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資料2



大森委員の説明に対する意見について(前回議論の意見)


(1)ライセンシーの保護のあり方

(意見)
   

ライセンスの保護のあり方については、A案の採用を要望。


(理由)
    1    A案は、取引のリスクを譲受人が負うが、以下の理由からそのリスクは相対的であるため、ライセンシーがライセンスの喪失という決定的リスクを負う現行制度よりも合理的。
   ・ 著作権は無体財であり重複利用が可能(自己利用や第三者への利用許諾を制限されない。→独占的許諾を保護しないという提案と一対)。
譲受人のリスクは、対抗における保護の範囲面の工夫及び譲渡取引に際しての注意により軽減可能。
  2     A案は、米国等の制度とも整合性があり。
  3    我が国の現行法上も、公示を要することなく財産の譲受人に既存の債務を及ぼしている例は存在。
  4    B案は実効性に欠ける。
  5    C案はライセンシーの保護が譲受人の事情次第であり、ライセンシーは何らなす術がない。
  6    C案は対抗要件に拠らないため、破産法改正の方針を考えると、破産時に破産管財人の解除権に対して無力。
  7    D案は、事業化を要件するため実効性に欠ける。等々


   ○    実務的には、登録しないで済む方がいいが、対抗要件は譲受人に対しできる限り親切であることが望まれるので、登録(B案)を最初から除かないほうがよい。登録の方法は、現行の著作権に関する登録の方法を踏襲する必要は必ずしもない。契約書の提出は必要ないという登録の方法もあるのではないか。
   
   現行制度では対抗力が無いからライセンサーはライセンシーを裏切ることができる。しかし裏切りを前提とするなら、それに見合うリスクプレミアムがついて、使用料が設定されるのだから問題ないのではないか。対抗制度を創設しようがしまいが、現状に合わせてマーケットメカニズムは構築されるので、対抗制度がないために困っている人が果たしてどれくらいいるのだろうか疑問。
   
   JASRACに著作権を信託している著作権者が破産するということはたびたびあるが、通常、破産管財人はJASRACとの信託契約はそのまま認めるので問題が起こることはまずない。


(2)対抗力の付与とライセンス契約の承継について

(意見)
       ライセンスに対抗力がある場合、著作権の譲渡によって譲渡人は契約から離脱し契約関係が当然に著作権の譲受人に承継されるのではなく、契約関係は承継されない形でライセンスの対抗理論が構築されるべき。

(理由)
      情報財のライセンス取引は、
    1    技術提携契約、共同開発契約、開発委託契約等の契約の重要な一部として行われるため、契約関係が譲受人に当然に承継されるとすると、元の契約の相手方のみならず、譲受人の通常の期待に反する。
  2    ライセンスの対価が多種多様であり単純には承継できない(株式等をライセンサーに発行・譲渡するもの、クロスライセンス等)。
  3    契約が当然に承継されるとした場合、著作者人格権の不行使特約についての承継が問題。
  4    準拠法を外国法とする外国契約が多く、これら外国契約が当然に譲り受け人に承継されることの問題。
  5    外国法との整合性(米国法はライセンス契約の譲受人への承継を前提としていない。)。


   ○    対抗要件を有するライセンシーと譲受人との間に契約関係がないとすれば、継続的に支払う使用料は誰に払えばよいのか。
   
   ライセンシーがA案に基づいて対抗要件を取得し、譲受人から訴えられないで済むというのは何かというと、譲受人がライセンシーに差止請求訴訟を起こした時に、ライセンシーは譲受人に対し、何らかの抗弁ができるということである。AとCの間のライセンス契約はAからBへの著作権譲渡とともにBに移転したので、BとCの間で抗弁が成り立つと言う必要がある。AC間の契約関係を残しておいて、どうしてBのCに対する差止請求に対してCが抗弁を主張できるのか出てこない。
   
   著作権が譲渡された後、ライセンシーが使用料を支払う先は著作権の譲受人であるべきである。著作権の譲渡は既存のライセンス契約の価値も含めて算定された価格で取引されているのだから、支払先は譲受人であると考えるのが正しいのではないか。
   
   ある委員から「著作権の譲受人とライセンシーとの間で契約関係が無くなるとしたら誰に使用料を支払うのか」という意見が出たが、最低限誰の何を保護すべきかを決め、その周辺にある事項を何処まで保護すべきかという議論をすべきである。
   
   著作権の利用を継続できるということと、使用料に関する条件(額、率等)は一体として保護された方がよいという印象を持った。
   
   不動産の譲受人と賃借人の対抗の問題も、従前どおり使っていれば対抗できるとしか規定しておらず、契約関係が承継されるとは法律に規定していない。そこから先は判例等にゆだねられている。つまり、不動産の所有権を取得した人は、賃借人に当該不動産を従前どおり使わせなくてはならないのに、対価を受けられないというのは法的安定性を欠くので、対価を受けることができる、つまり、契約関係が引き継がれるということとしている。


