第5節 ライセンシーの保護等の在り方について

個人・団体名 意見
大阪弁護士会 第1 「第5節」ライセンシー保護等のあり方について
  • 1 総論
    • (1) 新たな登録制度の創設について
       対抗要件を具備させる新たな登録制度の創設に対して,ライセンシー保護の必要性から法改正の方向で検討することについて賛成する。しかし,「文化庁審議会著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ」(以下「中間まとめ」という。)において検討されている登録制度については,対象とする著作物,業界の実情,現在検討されている特許権等の通常実施権の登録制度の改正の方向にも留意しつつ実態に即した対抗要件制度を設計すべきであり賛成できない。
    • (2) 中間まとめにおいて,検討されている登録制度については,ライセンサーごとに登録原簿を調製し,一般開示事項と対抗関係にたつ第三者への開示事項を分け,一般開示事項については権利の内容に関する登録事項は開示しない等特許権・実用新案権における特定通常実施権登録制度に近似する制度として制度設計がなされていると思われる(特定通常実施権登録制度が創設されたことを考慮すべきことが強調されている。)。
       しかし,特定通常実施権登録制度は,通常実施権登録制度が存在する特許権・実用新案権において,特例として創設されたものである。すなわち,個々の特許権等の登録番号等を特定せず,それ以外の方法で特定している包括的ライセンス契約においては従前からある通常実施権登録制度を利用することが困難であるため,これを特定通常実施権許諾契約とし,その契約による通常実施権の登録をおこなうことにより,対抗力を付与するものである。
       この点,著作権については,特許権等登録を前提とする通常実施権の登録制度そのものが存在せず,対抗要件制度が存在していない。そのことが関係してか,検討されている登録制度の概要としては,包括的ライセンス契約を含んだライセンス契約一般について許諾にかかる著作物を利用する権利を登録できる制度とされている。
       しかし,例えば,個別のライセンス契約において対象となる著作権を特定することが容易である場合と,包括ライセンス契約において対象となる著作権を特定することが容易でない場合を同一に論じることは困難であり,対象となる権利の特定方法についても著作物毎の検討が不十分と考えられる(この点,中間まとめでもライセンシー保護のための登録制度の要望はコンピュータ・プログラム業界とされており,その他の著作物を対象とする業界については必ずしも必要性を感じていないとされている。)。
  • 2 各論
     以下,第5節 3 検討結果に対して意見を述べる。
    • (1) ライセンシーの保護について
      • 1 検討の方向性について
         検討の方向性では,ライセンシーの保護について,「ア.著作物を利用できる地位の保護」の観点を中心に検討することとされ,特許等について特定通常実施権登録制度が創設されたことを考慮すると,可能な限り特許等の登録制度との整合性を図りつつ制度設計する必要があるとされている。
         著作物を利用できる地位の保護の必要性が存在することについては認められると考えられ,破産管財人及び権利を譲り受けた第三者に対して当該地位を対抗しうる制度の検討を行うべきであるということについては賛成である。
         また,特定通常実施権登録制度の利用が予定されている包括的ライセンス契約においては,特許権等のみならず著作権(例えば,特定の機械についてそれに使用するコンピュータ・プログラムやコンテンツについての著作権)が含まれていることが考えられ,これについての対抗要件を創設する必要性は高いと思われる(但し,特定通常実施権登録制度における対象権利の特定については不十分と思われる。)。
         しかし,一般の通常実施権登録制度が存在する特許権等において,特例である特定通常実施権登録制度が創設されたということから,創作がなされた段階で権利が発生するとされている著作権において,特定通常実施権登録制度を前提として全体の制度設計をすべきかどうかは別問題である。各業界においても登録制度の創設の必要性について見解が異なっており,例えばコンピュータ・プログラムの業界中エレクトロニクス・IT産業・ソフトウエア(パッケージ)産業ではライセンシーを保護する制度が必要であるとする意見が多く,ソフトウエア(ゲーム)業界では積極的な意見が聞かれていないとされているし,その他の各業界については制度創設に積極的な意見はなかったとされている。
