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文化審議会

2004年8月30日 議事録
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第1回)議事録


1 日時   平成16年8月30日(月曜日)10時31分〜12時10分

2 場所   経済産業省別館10階 1020号会議室

 出席者
(委員)
飯村,大渕,加藤,小泉,潮見,末吉,茶園,土肥,苗村,永井,中村,
中山,浜野,前田,松田,村上,森田,山地,山本の各委員
(文化庁)
加茂川次長、森口長官官房審議官、吉川著作権課長、池原国際課長
ほか関係者

 議事次第
 開会
 委員及び文化庁出席者紹介
 議事
(1) 法制問題小委員会主査の選任等について
(2) 文化庁次長あいさつ
(3) 著作権制度に係る今後の検討方針について
(4) 自由討議
(5) その他
 閉会

 配布資料
資料1   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会委員名簿
資料2   文化審議会著作権分科会の議事の公開について
(平成16年8月2日文化審議会著作権分科会決定)
資料3   小委員会の設置について
(平成16年8月2日文化審議会著作権分科会決定)
資料4−1   著作権法の一部を改正する法律の概要
資料4−2   著作権法の一部を改正する法律案資料
資料5   知的財産推進計画2004(著作権関係部分の抜粋)
資料6   法制問題小委員会審議予定(案)

参考資料1   文化審議会関係法令等
参考資料2−1   文化審議会著作権分科会委員・専門委員名簿
参考資料2−2   文化審議会著作権分科会各小委員会委員名簿
参考資料3   文化審議会著作権分科会報告書(平成16年1月)
参考資料4   著作権法改正要望について(照会)(平成16年8月4日付事務連絡)

 議事内容
吉川著作権課長
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会」の平成16年度第1回を開催いたします。
 本日は、御多忙中にもかかわらず、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
 私は、著作権課長の吉川でございます。本日は、法制問題小委員会の最初の会議ということでございますので、この後、すぐ主査を選任していただくことになりますけれども、それまでの間は、私が進行役をさせていただきますので、御了承いただきたいと存じます。
 それでは、初めに、今回、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の委員に御就任をされました委員の方々をお座りになっていらっしゃいます順番に御紹介させていただきたいと存じます。
 資料1でございますが、名簿がございますので、御参照いただきたいと存じます。
 まず、飯村委員は後ほど、11時ごろ御到着の予定でいらっしゃいます。それから、石井委員は、本日御欠席でいらっしゃいます。大渕委員も遅れて来られるようでございます。加藤委員でいらっしゃいます。
 
加藤委員
 加藤でございます。よろしくお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 小泉委員でいらっしゃいます。
 
小泉委員
 小泉でございます。
 
吉川著作権課長
 次の里中委員は、本日御欠席でいらっしゃいます。潮見委員でいらっしゃいます。
 
潮見委員
 潮見です。よろしくお願いします。
 
吉川著作権課長
 末吉委員でいらっしゃいます。
 
末吉委員
 末吉でございます。よろしくお願いします。
 
吉川著作権課長
 茶園委員でいらっしゃいます。
 
茶園委員
 茶園でございます。よろしくお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 土肥委員でいらっしゃいます。
 
土肥委員
 土肥でございます。よろしくお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 苗村委員でいらっしゃいます。
 
苗村委員
 苗村です。よろしくお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 永井委員でいらっしゃいます。
 
永井委員
 永井です。
 
吉川著作権課長
 次は、お座りの順番ですと齊藤分科会長でございますが、後ほどいらっしゃるものと思われます。
 それから、中村委員でいらっしゃいます。
 
中村委員
 中村でございます。よろしくお願いします。
 
吉川著作権課長
 中山委員でいらっしゃいます。
 
中山委員
 中山でございます。よろしくお願いします。
 
吉川著作権課長
 次の野村委員は本日御欠席でいらっしゃいます。
 浜野委員でいらっしゃいます。
 
浜野委員
 浜野でございます。よろしくお願いします。
 
吉川著作権課長
 前田委員でいらっしゃいます。
 
前田委員
 前田でございます。よろしくお願いします。
 
吉川著作権課長
 松田委員は遅れて来られるようでございます。
 村上委員でいらっしゃいます。
 
村上委員
 村上でございます。
 
吉川著作権課長
 森田委員でいらっしゃいます。
 
森田委員
 森田です。よろしくお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 山地委員でいらっしゃいます。
 
山地委員
 山地でございます。
 
吉川著作権課長
 次の山本委員は11時ごろ御到着の御予定であります。
 ただいま松田委員が御到着になりましたので、御紹介申し上げます。松田委員でいらっしゃいます。
 
松田委員
 松田でございます。
 
吉川著作権課長
 以上でございます。
 続きまして、文化庁の関係者を御紹介させていただきます。
 まず、加茂川文化庁次長でございます。
 
加茂川文化庁次長
 よろしくお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 森口文化庁長官官房審議官でございます。
 それから、池原国際課長でございます。
 
池原国際課長
 どうぞよろしくお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 川瀬著作物流通推進室長でございます。
 それから、私の左でございますが、山口著作権調査官でございます。
 
山口著作権調査官
 よろしくお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 以上でございます。
 それでは、議事に入りますが、まず事務局の方から配付資料の確認をさせていただきます。
 
山口著作権調査官
 それでは、念のため資料確認をさせていただきます。
 お手元の議事次第の1枚ものの下半分が配布資料一覧となっております。全部で資料は12点ございますが、右肩にすべて番号を打っておりますので、御照合の上、万一不足等ございましたら事務局までお知らせください。
 念のため読み上げますが、資料1が法制問題小委員会の委員名簿、2が議事公開に係る分科会決定、3が小委員会の設置に係る分科会決定、4−1が著作権法改正概要、4−2が改正法案資料の冊子、5が知財推進計画2004の抜粋版、6が法制問題小委員会の審議予定(案)。
 そのほか、参考資料としまして、1が審議会の関係法令、2−1及び2−2が分科会あるいは各小委員会の委員名簿、3が前期の分科会報告書。最後に、参考資料4として、著作権改正要望の照会文書。以上となっております。
 
吉川著作権課長
 もし欠落がございましたら、事務局まで御連絡をいただきたいと存じます。
 それでは、最初の議事といたしまして、本小委員会の主査の選任をお願いいたしたいと思います。
 選任の方法につきましては、著作権分科会運営規則の規定にのっとりまして、これは参考資料1として配布資料の中にございますが、その11ページ真ん中より少し下の第3条というところにございますように、小委員会に属する委員の互選により選任するとなっております。これにつきましては、事務局といたしまして、昨年度も主査をお務めいただきました中山委員に今年度もお願いを申し上げてはどうかと存じますけれども、皆様いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)
 
吉川著作権課長
 ありがとうございます。
 御異論がないようでございますので、中山委員を主査として選出することとして御承認をいただきたいと存じます。
 それでは、中山委員には大変恐縮でございますけれども、主査席の方へお移りをいただきたいと思います。
 これからの議事進行につきましては、中山主査にお願いを申し上げます。
 
