第4章 社会・国民に支持される科学技術

2 科学技術に関する説明責任と情報発信の強化

 我が国の国民の多くは科学技術が社会に貢献していると感じているが、近年、若年層を中心として科学技術への関心は低下傾向にある。生活面での安全性や安心感、心の豊かさなどの面において科学技術に大きな期待が寄せられている一方で、科学技術の急速な進歩に対して不安を感じている人も少なくない。今後、ますます発展する科学技術が円滑に社会に受け入れられていくためには、絶え間なく科学技術水準の向上を図り知的・文化的価値を創出するとともに、科学技術の成果を社会・国民に還元する努力を強化することが重要である。また同時に、その成果を分かりやすく発信するなど、国民が科学技術を評価し判断できるよう説明責任を強化し、国民との対話を進めていくことによって、理解と支持を得ることも重要であり、そのための活動に積極的に取り組んでいく必要がある。
 文部科学省では、平成17年度より、科学技術振興調整費「重要課題解決型研究」について、直接経費の3パーセント程度をアウトリーチ活動(注)に充当すること、さらに、アウトリーチ活動について、中間評価、事後評価の対象とすることを公募要領において規定している。科学技術振興機構では、研究者などのアウトリーチ活動のモデルを開発し、その普及を図ることなどを目的として、平成17年度より「研究者情報発信活動推進モデル事業」を行っている。
 また、子どもたちの科学技術に対する興味・関心を高めていくため、平成11年度より、宇宙開発や防災科学技術など時宜にかなったテーマを取り上げ、マンガで分かりやすく解説した「子ども科学技術白書」を毎年作成している。文部科学省のホームページで全文を公開するとともに、全国の教育機関への配付や、全国の政府刊行物サービスセンター等での販売を行っている。
 「子ども科学技術白書8」(平成18年度版)は、「量子ビーム」の利用をテーマに取り上げ、生命科学や物質科学をはじめニュートリノ天文学など最先端の科学でも活用され幅広く我々の生活を支えている量子ビームについて、マンガやクイズなどにより分かりやすく紹介している。
 農林水産省では、農林水産業に関する研究開発の状況や成果等について分かりやすく伝えるため、青少年・消費者・生産者と対象を明確にし、自ら体験するイベントに重点を置いた「アグリ科学教室事業」を平成18年度から実施した。また、農業・食品産業技術総合研究機構等の試験研究独立行政法人においても、一般公開や講演会などを実施し、研究活動の紹介や成果の展示等の普及啓発に努めている。


子ども科学技術白書8

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