         例えばエレクトロニクス業界においては,特定の製品について多数の特許権について包括的なライセンス契約を行っている例が多く存在し,その場合に当該製品に使用されるコンピュータ・プログラムについてライセンシーの保護を図る必要性は存在していると思われる。この点,コンピュータ・プログラムについてはプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律により財団法人ソフトウェアセンターにおいて著作物ごとに登録が行われており,この制度を利用して,著作物ごとに利用する権利を登録する方向での検討も可能である。また,ある特定の製品に使用する著作物を包括的に利用する契約がなされた場合には,特定通常実施権登録制度との整合性を考慮する必要はあろうが,登録を権利発生の要件としていない著作権においては特定通常実施権登録制度と同様の制度とすることは,対抗要件を付与する権利の特定,手続の煩雑さを招くといった面でも妥当ではないと考える。
         著作物の利用については,著作物の種類に応じて利用関係や業界の慣行等が異なるため,これらの実情等を考慮した制度設計を行う必要があると考えられる。
      • 2 著作物を利用できる(許諾を受けた)地位の保護のための登録制度の概要
        • A 登録の概要について
          • ア 登録の概要において,包括的ライセンスを含んだライセンス契約で設定された「許諾に係る著作物を利用する権利」を,国に備えられた登録原簿に登録することができることとすることが適当と考えられるとしている。
             「許諾に係る著作物を利用する権利」を国に備えられた登録原簿に登録することができる制度を創設すること自体については,ライセンシー保護の観点から賛成である。
             しかし,特定通常実施権登録制度は,包括ライセンス契約を念頭においた特定通常実施権設定契約にのみ適用されるとされている。包括ライセンス契約を念頭においた制度との整合性を前提にそれ以外のライセンス契約で設定された「許諾に係る著作物を利用する権利」も含む制度を設計することは,困難であると考えられる(この点,著作物ごとに個別に行われるライセンス契約と包括的ライセンス契約について別の制度とするのか,一体的に処理する制度を創設するのかは中間まとめからは判然としないが少なくとも一体的に処理する制度とすることは困難である。)。
             特許権等における一般の通常実施権の設定登録制度との整合性を図りつつ(今般検討されている特許権等における通常実施権の登録制度との整合性も検討する必要がある),著作物毎に個別の検討を行うべきと考えられる。
          • イ また,著作物を利用する契約について新たな登録原簿へ登録する場合,許諾の対象となる著作権の特定方法は,詳細な明細書や副生物の提出などを求めないなど,登録制度の利用者にとって簡便な手続となるよう考慮するとされている。
             しかし,登録によって対抗要件を付与する場合には,登録によって権利対象が特定され,権利内容が公示されていることを前提として,当該権利内容に関する内容を知り得た第三者については保護する必要がないという理由で,登録者に公示されている権利内容について対抗力を与えている。利便性を考慮するあまり,対抗力を付与されるべき権利の内容が不明確となった場合には,当該権利の内容を第三者が知り得るという対抗力付与の前提が崩れることとなる。
             第三者に対し権利設定の効力を対抗できることの前提として求められる権利内容の公示という側面を失わせないよう配慮した制度設計とすべきである。B 対象となる権利
             登録の対象となる権利をライセンス契約によって許諾された「許諾に係る著作物を利用する権利」とすること,包括的ライセンス契約においては登録後に発生する権利についても,当該著作物の利用に関する権利も登録の対象に含まれるとすること,著作物ごとに登録原簿を調製する現行制度とは異なり,ライセンサーごとに登録原簿を調製することが適当としている。
             登録の対象となる権利の特定が不十分であるとライセンサーにおいてライセンス契約をしているということしか明らかとならず,どのような権利についてライセンスを行っているかがわからないこととなる(将来発生する著作物の利用を許諾する権利の発生は何時の時点から考えるのか,また,どのように特定するのかについては十分な検討が必要である。)。
             ライセンサーが権利を譲渡した場合,ライセンシーの地位が譲渡された場合にはどのように移転登録を行うのかについても検討する必要がある。
             包括的ライセンス契約のみならず,個別的な利用許諾についても,ライセンサーごとに登録簿を作るべきかについては検討を要する。
        • C 登録を申請することができる者
           登録を申請することができる者については,共同申請主義をとることとされている。守秘義務条項の存在,ライセンス契約の秘匿性,従前の契約について申請が義務づけられていないことから,必ずしも利用が円滑に進まないとも考えられる。しかし,従来の制度(特定通常実施権登録制度及び通常実施権登録制度)との整合性という観点からすれば共同申請主義をとることはやむを得ないとも思われる。結局,共同申請主義をとるか否かについては,特許権等における制度との整合性,単独申請による対抗力付与を認める必要性,制度自体の利用可能性の点から,検討する必要があると考える。