中山主査
 それでは、御指名でございますので、主査を務めさせていただきたいと思います。
 著作権法の改正が従来行われてきましたけれども、これからも行っていかなければいけないわけです。言うまでもないことですけれども、あらゆる制度は有機的に結びついております。著作権法といえども例外ではないわけでして、著作権法の枠内だけで解決のつく問題もありますけれども、多くは他の分野、知的財産法全体であるとか、あるいは不法行為法全体、あるいは訴訟制度全体に目配りをして議論をしていかなければならないだろうと考えております。
 その意味で、この小委員会は従来と比べますと学識経験者を中心に構成されておりますので、より大局的、より体系的な議論をしていただけるのではないかと期待をしております。これからは情報公開によりまして、この会議の内容も当然公開されるようになると思いますし、また、特に著作権制度は外部から注目されておりまして、この審議会を注視している方も世の中には大勢おります。どこへ出しても恥ずかしくないような議論をしていただきたいと思います。
 それでは、まず、文化審議会著作権分科会運営規則の規定に基づきまして、主査代理を指名させていただきたいと思います。
 これは規定の第3条第5項でございますけれども、私といたしましては、本日は都合により御欠席でございますけれども、野村豊弘委員にお願いをしたいと思いますので、よろしく御承知おきをくださいますよう、お願いいたします。
 次に、議事内容に入ります前に、本小委員会の会議の公開の扱いにつきまして、事務局より説明をお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 それでは、資料2を御覧いただきたいと存じます。
 文化審議会著作権分科会の議事の公開についてという資料でございます。これは、去る8月2日、著作権分科会において決定になったものでございますので、ある意味では御確認をいただきたいということでご説明を申し上げます。
 この決定によりますと、分科会の議事、1行目でございますが、括弧しまして、小委員会の議事を含むとございます。すなわち、この小委員会の議事を含んで、公開についてこの分科会の決定によりまして取扱いが決められております。
 まず、以前からの変更の点を中心にしてご説明を申し上げます。
 会議の公開についてでございますが、これはより積極的に公開をする方向を打ち出しております。特に、順番は逆転いたしますけれども、3の会議の傍聴の(3)に一般傍聴者とございます。これまで著作権分科会の議事は報道関係者及び委員の随行の方ないしは各府省の関係者には公開になっておりましたけれども、一般の傍聴者ということでの公開はございませんでした。ここが新しく加わっているわけでございます。
 具体的には、開催日の前日の17時までに事務局に申込みを行っていただいて、そして、原則として申込順に傍聴を許すということになっております。また、余りにも多数の場合には制限をするということがございます。
 このこともございまして、少し戻りますが、2のところに会議の日時、場所、議事を原則として会議開催日の1週間前の日までにホームページなどで情報公開をするとなっております。この情報を見まして申し込んでいただくということになります。ここも新しく加わっております。
 続きまして、例えば4、5のように、分科会長が許可をした場合を除き、この小委員会の場合には主査でございますけれども、会議開始後の入室、撮影、録画、録音、その他の議事進行の妨害となる行為は禁止する。あるいは主査の判断によりまして議事進行が妨げられているという場合には退場を命ずるなどの必要な措置をとることができるという、念のための規定がございます。
 それから、6でございますが、これも新たに公開が進められております。議事録は、原則として、発言者名を付して公開するとなっております。これまでは、発言者名は付しておりませんでしたが、一歩進めまして、発言者名を付させていただくということになっております。ただし書がございまして、支障があるという場合には、議事録の全部または一部を非公開とするということとなっておりまして、さらに7で、その場合には議事要旨を作成し、公開するということで透明性を高めております。
 また、会議資料はこれまでどおり原則として公開するということになっております。まとめて申し上げますと、一般傍聴者を認めること、そのために1週間前の日までにホームページなどで情報公開をすること、議事録を発言者名を付して公開するということを原則とすること、この3点が議事の公開について前進をした点でございます。
 以上、御説明とさせていただきます。
 
中山主査
 議事の公開の方針につきましては、これまで分科会及び小委員会での御意見もあったところでございますけれども、ただいま課長の方から御説明ありましたように、議事の内容の公開を一層進めるという趣旨から、先日行われました著作権分科会におきまして、これまでの公開の方針を変更する旨、事務局より提案があり、ただいまの御説明のとおり決定があったところでございます。
 本日、ここまでの案件につきましては、人事に係る案件ということで、この決定に基づきまして非公開といたしましたけれども、これ以降は、本日予定されている議事内容にかんがみますと、特段非公開にする理由はないようでございますので、公開にしたいと思いますけれども、その点、御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)
 
中山主査
 それでは、そういうことにさせていただきたいと思います。
 それでは、傍聴の方がおられましたら、入場してくださるようお願いいたします。

(傍聴者入場)
 
吉川著作権課長
 この機会を利用しまして、ただいま大渕委員がいらっしゃいましたので、御紹介させていただきます。大渕委員でいらっしゃいます。
 
大渕委員
 東京大学の大渕でございます。よろしくお願いします。
 
中山主査
 それでは、第1回法制問題小委員会の開催に当たりまして、加茂川文化庁次長より御挨拶を頂戴したいと思います。
 
加茂川文化庁次長
 今期第1回目の法制問題小委員会でございますので、事務局を代表して、一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 委員の皆様方におかれましては、大変御多用の中、本小委員会の委員をお引き受けいただきましたことを改めて御礼を申し上げたいと思います。
 また、いつも同じことを申し上げるようで恐縮でございますが、知的財産権に関する政府全体の取組、その進展には目まぐるしいものがあるわけでございます。御存じのような知的財産基本法の成立、あるいは同法に基づきます知的財産推進計画の策定・見直しなど、いわゆる知的財産立国の実現に向けた政府挙げての取組が着実に進展をしているわけでございます。
 こうした取組の中、私ども文化庁といたしましても著作権の分野において、こういった取組に十分対応した施策を着実に進めてまいったわけでございます。これも著作権分科会あるいは本小委員会の委員の皆様方から精力的な御審議を受け、迅速に基本的な方向を示してくださった成果であると、私ども大変ありがたく思っておるわけでございます。改めて御礼を申し上げたいと思います。
 特に、本年1月にいただきました著作権分科会報告書の内容につきましても、この法制問題小委員会において法改正についての御提言をいただいたわけでございますし、関連の法改正等、関係施策を私ども着実に進めてまいったわけでございます。
 ただ、著作権をめぐる環境、諸問題につきましては、変化がどんどん進んでいくということもございますけれども、私ども、条約でありますとか、個別的な課題の対応のために、これまで先生方の御指導を得ながら対応してまいりましたが、いわば改正に次ぐ改正、制度改正に次ぐ制度改正ということで随分努力をしてまいったのですが、なお問題、課題が残っているという現状にあることを認めざるを得ないわけでございます。
 ただ、一方で、一応、既存の条約への対応を終えた今日においては、少し落ち着いて大局的な見地に立って著作権制度はどうあるべきかですとか、あるいは制度全体として改めてどのような課題がどういう優先順位で残っているのかということを踏まえた上での検討が求められているのではないかと思っているわけでございます。
 委員の皆様方は大変お忙しいことは私どもよく存じておりますけれども、お手数をかけて恐縮でございますが、そういった視点から今後の著作権制度の更なる改善に向けての方向性をお示しいただければ大変ありがたいと思うわけでございます。活発な御議論をお願い申し上げまして、簡単ながら、御挨拶とさせていただきます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 
中山主査
 ありがとうございました。
 次に、本小委員会の設置の趣旨や所掌事務に関しまして、事務局から説明をお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 それでは、資料3を御参照いただきたいと存じます。
 資料3は、小委員会の設置についてでございます。これも去る8月2日の著作権分科会において決定された内容でございます。
 まず、今回の著作権分科会におきましては、3つの小委員会が設置されました。本法制問題小委員会もその1つでございます。これは1にございます。
 それでは、2にございますように、法制問題小委員会の課題について御説明を申し上げます。
 法制問題小委員会は、著作権の法制の在り方と、そして、著作権に関する司法救済制度の在り方について御検討いただくということとされております。これは、従前は、もう1枚めくっていただきますと、2ページ目には参考として前期の分科会の構成というものが下の方に示されております。司法救済制度小委員会という、小委員会が前期はございました。今期につきましては、この司法救済の問題を法制問題の中にとらえて議論していただいたらどうかということで、あえて司法救済制度小委員会は設けられておりません。
 なお、見ていただいたついでに、上の方の今期の分科会の構成を見ていただきますと、法制問題小委員会の下に破線でマルマルWGとございます。この意味は、法制問題小委員会で検討を進めていただいた上で、必要に応じて課題ごとにワーキンググループを設置して審議を加速するという、そういう手法も今回とってはいかがかという意味でございます。例えば、司法救済も1つの課題として取り上げるということであれば、このワーキンググループを設置して議論していただくというようなことも考えられると存じます。
 前期との違いは、司法救済制度の在り方を法制問題小委員会の検討事項にするという点でございます。
 著作権の法制の在り方ということにつきましては、前期から法制問題小委員会で御議論をいただいているところでございます。
 また、1枚目に戻っていただきまして、3の各小委員会の構成でありますけれども、委員、臨時委員及び専門委員により構成する。これは、分科会長の御指名でございまして、本日の名簿のとおり御指名がなされております。
 なお、分科会長は会議に出席し、随時発言することができることとされております。
 以上で御説明とさせていただきます。
 
