第2節 文化芸術をめぐる諸情勢の変化と第2次基本方針の策定

2.第2次基本方針

 平成14年12月に閣議決定された「文化芸術の振興に関する基本的な方針」は,策定後の諸情勢の変化,文化芸術施策の進展等を踏まえて見直しを行う必要性が高まったため,18年2月,小坂文部科学大臣(当時)は,文化審議会にその見直しについて諮問しました。
 文化審議会では,文化政策部会において,前項で示したような諸情勢の変化などを踏まえながら審議が行われました。外部の有識者13名からの5回にわたるヒアリング,文化芸術関係団体からの書面による意見聴取,文化芸術懇談会における公聴会の実施,中間まとめに対する国民からの意見募集なども実施し,これらの意見も踏まえ,平成19年2月2日に答申「文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直しについて」を取りまとめ,伊吹文部科学大臣に提出しました。これを受けて,政府は,去る2月9日,第2次の「文化芸術の振興に関する基本的な方針」(以下,「第2次基本方針」という。)を閣議決定しました。

(1)第2次基本方針の概要

1総論

(ア)文化芸術の振興の意義

 「文化芸術の振興の意義」では,従来の五つの意義に加え,新たな今日的意義を掲げています(図表1-2-10)。具体的には,文化芸術の持つ,人々を引き付ける魅力や社会に与える影響力を「文化力」と呼び,この「文化力」が国の力であることが世界的に認識されていること,また,文化芸術が経済活動において新たな需要や高い付加価値を生み出す源泉ともなっており文化芸術と経済が密接に関連し合うと考えられるようになっていることを掲げています。そして,我が国が,経済力のみならず文化力により世界から評価される国へと発展していくこと,すなわち,文化芸術で国づくりを進める「文化芸術立国」を目指すことが必要である,という政府としての姿勢を明示しています。

図表●1-2-10 文化芸術の振興の意義

(イ)文化芸術の振興に当たっての基本的視点

 「文化芸術の振興に当たっての基本的視点」では,1文化力の時代を拓く,2文化力で地域から日本を元気にする,3国,地方,民間が相互に連携して文化芸術を支える,の3点を掲げています。この中で,特に文化芸術の特質を踏まえた長期的かつ継続的な視点に立った施策の展開が必要であることや,団塊の世代などの人々が地域の文化芸術活動に参加していくための環境整備が必要であることなどは,諸情勢の変化を踏まえ,新たな視点として追加したものです(図表1-2-11)。

図表●1-2-11 文化芸術の振興に当たっての基本的視点

(ウ)文化芸術の振興に当たって重点的に取り組むべき事項

 「文化芸術の振興に当たって重点的に取り組むべき事項」については六つの事項を示しています(図表1-2-12)。特に,「人材の育成」を第一に掲げ,アートマネジメント担当者や無形文化財等の後継者などの専門的な人材の育成を強調しています。次に,「日本文化の発信及び国際文化交流の推進」を掲げ,国として文化芸術を振興していくこととしています。また,「子どもの文化芸術活動の充実」についても独立の項目として掲げています。

図表●1-2-12 文化芸術の振興に当たって重点的に取り組むべき事項

2各論

 各論部分では,文化芸術振興基本法第3章に掲げる「文化芸術の振興に関する基本的施策」について,107の具体的な施策を列記しています。主な事項は,次のとおりです(図表1-2-13)。

図表●1-2-13 文化芸術の振興に関する基本的施策

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