        • D 登録事項
           登録事項については,著作物ごとに詳細に検討を行うべきであり,特に許諾の対象となる著作物の特定については,対抗力を付与するにたるべき権利の特定を求めるべきである。
        • E 登録対象の特定方法
           登録時に対象となる著作権と「許諾に係る著作物を利用する権利」の設定範囲が特定されていることが必要としている。
           この点は妥当と考えられる。
           包括的ライセンスについては,当事者間において許諾対象となる権利として特定されていればよいとする点については,公示内容を見たとしても第三者には許諾対象となる権利の内容がわからない場合があり得る。このような場合に「許諾に係る著作物を利用する権利」について対抗力を付与することは妥当ではないと考える。
        • F 登録の効果
           第三者に対する対抗力を付与することについては賛成。
        • G 登録事項の開示制度
           中間まとめにおける登録事項の開示制度は,ライセンシー名及び「許諾に係る著作物を利用する権利」の内容については原則非開示となっており,ライセンシーと対抗関係に立つ第三者等には「許諾に係る著作物を利用する権利」の内容を知らせる制度として検討されている。
          • ア 一般的開示事項について
             中間まとめで検討されている一般的開示事項では,結局ライセンサー名と件数しかわからず,実質的には何ら公示をしていないに等しい(例えば,ライセンシー保護の制度の必要性を主張しているエレクトロニクス業界においては,包括的クロスライセンスがなされていることが多いとされており,このような場合にライセンサー名と件数だけが開示されていても,結局ライセンス契約を多数行っているということしかわからない。)。特定通常実施権登録制度と同様の規定と考えられるが,同制度の開示自体が不十分である。
             少なくとも対象となる著作物については開示すべきであると考える。
          • イ ライセンシーと対抗関係に立つ第三者に開示される事項
             特定通常実施権登録制度による開示手続は煩雑であり,例えばライセンシーにとっても第三者からの開示請求に対し登録外登録制度の利用を強制される面がある等制度として問題点が存在する。中間まとめにおいては,著作物を利用することができる権利についてライセンサーごとの登録制度を検討しており,この場合例えば登録外登録制度についてはどのような制度設計を行うのかについては記載なく不明である。登録制度が完備されている特許権等においても問題があるが,著作権について特定通常実施権登録制度と同様の制度を設けることは困難である。この点,Eの特定方法とも関連して十分に検討すべきと考える。
        • H 登録の対象となる著作物の種類
           業界ごとに必要性が異なっており十分な意見聴取と検討を行うべきであると考える。
        • G 指定登録機関
           登録機関として適切な機関を設ける方向での検討を要望する。
        • J その他
           著作権が未登録でも発生すること,同様の内容の著作権が併存しうることから,登録された「許諾に係る著作物を利用しうる権利」について,権利の不存在や冒認等の危険性が特許権等登録を前提とする権利よりも多く存在すると考えられる。この点に対する対策についても検討する必要があると考えられる。
      • 3 著作物を利用できる条件の保護
         登録制度を単に対抗力を付与するものとし,当然には契約内容が承継されるものではなく,この点については判例・学説の蓄積により秩序形成をはかるべきものとしている。
         しかし,単に対抗力を付与し,実施権があるとしても,契約内容が承継されないとした場合には,その後の権利義務関係について不確定となり,紛争が生じることが考えられる。契約上の地位の承継がなされないとした場合には,対抗できるとした後の権利関係については裁定制度等の制度を設けることが必要と考えられる。
    • (2) 利用権について(著作物を独占的に利用できる地位の確保)
       専用実施権制度を導入している国がほとんどないとされていること,現行著作権制度の仕組みを大きく変える必要があり,今後の検討課題としている。
       国際的整合性のとれた保護のあり方についてなお検討されるよう要望する。