中山主査
 続きまして、著作権法制にかかわる動向につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
 
山口著作権調査官
 それでは、最近の著作権に関する動向ということで、事務局から簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 資料としては、4−1、4−2、5の3点を御参照ください。
 まずは、資料4−1及び4−2の著作権法改正についてですが、これは先の第159回通常国会で政府提案として提出され、6月に成立したものでございます。概要としては、4−1にあるとおり3点ございまして、第1に音楽レコードのいわば還流を防止する措置。第2に書籍・雑誌に無断で貸与されない権利、すなわち貸与権を付与するというもの。最後に罰則の強化という3本柱となっております。
 それぞれ簡単に趣旨等を申し述べますと、まず1つ目の音楽レコードの件に係る改正の趣旨、狙いとしましては、近年、特にアジア地域において日本音楽のニーズが高まっておりますところ、現地におきましては、日本の権利者から日本における販売禁止を条件としてライセンスを得て生産されたはずの日本の音楽レコードが、そうした当該契約が及ばない第三者を経由するという形を経ることで、結局のところ日本に逆輸入、いわば還流してきてしまっているという実態がございます。
 そこで、日本の権利者がいざ海外に展開を図ろうとしましても、そういった現地で生産、販売されている日本の音楽レコードというのは、物価等の関係から大変安価なものとなっておりますので、ライセンスの結果、そうしたものが日本に還流してきてしまうようでは、かえって権利者の経済的利益が大きく損なわれかねない、そういった事態を懸念しまして、なかなか積極的な海外展開に踏み切れないというジレンマが生じておりました。
 そうした状況下にありまして、我が国の音楽文化の海外普及を促進するために、作詞家や作曲家、あるいは実演家やレコード製作者などといった権利者の方々が、こうした逆輸入の行為を、さらには国内における頒布目的所持といったような行為を、一定要件の下で著作権等侵害とみなすことができるということにしたものであります。
 趣旨は以上のようなところでございますが、具体の制度設計に当たりましては、様々な要件を慎重に設けることで、それら要件をすべて満たした場合に初めて権利行使できるということにすることで、消費者利益等とのバランスに配意したところでございます。
 概要として申し上げますと、第1に、条文が入り組んでいて少々読みにくくなっておりますが、日本で同一の音楽レコードが販売されているということ、これが前提となっております。したがって、例えばそもそも日本で販売されていない音楽レコードというものは、引き続き輸入自由だということであります。
 第2に、日本販売禁止の音楽レコードであって、かつその事実を認識しているということ。この点は、実務上税関においては、一定の表示のないものについては、基本的に差止めの対象外となることを予定しております。
 第3に、日本において頒布する目的での輸入、あるいは日本における頒布目的での所持であったりすること。したがって、例えば個人的な利用目的での輸入については、これも引き続き自由ということです。
 さらに、4点目としては、還流によって権利者が得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなること。すなわち、物価等を反映しているところのライセンス料に著しい差がない地域からのものについては、この点でも対象外となってくるという設計としております。
 そして、期間の点でも、対象となるのは、日本で最初に発行されてから、今後政令で定めることとなります期間を経過していないものに限られます。
 概要として以上のような限定を幾重にもかけることで、消費者利益等との調和を図ったところでございます。
 次に、2番目の柱である書籍・雑誌の貸与権の付与についてですが、これは沿革としまして、著作権法上に貸与権が創設された昭和59年当時には、経過措置として当分の間、書籍・雑誌については貸与権を適用しないこととしておりましたが、近年、レンタルブック店の大規模な事業展開等により著作者の経済的利益に大きな影響が見受けられるようになってきたという状況変化を踏まえまして、当該経過措置を廃止して、すなわち、もともとの原則に立ち返りまして、書籍・雑誌についても著作者の貸与権が及ぶこととしたものでございます。
 最後に、3つ目の柱、罰則の強化についてですが、これは近年の情報技術の発達・普及に伴い、著作権等の侵害可能性が拡大に増大してきている状況を踏まえまして、著作権等侵害の懲役刑や罰金刑の上限を特許権、商標権並みに、具体的にはそれぞれ5年以下あるいは500万円以下、などと引き上げるとともに、知財関係法としては初めてとなりますが、これらの併科を可能としたものでございます。
 この併科の導入につきましては、一般的な抑止力向上ということもございますが、懲役刑の方にしばしばそうでございますように、執行猶予がついてしまいましても、罰金刑の方で実刑とすることができるという点に実益がございます。
 全体としまして、改正法の施行日は平成17年1月1日ということになっておりますが、資料4−1の中に3か所、アステリスクのマークを付しておりまして、それぞれ一定の経過措置を設けているところでございます。
 引き続きまして、資料5の方を御参照ください。
 こちらはいわゆる知財推進計画の抜粋版でして、昨年の7月に内閣官房の知的財産戦略本部で策定された後の進捗状況を踏まえまして、今年の5月に「知財推進計画2004」として見直しが図られたものです。この新しい知財推進計画には、政府全体では約400の施策が登録されておりますところ、そのうち特に著作権に関係が深いものとしては、数え方にもよりますが、約60項目ございます。これを便宜のため抜き出しまして、1ページめくっていただきますとございます目次にあるような、4つの分野に再編集したところです。4つの柱に分けておりますが、本法制問題小委員会に特に関係が深いのは最初の4ページ分、すなわち「司法救済制度関連」も含めた「法律ルールの整備」のところでございます。
 なお、全体としましては、時点更新、表現の適正化等を含めればほぼすべての項目に何らかの修正が施されておりますので、ここでは主な変更点についてのみ簡単に言及させていただくにとどめたいと思います。
 簡単に触れてまいりますと、まず1つ目の分野として、「法律ルールの整備」ですが、1ページ目から2ページ目にかけて、<権利者への利益還元のための基盤整備>として7つの項目が挙がっております。ただ、このうち実質的な新規項目は、一番最後の「電気通信役務利用放送の著作権法上の位置付けの検討」のみでして、あとは基本的に時点更新等のみとなっております。
 なお、2ページ目頭の「音楽レコードの還流防止」につきましては、先ほど法改正の概要として簡単に御紹介したところですが、知財推進計画上では今後こういうことが必要だということがうたわれているところです。
 先に進みますと、2ページ目の一番下の<権利者の利益と公共の利益とのバランスへの留意>、あるいは3ページ目の<デジタル時代に対応した法制度のあり方についての検討>、これらはいずれも新規追加項目となっております。
 それから、4ページ目にまいりまして、「司法救済制度関連」につきましては、最後の<インターネットを利用した侵害の取締り強化>、ファイル交換ソフトなどのところですが、ここが新規に追加されております。
 次に、5ページ目に移りまして、2つ目の分野として「円滑な流通の促進」です。ここでは、2つ目の項目中の「裁定制度の手続の見直し」ですとか、3つ目の項目である<コンテンツに対する評価手法の確立や情報開示の推進>、そういった環境整備。さらには、一番下の「標準著作権契約書の在り方」、そういったところが新たに追加されております。
 続いて、7ページ目から13ページ目までになりますが、3つ目の分野として、「国際的な課題への対応」です。ここは新規追加だけでも10項目以上と分量がございますので、詳細は割愛させていただきますが、全般として特に模倣品・海賊版対策の強化につき各般の強化がうたわれております。
 例えばということで若干だけ拾ってみますと、新規追加事項としましては、8ページ目の上から3つ目になりますが、「海外輸出統一マークの導入支援」ですとか、9ページ目の中段辺り、<侵害状況調査の実施>というようなこと。あるいは新規というより、より一層具体的に記載されたものとしまして、11ページの下段になりますが、政府内の連携体制強化ということで、「一元的窓口の設置」などといった項目などがございます。
 そして、最後、14ページ目になりますが、4番目の「著作権教育の充実」分野については、2つ目の項目にある<コンテンツに関するルール及びモラルの向上>の部分が新規追加となっております。
 以上、足早で恐縮でございますが、最近の著作権に関する動向ということで事務局から簡単に御紹介させていただきました。
 
