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2.抽出した課題についての概観

 近時、著作権法に関しては、それが19世紀に考えられた法律であってインターネット時代の仕組みには合致しない、「一億総クリエータ」であり誰もがユーザにもクリエータにもなりうる状況下では著作権法は機能しない、抜本的な体系の見直しが必要である等の指摘が多く聞かれ、著作権リフォーム等の著作権法の見直しを主題とする各種の研究会やシンポジウムが開催されている。政府側でも、「デジタルコンテンツ流通促進法制」の整備に向けた検討が開始され、あたかも著作権法の抜本的な見直しに向けて機運が高まっているようにも見える。一方で、これらの議論の中で、具体的な問題点や課題として提示されている事象は必ずしも多くはない。
 今回、このような背景を問題意識としつつ、インターネット関連で具体的にどのような事象が、問題点として生じているのかを把握するために、新しい著作物の創作・利用形態と関連した事業に携わる実務家に対してヒアリングを行い、具体的な事業において実際に著作権法が問題となりうる点、従来は問題とならなかったがインターネットを介することで初めて問題となる点等について聴取したが、その結果抽出された課題の中には、既に文化審議会著作権分科会等において認識され、検討が開始されている課題が多く含まれている。この事実は、これまでに課題は認識されていても立法が追いついていないために重ねて指摘されていると評価することもできるし、インターネットは著作権法の抜本的な見直しが必要なほど新しい問題点を生じさせているわけではないため、指摘されている課題の多くはすでに過去に検討がなされていると評価することもできよう。
 いずれにせよ、本調査研究では、インターネットの普及に伴い、著作権法の既存の体系と相容れない事象や抜本的な見直しが必要となるような事象として、どのようなものが生じているのかを明らかにするとの調査研究の目的に鑑み、既に検討が着手されている事項以外の事項について、その課題の状況と背景を分析することを試みたものである。結果としては、ネットワークを介した「多数の者によるリソースの共有」から生じる問題として、ストレージサービスやマッシュアップを利用したサービスに関するものを中心的な素材として取り上げた。また、権利制限規定の見直し自体は、文化審議会著作権分科会でも検討されているものの、具体の見直し対象とされていない事項で、インターネットの普及と関連の深い事項についても、ここで併せて取り上げることとした。