第3章 科学技術システム改革

第2節■科学の発展と絶えざるイノベーションの創出

5 研究開発の効果的・効率的推進

(1)研究費の有効活用

 総合科学技術会議は、研究費の公正で効率的な使用を推進するため、平成18年8月、「公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)」を決定し、関係大臣宛に意見具申した。その中で、研究者による不正使用等の防止に向け、関係府省・配分機関・研究機関に対し、ルールの整備・明確化や研究費の管理・監査体制の整備等への早期の取組を求めた。
 また、研究資金の不合理な重複等を排除するため、競争的資金の新規採択に際し、関係府省間で情報の共有化を図るほか、平成18年7月からは、内閣府「政府研究開発データベース」を活用して、各府省が重複等のチェックを行うことを開始した。
 さらに、内閣府では、関係府省の協力を得て、科学技術基本計画の策定、資源配分の調査・審議等に必要なマクロ分析に活用する「政府研究開発データベース」について、引き続き、所要データの蓄積など構築を行った。

(研究費配分における無駄の徹底排除)

 研究費配分の不合理な重複や、研究者個人の適切なエフォートを超えた研究費の過度の集中は、排除を徹底する必要がある。具体的な取組として、関係府省の連携や「政府研究開発データベースシステム」の活用による重複調査の実施により、重複の排除に努めている。また、競争的資金等の申請を電子化するとともに重複調査も効率的に行うことのできる府省共通研究開発管理システムの開発を進めている。
 研究費の不正使用や不正受給については、各府省とも不正使用や不正受給をした研究者に申請資格の制限を課すなど厳格に対処をしている。総合科学技術会議は、前記のとおり「公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)」において、各府省、配分機関、研究機関に対しルールの整備・明確化等の取組を求めた。また、文部科学省では、不正な使用を防止するためには、研究機関における研究費の管理・監査の体制の一層の整備が必要であるとの認識のもと、外部有識者で構成された不正対策検討会の検討結果を踏まえ、「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」を平成19年2月15日に文部科学大臣決定し、研究機関等に周知した。今後は、ガイドラインに基づく管理・監査体制の整備状況について研究機関からの報告等に基づいて確認し、必要に応じて改善指導・是正措置を実施することなどにより、公的研究費の不正な使用の防止に努めることとしている。

(2)研究費における人材の育成・活用の重視

 研究開発に携わる中で人材が育成されることの重要性や、研究開発の重点化に伴い人材の重点化も進むべきことにかんがみれば、競争的資金等の研究費において、人材の育成や活用を行うことが一層重視されるべきである。
 若手研究者を支援する取組として、文部科学省所管の科学研究費補助金では、これまでも若手研究者向け研究費の拡充に努めており、平成18年度には新規プログラムとして、「若手研究(スタートアップ)」を実施している。また、継続施策として、総務省所管の戦略的情報通信研究開発推進制度、厚生労働省所管の厚生労働科学研究費補助金、農林水産省所管の新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業、経済産業省所管の産業技術研究助成事業、環境省所管の環境技術開発等推進事業等においても、若手研究者を支援する取組が行われている。

(3)評価システムの改革

 科学技術を振興するためには、研究者を励まし、優れた研究開発活動を奨励していくとの観点から適切な評価を実施することが必要である。適切な評価を実施することにより、研究開発活動の効率化・活性化を図り、より優れた研究開発成果の獲得、優れた研究者の養成を推進し、社会、経済への還元を図るとともに、国民に対して説明責任を果たすことができる。
 我が国の研究開発の評価については、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成17年3月29日内閣総理大臣決定)に基づき、各府省が各々の評価方法等を定めた指針を策定し、評価を進めているところである。科学技術関係経費の6割以上を占める文部科学省においては、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(平成17年9月26日文部科学大臣決定)を策定している。同指針等に基づく評価の実施例を挙げれば、概算要求における重要課題等について、外部評価を活用した事前評価を行い、概算要求の適否等の判断材料として活用しているとともに、その後も中間評価、事後評価等を適切に行っている。
 他方、独立行政法人や国立大学法人においては、「独立行政法人通則法」や「国立大学法人法」に基づき、業務の実績に関する評価が実施されている。また、各府省においては、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」に基づき、政策評価が実施されている。

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