法は、著作権等の管理を使用料額の決定権限が管理事業者にあるのか、それとも委託者に留保されているのかによって、前者を一任型管理、後者を非一任型管理と区分した上で、規制対象は一任型の管理事業のみとしている。

○ 非一任型の管理事業については、旧仲介業務法の時代から、音楽(特に映像作品への利用)、文芸作品、美術作品、実演、レコードなど多くの分野で実施されており、特に問題も生じていなかったことから、管理事業法の制定の際には、許諾条件の中で最も重要な使用料の額を委託者が決定することは、著作権者等による自己管理注釈3と同視し得る管理という理由で規制の対象としていない(法第2条第1項)。
注釈3  自己管理には、著作権者自ら著作物の許諾その他の管理を行う場合と、事業者が著作者から著作権の譲渡を受けて許諾その他の管理を実施する場合とがある。後者の例としては、著作者から著作権の譲渡を受けて事業を行う音楽出版者がある。

  ○ なお、現状では、例えば文芸作品の分野では、同じ利用形態について一任型の管理事業者と非一任型の管理事業者が併存している。また、例えば脚本の分野においては、同一の管理事業者において、ある利用形態は一任型によって、またある利用形態は非一任型によって管理するというように、同一の管理事業者が一任型の管理事業と非一任型の管理事業を兼業することも行われている。また、例えば、音楽や文献複写の分野では、同一の利用形態について、一任型の管理と非一任型の管理が混在している管理事業者もある。

イ.意見募集の内容
○ 現行制度においては、同一分野においても、管理事業法の規制を受ける一任型の管理事業者と規制を受けない非一任型の管理事業者が混在することになり、著作物等の円滑な流通を阻害することになるので、非一任型の管理事業についても規制の対象にすべきであるとの意見があった。

○ また、同一の管理事業者が行う非一任型の管理の兼業についても同様の意見があった。

ウ.検討の結果
○ 同一分野において、一任型の管理事業と非一任型の管理事業が混在することについては、
 
  ・相当程度の著作権者から著作権の管理の委託を受けているにもかかわらず、非一任型の管理であるということで登録をしていない民間事業者が存在しているが、使用料が明確でなく利用者が不便を被っており注釈4、また規制を受けている管理事業者との適正な競争が出来ない事態が生じている
・非一任型の管理事業を実施していると称して、実際には一任型の管理事業と類似の形態で業務を行う事業者が出現する可能性がある
・一任型の管理事業者が非一任型の管理事業を兼業する場合、例えば、音楽の放送、通信カラオケ、ネット送信のように使用料を包括的に支払うことを前提にビジネスモデルが構築されている場合に、突然「この音楽は非一任型の管理なので、別途使用料を徴収する。」といわれる可能性がある
  などから、円滑な著作物等の流通を阻害するのではないかという意見があった。
 
注釈4  特に教科書に準拠した学習参考書等や大学入試問題等の試験終了後の利用(例えば問題集としての出版)の分野については、そこで使われている著作物に代替性がないので、非一任型の事業者から高額の使用料を求められると、利用者が対応に苦慮する場合があるとの指摘がある。
 
○ しかし、一方で、
 
  ・管理事業者が非一任型の管理事業を営むことは、非一任型の管理についても許諾権限は当該管理事業者にあるので、一つの著作物等についての多様な利用の手続き窓口が集中化し、著作物の利用の円滑化に資していると評価できる(例えば、非一任型の管理の兼業を規制すると、規制をきらう権利者が自己管理や非一任型のみの管理事業者を選択する可能性がある)
・権利者の選択の自由の確保などを目的として、規制緩和の方向でできた管理事業法の制定趣旨を考えると、非一任型の管理に問題があるというだけで規制を強化しようという結論を出すのは、制度論としてはおかしいのではないか
・非一任型の管理事業は多くの分野で多数の事業者(多くの場合小規模事業者)が存在すると思われるので、仮に全てを規制するとなると、かなり大きな影響があるのではないか
・利用者側から両者の区別が分かりにくいという意見については、個々の管理事業 者の利用者サービス(例えば、積極的な情報公開)の問題でもあり、それを促すために、文化庁が問題のある管理事業者については、適切な指導助言を行うことによって、ある程度解決できるのではないか
  など非一任型の管理事業を規制対象に含めることについて慎重な意見があった。