社団法人 電子情報技術産業協会  従前より、当業界からは著作物(特にプログラムの著作物)の円滑な利用の促進のためには、ライセンシーがライセンサーの権利譲渡または破産後も引き続き著作物を利用できるようにするためのライセンシー保護制度が必要である旨を主張して来ました。従って、今回、ライセンシー保護制度の検討を進めていただき、著作物を利用できる(許諾を受けた)地位を保護するための具体的制度設計案を示されたことは高く評価します。
 しかしながら、プログラム著作物については、特許とは権利の性質が異なり、多くの権利者が関与し、また権利者の確定が難しい場合もあるので、本中間まとめにて提案されている特定通常実施権登録制度に準じた制度案では、以下のような課題を解決することが困難ではないかと懸念しております。
(課題の例)
  • プログラムは多くの機能モジュールから構成されているが、特に大規模なプログラムではそれら機能モジュールの多くを他社(他者)からライセンスを受けているケースがある。今回提案されている制度案では、登録はライセンサーとライセンシーの共同申請を原則としているが、ライセンシーが望んだとしても、果たして全てのライセンサーから登録の承諾を得られるのか。
  • また、ライセンスを受けているプログラムがオープンソースソフトウェアの場合には、今回提案されている制度案を活用することが果たして可能なのか。
     上記例のような課題を解決するためには、やはり、当業界が従前より主張して来た、登録(公示)によらない書面による契約により対抗要件を付与する制度が望ましいと考えます。
     従い、中間まとめの69ページ「4 おわりに」の末尾にて「−−−、制度設計の詳細については、関係業界の意見も聞きながら、より活用しやすい制度となるよう、さらに適切な方策の検討も含め、引き続き検討すべきである。」と言及されておりますように、当業界の意見、要望も是非お聞きいただき、産業界にとって活用しやすい制度の導入を実現するための検討を今後とも継続していただきたいと考えます。
日本商品化権協会  商品化権ビジネスは、ライセンサーとライセンシーが良好な信頼関係のもとに立ち、商品化権許諾契約により健全な経済活動を行っております。この度のライセンシー保護を目的とした新たな登録制度は、商品化権ビジネスをより一層確実なものとし、なお振興する上で重要な制度と考えますので、様々な点で慎重に検討し制度化を目指して頂きたいと考えます。
 しかしながら今回の中間まとめでは、下記の部分で検討が不十分ではないかと思われますので、以下にその点を提起させて頂きます。
  • 「P67登録時効の開示制度」
     商品化権許諾契約に関しては、各会社の事業戦略や営業秘密が関わる重要情報が含まれている為、開示者として適当と考えられている「ライセンシーと対抗関係に立つ第三者」であっても、守秘義務などを課す等開示者からの情報漏れについては十分配慮して頂きたい。
  • 「P66D登録事項」
     商品化権契約に限らず、映画製作、TV番組から派生したキャラクターには複数の著作権者が存在する場合があります。また著作者が必ずしもライセンサーとは限らない場合もあります。よって現状の登録項目では当てはまらない場合も想定されますので、登録項目は契約実態に沿った項目にすべきと考えます。
  • 「P69Jその他」
     キャラクター等の著作物は年間数千件創作され、それから派生する商品も多数あります。よってその契約全部を登録するのは不可能に近いと考えます。よってライセンシーとライセンサーはどの著作物の利用を登録するかは、任意に選択、決定することができるのが適当であると考えます。
  • 「P69Jその他」
     商品化においては、ライセンサーが意図するキャラクター等の世界観を逸脱する商品化を防ぐ手段として、ライセンサーによる商品に対する監修を最も重要視しております。このことは契約書上でも明記されていますが、万が一それを逸脱する行為があった場合は契約の解除という事態になる場合もあります。
     しかしこの度の中間のまとめでは、「許諾が効力を生じないこと、許諾が効力を失ったことなどの事由がある場合、登録の抹消の登録を申請できる」と大まかな規定となっております。しかし登録抹消に関しては、契約形態の実態に合わせてライセンサーの意思によって登録抹消が可能であるなどのライセンサーに配慮した登録抹消項目も明記願いたいと考えます。
社団法人 日本映画製作者連盟  「許諾に係る著作物を利用する権利」の登録制度を仮に設けるのであれば、登録の手続き及び費用の負担をできる限り軽減していただきたいと考えます。
 また、登録制度とは別に、
  • 許諾に係る著作物の利用を事業として現実に行っている以上、登録等の手続きを経ることなく第三者にその権利を対抗できる仕組みを早急に設けていただきたい。
  • 原著作物の著作権者から許諾を得て二次的著作物を作成し、その二次的著作物を公表した場合には、当該二次的著作物の利用に係る原著作物の著作権者の許諾については、登録等の手続きを経ることなく第三者に対抗できることとしていただきたい。
と考えます。
