参考Q&A

Q.教育基本法が改正されたと聞きますが,その改正理由を教えてください。

A. 平成18年12月15日,国会において新しい教育基本法が可決・成立し,同22日に公布・施行されました。
 我が国の教育は,昭和22年に制定された教育基本法の理念のもとで充実発展し,豊かな経済社会や安心な生活を実現する原動力となるなど,多くの成果を上げてきました。
 しかし,この間,科学技術の進歩,情報化,国際化,少子高齢化など,我が国の教育をめぐる状況が大きく変化する中で,道徳心や自律心,公共の精神,国際社会の平和と発展への寄与などについて,今後,教育において,より一層重視することが求められるようになりました。
 このため,これまでの教育基本法が掲げてきた普遍的な理念を継承するとともに,我が国の未来を切り拓く教育が目指すべき目的や理念を明示することによって,社会全体の共通理解を図りつつ,

など,21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指した教育改革を着実に進めるため,教育基本法の改正が行われました。

Q.新しい教育基本法は,どのような法律なのですか。

A. 新しい教育基本法では,第一に,教育の目的及び理念を明示しています。
 具体的には,教育の目的及び目標について,これまでの教育基本法に引き続き「人格の完成」,「国家・社会の形成者として心身ともに健康な国民の育成」などの普遍的な理念を規定するとともに,「公共の精神」や「伝統と文化の尊重」など,今日重要と考えられる事柄を新たに規定しています。

〈教育の目標(例)〉

下線部は,新たに規定したもの)

  • 下線部ここから幅広い知識と教養下線部ここまで下線部ここから豊かな情操と道徳心下線部ここまで下線部ここから健やかな身体下線部ここまで
  • 下線部ここから能力の伸長下線部ここまで,自主・下線部ここから自律の精神下線部ここまで下線部ここから職業との関連を重視下線部ここまで
  • 正義と責任,自他の敬愛と協力,下線部ここから男女の平等下線部ここまで下線部ここから公共の精神下線部ここまで
  • 下線部ここから生命や自然の尊重下線部ここまで下線部ここから環境の保全下線部ここまで
  • 下線部ここから伝統と文化の尊重下線部ここまで下線部ここから我が国と郷土を愛し,他国を尊重下線部ここまで

 また,教育の理念として,従来から規定されていた「教育の機会均等」に加え,科学技術の進歩や社会構造の変化,高齢化の進展,自由時間の増大などに伴って重要となっている「生涯学習の理念」についても,新たに規定しています。
 第二に,教育を実施する際に基本となる事項として,これまでの教育基本法にも定められていた,「義務教育」,「学校教育」,「教員」,「社会教育」,「政治教育」,「宗教教育」に関する規定を見直すとともに,新たに「大学」,「私立学校」,「家庭教育」,「幼児期の教育」,「学校,家庭及び地域住民等の相互の連携協力」について規定しています。
 第三に,教育行政として,国と地方公共団体の役割を明確にするとともに,国が教育振興基本計画を策定し,地方公共団体が国の計画を参酌し,その地域の実情に応じ基本計画を定めることなどについて規定しています。
 文部科学省としては,新しい教育基本法に示された理念の下,関係法令の改正や教育振興基本計画の策定をはじめ,各種の教育施策の充実に努めていきます。

Q.「文化力」という言葉を聞きました。「文化力」とはどのようなものですか。

A. 文化芸術には,人々を引き付ける魅力や社会に与える影響力があります。こうした文化芸術の持つ力のことを「文化力」と呼んでいます。
 このような「文化力」は,地域経済や観光,教育,福祉など文化芸術以外の分野の活性化や,広くまちづくりに生かすことができるものとして期待されています。

 現在,「文化力」で人々に元気を与え,地域社会全体を活性化させて魅力ある社会づくりを推進する動きが各地で展開されています。
 郷土の豊かな自然や言葉,昔から親しまれている祭りや行事,歴史的な建造物や町並み,景観,地域に根ざした文化芸術活動などは,それ自体が独自の価値を持つだけでなく,人々の地域への誇りや愛着を深め,住民共通のよりどころとなります。そして,地域文化が豊かになるほど日本文化全体も豊かになり,日本の魅力が高まります。そうした文化が国民共通のよりどころとなります。また,地域で住民が文化芸術に触れ,その個性を発揮して創造にかかわることは,個人が元気になるだけでなく,他者への発信や協働を通じて多くの人々を元気にする力ともなります。

 文化芸術によって,地域の人たちの心がつながり,地域と地域がつながり,国を越えて日本と世界がつながっていくことができます。このような心のつながりから生まれる元気によって,日本中が元気になることは素晴らしいことです。文化庁では,現在,関西,丸の内,九州・沖縄の3地域において,「文化力プロジェクト」を推進し,「文化力」で地域から日本の社会を元気にする取組を進めています。