○ 本委員会としては、一部の分野でその弊害が現れていると指摘する意見もあるが、
 
  非一任型の管理事業の実態が十分把握されておらず、同一の分野において異なる管理方法を行う事業者が混在することや同一の管理事業者が非一任型の管理事業者を兼業することによる具体的な弊害が検証されていないこと、
・非一任型の管理については、旧仲介業務法の時代から実施されている業務方法であり、当時規制の対象であった小説、脚本、音楽(歌詞・楽曲)の分野においても事実上規制が行われていなかった経緯もあるので、注釈5規制対象の拡大の必要性については、政府の規制緩和政策の考え方も踏まえながら、慎重に対応する必要があること、
仮に非一任型の管理事業を規制するとした場合、規制の方法によっては、広範な事業者に規制を拡大したり、管理事業者が非一任型の管理事業を行えなくなったりすることにもなり、かえって円滑な利用を阻害する可能性もあるので、かねず、規制の必要性やその方法については慎重な検討が必要になること
  などから、少なくとも現状においては、制度改正の必要性は認められないと考える。
 
注釈5   旧仲介業務法は、一任型の管理か非一任型の管理かを問わず、信託、代理及び媒介による管理を規制していたが、例えば小説を取り扱う翻訳エージェントが行う非一任型の管理は事実上規制されていなかった。また、文化庁長官から業務許可を得た仲介業務団体においても、非一任型の管理の存在を認め、例えば音楽の映像作品への利用については、使用者と協議の上使用料規程に定めた額と異なる額を徴収することを認めていた。
 
○ なお、利用者側から、事業者の業務の実態に照らして、それが一任型の管理か非一任型の管理か判断しにくいとの意見もあることから、文化庁は具体的な例などを盛り込んだ法解釈に関するガイドラインを作成し、事業者側及び利用者側に提供していく必要があると考える。

○ また、一任型の管理事業を行っているにもかかわらず非一任型の管理事業者であるとして文化庁長官の登録を受けないのは、管理事業法違反として、同法第29条により罰則の対象となることから、仮にそのような事業者が存在するとすれば、文化庁は当該事業者から事情を聞くなどして実態の把握に努め、適切な措置を講じる必要がある。

2特定分野における管理事業者の一元化について

  ア.現行制度の概要
○ 管理事業法では、あらゆる著作物等のあらゆる利用区分について、信託、代理又は取次により一任型の管理事業を実施することは、文化庁長官への登録を行いさえすれば、誰でも行うことができることになっており、出版物の複写や音楽の演奏等の分野のように、単一又はごく少数の団体により管理される方が効率的な管理を実現できるといわれる分野について、特に法律上の参入制限は設けていない。

イ.意見募集の内容
○ 文献複写の分野については、現在社団法人日本複写権センターなど4つの管理事業者が存在し、一任型の管理事業と非一任型の管理事業が混在していることなどから、利用の円滑化を図るために、管理事業者の一元化を望む意見があった。また、社交場、飲食店、旅館、ホテル等の分野における音楽の演奏の管理についても、利用の円滑化の観点から同様の意見があった。

ウ.検討の結果
○ 文献複写の分野については確かに複数の管理事業者が存在しているが、各事業者が管理対象としている著作物や管理方法に違いがあるものの、そのことが円滑な利用を阻害しているとまではいえない。また、音楽の演奏についても、演奏権の管理には、大きな組織力とかなりの管理コストが必要なところから、現状では社団法人日本音楽著作権協会だけが管理事業を行っている。以外は参入しておらず、事実上単一の事業者が管理している。

○ 以上の点から、現状ではこれらの分野について一般の分野よりも厳しい規制をする必要が認められず、制度改正の必要はないと考える。
 しかし、利用者側の立場を考慮すれば、利用者側の利便性にも配慮したシステムをどのように構築していくかは大変重要なことであり、例えば、どの管理事業者がどのような著作物等を管理しているかが利用者側から理解しやすい仕組の構築など、情報の透明性の確保によりある程度対応できる問題であると考えられる。

