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資料3−2

現行著作権法の「有線放送」関係規定に係る基本的考え方

1.放送の同時再送信

【現行法】
  有線放送 自動公衆送信
著作物 実演 レコード 著作物 実演 レコード
原則 だいかっこまる(23) ばつ(9221 (権利無し) まる(23) まる(92の2) まる(96の2)
(注) 非営利無料の場合には、第38条第2項、第102条の規定により、だいかっこ内について権利が制限(イコール無権利)されている

(1) 非営利・無料の同時再送信に係る権利制限(第38条第2項、第102条)
 昭和45年の現行著作権法制定当時は、非営利・無料の場合には、同時再送信以外の場合も含め、権利者の許諾なく有線放送できるとされていた。しかし、CATVの大規模化・多チャンネル化が予想されるようになったことから、有線放送一般について権利制限することは適当でないとされ、昭和61年改正において、放送の同時再送信に限って権利制限することとした。
【非営利・無料の同時再送信について権利制限が認められた理由】(昭和61年改正)
 共同受信組合等が行う難視聴解消のための再送信など従来から非営利かつ無料で行われてきたCATV事業についても有線放送権が働くようになることには、その社会的影響から問題がある。(「著作権審議会第7小委員会(データベースおよびニューメディア関係)報告書」(昭和60年9月))

(2) 営利又は有料の同時再送信に係る実演家の権利制限(第92条第2項第1号)
 現行法制定当初(昭和45年)より規定。
【有線放送による同時再送信について、実演家の権利が働かないとされている理由】
放送事業者の権利を通じて実演家の権利を実質的にカバーしてもらうことを予定して、法律上は、有線による同時再送信には実演家の権利が及ばないこととした。(加戸守行著『著作権法逐条講義(五訂新版)』(平成18年3月))
昭和45年制定当時においては、放送された実演の有線放送は、当初の放送の許諾に含まれる利用と考えることが相当な実態にあった。


2.自主放送

【現行法】
  有線放送 自動公衆送信
著作物 実演 レコード 著作権 実演 レコード
原則 まる(23) 生実演まる 固定された実演 固定されたレコード まる(23) 違法録画まる(92の2) 適法録画ばつ(92の22 まる(96の2)
録音 録画 録音 録画
違法固定まる 適法固定ばつ 違法固定まる 適法固定ばつ 違法固定 適法固定 違法固定 適法固定
(921 (9222 (権利無し)
商業用レコードの利用 まる(23) ばつ(9222 くろまる(95) くろまる(97) まる(23) まる(92の2) まる(96の2)

(1) 一時的固定制度の適用(第44条第2項、第102条)
 昭和61年改正において、有線放送事業者についても放送事業者と同様に、一時的固定制度を適用することとした。
【有線放送事業者に一時的固定制度の適用が認められた理由】(昭和61年改正)
  CATV事業者が自主制作番組を制作する場合、番組作成の過程においてあらかじめ録音、録画することは有線放送を行う上で必要であると考えられる。また、放送事業者に認めているのと同様に一時的な録音、録画を認めたとしても、そのことによって権利者の利益を不当に害することとはならないと考えられる。(「著作権審議会第7小委員会(データベースおよびニューメディア関係)報告書」(昭和60年9月))

(2) 許諾を得て録音・録画されている実演の有線放送(第92条第2項第2号)
 現行法制定当初(昭和45年)より規定。
【許諾を得て録音・録画されている実演の有線放送について、実演家の権利が働かないとされた理由】
 実演家は、その最初の実演の固定を許諾する際に、契約上、以後の利用について利益を確保する機会を有しており、また、その放送あるいは固定物による実演の使用については、放送事業者等がその放送等の利用に関して有する法律上または契約上の権利による管理も及ぶので、権利関係を簡明にするためにも、このような実演の利用に関しては、実演家に許諾権を認める必要はない。(「著作権制度審議会答申説明書」(昭和41年4月))

