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「著作権法に係る検討事項(仮題)」の整理に向けた意見について

委員名 中村 伊知哉
使いやすく分かりやすい制度の再構築

 デジタル化、ネットワーク化は、人類が情報を交換し、共有することを通じて新しい価値を生む環境を提示することに本質があります。誰もが創造者・表現者になる力をもたらす点にあります。その技術が爆発的に普及しつつある現在は、千年に一度の転換期であり、新しい時代の制度的枠組みを考えるチャンスにあります。複製と流通を促進するものとして登場してきたデジタル技術に、将来も複製・流通規制で対応しようとするのかどうか。

 デジタル化の進展は、情報の生産・流通・消費のインターフェース条件である著作権制度にも、根本的な見直しを求めています。デジタル時代における権利者と公共の利益とのバランス、あるいは権利の強化と文化の発展とのバランスを図って社会厚生を最大にするため、まとまった要望となりにくい利用者の意向をどう制度に反映させるメカニズムを構成するか、いかに使いやすくわかりやすい制度とするか、が問われています。

 このため、知的財産推進計画第4章にもあるように、著作権法の簡素化や一般的な権利制限規定の導入を検討すること等により、分かりやすい新法制を目指すのが妥当と考えます(37、38、141)。個人的には、今後の情報社会を支えるこどもたちが臆せずに著作物を活用して自己表現する環境を用意するため、一定年齢以下の者の利用は自由とする等の策も検討してよいと考えます。

 こうした長期的・抜本的な法制度のあり方を検討するには時間を要しますが、同時に各種権利に係る案件を処理する作業も必要なことから、少数の専門家からなる新法タスクフォースを別途立ち上げ、時間をかけて原案を起草することを提案します。

 また、こうした要請を全て立法で対応するのは困難です。より使いやすい制度とするため、あっせん・仲裁制度の改善、法定賠償制度等紛争処理や司法の機能の充実、さらには著作権に関する教育など情報リテラシーの涵養といった各種公的機能や行政サービスの向上・充実にも力を入れるべきと考えます(120、123、124)。

日本の特性に照らした施策

 日本の情報社会の特性として、ツール偏重でコンテンツへの資金流入が少ないこと、放送コンテンツの比重が大きいこと、の2点が挙げられます。

 ブロードバンドや携帯電話インターネットの普及等により、情報通信メディア全体の市場規模はこの7年で47%の成長をみせ、その間の発信情報量(情報流通センサス)は6倍に達している反面、コンテンツ産業は6%弱の成長しかみせていません。機器やネットワークなどのツールとコンテンツの分配を政策的に調整する手法として、私的録音録画補償金は一つのモデルであり、制度拡充の是非は検討に値すると考えます(46)。

 また、放送コンテンツ、取り分けテレビ・コンテンツが情報流通・利用に占める位置づけの高さにかんがみ、それを国民の資産として活用しやすくすることは重要な政策です。NHKはじめ各種機関の放送コンテンツを通信その他の手段で円滑に流通できるよう、通信と放送の融合策を推進すべきと考えます。

 しかるに電気通信役務利用放送に係る事業が円滑に離陸しない一因は、政府部内の有線放送に関する解釈が異なるためと側聞します(33)。立法措置を要する場合はともかく、政府部内の見解を統一することで事態が明確になるような案件、政令以下で対応可能な案件は、政府の姿勢を示す意味でも迅速に処理することが妥当と考えます。



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