第2節 文化芸術をめぐる諸情勢の変化と第2次基本方針の策定

1.文化芸術振興基本法成立後の文化芸術をめぐる諸情勢の変化

 文化芸術振興基本法の制定後における我が国や世界の諸情勢の急速な変化は,文化芸術を取り巻く状況に大きな影響を与えています。
 まず,構造改革の進展により,民と官の役割分担の見直し,地方分権の推進とそれに伴う国と地方公共団体の役割の見直しが行われたことが挙げられます。規制緩和により新たな分野に民間が進出できるようになり,多様なサービスが効率的に提供されることへの期待が高まっています。
 文化芸術分野においても,特定非営利活動法人(NPO)やボランティアなど新たな活動形態が国民の間に定着し,民と官の協働による活動が広がっています。企業のメセナ(文化芸術支援)活動も多様な広がりを見せています(図表1-2-6)(参照:第2部第9章第1節6)。
 また,指定管理者制度の導入により,公立文化施設に対しては,民間の新たな発想や方法(ノウハウ)による効果的かつ効率的な運営が期待される一方で,これまで地域で培われてきた文化芸術活動の安定的かつ継続的な展開が困難になるのではないかとの懸念も現場から指摘されています。
 さらに,地方においては,過疎化と少子高齢化が進展し,文化芸術の担い手が不足してきています。都市部においても単身世帯が急速に増加しており,日本全体として,地域社会(コミュニティ)の機能の低下が指摘されています(図表1-2-71-2-8)。また,大規模な市町村合併により,地域に根ざした文化芸術の継承が危ぶまれるとの声もあります。
 国際的には,政治,経済における地球規模化(グローバリゼーション)の進展に伴い,文化芸術による創造的な相互交流が促進される一方,文化的アイデンティティの危機をめぐる緊張が高まり,文化の多様性が脅かされることが懸念されています。これを背景に,ユネスコでは,2005年(平成17年)10月に「文化多様性条約」が採択されました。

図表●1-2-6 全国のアートNPO法人設立数

図表●1-2-7 高齢者人口とその占める割合

 インターネットなどの情報通信技術の発展・普及は,グローバリゼーションを加速化させ,文化芸術を含むあらゆる分野において,国境を越えた対話や交流,協力を活発化させ,国民の情報の受信・発信を容易にしています(図表1-2-9)。その一方で,人間関係の希薄化,実体験の不足といった負の側面も指摘されています。

図表●1-2-8 全国及び都市部における単身世帯数とその割合

図表●1-2-9 世界のインターネット利用者総数の推移

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