中山主査
 それでは、引き続きまして、本小委員会における著作権制度の係る今後の検討方針につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 それでは、資料6、それから参考資料4を御覧いただきたいと存じます。
 資料6でございますが、法制問題小委員会審議予定(案)となっております。これは本日、こういう進め方でよろしいか御意見をいただきたいという意味であります。
 まず、これを御覧いただきますと、第1回から第6回まで書かれておりまして、第6回のところに「著作権法に係る検討事項」確定と書いてございます。そして、本年度第2回著作権分科会(1月予定)へ報告、分科会において審議の上、公表というところがございます。そのように、著作権法に関係します改正課題を抽出していただく、選択していただく、何を優先するのかということを決めていただくということがこの法制問題小委員会の今後1月までの大きな役割という意味でございます。
 本日の第1回は自由討議となっております。第2回は9月30日予定でございますが、この際には関係者間で協議中の事項について状況の報告をさせていただきます。また、関係団体からの著作権法改正要望について御報告をさせていただきます。この関係団体からの著作権法改正要望に関する資料が参考資料4でございます。
 これは、去る8月4日、事務連絡で改正要望があり得るであろう団体に対して照会をいたしました文書でございます。どのような団体に送っているか御説明を申し上げますと、まず、著作権課の所管法人あるいは法令で指定されている指定法人、それから著作権等管理事業者、こういった直接の関係団体に送っております。
 また、第2の類型といたしまして、過去、これは平成8年以降でありますが、著作権制度の改正に関しまして意見の募集やヒアリングを行った際に意見を提出していただいた団体でございます。例えば、日本レコード協会とか日本経済団体連合会、日本消費者団体連絡協議会などでございます。その他たくさんございます。
 3番目の類型といたしまして、各府省からこれまで著作権の改正に関する要望を提出していただきましたが、それらに関連する団体で今後機会があれば要望したいという可能性のある団体でございます。例えば、日本点字図書館、日本薬剤師会などでございます。
 こういった団体が合計で319団体ございましたので、私どもで各府省にも照会の上、リストアップしまして照会文書を送りました。
 元に戻っていただきまして、参考資料の4のとおり、8月31日までにメールによりまして提出いただくようにお願いをしております。
 なお、提出いただいた要望につきましては、分科会等において審議を行い、制度に係る検討課題を整理するということを告知しております。また、それらの要望につきましては、さらにインターネットなどで公開いたしまして、関係府省や一般の方々から意見を募集することなども考えているということを明らかにしております。なお、この改正要望というのは、法律の改正ということに絞らせていただいております。そういった様式を整えて照会をしているということでございます。
 若干補足的に御説明いたしますと、仮にその319団体以外の団体が意見を提出したいといったような場合、これも受け付けたいと思っております。別にこれらの団体に限るという意味で照会をしているわけではないので、情報がいろいろ伝わりまして自分たちも出したいというところは拒否するものではございません。
 また、個人であるとか個別の企業というのは意見を提出できるのかという問題もあるかと思います。これにつきましては、今回提出していただく要望に関する意見募集という機会を設ける予定であり、その際には、個人であろうと企業であろうと意見を言っていただけるわけですので、今回は関係の団体に限らせていただいております。ただ例外的にいわゆる特定の事業者の団体がまだ形成されていないような場合、これにつきましては個別の企業であっても意見募集をしたところでございます。ですから、その場合には個別企業で例外的に入っているものがございます。まだ団体が形成されるほどその分野の事業者が全国で数が多くないといったような、そういう場合もあるものですから、例外的にそのような扱いをしております。
 また、締切りは8月31日までと書かれているわけでございますけれども、仮に9月の初旬にならないと意見が出せない、会合等の都合でそうならざるを得ないといったような場合につきましては、若干の猶予をいたしますということを既に回答申し上げています。ただ、この意見募集につきましては取りまとめまして、9月30日予定の第2回の本小委員会で御説明したいと存じますので、あまり遅れられては意味がなくなりますということを説明しているところでございます。
 また資料6に戻っていただきたいと思います。関係者間で協議中の事項について説明をいたします。これまでも法制関係の改正を検討していく際に、直接の当事者と申しましょうか、権利を設定する、強化するということを要望している側と、それに対して反対の立場をお持ちの団体があった場合には、その当事者間で話し合いをしていただくという取り進め方をしております。関係者間での協議を既にお願いをしている、そういうグループが幾つかございますので、その協議状況がどうなっているかということについて取りまとめて、第2回に御説明をしたいという意味でございます。
 それから、10月、11月の第3回、第4回につきまして、検討課題の整理に向けて皆様方から個別に意見を頂戴しまして抽出作業を進めていただくということを考えております。
 また、第5回には取りまとめに向けての具体的なリストアップというものが行われることを御期待申し上げております。
 そして、第6回でそれを確定していただくということを予定しております。優先的に今後、本小委員会を中心に検討を進める課題を抽出していただく作業を行っていただくということであります。先ほど御説明いたしました「知財推進計画2004」などで様々な事項が挙がっておりますけれども、必ずしも専門家の御意見を経た内容ではなかった、体系的な面での議論が欠けていたのではないかと分科会の席上でも御指摘がございましたけれども、そういった問題意識がございまして、改めてこの法制問題小委員会でそれらを素材として、そしてさらに関係団体等からの要望や、あるいは一般の方々のそれに対する御意見も踏まえていただきまして、検討課題の抽出ということをまず行っていただくのが今後の進め方としてよろしかろうという判断からこのような審議スケジュールを提案させていただいております。
 なお、2月以降でございますけれども、これはちょうど期が切れまして、著作権分科会につきましては新しい期が始まり、切れ目がありますけれども、できるだけ継続的に議論をしていただきたいと、余り時期を置かずに議論を続けていただきたいと考えております。そして、抽出しました検討課題に沿いまして、この小委員会自体で検討するもの、あるいはワーキンググループを設置して、そちらに原案をつくってもらうというような作業をお願いするものと、こういったことを整理していただいて、その抽出していただいた検討事項についての本格的な検討を進めて、取りまとめに向かっていただく、そのように考えております。
 以上で御説明とさせていただきます。
 