社団法人日本映像ソフト協会
  1. ライセンシー保護のための登録制度について

     ライセンシー保護のための登録制度の創設には反対です。
     確かに、ライセンシーを保護することは必要ですが、それは、取引慣行を尊重したものであるべきです。特許権と著作権とはともに知的財産権を構成するものですが、技術思想を保護する特許権と表現を保護する著作権とは大きな相違があり、表現を保護する著作権はその権利の発生に登録を必要としない権利です。そのため、著作権に関する登録制度は、譲渡についても行われないケースが多く、それは、登録制度が著作権に関わる取引に馴染みにくいことを現しているように思われます。

     また、原権利者からライセンスを受けて二次的著作物を創る映画製作者は、映画の著作権保護期間と同一の期間、出来上がった映画を利用できるべきですが、「本中間まとめ」で提言している登録制度は、更新可であるとしても存続期間が10年間に限定されており、そのような期間利用権を保護する制度とはなっていません。

     特許権と著作権との大きな相違である登録制度について、特許権の制度を持ち込んでも、著作権の取引慣行に合致するとはいいがたいと思われます。

     そもそも著作物は、その表現の中に権利の表示がなされており、権利の公示手段は著作物それ自体の中に存在しています。ある著作物について、ライセンスを受けて事業化する場合には、その著作物に発売元、販売元等が記載され、ライセンシーが誰かは商品それ自体に表示されています。映画の場合にも映画の著作権者の表示も原作者、脚本家等の氏名も著作物の中に表示され、映画製作者が原権利者からライセンスを受けて映画化したことを公示しています。

     したがいまして、取引慣行を尊重するならば、新たに登録制度を設けるのではなく、例えば(a)ライセンシーが映画(二次的著作物)という別個の著作物を製作したのであればその映画(二次的著作物)の公表、(b)ライセンシーが映画のビデオ化権を取得したのであればその現実の事業化されていること自体に対抗力を認める制度による方が適切だと考えます。
社団法人 日本書籍出版協会  「中間まとめ」に書かれているように、出版界では「ライセンシーの保護」について、新たな制度を設けることに積極的な意見はあまりありません。これは、現行法に「出版権」制度が既に存在しており、出版権の設定を受けた者は、登録を要件として第三者にも対抗できる準物権的な出版権を持つことができることになっているからです。
 この「出版権」制度は、現実の登録件数は少ないものの、出版権設定契約において、著作権者は出版権者に対して「登録を承諾する」旨を取り決めていることが多く、出版界における適切な契約慣行の前提としての機能を果たしているといえます。今後も維持されるべきものと考えております。
 したがって、仮に、ライセンシー保護のための制度が設けられるとした場合、現在の「出版権」に影響を及ぼすことにならないように要望いたします。上記のとおり、出版権制度においては、登録が第三者対抗要件とされておりますが、業界の慣行としては、いつでも登録しうる状態にはあるものの、実際の登録まではいたらない場合がほとんどです。新たな制度においてライセンシーの保護を受けるために、登録が要件となった場合でも、あえて登録しないでいることが、何らかのデメリットをもたらすとしたら、緊急の必要性がない登録をライセンシーに強いるような事になり、これは出版ビジネスの実態を鑑みると望ましいこととはいえません。
社団法人 日本レコード協会
  • (1)ライセンシーの保護の必要性は著作物等の種類により異なるため、さしあたりライセンシー保護の必要性の高いコンピュータプログラムに限定して登録制度を創設したうえ、他の著作物等に関してはさらに検討することが適当である。
  • (2)上記検討においては、ライセンスを受けて実際に商品として市場に流通している場合には、「商品化」の事実にも「登録」と同様の法的効果を認めるべきである。
日本知的財産協会  産業財産権法と同様、著作権法においてもライセンシーの保護が望まれるため、ライセンシーを保護するための法整備が必要であるとの基本的な考えには賛同する。
 しかしながら、ライセンシーの地位の保護のために「登録」を必須とするアプローチには賛同できない。このような「登録」を要することとすると、そもそも権利の発生に「登録」を要しない著作権制度において、新たに煩雑な手続きを創設することとなり、現場に多くの混乱を生ずることが予想される。また、多くの当事者がその作成に関与しうるプログラム(データベースも含む)の著作権の性質から、許諾を要する権利者等の正確な特定や許諾取得は現実的には極めて困難であり、制度の実効性という観点からも疑問が残る(例:ライセンサー以外の第三者の許諾を得て利用しているモジュールを含むような場合)。さらには、「登録」により保護を受けようとする対象と実際のライセンス契約で規定される内容とに不整合が生じることも充分にありうるため、実務上の混乱はさらに深まるものと考える。したがって、実情に照らし、登録を要することなく契約で定められた範囲でライセンシーの地位が保護される制度を創設することが望ましい。
