現在,都市化や過疎化,少子高齢化が進行する中で,社会に様々な変化がもたらされています。都会では人々の疎外感や孤立感が高まり,一方,地方では地域住民の流出などにより連帯意識が薄れるなど,社会全体で地域コミュニティが衰退してきています。
また,今日の経済的な豊かさの中にあって,人々は,単なる利便性や効率性だけでない快適さや心地よさといった本当の豊かさを必ずしも実感できていないことが指摘されています。例えば,「平成17年国民生活に関する世論調査」では,「物質的にある程度豊かになったので,これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたい」と「心の豊かさ」を求める国民の割合は,57.8パーセントとなっています(図表1-2-1)。
芸術,伝統芸能,生活文化,文化財などの文化芸術は,人々に楽しさや感動,精神的な安らぎや生きる喜びをもたらし,人生を豊かにするものです。また,豊かな人間性を涵養し,創造性をはぐくみ,人間の感性を育てるほか,他者に共感する心を通じて,他人を尊重し,考えを異にする人々と共に生きる資質をはぐくむものです。
このような文化芸術は,芸術家や文化芸術団体,一部の愛好者だけのものではありません。すべての国民が真にゆとりと潤いを実感できる心豊かな生活を実現していく上で不可欠のものであり,国民全体の社会的財産であるといえます。
したがって,個人,企業,団体,地方公共団体,国などが,相互に連携協力して,社会全体でその振興を図っていく必要があります。
国は,文化芸術の現状や課題を把握した上で,地方公共団体や民間による自主的な活動を支援するとともに,伝統的な文化芸術の継承・発展や文化芸術の頂点の伸長,裾野の拡大など,国として保護・継承し,創造を促進していくべきものに対しては,積極的に支援していくことが必要です。
文化庁では,心豊かで活力にあふれた社会を実現するため,文化芸術で国づくりを進める「文化芸術立国」を目指して,文化芸術の振興に取り組んでいます。
[文化芸術の振興に関する基本的な方針(平成14年12月閣議決定)]