第3章 科学技術システム改革

第1節■人材の育成、確保、活躍の促進

4 次代の科学技術を担う人材の裾野の拡大

 総合科学技術会議は、平成18年4月の会議において有識者議員から「理数教育の抜本的充実に向けて」を提出し、トップレベルの人材の育成や外部専門人材による指導体制の強化等学校教育の充実、科学技術コミュニケーターの育成や研究機関のアウトリーチ活動の強化等多様な戦略的アプローチの強化についての検討・施策の充実を求め、関係省庁の平成19年度予算等に反映された。

(1)知的好奇心に溢れた子どもの育成

 理科や数学が好きな子どもの裾野を広げ、知的好奇心にあふれた子どもを育成するためには、初等中等教育段階から子どもが科学技術に親しみ、学ぶ環境が形成される必要がある。
 このため、文部科学省では、次代を担う科学技術関係人材の養成に向け、子どもが科学技術に親しみ学ぶことができる環境を充実するとともに、子どもが伸びうる能力を伸長することができる効果的な環境を提供するため、以下のような取組を総合的に推進し、理数教育の充実を図っている。

(理数大好きモデル地域事業)

 科学技術振興機構は、児童・生徒の科学に対する知的好奇心や探究心をはぐくみ、科学的な見方や考え方を育成するため、平成18年度、20のモデル地域において、理数教育に積極的に取り組む地方公共団体の提案に基づいた取組を支援している。具体的には、各地域の学校と大学・科学館等との連携、教員・科学館職員・研究者等の協力による各地域に根ざした理数教材の開発と学校での活用、地域のボランティアを活用した取組などを行っている。

(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)

 科学技術振興機構は、児童・生徒の科学技術・理科、数学に関する興味・関心と知的探求心などを一層高める機会を充実するため、学校及び教育委員会等管理機関と大学・科学館などが連携した体験的・問題解決的な取組を支援する「サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)」を実施している。具体的には、研究者などが講師となって行う、観察、実験等の学習活動や、これらに関する教員研修、また、大学、研究機関における科学技術体験合宿(サイエンスキャンプ)等を実施している(平成18年度講座型学習活動:767件)。

(理科、算数・数学教育に使用する設備の整備)

 不足や老朽化が著しい理科、算数・数学教育に使用する小・中・高等学校等の実験器具等の設備の充実を図るため、理科教育振興法に基づき、設備の計画的な整備を進めている。

(先進的な科学技術・理科教育用デジタル教材の開発)

 科学技術振興機構では、科学技術・理科教育の充実を図るため、研究機関などにおける最新の研究成果を活用した先進的な科学技術・理科教育用デジタル教材を開発するとともに、学校などに提供するためのシステムの研究開発を行っている。
 デジタル教材については、インターネットを通じて全国に提供を行うとともに、公募により選定した全国9の共同研究機関(教育委員会や教育センター等)を通じ、学校等での活用に関する実証的試験・評価を行っている。

(その他)

 日本学術会議は、日本の将来を担うべき子どもの活力が大きく低下している状況を踏まえ、「子どもを元気にする環境づくり戦略・政策検討委員会」を設置し、国家戦略のための基本方針等分野横断的な検討を行っている。

(2)才能ある子どもの個性・能力の伸長

 理科や数学に興味・関心の高い子どもの個性・能力を伸ばし、科学技術分野において卓越した人材を育成するため、文部科学省においては、以下のような取組を実施している。

(スーパーサイエンスハイスクール)

 文部科学省では、平成14年度から、理数教育を重点的に行う学校を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定し、将来の国際的な科学技術関係人材の育成のための取組を着実に推進している。具体的には、大学と連携した先進的な理数教育や、理科・数学に重点を置いたカリキュラム開発等を実施している。平成18年度においては、全国99校の高等学校が特色ある取組を進めている。

(国際科学技術コンテスト支援)

 科学技術振興機構は、科学技術や理科・数学などに興味を持つ児童・生徒への発展的学習機会を提供し、一層の学習意欲の喚起や能力の伸長、国際的に通用する科学技術関係人材の育成などを目的として、主に高校生以下を対象とした数学・化学・生物学・物理・情報、ロボット、課題研究の7分野の国際科学技術コンテストへの参加に関する取組を支援している。平成18年度の国際数学オリンピック等においても、日本の生徒が優秀な成績を収めている(第3-3-5表)


平成18年度国際科学コンテスト受賞者

第3-3-5表 平成18年国際科学コンテスト受賞者

(高等学校と大学の接続)

 才能ある児童・生徒の個性・能力の伸長が図られることが重要であり、そのための高大接続の改善が必要である。例えば、志願者の能力・適性・意欲等を総合的に判定するアドミッション・オフィス(AO)入試については、平成18年度入試において約60パーセントの大学が導入している。また、大学の教員が高等学校に出向いて授業を行う出前授業や高校生が科目等履修生などとして大学の授業を受ける取組など、高校生が大学の教育研究に触れることができる高大連携に関する取組も年々増加してきている。

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