第3章 科学技術システム改革

第2節■科学の発展と絶えざるイノベーションの創出

6 円滑な科学技術活動と成果還元に向けた制度・運用上の隘路(あいろ)の解消

 科学技術の振興に当たっては、人材の活発な交流、研究活動の円滑な実施、研究成果の社会への還元等を支える制度的な環境を整備することが、科学技術に対する人的・物的投資の効果を高める重要なかぎである。このため、総合科学技術会議では、科学技術の振興や成果還元上障害となる制度的な阻害要因として研究現場等で顕在化している諸問題を解決するため、以下の7項目について、全66の改革事項を提言し、各提言について、担当する省庁、検討・結論の期限や実施時期を定めた工程表を作成し、平成18年12月25日関係大臣に意見具申した。

  1. 優秀な外国人研究者を日本に惹きつける制度の実現
     我が国にとって喫緊の課題であるイノベーション創出のためには、優秀な外国人研究者を我が国に集め、その才能を発揮してもらうことが必要であり、そのために出入国管理制度等を見直す。
    • (制度改革事項)
      • 学位取得者の就職活動のための滞在期間の一層の延長
      • 研究者の在留資格に係る手続の簡素化 等
  2. 研究者の流動性を高めるための環境整備
     我が国の研究環境を活性化するためには、人材が国内外の様々な研究組織を容易に移動できるようにすることが重要であり、流動性を高めるための環境を整備する。
    • (制度改革事項)
      • 移動者に不利益を生じさせない新たな年金制度の構築に向けた提言
      • 退職金前払い制度の広範な導入 等
  3. 研究費の公正で効率的な使用の実現
     研究開発現場において、より良い資金利用環境を形成し、限りある国の予算を有効活用するため、研究費に係る制度を改革する。
    • (制度改革事項)
      • 繰越明許費制度の活用促進及び周知徹底
      • 研究費の交付時期の早期化 等
  4. 研究支援の強化
     創造的な研究開発活動の推進には、研究支援体制を充実し、研究者が研究活動に専念できるような環境を整備することが必要であり、そのためのシステム改革を行う。
    • (制度改革事項)
      • 研究支援者を全学的に一括して集中管理
      • 複数の機関の協力及び民間活力の活用 等
  5. 女性研究者の活躍を拡大するための環境整備
     育児をしながら女性も十分に研究活動ができ、また、出産・育児に伴う研究活動の中断を研究者としてのキャリアのマイナスとさせないため、研究者のワークスタイルにあわせた制度改革を行う。
    • (制度改革事項)
      • 有期雇用者の育児休業取得条件等の緩和
      • 育児期間中の勤務時間の短縮等の措置の拡充(在宅勤務制度) 等
  6. 治験を含む臨床研究の総合的推進
     医療の研究が活性化され、国民が世界最先端医療に早くアクセスできるように、治験を含む臨床研究を推進する上での制度的隘路を解消する。
    • (制度改革事項)
      • 医薬品医療機器総合機構の審査体制の充実
      • 臨床研究の準拠すべき実施基準の策定 等
  7. 国民の科学技術に対する理解の増進
     科学技術創造立国を実現していくためには、国民がその内容や必要性について適切に理解し、高い関心を有することが重要であり、国民の科学技術に対する理解を図る。
    • (制度改革事項)
      • 理解増進活動全体の体系化・組織化
      • 大学や研究機関における理解増進活動の恒常化 等

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