第4章 社会・国民に支持される科学技術

1 科学技術が及ぼす倫理的・法的・社会的課題への責任ある取組

(1)研究者・技術者倫理観の確立

 昨今、我が国では、研究活動において、データの捏(ねつ)造、改ざん、盗用等の不正行為が相次いで指摘されるようになっているところである。このような科学研究における不正行為は、真理の探求を積み重ね、新たな知を創造していく営みである科学の本質に反するものであると同時に、人々の科学への信頼を揺るがし、科学の発展を妨げるものであることから、絶対にあってはならないものである。
 平成18年2月に総合科学技術会議が決定した「研究上の不正に関する適切な対応について」を受けて、平成18年11月には「競争的資金の適正な執行に関する指針(競争的資金に関する関係府省連絡会申し合わせ)」を改正し、捏(ねつ)造、盗用などの研究上の不正行為が明らかになった場合の措置について定めた。その後、関係府省においてガイドラインの整備、公募要領への反映等が進められた。
 文部科学省では、科学技術・学術審議会の下に「研究活動の不正行為に関する特別委員会」を設置し、特に競争的資金を活用した研究活動における不正行為への対応について検討を進め、平成18年8月に、文部科学省、資金配分機関及び大学等研究機関が構築すべきシステムやルールに関するガイドラインを取りまとめた。これを受け、関係機関に対し、告発等の受付窓口の設置、調査体制の整備、これらに係る関係規程の整備等不正行為への対応に関する取組を要請するとともに、文部科学省自らも同年11月に告発受付窓口を設置した。農林水産省においても、研究活動の不正行為への対応についてのガイドラインを取りまとめ、関係機関に不正行為への対応に関する取組を要請するとともに、告発受付窓口の設置を行った。
 日本学術会議は、平成18年10月に、声明「科学者の行動規範について」を策定し、科学者の遵守すべき事項を示すとともに、大学等研究機関及び学協会に対し、本声明を参照としながら自らの行動規範を策定し、それが科学者の行動に反映されるよう周知することを要請した。そのほか、平成19年1月に、食品の影響を取り扱うテレビ番組において、実験データの捏(ねつ)造などの科学の倫理に反する行為が行われたことに対し、日本学術会議会長談話を公表した。

(2)ライフサイエンスにおける生命倫理・安全に対する取組

 近年のライフサイエンスの急速な発展に伴って生じうる生命倫理の問題に適切に対処するため、総合科学技術会議においては重要事項についての調査・検討等を行っており、文部科学省、厚生労働省においては必要な法令・指針の整備及び運用を行っている(第2章第2節1参照)。

(3)ナノテクノロジーの社会的影響に対する取組

 ナノテクノロジーが社会に受け入れられ発展するためには、その技術が社会に与える影響やナノ物質が人体・環境に与える影響等を正しく評価する必要がある。このため、文部科学省においては、科学技術振興調整費「ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究」や「ナノテクノロジー影響の多領域専門家パネル」により、ナノ物質の特性評価等の研究を推進している(第2章第2節4参照)。

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