Q.文化芸術と経済が密接に関連し合うといわれていますが,どういうことですか。

A. 文化芸術と経済とは,一見すると無関係と思われるかもしれません。しかし,文化芸術の在り方は,人間の生き方や暮らし方,生活様式に大きなかかわりのある経済活動に多大な影響を与えます。同時に,今日の社会においては,文化芸術そのものが経済活動にもなっています。

 文化芸術の持つ創造性は経済の発展に欠かせません。また,製品のデザインなど,様々な産業において,文化芸術は高い付加価値を生み出す源泉ともなっています。
 また,経済のソフト化・サービス化が進展する中で,映像・音楽産業や余暇関連産業など文化芸術に関連する産業は今後更なる成長が期待され,観光産業では歴史的な建造物,町並みといった有形の文化財や遺跡,芸能,祭り,行事,伝統的な工芸技術といった無形の文化財をはじめ,地域に根ざした文化芸術活動などの文化的要素が魅力ある観光資源として重視されています。
 さらに,文化財や文化施設などが,地域における誘客装置として,非常に大きな経済波及効果をもたらすなどの調査結果もあり,文化芸術が新たな需要を喚起し,多くの雇用を創出することが期待されています。文化芸術は経済を活性化させ,より質の高い経済社会への転換を促します。

 このように,経済活動と文化芸術は不可分の関係にあります。より質の高い経済活動の実現にも,文化芸術は大きな役割を果たしています。

Q.「文化芸術振興基本法」,「文化芸術の振興に関する基本的な方針」とはどのような意義の下に定められたものですか。また,これらができてからの文化行政の動向を教えてください。

A. 「文化芸術振興基本法」は,文化芸術全般にわたる振興のための基本的な法律で,平成13年に制定されました。この法律の目的は,文化芸術に関する活動を行う人々の自主的な活動を促進することを基本としながら,文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図り,心豊かな国民生活と活力ある社会の実現に貢献することです。
 文化芸術振興基本法に基づき,文化芸術の振興に関する施策を総合的に推進するために策定されるものが,「文化芸術の振興に関する基本的な方針」で,国の文化芸術振興の基本指針です。

 平成14年に策定された第1次基本方針では,「文化芸術の振興の基本的方向」と,基本的方向を踏まえて講ずべき「文化芸術の振興に関する基本的施策」を定めています。
 基本的方向では,文化芸術の振興の必要性や国の役割,重視すべき方向などを記述し,また,基本的施策として,文化芸術振興基本法の条文に沿った11の事項について,107項目の施策を具体的に記述しています。

 基本方針が策定されたことにより,国の具体的な施策の方向性が明確になり,文化庁予算も平成15年度に初めて1,000億円を突破しています。
 具体的には,「本物の舞台芸術体験事業」や「伝統文化こども教室事業」など子どもの文化芸術体験活動の推進,メディア芸術祭の開催などメディア芸術の振興,国際フォーラムの開催や「文化庁文化交流使」の派遣など国際文化交流の推進,「九州国立博物館」や「国立新美術館」の開館をはじめとする文化芸術拠点の整備など,文化芸術の振興に関する施策を着実に推進してきました。
 また,文化芸術振興基本法の成立後,文化芸術に関する法令等が制定・改正され,文化芸術施策の法的基盤の整備が一層進みました。その他には,個人や民間による文化芸術への支援を促進するため,一定の文化芸術団体に対する寄附金に関する税制措置が講じられています。
 このように,文化芸術振興基本法と基本方針は,文化芸術の振興に大きな役割を果たしてきました。

Q.「文化芸術の振興に関する基本的な方針」が見直されたと聞きました。新しい基本方針の策定に当たっては,どのような観点から見直しを行い,何を重視して取り組むことになったのですか。

A. 平成14年に策定された第1次基本方針は,おおむね5年間を見通したものですが,諸情勢の変化や施策の効果に関する評価を踏まえ,柔軟かつ適切に見直しを行うとされています。
 第1次基本方針が策定されて5年が経過しますが,この間に,国内では民間と行政の役割分担の見直しや地方分権の推進,規制緩和などによる新たな分野への民間の進出,国際的にはグローバリゼーションの進展,また情報通信技術の発展と普及など社会は大きく変化し,文化芸術を取り巻く状況にも大きな影響を与えています。そこで,時代に対応した文化芸術の振興の在り方を示すために見直しを行い,第2次基本方針として策定しました。

 第2次基本方針では,

という三つの基本的視点に立ち,次の六つの事項に重点的に取り組むこととしています。

 また,基本的施策として,第1次基本方針と同様,文化芸術振興基本法の条文に沿った11の事項について,107項目の施策を新しい視点から具体的に記述しています。

 第2次基本方針は,今後おおむね5年間を見通して策定されました。文化庁は今後,この方針に基づき,文化芸術の振興に総合的に取り組んでいきます。