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資料2

デジタルコンテンツの特質に応じた制度の主な背景

(1) 「デジタルコンテンツの流通促進」の前提の再整理

 「情報爆発」という言葉もある中で、インターネット上には、無数の情報が蓄積されていると言われ、著作権を侵害する情報も含めて、膨大な流通が既になされている。にもかかわらず「デジタルコンテンツの流通促進」が求められているとはどういう意味か。

 経済財政諮問会議における有識者議員の提言(注1)によれば、「流通」とは、インターネット上の流通が想定されている。同提言では、過去のTV番組が例にされているように、つまり「デジタルコンテンツ」とは、既にインターネット外で製作され、流通しているコンテンツが想定されている。
 同時に、同会議の「成長力加速プログラム」(注2)では、コンテンツ産業の発展のためとされており、「流通促進」とは、単なるインターネット上の流通量の問題ではなく、「産業」としての発展に資する流通の促進が想定されている。

 また、先の提言(注1)や、前回の本小委員会(第2回・平成19年4月20日)の配付資料1「デジタルコンテンツの特質に応じた制度についての主な提案等」によれば、「流通」が促進されないことの原因や問題意識として様々な課題が念頭に置かれているが、概ね、次のように整理できると考えられる。
  1 著作権契約に関するコスト(時間、手間、経費等)
  例: 許諾交渉に要するコスト
さらに、許諾条件の調整等に要するコスト
権利者不明の場合の権利者の探索に要するコスト 等
2 ビジネスモデル
3 インターネット上の違法行為の危険性、対策の不足に関する懸念

 上記1の課題については、ネット外で製作された既存のコンテンツについて、改めて契約交渉が問題になる場合とは、実際には、著作権等以外に肖像権など法的関係の整理を要するものがあるが、著作権等については、例えば、
  製作時にはインターネットで流通させることを念頭に置かず、頒布や放送などによる流通に関する許諾のみを得ていたために、インターネットで流通させる際に、改めて自動公衆送信や送信可能化についての許諾が必要になる場合
当初は、権利制限規定の対象になる目的で利用したコンテンツを、その後に、それ以外の目的で利用することになり、改めて許諾が必要となる場合
などが考えられる。

 上記23の課題については、TV番組や書籍など、そのコンテンツを流通させることが想定されるメディアの業界が、コンテンツ製作の中核となっているような場合が典型であるが、自らのメディアに応じたビジネスを展開してきた業界が、インターネットなど他の流通メディアでビジネスを展開することについて、どのように考えているのかという問題であると考えられる。

 こういった点を踏まえれば、「デジタルコンテンツの流通促進」の課題とは、言い換えれば、「特定のメディアでの流通など特定の利用方法を想定して製作されたコンテンツについて、これを他のメディアで二次利用するにあたっての課題」と整理できるのではないか。

(注1) 「わが国では貴重なデジタル・コンテンツの多くが利用されずに死蔵されている(例:過去のTV番組の再放送等が著しく制限)。インターネット上でデジタル・コンテンツを流通させるためには、著作権、商標権、意匠権などの全ての権利者から事前に個別に許諾を得る必要があり、手続きコストがビジネス上見合わないためである。」(平成19年2月27日有識者議員提出資料)
(注2) 「我が国コンテンツ産業の飛躍的な発展、国際展開を進めるため、デジタル化、ネットワーク化の特質に応じて、著作権等の保護や利用の在り方に関する新たな法制度や契約ルールの検討を進め、世界最先端のデジタルコンテンツ流通促進の法制度等を2年以内に整備する。」(平成19年4月25日・経済財政諮問会議・説明資料「成長力加速プログラム」)

(2) 二次利用に当たっての課題の具体化

 「デジタルコンテンツの流通促進」の課題を、上記(1)のように捉えた場合、具体には、どのような分野でどういった課題があるか。
  前出の提言では、過去のTV番組が例として挙げられているが、放送分野以外の分野で、具体に課題となっている分野として想定できるものがあるか

 コンテンツに含まれる各著作物等の二次利用に関しては、集中的な許諾システムの構築が試みられているが、現状においては、以下のような取組が進められている。
1 権利の集中管理による取組
1 一任型による集中管理
 音楽(日本音楽著作権協会)、原作(日本文芸家協会)、脚本(日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会)、実演(日本芸能実演家団体協議会)、レコード(日本レコード協会)などの分野では、放送番組のネット利用などの二次利用について、著作権等管理事業法に基づく一任型による集中管理が行われている。

2 非一任型による集中管理
 美術(美術著作権協会)、翻訳出版(翻訳エージェント)、一部の実演(日本音楽事業者協会など)など、著作権等管理事業法の規制を受けず、非一任型による集中管理が行われている分野がある。

2 その他
1 団体間で一定のルールを形成し、そのルールを参考に個別許諾によっているものがある。例えば、社団法人日本俳優協会では、利用者との間でルールを定めているが、個々の歌舞伎俳優がそのルールを参考に個別許諾を実施している場合がある。

2 放送事業者等では、放送番組等に係る出演者等の情報を整理し保存することに取り組んでいる。

 その他、二次利用を行うかどうかの判断など、契約に入る以前の段階でなんからの問題になっているような事項はないか。(上記(1)23の課題のように、インターネット上の流通について、ビジネスとしてのインセンティブを阻害する要因はあるか、など。)

(3) 「デジタルコンテンツの流通促進」以外の課題意識等について

 上記(1)にあるように、現在、提唱されている「デジタルコンテンツの流通促進」は、インターネット以外の流通メディアを念頭に置かれて創作されたコンテンツを流通させることが念頭に置かれているが、デジタル化、ネットワーク化の下での著作物の利用形態、創作形態に応じた著作権制度の在り方を検討していく上で、このような課題意識で十分か。

 例えば、インターネットについて、既存の流通メディアと同じような意味での「流通」手段の一つとしては捉えきれない側面があるが、このような側面における著作物の利用形態、創作形態について、どう考えるか。
  例: 当初からインターネット上で創作が行われるコンテンツの存在。(ブログや掲示板等。⇒「制作」と「流通」の融合)
例: ネット上で、相互に改変、推敲等をし合うことによって、作品の完成度をより高めていく形態の創作。(従来から、特定者間で協力しつつ創作を行う形態はあるが、インターネット上の場合、不特定多数の者の間での協力となる。⇒全体をコンテンツとして捉えた場合の「制作」の終期の不明確化など、「制作」と「流通」の不分明化)

 また、インターネット上の流通以外にも、デジタル化されたことにより、多様な著作物の流通形態が今後想定されるが、なんらか考えられる問題はあるか。


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