(2)適格性を欠くと思われる管理事業者への対応

1登録要件の強化等について

  ア.現行制度の概要
○ 著作権等管理事業法は形式審査による登録制度を採っており、また登録要件自体も新規参入を容易にするという観点から必要最小限度のものとなっている(法第6条)。

イ.意見募集の内容
 
  ・事業を行うノウハウ等を有していない管理事業者も散見されるため、他人の財産を管理する能力のない者による登録を認めないという観点から、現在の登録要件を強化又は登録手続を厳格にすべきである注釈6
・登録をして一定期間経過後も、管理委託契約約款及び使用料規程を文化庁に届け出ていない管理事業者が存在していることから、登録時又は登録後一定期間内の届出を義務化すべきである。
  などの意見があった。
 
注釈6  例えば、信託業法では、免許・登録の要件として、1資本要件、2人的要件、3保証金の供託、等の要件を課しており、他人の財産を管理等するにふさわしくない者の参入を排除している。
 
ウ.検討の結果
○ 形式審査権しかない登録制度を維持する限り、登録申請時に管理事業者の実態に立ち入って審査を行うのは難しいので、当面は、実態面で問題のある管理事業者について、文化庁は管理事業法第19条、第20条及び第21条の指導監督に関する運用基準を定め、これに基づき厳正な指導監督を行うことで対応すべきと考えられる。

○ 例えば、文化庁長官は管理事業法第21条第2項の規定に基づき、登録から一年以内に管理事業を開始せず又は引き続き1年以上管理事業を行っていないと認められる事業者の登録を取り消すことができることとなっている。
 この登録の取消処分については、現状でも登録から一定期間経過後も管理委託契約約款及び使用料規程を文化庁長官に届け出ていない者が存在しており、また今後は、一旦管理事業を開始したものの途中で事業を休止し相当期間管理事業を行っていないと認められる者も現れると思われるので、積極的に活用すべきである。

○ 登録要件の追加に関しては、現状では直ちに要件を追加すべき状況であるとは考えないが、引き続き管理事業者の実態を注視していく必要がある。

(3)管理事業者に対する規制

1管理事業者の役員の兼職について

  ア.現行制度の概要
○ 現行制度は、管理委託契約約款の作成・届出義務、また管理事業者の応諾義務、使用料規程の制定に関する利用者団体からの意見聴取努力義務や指定管理事業者における協議・裁定などの措置により、管理事業者の不当な権利行使には一定の歯止めがかけられていることを考慮して、管理事業者の役員の兼職について特段の規制を設けてはいない。

イ.意見募集の内容
○ 本来競合すべき同一の分野において、ある管理事業者の役員が他の管理事業者の役員を兼務している例が見られ、公正な事業が行われるかどうか疑義があるので、管理事業者の役員の兼職のあり方等について再検討すべきである旨の意見があった。

ウ.検討の結果
○ 意見募集における指摘のとおり、例えば文献複写の分野で、ある管理事業者の役員が別の管理事業者の役員を兼務している実態があるが、これは社団法人である管理事業者の構成団体が別の管理事業者であることから生じた事態であり、やむを得ない状況と考えられる。

○ 確かに、例えば、役員の兼務を認めると同一分野の管理事業者が話し合いをして、一斉に使用料を値上げするなどの弊害も考えられないことはないが、こうした取引については、独占禁止法で一定の規制が行われることなどを考えると、特に管理事業法において制度改正を考慮するような状況には至っていないと考えられる。

2届出事項の変更届出期間の緩和について

  ア.現行制度の概要
○ 管理事業者は、管理事業法第7条の規定に基づき、文化庁長官に提出した登録申請書の記載事項に変更があった場合はその旨を2週間以内に届け出なければならないこととされている。

イ.意見募集の内容
○ 管理事業者が登録事項の変更の届出を行う場合の添付書類として、必要に応じ、変更の事実に係る登記事項証明書が求められるが、変更の決定から変更の登記を行い文化庁に届け出るために要する時間が実務上2週間を超えてしまう場合が少なくないことから、管理事業者からは、2週間の期間を遵守することが困難であるとの意見があった。

