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参考資料3

著作権法に関する今後の検討課題 (抄)

平成17年1月24日
文化審議会著作権分科会



<目次>

はじめに

  1 著作権法に関する今後の検討課題

1.基本問題
(1) 私的録音録画補償金の見直し
(2) 権利制限の見直し
(3) 私的使用目的の複製の見直し
(4) 共有著作権に係る制度の整備
(5) 著作物の「利用権」に係る制度の整備
(6) 保護期間の見直し
(7) 政令等への委任
(8) 表現・用語の整理等

2.デジタル対応
(1) デジタル化時代に対応した権利制限の見直し
(2) 技術的保護手段の規定の見直し
(3) 放送新条約(検討中)に係る制度の整備

3.契約・利用
(1) ライセンシーの保護
(2) 契約規定全般の見直し
(3) 登録制度の見直し

4.司法救済
(1) 間接侵害
(2) 損害賠償・不当利得等





著作権法に関する今後の検討課題

はじめに

 今期の法制問題小委員会では、特に平成以降引き続いた既存の条約への対応をほぼ終えた今日において、重要性・緊急性などにかんがみ、今後優先して対応すべき著作権法上の課題を、大局的・体系的な視点から抽出・整理することを目的として検討を進めてきたところである。
 検討の過程においては、昨年5月に知的財産戦略本部において策定された「知的財産推進計画2004」のほか、今回改めて募集した関係団体からの著作権法改正に関する要望事項や、当該改正要望等に対する国民や各府省からの意見なども参考材料としながら、「知的財産立国」を推進する立場から、1著作権者・著作隣接権者が安心できる法制度、2著作物の流通・利用が円滑化する法制度、3国民が理解しやすい法制度という三つの観点の調和に留意しつつ、著作権法に関する今後の検討課題を、1のように取りまとめた。
 また、近年の著作権法改正の事実上の前提要件ともなっていた関係者間における協議の位置付けについても、この機会にあわせて再考を行い、2のように結論を得た。

 個別の事項に関する具体的な検討は、今後、法制問題小委員会が中心となって行うが、必要に応じてワーキングチームを設けるなど、効率的に検討を進めることが適当であると考えられる。検討への早期着手は望まれるものの、必ずしも早期に結論を得ることは容易でないことが見込まれる課題も少なくなく、検討課題全体の検討には少なくとも3年程度は要すると考えられるが、比較的短期間で結論が出ることが見込まれるものに関しては、平成17年秋頃を目途に報告を取りまとめることが望まれる。
 なお、1に掲げた検討課題は、あくまでも現時点で検討の対象とすることが適当であると考えられる課題であって、必ずしも法改正を行うことが必要であるとの判断にまで及んでいるものではないことに留意願いたい。

1 著作権法に関する今後の検討課題
 

1.基本問題

(法制問題小委員会において検討)
(1)私的録音録画補償金の見直し(別添1参照)
  1  ハードディスク内蔵型録音機器等について、政令による追加指定に関して、実態を踏まえて検討する。
2  現在対象となっていない、パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ、データ用CD-R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体の取扱いに関して、実態を踏まえて検討する。
3  現行の対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式に関して、法技術的観点等から見直しが可能かどうか検討する。

(2)権利制限の見直し
  1  特許庁が特許出願に対して拒絶理由通知で引用した文献の複製、薬事行政に従って厚生労働省や医療機関に対する情報提供義務を果たすためになされる学術文献の複製等、行政手続等のための利用に係る権利制限の拡大に関して検討する。
2  図書館関係、学校教育関係及び福祉関係の権利制限の拡大に関して検討するとともに、これらの権利制限規定により認められる利用の範囲の明確化についても検討する。
3 規律の明確性を確保しつつ、対応の迅速性・柔軟性を備える法制を目指して、例えば、学校教育関係や福祉関係など、権利制限のうち適当な事項を、政令等へ委任することに関して検討する。

(3)私的使用目的の複製の見直し
   「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」第9条第2項や「著作権に関する世界知的所有権機関条約」第10条では、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しない場合には、権利制限が可能とされている。このような条約上の制約や私的使用目的の複製の実態を踏まえて、認められる範囲の明確化など、私的使用目的の複製の見直しに関して検討する。

(4)共有著作権に係る制度の整備
   近年、映画やゲームソフトの製作等に関して共同企業体が著作権者となることが多くなっているところ、このような共同著作物に係る共有著作権の行使について、持分割合による多数決原理を導入することや、共有著作権の譲渡について、他の共有者が不同意の場合に譲渡人を保護する方策等、他の共有者の利益との調整を図るための制度の整備に関し、人格権との関係にも留意しつつ、検討する。