中山主査
 ありがとうございました。
 本日は、今期第1回の会議でございますので、ただいまの事務局からの説明を踏まえながら、今後の小委員会における検討事項を中心といたしまして、御自由に皆様の御発言を頂戴したいと思います。
 著作権法は毎年のように改正してきましたけれども、次の国会はどうも大丈夫らしいので、そういう意味ではかなり、先ほど申し上げました大局的といいますか、体系的な議論をする時間もあろうかと思いますので、ぜひ委員の皆様方には忌憚のない御意見をお願いしたいと思います。
 こちらから指名するのも何ですので、御自由に検討事項を中心といたしまして御意見を頂戴できればと思います。何か御意見、御発言ございましたら。はい、どうぞ。
 
加藤委員
 全国地域婦人団体連絡協議会の加藤でございます。
 法制問題小委員会には消費者代表の枠の中で唯一初めて私どもが参加させていただくということでございまして、多くの御専門の先生方の間でちょっと緊張もいたします。今日は初回ということでございますし、率直なところ私も初めての参加でございますので質問させていただきたいと存じます。
 運営上にかかわる話でございますので、本来でしたら事務局サイドとお話をさせていただいて、実質的な時間を頂戴しない方がよいのかなと思いますけれども、初回でございますのでお許しいただきたいと存じます。
 今、資料6をもとにしながら課長の方からもお話がございました。それから、知財の推進計画の中でも出てまいります文言でございます。私、存じ上げないのでお教えいただきたいのでございますが、推進計画の1ページのところの345のところにも出てまいります関係者間協議の結論。これは9月30日予定されております第2回のところで状況が報告されるという御説明でございましたけれども、文化審議会、それから著作権分科会があって、この小委員会がございますけれども、この関係者間協議というのはどういった法的根拠があるのか、ないのかのあたりを御説明いただきたいと思いますし、関係者というのはどういう方たちで議論をしていらっしゃるのか。
 今日は多くの傍聴の皆様方がいらっしゃっていますけれども、やはりこういう方たちが多く増えていくためにもこの著作権の議論というのがわかりやすくて、より多くの国民と情報を共有しあえるような場にしていくためには、分かりにくい部分を少しでもなくしていくというのも消費者代表の枠で参加させていただいた私の務めの1つかなとも思っておりますので、そのあたりのお話を頂戴できるとありがたいと存じます。
 
中山主査
 それでは、お願いします。
 
吉川著作権課長
 それでは、関係者間協議について補足的に御説明いたします。
 まず、法的な根拠ですけれども、これはございません。どちらかといえば、例えば知財推進計画に出てくるとか、あるいは分科会の報告の中に出てくると、こういうことだけでございます。したがって、ある意味では分科会なりの検討結果を得るまでの1つの道具と考えてよろしいと思います。ですから、関係者間協議で何か決定されるという性格のものではございません。
 結論を得てというところで、なぜ結論を得てということになっているかという御質問と思いますけれども、これは方針としまして権利を例えば強化する、これを求めておられる団体、これは権利者団体がほとんどの場合だと思いますが、それに対して異議を唱えておられる団体、これは利用する側の団体。これは利用する団体といっても、例えば産業界である場合もありますし、あるいは消費者の立場の者もあると思います。すなわち制度を改正してほしい、いやその制度改正には反対である、こういう対立がございます。対立が分かっている場合に、分科会が検討を行う前にその関係者間で直接話し合ってもらおうと、こういう意図から設けられたものであります。
 したがって、ここで結論を得てということは、すなわち協議をまずしていただいて、その結果というものを踏まえて、例えば、「知財推進計画2004」の1ページの上から3つ目の著作権等の保護期間のところでいきますと、その2行目から3行目に「関係者間協議の結論を得て、2004年度以降必要に応じ、著作権法の改正案を国会に提出する」と、こうなっているわけですけれども、その関係者間協議の結論を踏まえて、改めてどうするか検討すると、こういう意味でございます。
 ですから、関係者間協議にすべてをゆだねているわけではないわけであります。重要な考慮要素として関係者間協議を進めてもらって、その結論を踏まえて判断をしていこうと、こういう位置づけになっております。いろいろなところに関係者間協議が出てまいりますけれども、すべてそのような文章の構造になっております。
 ただ、関係者間協議の在り方につきましてもこの小委員会の中で改めて議論していただいた方がよろしかろうと思います。すなわち御質問にもございましたけれども、関係者とは何かというところのあたりが必ずしも明確ではないのではないかという指摘もございます。
 これは私が説明しましたように、改正を求めている方とそれに異議を唱えている団体、これが直接話し合うんだと、このこと自体はそれで正しいのでございますが、しかし例えば協議が進展してきた場合に、また別の人が手を挙げてきて、私も入りたいといった場合にどうするのか、すなわちタイミングの問題がございます。あるいは、書籍等の貸与権やレコードの還流防止措置の問題について、いつまでに、どなたに協議をしていただくのか、必ずしも明確な形でスタートしていなかったということもございましたので、いわば十分協議に加われなかったというように思っておられる団体もあると思います。
 したがって、関係者間協議をどのように位置づけ、どのように進めるのか。そして、この本小委員会の議論にどのようにそれを反映するのかというような点につきまして、2回目以降、御報告もさせていただきながら皆様方の御意見を頂戴したいと、こんなふうに考えております。
 以上でございます。
 
中山主査
 それでは、ほかに御意見、御発言ございましたら。
 
吉川著作権課長
 ただいま飯村委員と山本委員が到着されましたので、ちょっと御紹介させていただきます。
 飯村委員でいらっしゃいます。
 
飯村委員
 東京地方裁判所の飯村でございます。よろしくお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 山本委員でいらっしゃいます。
 
山本委員
 弁護士の山本です。よろしくお願いします。
 
吉川著作権課長
 よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 
中山主査
 それでは、改めて御意見ございましたらお伺いしたいと思いますけれども。
 はい、どうぞ大渕委員。
 
大渕委員
 要するに今回の審議においては、先ほど中山主査が大局的、体系的というまとめ方をされていましたように、個別の緊急の案件を処理するというだけでなくて、いわば著作権法全体ないしは法体系全体にもかかわるような重要論点も含めて体系的、大局的に審議ができるということでありまして、今日における著作権法の重要性の観点、あるいは、現在問題になっております問題点が非常に複雑困難で多岐にわたり、種々の面からの徹底的な検討を必要とする性格のものであるという観点からしますと、このような審議の基本方針ないし基本的なスタンスというのは時宜にかなった大変結構なことだと思っております。
 このような関係で、個別にどういうことを議論していくかというのは、むしろ2回目ないしは3回目以降からお話が出てくることなのでしょうが、研究者としてこういうことも検討していただければ有り難いと思う点といたしまして、順不同で思いつくところを挙げますと、例えば、いわゆる間接侵害関係ですとか、あるいは権利制限規定の在り方、それから非常に重要な問題として、著作者人格権関係、あるいはこれは著作権だけにとどまるものではないわけですけれども、著作権と契約との関係というようなところが挙げられます。このような重要論点については、従前の審議会の中では大局的、体系的に扱うという時間的余裕等がなかったように思われます。先ほどは私の方で思いついた若干のテーマを挙げただけなのですが、これらを例とするような重要論点についても審議の対象に加えていただければ大変結構ではないかと考えている次第でございます。
 
中山主査
 ありがとうございます。
 ほかに御意見ございましたら。特に事務局の方から若い方の御意見を積極的にという御要望がございましたけれども、若いと思っておられる方からぜひ御発言ございましたら。もちろん若くなくても結構でございます。何か御意見ございましたら。
 はい、どうぞ、山地委員。
 
