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資料7

ネットオークションにおける画像の掲載についての意見書

社団法人 日本美術家連盟

1. ネットオークションという新しい流通の形態において、販売の対象となる美術著作物の画像掲載の著作権の処理については、原則として利用の都度、個々の権利者から許諾を取るべきと考えます。

1) 権利制限により上記の画像利用を認めるべきとの議論がありますが、実際に権利処理の作業を行った結果、問題が生じているため、権利制限との話がでているのでしょうか。オークションサイトの主催者、出品者が画像掲載の許諾を得るための手続きを行い、現実にどのような問題が生じているのでしょうか。紙媒体ではありますが、展覧会カタログ等については、個々の権利処理がなされています。当連盟も許諾取得のプロセスで、一定の協力を行うこともあります。きちんと処理を行っている使用者がいる中、他方で最初から権利制限を声高に叫ぶのは甚だ疑問です。現実の各オークション主催者や出品者による権利処理の実態、この結果生じた問題の実態について、調査研究する以前に権利制限の議論を行うのは拙速と考えます。

2) 32条「引用」について
ネットオークションでの画像使用について、32条「引用」の解釈によりこれを認めるとの見解がありますが、これはあまりに飛躍していると考えます。従前、「引用」とは批評、研究を目的として主たる著作物に従たる著作物を引く際に、権利が制限されるものですが、ネットオークションにおける画像利用とは商品の販売のための商品の提示です。本来対面でも販売可能なものを、ネットで販売するには、画像があった方が顧客にとって便利であるため画像を使用するものです。そもそも商品紹介が著作物とはいえない以上、「引用」が成立するとは考えられません。このネットオークションでの画像使用を「引用」と解釈できるなら、インターネットのみならず他の媒体でも、かなり多くの著作物の利用が引用と解釈できるはずです。この条項はこういった広範な利用を対象としたものとは到底言えません。また、商品販売が、本来この「引用」の条項が予定する批評、研究といった公共の利益の優先を目的として権利制限を行う利用形態に含まれるとも考えられません。ネットオークションが新しく魅力的な流通形態であることを否定するつもりはありませんが、これを優先するあまり「引用」条項を拡大解釈することは無理があると考えます。

2. 行政が行うネットオークションについて

  上記の通り、ネットオークションにおける画像使用について、従前どおり個々の利用の際に権利処理するべきとの基本認識は変りません。ここで一部に、ネットオークション中、行政が行うネットオークションについて、これが滞納された租税の回収を目的とするもので、つまり公共の利益を目的とするにもかかわらず、著作権が回収の妨げになっているとの論があります。仮に一歩譲って、租税の回収の障害になっていることが真実であり、それゆえ公共の利益の確保を優先し、権利制限により行政によるネットオークションにおける競売対象美術品の画像掲載を認める場合でも権利制限は最小限とすべきであり、補償金等何らかの対価を著作権者に支払うべきです。行政は公共の利益の確保を目的としてさまざまな事業を行い、この際さまざまな費用が生じますが、公共の利益の確保をもって免除されるわけでありません。「著作権のみ無料で」というのはおかしな話です。公共の利益を優先する著作権制限及び補償金支払の先例として、行政を対象としたものではありませんが、33条「教科用図書への掲載」があります。教科書会社は、教科書に美術品の画像を掲載し、その対価として毎年補償金を著作権者に支払っております。私共は長年にわたり教科書各社の補償金支払に協力をしてまいりましたが、この仕組みは概ね適正に運用されてまいりました。この制度、運用など、この度の議論の参考になるのではないか、と考えます。なお、行政によるネットオークションのサイトに掲示する各美術品の画像について、データの転用を防ぐため何らかの措置を講じる等、権利者の利益が不当に害されることのないよう配慮することが望ましいのは言うまでもありません。


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