ウ.検討の結果
○ 管理事業法施行規則第8条第2項では、添付資料として「登記事項証明書又はこれに代わる書面」を求めていることから、文化庁は、法人である管理事業者が2週間以内に登記事項証明書を準備することが困難な場合には、登記事項証明書に代わる書面として、例えば、総会の議事録等を認めるよう運用を変更すべきである。

3管理事業者の守秘義務について

  ア.現行制度の概要
○ 管理事業法上特段の規定は設けられていない。

イ.意見募集の内容
○ 管理事業者は、利用許諾の条件として、利用者から利用実績に係る情報の提供を受けるが、この提供情報の中には利用者にとって他の利用者等に知られたくない営業上の秘密も含まれている。
 このため、利用者から、管理事業者に守秘義務を課し、利用者から得た情報の目的外使用を禁止することを管理事業法上に明定すべきとの意見があった。

ウ.検討の結果
○ 一般に法人の役員は、当該法人に対し、善良の管理者としての注意義務(民法第644条)を課されており、事業上得た秘密を外部にもらしてはいけない守秘義務があると考えられている。また、従業員についても、労働契約上生じる義務として守秘義務が課されていると考えられている。

○ また、利用者側でより高度な守秘義務が必要であると考えれば、利用許諾契約の際、その旨の契約をすれば、ある程度対応できる。更に、外部にもらされては困るとする情報が、不正競争防止法上の営業秘密に該当すれば、同法により民事上、刑事上の措置を求めることができる。なお、個人に関する情報については、平成17年4月から施行される「個人情報の保護に関する法律」で保護されることになる。

○ 以上の点から、現時点ではこの問題は管理事業法固有の問題とは考えられず、管理事業法による規制の必要性は現時点では認められないが、文化庁においては、管理事業者講習会の場等を通じて、情報保護法制等に関し情報提供をしていく必要がある。

4管理している著作物等に関する情報提供について

  ア.現行制度の概要
○ 管理事業者は、管理事業法第17条に基づき、著作物等の題号、名称その他取り扱っている著作物等に関する情報及びその著作物等ごとの取り扱っている利用方法に関する情報を利用者に提供するように努めなければならないことになっている。

○ なお、現行法が努力義務規定となっているのは、特に新規事業者のような人的・物的資源に欠ける事業者に提供義務を課すのは負担が大きいこと、また既存の管理事業者によっては、作品毎に委託する方法を採用しておらず、管理している著作物等を具体的に把握していない場合もあることなどからである。

イ.意見募集の内容
○ 管理事業者が管理している著作物等の情報を提供しないので、事前に管理事業者間の権利競合等を確認できない、管理事業者が利用者に包括契約を要求しながら情報提供しないので契約できないなどの弊害が生じているので、現行法の努力義務規定を義務規定にするよう求める意見があった。

ウ.検討の結果
○ 利用者側から見れば、各管理事業者が管理している著作物の題号やその利用方法が常に明らかになっていることが望ましいのはいうまでもない。

○ しかしながら、現行法が努力義務とした理由にも示されているとおり、例えば、データベースの作成など情報提供システムを整備するコストに全ての管理事業者が耐えられるかどうか、また、あらゆる著作物等のあらゆる利用区分の特性、管理事業者の管理方法等に応じ、どの程度において個々の著作物レベルの情報提供が必要かなどについては、管理事業者の実態をもう少し見極める必要があるところである。

○ なお、管理事業者は管理著作物が多くの利用者に利用され、それに応じた手数料収入増を事業実施の目的としているので、そのために、管理事業者は「顧客」である利用者に対し、「商品」である管理著作物等の情報を積極的に提供することは、ある面では管理事業者として当然のことでもある。意見募集における意見は、新規参入事業者についての意見がほとんどであるところから、もう少し長い期間で実態を見ると、事業者間の競争関係を通じ、一定の秩序形成が行われることが考えられる。

○ 以上のとおり、現状では、直ちに制度改正をすべき状況ではないが、特に音楽の分野では混乱が生じているとの指摘もあることから、当面は、文化庁で情報提供の方法についてガイドラインを設けるなどして、各事業者が情報提供を積極的に進めるよう指導・助言をしていくことが重要と考える。