山地委員
 質問のようなことになるかと思うのですが、資料6で仮の題とは書いてありますが、著作権法にかかわる検討事項、これがかなりメインの成果物になるような雰囲気で書いてあると理解しています。ところで、この内容は去年までと同様のものと考えておいてよろしいのでしょうか。つまり、ここで議論した結果、法律改正の方向にいくべきと思われるもの、更なる検討を要するもの等に分かれて、それで比較的積極的であったと思われるものについては文化庁の方でフォローして立法化に進むと、そういうことかなと思っているのですが、それでよろしいかということ。
 それに関連するのですが、毎年思うのですけれども、なかなか難しいテーマを取り上げていまして、例えば著作権法の単純化とかアクセス権とか、ちょっと1年や2年ではどうにもなりそうもないなという議論もあって、去年の報告書、参考資料3を見てもかなりそういうのが残っているわけです。
 一方、今年はかなり委員の顔ぶれも替わっていますし、日本は単年度主義の習慣もあるわけですけれども、積み残しになったをどういうふうに今年は考えていったらいいのかということについて、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
 
中山主査
 はい、お願いします。
 
吉川著作権課長
 非常にいい論点を指摘していただきました。まず、この資料6にあります検討事項を最後に確定していただきたいという意味は、これは確かに御指摘もございましたように、短期的な意味で法改正に結びつく、すなわち例えば次回ないし次々回ぐらいの改正機会での改正を検討しなければいけないという緊急性のあるものが第1の類型になると思われます。それから、第2の類型として、これも御指摘がありましたけれども、いわば中期的に考えなければいけない課題というものがあると思います。
 改正の作業のボリュームにも影響しますので、なかなか10も20も積み込むというのは難しいわけでございますけれども、どちらかといえば目標を立てて、そしてあるパッケージをつくっていこうというイメージで今後は作業してはどうかという、そういう試みの第一歩として資料6があるとお考えいただいてよろしいと思います。
 また、2番目の御質問でありますけれども、確かにこの前の1月にまとめていただきました分科会の報告でも打ち掛けになっている、検討が途中になっている、そういう課題もございます。正に御指摘のとおり、結論を得ることがなかなか困難な、そういう性格のものであります。確かに単年度の分科会の任期との関係もあり、なかなか結論を得るに至らない面もあると思うのですけれども、今後はできるだけ継続的に検討する。すなわち改正が毎年ということでなくリズムを刻むことになれば、当然検討の時期というものは複数の期にまたがるということになりますので、あえて期が終わるからといって報告書を出さなくてはいけないということでもないのではないかと思いますし、また、単年度で1つの事柄について結論を得なければいけないということはないと思われます。
 したがって、最初の御質問とも関連しますけれども、優先的に検討すべき事項を挙げていただいた後は、改正の時期までにうまくタイミングを合わせて何本か結論を得ていただくようにワーキンググループなども駆使して作業を進めていただくことになりますが、期をまたがる検討になるという前提があると考えていただいてよいと思います。
 単年度で切るということは、検討を進める上ではマイナスになります。難しいと御指摘のあった点について優先的に検討すべきであれば、計画的にワーキンググループなどもつくりながら案をまとめていただくという作業が今後はしやすくなるのではないかと思っております。
 以上でございます。
 
中山主査
 よろしいでしょうか。
 ほかに御意見あるいは御質問ございましたら。はい、どうぞ、松田委員。
 
松田委員
 法制問題小委員会に前年度の司法救済制度小委員会での議論を引き継ぐ意味で発言をしておきたいと思っております。
 参考資料3の62ページ以下に司法救済制度小委員会の昨年度の議論のまとめが載っております。御説明申し上げますと、幾つかの検討項目を頂戴いたしましたが、64ページ、法定賠償制度、例えば著作権侵害1件につき10万円の損害額とみなすというような規定の導入はいかがなものかという検討いたしました。これにつきましては、これから検討していくけれども、損害賠償制度全体についてどういう位置づけをしなければならないかということを検討しなければこれが導入できないんだということになっております。
 それから、2番目のいわゆる懲罰的損害賠償制度でございますが、これは結論的には導入をしないという結論になっております。
 それから、3番目、66ページでございますが、侵害数量の推定規定。これにつきましても導入の是非について積極的に検討していくんだと。積極的にということがありまして、この報告書の段階では導入するしないは結論づけておりませんけれども、検討しなきゃだめなんだということを実は含んでいるわけでございまして、損害賠償周辺の議論を著作権でしておることの現行法上整備すべきところは大体済んだと私は思っているんです。他の法制との並びの関係等で済んでいるし、懲罰的損害賠償の議論も10年間やっておりましたけれども、一応、昨年度の議論としては、委員の意見としては現段階で導入すべきでないという結論になっていて、これは現段階では検討する必要がないんだと、こういう結論になっているわけです。もう10年間やっているわけですから。
 こういうところで、実は改定には損害賠償論ないしはその周辺の法制を考える場合には、今年とか来年度とかが非常にチャンスなんではないかと。もっと基本的なところから考えて、特に法定賠償制度とか侵害数量の推定規定等、どういう法制の位置づけの中で入れられるのか、入れられないのかということを十分に検討しようではないかということが改定になったわけであります。
 以上、報告しておきます。
 
中山主査
 ありがとうございました。
 ほかに何かございましたら。どうぞ遠慮なく御発言をお願いいたします。
 じゃ、土肥委員、どうぞ。
 
土肥委員
 これはお尋ねになるのかもしれませんけれども、先ほど著作権課長の御説明にございましたように、今年度は実質5回の討議事項、回数の中で著作権法に係る検討事項、これを確定していくと、こういうことでございまして、その検討事項が取りまとめられたところでそれを公表して、広く関係団体以外の個々人の方々に対しても広く意見を求めてまとめると、こうおっしゃっておられたように伺っておりますけれども、そうするとそれまでは逆に言えば、基本的には個々の方々、つまり関係団体以外からのそういう質問というんですかね、要望あるいはそういうことは検討事項の中には盛り込まれないと、こういうことになるんでありましょうか。それとも、それ以前にそういう意見を取り込んで検討事項を取りまとめるのか。
 つまり、関係団体というのが多く、どちらかといえば権利、著作権あるいは隣接権に関する、そういう団体でございまして、いわゆる消費者団体といいましょうか、利用する、そういう立場の方々の意見を集めにくくなっておるのではないかと思っておりますので、そのあたりを手厚く集めるような方法、そういったものがあるのかどうか、そこをお尋ねしたいと思っております。
 
吉川著作権課長
 まず、私の説明が十分ではなかったと思いますけれども、関係団体からの要望として提出いただいたものについては、9月30日予定の第2回目のこの小委員会で取りまとめて御報告するとともに、その後、10月に一般の方々にも公表して、そして一般の方から意見をいただくというプロセスを考えております。また、一般の方々からいただいた意見は、10月ないしは11月の回にこの小委員会に御説明できると思っております。
 また、関係団体につきましては、非常に手広く、消費者団体も含めてリストアップも行ったつもりでございまして、個別の団体に対して照会をかけているということもございます。今回、特にそのあたりは入念にリストアップをしたということもつけ加えてさせていただきたいと思います。
 
中山主査
 よろしいですか、はい。
 確かに、特許の場合はどんな一流企業でも攻めたり攻められたりして両方の立場があるんですけれども、さっきの場合は比較的サイレントマジョリティーは把握しにくいという状況にあるものですから、今の土肥委員の御発言も十分心していただければと思います。
 ほかに何か御意見や御発言ございましたらお願いいたします。大局的、体系的と言い過ぎて細かい議論をしにくくなったかもしれませんけれども、どのような意見でも結構でございますので何かございましたら。はい、どうぞ。
 
