第3章 科学技術システム改革

第3節■科学技術振興のための基盤の強化

1 施設・設備の計画的・重点的整備

(1)国立大学等の施設の整備

 国立大学等の施設は、世界一流の優れた人材の育成や創造的・先端的な研究開発を推進する拠点であり、科学技術創造立国を目指す我が国にとって不可欠な基盤である。
 国立大学等施設については、平成13年に策定した「国立大学等施設緊急整備5か年計画」において、PFIによる整備を含めて優先的に取り組んできた狭隘(きょうあい)解消整備等の実施及び弾力的・流動的に利用できる共同利用スペースの確保等により、教育研究環境が充実向上した。その結果、教育研究の進展、先端技術を取得した研究者の養成、新技術の開発等において一定の効果が現れてきている。一方で、多くの既存施設は、改善が進まず一層老朽化が進み、次世代を担う学生や若手研究者等の多くにとって、教育研究環境が必ずしも十分でないという課題を生じている。
 このような状況を踏まえ、文部科学省では、第3期科学技術基本計画を受け、平成18年度〜平成22年度の5年間で緊急に整備すべき施設を盛り込んだ「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」を平成18年4月に策定し、国立大学等施設の重点的・計画的整備を推進している(第3-3-17図)
 本計画は、老朽化した施設の再生を最重要課題とし、これと併せて施設の狭隘化の解消を図ることで、優れた人材の養成の基盤となる施設や、世界水準の先端的な研究等を行う卓越した研究拠点等の再生を図ることとしている。国立大学等において整備が必要な面積約1,000万平方メートル(平成17年度末時点)のうち約540万平方メートルを整備目標としている。
 また、施設の整備と併せて、施設の効率的・弾力的利用等を目指した施設マネジメントや寄附の受入れによる施設整備等の新たな整備手法による整備等のシステム改革の一層の推進を国立大学に求めている。

第3-3-17図 第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画(平成18〜22年度)

(2)国立大学法人・公的研究機関等の設備の整備

 学術研究を推進していくためには、その基盤となる研究設備の整備充実が必要不可欠である。国立大学法人等における研究整備については、科学技術・学術審議会の下に設置された学術研究設備作業部会において、「国公私立大学を通じて学術研究設備の充実を図る」ための検討が行われ、平成17年6月に報告書が取りまとめられた。
 これを受けて、国としては、国立大学法人等における中・長期的な視野の下で計画された研究基盤としての設備や、特色ある研究の推進に必要な設備の整備への取組に対して、より効果的な支援の充実を図っている。

(3)私立大学の施設・設備の整備

 我が国にとって、学術研究の高度化等を推進するための施設や設備等の研究環境を整備することは極めて重要である。私立大学等は、我が国の高等教育の約8割を占め、多様な研究者を有するとともに、特色ある研究活動を積極的に展開するなど、高等教育の発展に大きな役割を果たしており、今後、ますます期待が寄せられているものと考えている。このような状況を踏まえ、優れた研究プロジェクトに対し研究施設・設備等の一体的な支援を行う「私立大学学術研究高度化推進事業」を推進し、私立大学等の研究基盤の強化を図っている。

(4)先端大型共用研究設備の整備・共用の促進

 先端分野における大型の研究施設(先端大型研究施設)は、その整備そのものが先端研究分野の結晶として科学技術の発展に大きく貢献するものではあるものの、国全体の研究開発を推進し、科学技術の水準の向上を目指すためには、これらを最大限活用することが重要である。先端大型研究施設が科学技術の広範な分野における産学官の研究者に幅広く利用されることによって優れた研究成果の創出が期待されている。
 そのため、「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」を一部改正して、平成18年7月に施行された「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」(以下、「共用法」という)では、特定放射光施設だけでなく、特定高速電子計算機施設を新たに追加し、これらの施設を特定先端大型研究施設と位置づけた。また、施設所有者から独立した登録機関がその利用者選定と利用支援を実施することにより共用の促進を図ることができるようになった。
 文部科学省では、本法律に基づき、世界最高水準の性能を有する大型放射光施設としてSPring-8における利用者・課題の選定における競争的環境の整備や利用者への技術的サポートの充実等を行っている。
 平成18年度においては、共用法の登録施設利用促進機関として財団法人高輝度光科学研究センターで、共用ビームライン利用研究課題約1,250件が採択され、「細菌の薬剤耐性化をもたらす薬剤認識・排出メカニズムの解明」や「燃料電池触媒のリアルタイム解析(燃料電池車実現に向けたメカニズムの解明)」等の大きな成果をあげてきている。
 加えて、これら特定先端大型研究施設に限らず、独立行政法人・大学等が所有する先端研究施設についても、当該機関等の本来の業務に支障のない範囲において、広範な産学官の研究者の利用に供することが、我が国の研究の潜在能力を活用する上で重要である。
 しかしながら、これらの研究施設については、その利用に係る基本的な情報(所在地、利用用途、利用可能時間等)が不足していること、施設側に利用者をサポートするための体制が整わない等の問題点がある。このため、これらの研究施設の共用を促進するための情報の提供を国(文部科学省)が行うことにより共用を促進することを盛り込んだ「研究交流促進法」の一部改正を行った。また、利用者のサポートについても、平成17年度から先端大型研究施設戦略活用プログラムを実施し、産業界を中心とした新規の利用者の拡大を図るための利用者サポート体制の充実に努めている。
 また、民間には整備が困難な大型で、かつ高価な共同利用施設及び設備については、国により整備がなされ、民間との共同利用施設・設備として提供されている(第3-3-18表)

第3-3-18表 民間には整備が困難な大型かつ高価な共同利用施設・設備の整備状況

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