5管理権限の開示義務について

  ア.現行制度の概要
○ 管理事業法上、管理事業者は、利用者からの求めに応じて、著作物等に関する管理権限(著作権者と委任契約又は信託契約を交わしている事実)を明らかにする義務は課されていない。

イ.意見募集の内容
○ 利用者側からは、特に新規参入管理事業者の場合、当該事業者に対する信頼性がないので、当該管理事業者から許諾申請の求めがあっても、本当に許諾権限があるかどうか分からないので、管理事業者に対し利用者の求めに応じて著作物等に関する管理権限を明らかにする義務を課すべきであるとの意見があった。特に外国楽曲については、利用者自らが委託者(著作権者)に確認することが困難であるとしている。

ウ.検討の結果
○ 基本的には、情報提供の義務化の場合と同様、事業者間の競争関係を通じ、利用者側からの信頼を得られない管理事業者は整理されていくと考えられるので、管理事業者の実態をもう少し見極める必要があり、直ちに制度改正すべき状況ではないと考えられる。

○ なお、この問題についても、情報提供の義務化の場合と同様、特に音楽の分野でこのような実態が見られるとの指摘がある。また、例えば、映像作品に使われている原作、脚本、音楽、実演等については、原則として代替性がないので、映像作品を二次利用する場合、管理権限があるかどうか疑わしい管理事業者から許諾申請を求められても、著作物等を差し替えることもできず、円滑な利用が阻害される可能性があるとの意見もある。したがって、当面は文化庁でガイドラインを作成し、管理事業者に対する指導・助言を行っていくことが必要である。

6管理委託契約約款・使用料規程のインターネット公示について

  ア.現行制度の概要
○ 管理事業者は、管理事業法第15条の規定に基づき、管理委託契約約款及び使用料規程を公示しなければならない。
 
 (ア) 事業所における掲示
 (イ) インターネットによる公開
 (ウ) その他公衆が容易に了知しうる手段
  のいずれかの方法によることとなっている。

イ.意見募集の内容
○ 利用者側から、事業所における掲示のみの方法で公示している管理事業者の管理委託契約約款及び使用料規程の内容確認が煩雑であることから、全ての管理事業者に対し、インターネットによる公示を義務付けるべきとの意見があった。

ウ.検討の結果
○ 管理事業法は、必要最小限度の登録要件しか課していないため小規模な管理事業者の存在も認めているが、全ての管理事業者にインターネットによる公示を法律上義務付けることは、経済的負担の問題もあるので、制度改正までは必要ないと考える。

○ しかしながら、インターネットによる管理委託契約約款等の公示は、利用者の閲覧に要する時間的制約、距離的制約を軽減することになり、利用の円滑化に資するところである。インターネットを活用し情報の提供を行うことは、あらゆる業種の事業者に普及しつつあるところであり、管理事業者においてもできるだけインターネットを利用した情報提供を進めるよう努力する必要があり、文化庁もその方向で強く指導助言すべきであるが、情報伝達手段の開発普及は急なものがあるので、公示の方法を特定の手段に限定するような、制度改正は必要ないと考える。

○ なお、インターネットによる公示を行うことができない管理事業者も存在すると考えられるので、このような事業者の使用料規程等については、現在文化庁が実施しているインターネットによる管理事業者の情報提供欄中で公表注釈7することにより利用者の便を図ることを検討すべきと考える。また、これに関連して、文化庁は管理事業者に係る様々な情報について積極的に公表するよう努力する必要があると考える
 
注釈7  文化庁は、ホームページにて、著作権等管理事業者登録原簿を公表しており、登録に係る届出事項を閲覧することができる。

(4)使用料規程、協議・裁定制度

1使用料規程の制定・変更時の意見聴取の義務化について

  ア.現行制度の概要
○ 管理事業者が利用者から徴収する使用料額を定める使用料規程は、基本的には管理事業者自身が決め、文化庁に届出ればよいことになっている(法第13条第1項)。
 しかしながら、商品の価格等と異なり、使用料には原価がよくわからないものが多いに相当するものがないなどの使用料の特殊性を考慮し、使用料の制定、変更に当たっては、利用者又は利用者団体から、あらかじめ意見聴取をするよう努めなければならないことになっている(法第13条第2項)。