永井委員
 今の意見に関連してなんですが、私的録音・録画問題というのが随分昔ございまして、それ以来やはり関係者間の協議というのはレコード会社と電機メーカーとの間の調整という感じだったわけですよね。ほとんど私の感じではそういうことで来たかなという感じですが、サイレントマジョリティーに対する意見聴取ということだと、今までの著作権行政というか審議会の転換点というような感じで位置づけられた方がはっきりするなと。サイレントマジョリティーといってもなかなか声が出しにくいわけで、そこのところをもう少しはっきりどこかに書いていただければ、もう一人一人の問題になってくるわけですね、インターネット時代には。そういうことを転換点に立ったということをはっきりさせていただきたいということが1つです。
 それからもう一つ、これは知財推進計画の方で出ているんですけれども、権利者への利益が還元されるための基盤を整備するという最初の1のところ、別に大局的というか意見ということになってしまうんですが、例外的に無許諾でできる非営利・無料・無報酬の上映の限定ですけれども、学校における場合などに限定するということについて引き続き検討というのは、恐らく異議があったからこうなっているんだと思うんですけれども、今、教育というのは学校の場だけではなくて、あらゆるところで行われるというような時代において、学校だけに限定するという場所だけのことなのか。それが学校教育というか教育、そういうことに貢献するというような範囲においてというふうな意味なのか、この辺、もし御説明ができるならお願いしたいと思います。これは知財の方だからこれからですよね。
 
中山主査
 はい、それではお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 1点目につきましては御意見であると思います。できるだけ幅広い方々からの御意見を伺うという点は、この小委員会の公開性を一段と高めていること、あるいはインターネット等を通じて意見を言ってもらうという機会をできるだけ設けて、そしてそれらを踏まえて御議論をしていただくこと、そういったところに工夫を凝らしているつもりでございます。
 また、2点目の御質問について若干御説明をいたします。この「知財推進計画2004」の1ページの一番最初の項目は、例外的に無許諾でできる非営利・無料・無報酬の上映を限定するということですが、これまで権利者に対してお金を払ったり許諾を得なくても上映できていたものをそうでなくするというわけですから、いわば利用者にとっては不自由になるという方向の話であります。
 言い換えれば、公衆向けの上映会について学校は許諾を不要としたままでよろしかろう。しかし、そのほかについてはかなり制約をしてはどうかという意味であります。これも著作権分科会で議論が行われて、たしか前々回の報告にこのような方向性が示されております。ですから、御記憶の委員の方もいらっしゃると思うのですけれども、この点につきまして平成15年改正の際に文化庁としても内部でいろいろ議論をいたしましたが、やはり永井委員の御指摘のように、学校以外の場をどのように整理するのかというのが非常に難しいところでございます。例えば福祉施設などでの上映は一般の映画館等での上映と同じなのか、なぜ権利制限をしてはいけないのか。様々な公益性のある催しで映画が上映されるといったようなときに、いちいち許諾をとらせる必要があるのか。理論的な裏付けを持った区切りがなかなかつけにくいという問題もございまして、改正案を国会に提出することはかなり困難と思われます。
 更に申し上げれば、先ほどサイレントマジョリティーというキーワードを示されましたけれども、図書館関係者は一応この権利が制限がなくなっても構わないと内諾したということが前提になって分科会の報告書がまとめられたと聞いておりますけれども、その点すらも全国津々浦々の図書館関係者が全部合意したということでもないようでありますし、またそのほかの公益的な上映の場、福祉施設等を含めてでございますけれども、そういった関係者が「もう結構です」とおっしゃったということでもありません。
 したがって、それらの人々が実質的に異議を唱える可能性があるでしょう。また先ほど申し上げた、理論的にどこで区切りをつけるのか難しい、そういった点がこの問題の困難性でございまして、ただちに前進する見直しはないところでございます。
 以上であります。
 
中山主査
 よろしいですか。
 
永井委員
 トップに書かれてあるので、まず初めにやるのかと思って。
 
吉川著作権課長
 これは、順番が上にあるほど特に改正に近いというわけではございません。
 
中山主査
 先ほど大渕委員の御発言にもありましたけれども、権利の制限規定については今後議論していかなければならないと思いますので、その際にまたよろしくお願いいたします。
 はい、どうぞ。
 
浜野委員
 著作物をつくる方を代弁して、ちょっと精神論みたいなことを言います。現在、例えば映画は年間の全投資額200億円ぐらい、CMが2,500億、テレビが5,000億といわれています。映画に限定して言うと、顧問弁護士を雇ったり、つくるたびに弁護士の先生と相談するなどということは、費用的にできません。
 ですから、契約もしないで作品を制作するということが日本は常識的になっていますので、。著作権が著作物を減らす方向にはいかず、誘発するような配慮をしていただきたい。著作品が増えることが望ましいわけですから。新しい技術で著作者と消費者が徐々に近づいてきて、流通を飛ばして近づいてきており、新しい事態が起きています。例えば、新海誠さんの「ほしのこえ」は女性の声を除きたった一人でつくられました。それは映画なのか個人的著作物なのかというのは判断できないわけです。個人的著作物だと新海さんが死んでから50年は守られますけれども、彼は若いですから、もしかしたら70年といったら生きている間に著作権がなくなってしまう可能性だってあるわけです。
 「シティジャングル」というのもたったお一人のデジタル・ハリウッドの卒業生がつくったわけですから、現行の著作権では理解できないことがいっぱい起こっております。映画だけが70年とか、録音、音楽だけは還流できないようにしたりとか、媒体ごとに著作権が複雑になっています。日本のコンテンツ産業は生き残りのために共同製作を積極的にやろうとしていますが、国ごとに著作権に相違があり、製作現場は混乱しています。ですから、もうグローバルに著作物が製作されて流通される時代ですので、できるだけ基本路線に立ち返ってシンプルに、かつ、この著作物をこれならつくってみたいと思える、誘発するような、もちろん法律ですからそういうわけにいかないと思いますけれども、配慮していただきたいと思います。
 
中山主査
 ありがとうございます。昔からシンプルがいいというのは言われ続けているんですけれども、反面、複雑になっていく一方なのは、これは侵害者とイタチごっこがあるのでなかなか難しいんですけれども、しかしシンプルなのがいいということは間違いないわけですので、その方向で努力をしていただければと思います。
 確かに今の著作権法、私はそれで飯を食っている専門家のつもりですけれども、一読しただけでは分からないのが随分たくさんあります。税法よりはいいかもしれませんけれども、たくさんありますので、これからは素人といいますか、法律の専門家じゃない人が著作権をいっぱい扱う、著作物を扱うようになりますので、なるべくシンプルな方にいければと私も思っております。
 ほかに御意見ございましたら。どうぞ。
 
中村委員
 大ざっぱな感想といって質問なんですが、今のようにこうして著作権がクローズアップされてきているのは、デジタル化の進展とかネットワークの普及が進んだというところに大きくよるところだと思います。それで生産にしろ流通にしろ消費にしろ、すべての面で大きく変わりつつあるんだと思いますので、そのようなデジタルというものの本質をとらえて使いやすい著作権のあり方はどういうものなんだろうかとか、先ほど来、体系的というお話が出ていますけれども、抜本的に見直すところがあるのかないのかといった観点で考えていきたいと思います。
 1点質問なんですけれども、この小委員会とは別の小委員会のテーマとこの小委員会の間でテーマがオーバーラップするところはありますでしょうか。そして、ほかの3つの小委員会の間の情報交換の仕組みみたいなものはありますでしょうか。それだけちょっとお聞きしたいと思いまして。
 