 著作物の利用態様やその特性を考慮することなく、また制度利用者のニーズを十分に反映することなく、ライセンシー保護の手段として「登録」制度を創設することには慎重な姿勢でのぞんでいただきたい。
日本弁護士連合会  今回の「中間まとめ」において、文化審議会著作権分科会の平成16年1月の提言を踏まえて、著作権契約におけるライセンシーの利用権を保護するため登録制度を導入することを提言していることには、当会としても原則として賛同するものである。
 また、その際、特許法等産業財産権の実施権登録制度を参考にし、これとの整合性を図りつつ、権利設定に登録を要件としない著作権の性質を考慮し、かつ自然人たる個人がライセンサー、ライセンシーとなることが多いという著作権の特質に配慮し、個人たるライセンサー、ライセンシーにとって利用しやすい制度設計を検討すべきである。
 ただ、「中間まとめ」がこのような著作物の利用権の創設と登録制度の導入にあたり、「平成19年度の産業活力再生特別措置法(以下「産活法」という。)の改正により創設された特定通常実施権と登録制度が創設されたことを考慮して、可能な限り特許等の登録制度との整合性を図りつつ、制度設計をする必要がある」と述べている点に関しては必ずしも相当とはいえないので、この点に関して以下のように意見を述べることにする。
 産活法の改正により、法人間の「特定通常実施権許諾契約」(産活法2条20項)によって許諾された特許権又は実用新案権の通常実施権について登録制度が創設され、包括ライセンス契約など個々の特許を特定しないライセンス契約に基づく通常実施権を破産管財人に対抗することができるようになった。
 中間まとめは、この点に言及し、「特許等におけるライセンシーの保護については、新たな制度の創設により対応が図られたところであり、著作権制度についても、関係者の意見を踏まえながら、具体的な制度設計を検討する必要が生じた」と述べ、産活法の特定通常実施権登録制度をモデルとした制度設計を提案している。
 しかし、従来、包括ライセンス契約など個々の特許番号を特定しないライセンス契約について特許法上の通常実施権登録制度を活用することができなかったという問題点があり、今回の産活法の特定通常実施権登録制度はそもそも特許法上の通常実施権登録制度を補完するための法整備であった。これに対し、著作物を利用する権利には、そもそも対抗要件制度が存在していないのであるから、まず、特許法上の通常実施権登録制度との整合性を考慮した登録制度の導入を検討すべきであり、特許法の通常実施権登録制度の特例制度である産活法の特定通常実施権登録制度との整合性まで考慮する必要があるかについてはさらに十分な検証を行うべきである。
 なお、現在、特許庁においては、特許権の通常実施権の登録制度が十分に活用されていないという実情を踏まえ、同制度改正について検討が行われている。その当否に関しては、当連合会は別途意見を表明する予定であるが、むしろ、対抗要件制度の創設にあたっては、このような特許法上の通常実施権登録制度の改正動向も踏まえつつ、実務の実態に即した著作物を利用する権利に関する対抗要件制度を設計されるよう要望する。
  • (2)著作物を独占的に利用できる地位の確保について
     この議論が、独占的利用権の保護制度がないために著作権の期限付譲渡等により対応せざるをえない不安定な現状を是正すべく提案されたものであることを踏まえれば、著作物を独占的に利用できる地位の創設に向けて引き続き検討を進めるべきである。
     他方で、かかる地位の創設は現行の著作権制度にない新たな権利を創設することになるため、著作物を独占的に利用できる地位を創設することが実務に与える影響等を考慮しつつ、同種の権利に関する各国の制度を十分に調査した上で国際的整合性のとれた保護の在り方について検討が進められることを要望する。
日本ユニシス株式会社
  • 意見内容
     「より活用しやすい制度となるよう、さらに適切な方策の検討も含め、引き続き検討すべき」との判断に賛同いたします。
  • 意見提出の理由
     コンピュータ業界におけるプログラム等のライセンスは、まだまだ米国よりライセンスの供与を受けるケースが多い。一方、米国におけるソフトウェア業界のM&Aは激しさを増している。この様な状況下においては、ライセンサーが変わる事によるライセンス条件の変更等はユーザに対する対応を含め大きな問題となりかねず、何らかの制度的対応を切望するものです。(制度的な対応、とりわけ法律上の対抗要件としてライセンサーである米国企業が認識しない場合は、米国法(連邦法もしくは州法)に基づく対応となるため、保護施策に費用がかかり、時間的な対応が難しい場合が考えられます。)

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