(3−1)独占的な利用許諾の扱い

(意見)
       独占的な利用許諾契約の「独占性」を保護することは適当ではない。

(理由)
    1    「独占性」を保護する場合、著作権譲渡取引の安全のため、対抗力の付与は公示をもってすることが必要(その存在を事前に承知していることが必要。)。
  2    契約自由の原則により、ライセンス契約の具体的内容は多様でありかつその解釈は当事者間の合意によるものであるため、契約の当事者ではない譲受人は例え公示等により事前にその存在を知りうるとしても、その具体的内容について把握することは困難。
  3    独占的ライセンスの「独占性」を、非独占的ライセンシーとの関係でも保護しようとすることは、独占的ライセンスの基本的変質を意味する(排他的権利に変質する)ため行うべきではない。


   ○    紹介された事例は特許関連のものであり、著作権の世界には馴染みがない話である。例えば、放送ライセンスは基本的に独占契約であり、独占性が保護されないなら対抗要件を有したとしても意味がない。出版の世界は、出版権の設定が認められているが出版権の設定をせず独占出版契約を行うのが慣行である。独占性が100%前提とは言わないが、かなり独占性を伴った契約であり、独占性の保護を最初から排除した提案には反対である。
   
   独占性は保護しないという点は問題である。特許関連の事例であれば、これが馴染むのかもしれないが、放送、レコード、映像ソフト等は、独占性を前提として契約が成立している。コンテンツの内容は様々であり、また契約も多様であることから、どういう前提で契約が成立しているのかを踏まえて議論しないと、実際制度を作っても、あまり実効性がないことになる。
   
   映像コンテンツもほとんどライセンス契約に基づき発売することになる。基本的には契約のスタイルは独占契約であるので、独占性というものは保護されるべきである。


(3−2)サブライセンス権の扱い

(論点)
       サブライセンス権は保護すべきである(著作権譲渡後もライセンシーはサブライセンス権を有し、サブライセンスを与えることができることとすべき。)。

(理由)
    1    情報財のライセンス取引においては、ライセンシーが子会社等に対し利用許諾(サブライセンス)を与える権利が許諾されることが通例。サブライセンス権は、ライセンシーにとってライセンスの目的を達成するために不可欠(サブライセンス権が保護されなければ、当該ライセンスを保護する意味がない。)。
  2    ライセンシーに許諾されたライセンスに依拠するものであること等から、対抗力を有するとすることが適当。
  3    譲受人は、サブライセンス権の継続を認めたとしても、著作権の自己利用や第三者への利用許諾を制限されない。
  4    譲受人は何ら作為の債務を負わない。
  5    著作権譲渡前になされたサブライセンスは、対抗要件を備えることで譲受人に対抗する。


   ○ サブライセンスというのはCがC´に「コピーしていい」と言うことだと理解。Cは著作権を持っていないのだから、そもそも許諾できるわけがない。サブライセンスというのは要するに、Cが指定するC´の行為に対して、一定の範囲で、Aは許諾権を行使しないという債務だと、そういう契約だと思ってよいのか。そうすると債権債務関係はAからBに移らなければならない。
   
   特許法では、特許権者の承諾を得た場合に限り、専用実施権者は通常実施権を許諾することができることになっている。通常実施権者が適当な第三者にライセンスをすることをサブライセンスといっているが、法的には、特許権者が許諾していると考えるのが通説である。


(3−3)保守・保証義務等

(意見)
       保守・保証等の債権は保護すべきでない。

(理由)
    1    保守・保証等の債務はその履行が人的・物的資源の存在を前提すること、著作権の譲渡取引は多様な文脈の中で行われ得ること等から、単なる著作権の譲受人にかかる「作為の債務」を当然に負担させることは困難かつ合理性を欠く。
  2    ライセンシーは、契約時にソースコードの預託(エスクロー)等のリスク軽減措置を求めるほか、ライセンサーの責任を問うことが現実的な選択肢。
  3    著作権流通の観点からも、かかる作為の債務が当然に承継されるとした場合は、大きな萎縮効果が生じる。


      特に意見なし。


(3−4)契約期間

(論点)
       基本期間、自動更新期間及びライセンシーに権利のある延長期間は保護すべき。双方の別途の合意によって延長することが可能な期間については、著作権譲渡前にライセンサー(譲渡人)とライセンシーの間で合意された延長期間については保護すべき。

(理由)
    1    ライセンシーによる投資の保護等の観点から、当初意図したライセンスの時間的範囲については、引き続き保護されることが必要。
  2    譲受人は、自己利用及び第三者への利用許諾は制限されず、また譲渡人の責任を問うこともできることから、その負担は不合理ではない(ただし、自動更新条項に付随する更新拒絶権については、その行使を譲受人にも認めるよう立法的に措置することが適当。)。
  3    なお、契約終了後のライセンシーの作為の債権については、これらの債権が事業の実効性を担保するため必要であることから当然に保護されるべき。


      特に意見なし。

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