(3) 商業用レコードの二次使用(第95条、第97条)
 昭和45年の現行著作権法制定当時は、「放送事業者」及び「音楽の提供を主たる目的とする有線放送を業として行なう者」が二次使用料を支払うこととされていた。昭和61年改正において、二次使用料の支払義務は「有線放送事業者」全体に広げられた。
【有線放送事業者に商業用レコードの二次使用料の支払い義務を課した理由】(昭和61年改正)
 昭和45年制定当時におけるCATVは、放送の再送信がほとんどであったところからCATVにおける商業用レコードの使用を問題にするほどの実態にはなかったが、今日では自主放送が増えてきており、CATVの大規模化の傾向も見られるところから、商業用レコードがCATVで使われる場合は、レコードの通常予定している使用範囲を超えた利用としてCATV事業者にも商業用レコードの二次使用料の支払い義務を課すべきものと考えられる。(「著作権審議会第7小委員会(データベースおよびニューメディア関係)報告書」(昭和60年9月))


3.実演家・レコード製作者の送信可能化権

実演家・レコード製作者への送信可能化権の付与(第92条の2、第96条の2)
 平成9年改正において、実演家・レコード製作者に送信可能化権を付与した。
【実演家・レコード製作者に送信可能化権が付与された理由】(平成9年改正)
 わが国においても、リクエストを受けて行う音楽送信サービス等が普及しつつあるため、WIPOの新条約によって定まった国際的な考え方に従い、実演家及びレコード製作者について、このような権利を規定することが適切。(「著作権審議会マルチメディア小委員会審議経過報告」(平成9年2月))


4.著作隣接権

有線放送事業者等への著作隣接権の付与
 有線放送事業者については、昭和61年改正において、著作隣接権が認められた。送信事業者については、平成9年改正時に著作隣接権を付与することについて検討されたが、検討の結果、見送られた。
【有線放送事業者に著作隣接権が付与された理由】(昭和61年改正)
昭和45年制定当時は、難視聴地域の解消を目的とするものがほとんどであり、その法的保護を図らなければならない実態になかったため、隣接権を認めていなかった。
今後発展が予想されるCATVは、大規模化、多チャンネル化され、自主放送番組が増加することが考えられ、そこにおいて多くの著作物等が使用され、CATVが著作物等の有力な伝達媒体となることが考えられる。
CATVの今後の発展を考慮した場合、放送事業者に著作隣接権を認めたのと同様な事情(番組の制作、編成等の準創作的行為、また、そのために多大な時間と努力と経費を要しており、その第三者による利用を認めないことは不公平。)がCATVに認められる
(「著作権審議会第7小委員会(データベースおよびニューメディア関係)報告書」(昭和60年9月))

※参考:昭和61年改正当時の業務別施設数(上記報告書より)
  55年度 56年度 57年度 58年度 59年度
再送信 16,569 18,076 19,723 20,912 22,131
再送信及び自主放送 56 63 70 80 110
自主放送 17 16 19 28 31
合計 16,642 18,155 19,812 21,020 22,272


【送信事業者への著作隣接権の付与についての検討(※結果、付与せず)】
 平成7年に、送信事業者への隣接権の付与について以下のとおり検討を行った。(「著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループ検討経過報告 −マルチメディアに係る制度上の問題について−」(平成7年2月))
放送と送信の区別の見直しの観点から、送信事業者に隣接権を付与することを支持する意見がある一方、送信事業者と受信者の間の契約によって対応できるのではないか、放送の場合の番組編成のような準創作的行為が存在するのか、などの疑問も指摘された。
当面、送信事業者のうちデータベースを提供する者に限り隣接権を付与するとの意見もあったが、データベースについては、その著作者等を保護すれば足りるとの意見もあり、これらの保護と送信事業者の保護との関係を更に考慮する必要があると考えられる。


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