中山主査
 はい、お願いします。
 
吉川著作権課長
 御質問の部分についてお答えしたいと思います。資料3を御覧いただきますと、この小委員会のほかに契約・流通小委員会と国際小委員会の2つが設置になっております。それぞれ資料3の2を御覧いただきますと、契約・流通小委員会は著作物の流通を促進するための方策の在り方、契約に関する法制の在り方。それから、国際小委員会につきましては、国際的ルールづくりへの参画の在り方、アジア地域との連携の強化及び海賊版対策の在り方という点が審議事項となっております。
 法制問題小委員会、この小委員会でありますけれども、こちらは著作権法の改正に係るあらゆることについて議論していただくので、法制に関して最終的にはこの小委員会が責任を持ってまとめていただくわけでございます。例えば国際小委員会では現在WIPOの放送条約の議論がなされておりまして、その放送条約の案づくりについての我が国としての基本的な態度、方針といった議論を国際的ルールの参画の在り方の中でしていただくわけですが、例えば国際条約などが固まってまいりますと、内容としては著作権法の改正にかかわってきますので、この法制問題小委員会にその内容をお伝えして、議題の1つに加えていただくということになります。
 契約・流通に関しましては、今期については恐らくこちらの法制問題小委員会に持ってこられる案件はないと思いますけれども、著作権等の管理事業法の施行状況についてどのような問題があるかといったような議論をしていただいて、可能性としてもし法改正が必要といったようなことになれば、またこの小委員会でも議論していただくようになるかもしれません。そういった形で法制の問題にかかわってくれば、この小委員会に御説明して議論をいただく形にさせていただいております。
 また、小委員会の上には分科会がございますので、それぞれの小委員会ごとに報告の案がまとまってくれば、それを分科会で議論いただきます。分科会というのは3つの小委員会の台の上に立っているというような形で、これまでの分科会報告は各章をそれぞれ小委員会でまとめた文書で構成されています。
 
中山主査
 あとメンバーも小委員会間で兼ねている委員もおられるようです。
 ほかに何かございましたら。はい、どうぞ。
 
苗村委員
 多分質問あるいは確認なんだと思いますが、資料5で1ページから3ページまでに、4ページもですが、とりあえず1ページから3ページの部分、法律ルールの整備についての項目が書いてありますが、2点確認したいんですが、1つは、これはあくまでもこの小委員会にとっての参考であって、この項目についてやるということを事務局から提案されているものではないという理解でよろしいですね。
 それから、2点目の、これも確認ですが、あるいはむしろ要望かもしれませんが、多分これいずれも何らかの形で既に提案のあったこと、あるいは関係団体からの要望があったことが多いと思いますので、恐らく出されてくるだろうという予想のもとになんですが、この中の権利者への利益が還元されるための基盤に当たることは比較的具体的な提案があり、またそれに対する反対意見もあり、議論が進む可能性がありますが、先ほど来何度か御指摘ありますが、特に後ろの3つ、著作権法を簡素化する、それから権利者の利益と公共の利益とのバランスに留意する、それからデジタル時代に対応した法制度のあり方について検討する。これはいずれも重要であり、また大きな課題なので、特定の団体が具体的にこうすべきだという提案をし、別の団体が賛成とか反対という可能性が少ないと思うので、どうしても後回しになってしまうと。そうすると、積み残しになるおそれがあるんですが、例えばこの後ろの3つのテーマに重点を置いたワーキンググループをつくるというような可能性はないでしょうか。
 つまり、当面の課題と少し長期的ではあるけれども、より本質的な課題を並べて、ただ関係団体、関係者からの意見が出たものを重視すると緊急避難的なものばかりが議論されて、本質はまた来年度ということになってしまわないかなという心配です。お願いします。
 
中山主査
 はい。
 
吉川著作権課長
 非常に本質を突いた御質問でございます。資料5の意味というか、この小委員会に御説明している意味でありますけれども、まさしく苗村委員の御指摘のとおり、これらの項目をここでやりましょうという意味ではありません。これらをもしやるだけであれば、わざわざ検討課題を抽出する作業を時間をかけてやる必要はないわけでございます。したがって、これらはあくまで素材ございます。
 それから、第2点目の本質的に重要と思われる課題をどうするかという御指摘でありますけれども、この小委員会で検討課題を抽出していただく際のもとになってくるのは、例えば「知財推進計画2004」や関係団体からの要望もありますが、ここにおいでの委員の先生方からの御提案ということも十分に伺えたらと考えております。
 すなわち、先ほど一番最初に大渕委員もおっしゃいましたけれども、著作権法の骨格をなすような制度についてはなかなか関係団体からの要望というのは期待できないわけでございます。しかし、そういう問題も検討すべきではないか、あるいは急ぐ課題であるのではないかというような御指摘を委員からいただくことは、も十分に考えられると思っております。
 また、ワーキンググループのつくり方については、上がってきました項目と照らし合わせて審議を促進する意味で設けていただくということになると思いますけれども、特に2ページの下のいわゆる権利制限の問題につきまして、非常に多くの方々に影響を与えることと思いますので、かなり重要なテーマになってくるのではないかと思います。
 また、デジタル時代の法制度の在り方につきましては、従来から法改正で対応している点もあります。しかし、先ほど中村委員の御指摘にもありましたが、現在の流通や今後の社会の変化に対応しているのかという観点から、著作権法を点検してみる必要があるように思います。著作権法が想定していなかった著作物の流通が現に起こっており、概念の見直しも考えていかなければならないと思います。
 既に現実社会に起こっていることでもありますので、そう先送りできない課題がデジタル社会と著作権の関係であるのではないかと考えます。なお、全体の作業量の制約もありますので、何を優先するかという判断について十分御意見をお伺いしたいと思っております。
 
中山主査
 苗村委員のおっしゃったのは非常に重要だと思いますけれども、私が冒頭申し上げたとおり、前回までの小委員会は権利者団体の代表が過半数を占めておりましたけれども、今回は有識者を中心に構成されていると。正にそういう点を期待しているわけでありまして、ぜひ今、苗村委員のおっしゃったような立場から御意見を頂戴できればと考えております。
 ほかに何か御意見ございましたら。どうぞまだ御発言されていない方、遠慮なく何か要望事項がございましたらお願いいたします。
 
吉川著作権課長
 これは私の勝手な考えでありますけれども、少なくとも第3回あたりにはそれぞれの委員の先生方からどのような項目について本小委員会としては検討の優先度が高いと判断すべきか御意見をいただいたらどうかと思っております。
 
中山主査
 そうですね、私もなるべく指揮権発動はしたくないものですから、それでは、あれでしょうか。もし御意見あれば後で文書で頂戴するということでもよろしいですか。それはまずいですか。
 
吉川著作権課長
 できれば、例えば3回目ぐらいに簡単なメモでもいただくとか、10月の話ですので先の話ですけれども、優先的に検討する必要があるという項目を具体的に挙げていただくとか、そういったことをお願いできればと思っております。
 
中山主査
 それでは、本日お配りした資料等を熟読された上で御意見ございましたら、頂戴できればと思います。
 あと何か特に御意見ございませんでしょうか。

(発言する者なし)
 
中山主査
 特段御意見がないようでございましたら、本日の討議はこのくらいにいたしまして、次回以降、本日の御意見を踏まえながら、お手元の審議予定に従って審議を進めてまいりたいと思います。
 次回は、第1番目は、関係者間で協議中の事項についての状況。2番目に、関係者団体からの著作権法改正要望事項、この2つにつきまして事務局より御報告をいただき、それらを踏まえまして、引き続き著作権法に係る検討事項について検討を、御意見を頂戴してまいりたいと思います。
 それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会の第1回法制問題小委員会を終わらせていただきたいと思います。本日は、誠にありがとうございました。
 最後に、事務局から連絡事項がございましたら、お願いいたします。
 
山口著作権調査官
 本日は早速に熱心な御討議をありがとうございました。
 次回の法制問題小委員会の日程につきましては、正式には近日中にホームページに掲載いたしますが、資料6に予定として既に入っておりますとおり、9月30日木曜日の10時半から、本日と同じこの経済産業省別館10階の1020会議室で行うことを予定しておりますので、よろしく御承知おき下さい。
 
中山主査
 それでは、本日はどうもありがとうございました。
 


(文化庁長官官房著作権課)

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