○ なお、現行法が努力義務となっているのは、管理事業者の中には小規模で利用者への影響が極めて小さい事業者もいることが想定されることや、使用料規程の内容に対する意見を申し述べることができる利用者又は利用者団体が存在しない場合も想定されること等を踏まえてのものである。

○ また、管理事業者が使用料規程を文化庁に届出する際には、意見聴取に努めたことを疎明する書面を添付することになっており(規則第14条)、添付された書面の内容から意見聴取努力義務を充分つくさなかったと認められると、文化庁長官は、著作物等の円滑な利用を阻害すると認定し(規則第15条)、使用料規程の実施禁止期間を、当初の届出から30日以内から最大3ヶ月まで延長することができるようになっている(法第14条)。

イ.意見募集の内容
○ 利用者側からは、管理事業者が使用料規程を制定するときは、一般国民を含めた広範囲な利用者の意見を聴取するようにすべきである、利用者又は利用者団体の意見は必ず聴取しなければならないようにすべきである、使用料規程に関する協議・裁定制度を指定管理事業者以外の全管理事業者にも拡大するべきであるなどの意見があった。

ウ.検討の結果
○ 利用者側にとっては管理事業者の使用料の額がどの程度になるかは最大の関心事であり、出来るだけ管理事業者の使用料額の決定に関与したいと考えるのは理解できる。そのため、管理事業法では、使用料規程の届出制、使用料規程作成時の意見聴取努力義務、使用料規程の実施禁止期間の設定と実施禁止期間の延長制度、大規模事業者である指定管理事業者の使用料規程に関する協議・裁定制度などを整備しており、管理事業者の著しく高額な使用料の設定には一定の規制が定められているところである。

○ 先述したように管理事業法では、管理事業者の使用料規程は届出制とし、基本的には、事業者間の競争を通じ市場原理により適切な額に収斂するという考え方を採用しているところから、これ以上管理事業者に過度な義務を課すことは、この基本原則の大幅な変更にもなりかねず、適当ではないと考える。

○ なお、現行法においても、意見聴取努力義務規定違反や、管理事業者が著しく高い使用料を設定した場合は、文化庁は使用料規程の実施禁止期間の延長命令等により、管理事業者に対し是正措置を求めることができるので、文化庁が現行法の適切な運用を行うことで一定の対応ができると考える。

2指定管理事業者の使用料規程に関する協議・裁定制度について

  ア.現行制度の概要
○ 管理事業法では、事業者間による適切な競争が期待できない大規模管理事業者が存在する場合は、当該管理事業者を指定管理事業者に指定し、指定管理事業者が使用料規程で定めた利用区分における利用者代表との使用料規程に関する協議の制度及び協議の不調に終わった場合の文化庁長官による裁定制度を設け、これを通じて適正な使用料額の形成を図る制度となっている(法第23条、第24条)。

イ.意見募集の内容
○ 利用者側からは、利用者代表が存しない利用区分は、指定管理事業者と利用者代表との使用料規程に関する協議・裁定制度が活用できないので、この問題を解消してほしい、利用者代表以外の利用者の意見が反映できるようにしてほしい、利用者団体等との協議が円滑に行えるよう指定している利用区分の細分化ができるようにしてほしいなどの意見があった。

ウ.検討の結果
○ 多くの指定管理事業者は、旧仲介業務法の時代に文化庁長官から許可を得て業務を実施していた団体であるところから、使用料規程を定めるに当たっては、従来から利用者団体と十分協議をし、合意又はほぼ合意された規程案が申請され、文化庁長官によって認可されるという実態があった。

○ このことから、管理事業法の施行後も何回か指定管理事業者から使用料規程の変更の届け出があったが、いずれの場合にも事前に利用者代表(利用者代表が存在しない場合は関係の利用者団体)と十分協議したものであり、裁定制度が実行されるという事態には至っていない。

