資料3

世界知的所有権機関(WIPO)の動向

1.WIPO加盟国総会の概要

 第43回世界知的所有権機関(WIPO)加盟国総会が、平成19年9月24日から10月3日にかけ、WIPO本部(ジュネーブ)にて開催された。本総会には、184の加盟国、その他多数の政府間機関・非政府機関が参加、日本政府からは、特許庁、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部とともに文化庁が出席した。
 近年、途上国は、WIPOの場において、開発問題を重視する視点から知的財産(権問題)を捉えようとする動きが活発化しており、本総会においても、先進国及び途上国間でしばしば対立する場面が見受けられ、予算等の主要議題が合意できないなどの事態となった。
 放送機関の保護に関する議題以外の著作権に関わる総会の結果の概要は以下のとおり。

(1)開発アジェンダ

<これまでの経緯>

 開発アジェンダとは、開発問題(途上国の経済発展に係る問題)重視の視点から知的財産を取り扱うためのアクションプランを策定するものである。2004年総会時に、ブラジル、アルゼンチン等の計14ヵ国が提案を行い、開発アジェンダ関連提案に関する暫定委員会(PCDA:Provisional Committee on Proposals Related to a WIPO Development Agenda)等での議論を経て、45項目の具体的提案がまとめられた。その内容は、既にWIPOが取り組んでいるキャパシティビルディング等に関するものだけでなく、途上国の経済的発展を考慮した条約等の作成に関するものなど、広範囲に及んでいる。

<総会の結果概要>

 総会では、これまでの上記会合において合意の得られた45項目及びそのうち即実施が可能な19項目について採択された。当該19項目のうち、主な内容としては、規範設定(条約、ガイドライン等の策定)の際に各国の開発のレベルの差を考慮すべきこと、規範の設定の際にWIPOは国際的知財関連条約、とりわけ途上国・LDCの関心の高い条約において柔軟性を考慮すべきこと、IGC((4)参照)のプロセスを加速すべきこと、などが挙げられる。
 また、PCDAの後継となる開発関連問題を扱う常設の委員会である「開発と知的財産に関する委員会(CDIP:Committee on Development and IP)」の設立が承認された。CDIPは、合意された項目の実施に関する作業プログラムを策定すること、関連するWIPOの委員会と調整した上でプログラムの実施状況をモニター・評価・議論して総会に報告すること、及びその他の知財と開発に関連する事項を議論すること、などの取組がなされる予定。

(2)計画予算

 総会最終日に、その他の議論が終了していないにも関わらず、議長権限により2008/2009年予算審議が行われたため、投票による採決に持ち込まれ、その結果、予算案は否決された。2007年内に予算案が合意されなかったため、WIPO設立条約に基づき新予算が総会で承認されるまでは、前年度予算が適用されることとなる。

(3)視聴覚実演の保護

 視聴覚実演家の著作隣接権の保護について議題に残すことについては各国から異論はなく、次回の一般総会の議題として、視聴覚実演の保護を議題に残し、議論を継続することが決定された。

(4)知的財産と遺伝資源、伝統的知識、フォークロアに関する政府間委員会(IGC)

 アフリカ、アジアの多数の発展途上国から、IGCにおいて、遺伝資源、伝統的知識、フォークロア(GRTKF)を国際的に法的拘束力のある枠組で保護する議論が進捗しないことに対して不満が表明された。一方、先進国は、少数民族がIGCに参加するために設立された基金への協力を表明し、IGCの議論に協力する姿勢を示しつつも、定義の問題等で更なる議論が必要と慎重な姿勢を示した。日本からも、IGCの継続については支持するが、更なる議論を要するとの主張を行った。
 なお、IGCにおける議論の継続については各国から異論はなく、2年間のマンデートの延長が決定された。

2.その他の動向

次期事務局長選挙

 昨年11月に加盟国から次期事務局長候補の推薦を求める通知が事務局から発出され、次期事務局長選挙のプロセスが開始された。5月の調整委員会で事務局長候補の推薦が行われ、9月の総会において指名が行われる予定。

以上