(5)著作物の「利用権」に係る制度の整備
   著作権者から利用の許諾を受けたライセンシーには、産業財産権のように物権的な権利が与えられておらず、第三者に当該著作物を利用されている場合に差し止めることができない。このため、実務上、利用できる期間や地域などが限定された形で権利の譲渡を受け、当該著作物を利用するという方法が採られる場合もあるが、このような方法は、法律関係を複雑にするため、必ずしも好ましくない。
 そこで、著作物の「利用権」について、産業財産権のように著作権法上明確に位置付けて、物権化することや、第三者への対抗要件として独占的な利用許諾を登録する制度を創設すること等に関して検討する。

(6)保護期間の見直し
  1  欧米諸国において著作権の保護期間が著作者の死後70年までとされている世界的趨勢等を踏まえて、著作権の保護期間を著作者の死後50年から70年に延長すること等に関して、著作物全体を通じての保護期間のバランスに配慮しながら、検討する。
2  いわゆる戦時加算特例(注)の廃止に関して検討する。

(注) 戦時加算特例とは、戦後締結されたサンフランシスコ平和条約第15条(c)の規定に基づいて制定された「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律」(昭和27年法律第302号)に規定されているもので、連合国又は連合国民が戦前又は戦中に取得した著作権の保護期間について、太平洋戦争の開始時(昭和16年12月8日)(戦中に取得した著作権については当該取得時)から、日本国と当該連合国との間に平和条約が効力を生じた日の前日までの期間に相当する日数(国によって当該平和条約の批准時が異なるため、加算される期間も異なる。例えば、米・英・仏等に関しては最長3,794日)を加算する措置。

(7)政令等への委任
   権利制限規定以外の規定についても、情報技術の進展など社会情勢の変化に機動的に対応し得るよう、法技術的な観点等から政令等への委任が可能かどうか検討する。

(8)表現・用語の整理等
  1  実質的内容に変更を加えるか否かとは別に、分かりやすい著作権法とするため、条文の表現をより平易化することや、正確化することなど、規定を整理することに関して検討する。
2  「著作者と著作権者」等の用語の整理に関して検討する。

2.デジタル対応

(ワーキングチームにおける検討を踏まえ、法制問題小委員会において検討)

(1)デジタル化時代に対応した権利制限の見直し
   キャッシング等通信過程の効率化を目的とする複製、機器内で不可避的に生じる一時的な蓄積(複製)、機器の保守・修理に伴う複製等について、権利制限を拡大することに関して検討する。

(2)技術的保護手段の規定の見直し
   著作物の流通の変化に伴う、権利保護技術の多様化を踏まえて、技術的保護手段の規定の見直しを検討する。

(3)放送新条約(検討中)に係る制度の整備
   現在、世界知的所有権機関(WIPO)で行われているいわゆる放送新条約の検討状況を踏まえて、放送事業者への放送前(まえ)信号に係る権利、譲渡権等の付与等に関して検討する。

3.契約・利用

(ワーキングチームにおける検討を踏まえ、法制問題小委員会において検討)

(1)ライセンシーの保護
   これまで契約・流通小委員会で行われてきた検討の成果を基に、著作権が譲渡された場合や著作権者が破産した場合等においてライセンシーを保護するため、契約上の地位を第三者に主張し得る制度に関して、他の知的財産権法における検討状況を踏まえつつ、検討する。

(2)契約規定全般の見直し
  1  権利制限規定と契約との優先関係等、著作権法と契約法との関係性に関して整理・検討する。
2  我が国の著作権法には契約に関する規定が少ない状況であるところ、私的自治を尊重しつつ、契約に係る所要の規定の整備を検討する。

(3)登録制度の見直し(別添2参照)
  1  今後の登録制度の利用の促進を図る観点から、登録手続の電子化の推進に関して検討する。
2  共有著作権、著作物の「利用権」及びライセンシーの保護に係る制度整備等との関連で、登録制度を見直すとともに、原始的著作権者の登録制度の創設等に関して検討する。

4.司法救済

(ワーキングチームにおける検討を踏まえ、法制問題小委員会において検討)
(1)間接侵害
   著作権法には、特許法等と異なり、間接侵害規定が設けられていないところ、これまで司法救済制度小委員会で行われてきた検討の成果を基に、他の知的財産権法との整合性の観点も踏まえて、間接侵害規定を創設することに関して検討する。

(2)損害賠償・不当利得等
   これまで司法救済制度小委員会で行われてきた検討の成果を基に、法定賠償制度の創設等を含めて、著作権侵害に係る損害賠償請求や不当利得返還請求等の役割・機能等に関して総合的に検討する。

(備考)
  1.  著作者人格権に関しては、法制問題小委員会とは別に、外部の専門的な有識者グループに基礎的な研究を委託し、理論的・体系的な整理を、まず行うことが適当である。
2.  裁定制度の在り方に関しては、法制問題小委員会における検討に先立ち、契約・流通小委員会において、著作物の利用を促進する観点から、権利者の保護の観点にも留意しつつ検討を行うことが適当である。
3.  「1.基本問題」に列挙されている課題に関しては、まず法制問題小委員会において検討を行うが、課題によっては、必要に応じてワーキングチームにおいて検討を行うものとする。
 なお、新たなワーキングチームを追加することもあり得る。


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