○ また、利用者代表の問題であるが、管理事業法では指定管理事業者に利用者代表の求めに応じ使用料規程に関し協議を行う義務を課しているが、利用者側がこの制度を有効に活用するためには、利用者側も利用者代表といいうる組織を作るために努力する必要がある。また、利用者側には様々な意見があると思われるが、それらの意見を集約し利用者側として1つの意見にまとめるよう努力することも利用者代表に課せられた義務である。

○ なお、指定管理事業者としての指定は、管理事業者の使用料規程上の利用区分に基づき行うこととなっているが(法第23条第1項)、指定管理事業者は、利用者団体の意見を踏まえ、合理的と判断される場合には、利用区分を利用実態に適合するよう変更していく必要がある。

○ 更に、管理事業法上、文化庁長官は管理事業法第23条第1項括弧書の規定に基づき、著作物等の利用の状況を勘案し利用区分を細分化した方が合理的であると認めるときは当該細分化した利用区分において指定管理事業者を指定することが可能であるので、利用区分が利用実態に適合しておらず、著作物等の円滑な利用の妨げとなっている場合であって、管理事業者に利用区分変更の意思が無い場合には、文化庁が法律で認められた権限を適切に行使することで、これを改善することができると考えられる。

○ 以上の点から、現状では、制度改正の必要性はないと考えられる。ただし、文化庁は、協議・裁定制度が円滑に機能するよう、指定管理事業者に対しては、利用実態の変化に沿った使用料規程上の利用区分の見直しや、利用者側に対しては利用者代表としての組織化や運営のあり方について、指導助言を行っていくことが必要である。

(5)その他

1包括利用許諾に係る使用料のあり方について

  ア.現状
○ 音楽の著作物の放送や演奏、通信カラオケ、インタラクティブ送信等の分野では、管理事業者が管理している全部の著作物の利用を認める包括許諾契約が一般的である。

○ 旧仲介業務法の時代は、利用者は、音楽の著作物に関する唯一の仲介業務団体である社団法人日本音楽著作権協会と包括許諾契約を交わし事業を行っていたが、管理事業法施行後、音楽の著作物を管理する管理事業者が新たに参入したことを受け、複数の管理事業者と同一の利用方法について契約を結ばなければならなくなってきている。なお、管理事業法では包括的利用許諾契約に関し、特別の規定をおいていない。

イ.意見募集の内容
○ 新規参入の管理事業者から利用許諾契約の締結を求められる結果、旧仲介業務法の時代よりも管理事業者に支払う音楽著作物の使用料額の総額が増加するおそれがあるので、関係者間で使用料額を調整する仕組が必要である、包括的利用許諾契約の存在が参入障壁になって、新規の管理事業者が参入しにくくなるなどの点から、包括利用許諾契約のあり方の見直しを求める意見があった。

ウ.検討の結果
○ 旧仲介業務法の時代であっても、社団法人日本音楽著作権協会が包括許諾を与えられるのは同協会が管理している作品だけであり、同協会の管理作品以外の作品を利用する場合には別途著作権者から許諾を得る必要があるという点では、現在と変わりはない。

○ しかしながら、このような分野の包括的利用許諾契約については、管理事業法の施行前から実施されており、使用料規程の制定の際の関係利用者団体との協議に当たっては、新規参入の管理事業者の存在を考慮せずに、協議が行われてきたことも事実である。

○ したがって、この問題は法制度の問題ではないと考えられるが、指定管理事業者においては、利用者における管理作品の利用実績の推移等を把握した上で、例えば、管理作品の利用比率の低下に合わせて、使用料額の再考を行うなどの配慮が必要であろう。また、利用者側においては、このような客観的データの収集に努め、必要であれば、管理事業法上の協議・裁定制度を活用するなどして、問題の解決に努める必要があると考える。

○ なお、この問題について、管理事業者間で使用料額の調整を行うことを求める意見もあるが、そのような調整は、独占禁止法の問題があると考えられるので、適当ではないと考える。

2その他

  ○ その他の問題についても、意見募集において様々な意見のあったところであるが、現時点においては特に制度改正を必要とする事項はなかった。


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