第3章 研究成果関連の動向

第3節■技術貿易

 特許、実用新案、技術上のノウハウは、科学技術に関する研究開発活動を通して生まれる成果である。企業等はこれらの成果を自ら利用する以外に、権利譲渡、実施許諾などという形で国際的に取引している。このような取引は技術貿易と呼ばれる。

(技術貿易額の動向)

 主要国の技術貿易の輸出入額を見ると、企業活動のグローバル化の進展や知的財産権を重視する近年の傾向を反映して拡大傾向にある(第2-3-15図)。各国の統計の作成方法により違いがあり、単純な比較はできないが、輸出入額とも米国が最も高く、特に輸出額では他国を大きく引き離している。

第2-3-15図 主要国の技術貿易額の推移

 我が国の技術貿易額については、日本銀行による「国際収支統計月報」(以下本節において「国際収支統計」)と総務省統計局による「科学技術研究調査報告」(以下本節において「総務省統計」)がある。総務省統計は我が国の研究活動の実態把握に主眼が置かれているのに対し、国際収支統計は外国為替の管理に主眼が置かれている。
 収支面から見ると、国際収支統計では輸出入額はほぼ同じであるが、総務省統計では輸出超過(以下本章では「出超」)となっている。

(技術貿易収支比の動向)

 我が国の技術貿易収支比は増加傾向で、一方、米国は減少傾向にあり、2002年(平成14年)以降、総務省統計では第1位となった。また、国際収支統計は輸入超過(以下本章では「入超」)であったが収支比は年々改善されつつあり、出超に転じた(第2-3-16図)。そのほか、フランス、英国は出超に転じ、ドイツも出超へと転じようとしている。

第2-3-16図 主要国の技術貿易収支比の推移

 我が国と主要国間の技術貿易収支は、国際収支統計と総務省統計で傾向が異なっており、前者では入超、後者では出超傾向となっている(第2-3-17表)

第2-3-17表 我が国の相手国別技術貿易収支比

(我が国と各国(地域)との技術貿易動向)

 総務省統計によると、我が国と主要国との技術貿易収支比は、年度によってばらつきはあるものの、長期的には上昇傾向を続けている(第2-3-18図)

第2-3-18図 我が国と主要国との技術貿易収支比の推移

 2005年度(平成17年度)の我が国の技術貿易を地域別に見ると、技術輸出額では、北米が全輸出額の過半数を占め、次いでアジア、欧州の順となっている。米国は単独の相手国としては最も多く全輸出額の4割以上を占めており、アジアでの主要な相手国(地域)は我が国と比較的近隣にある国が多く、欧州では英国の占める割合が高くなっている。
 技術輸入額では、米国からの技術輸入が最も多く全体の約4分の3を占めており、欧州の主要国においては、特定国に偏在せずほぼ均等に分布している(第2-3-19図)

第2-3-19図 主な国(地域)別技術貿易の構成比(平成17年度)

 また、地域別の技術貿易を見ると、1996年度(平成8年度)までは、欧州、北米で入超、アジアでは出超という傾向であったが、1997年度(平成9年度)以降はすべての地域で出超の傾向が続いており、2005年度(平成17年度)も同様である(第2-3-20図)

第2-3-20図 我が国の地域別技術貿易額(平成17年度)

(我が国の業種別技術貿易動向)

 2005年度(平成17年度)の製造業の業種別技術貿易額を総務省統計で見ると、技術輸出額では、自動車工業が最も大きく、次いで情報通信機械器具工業、医薬品工業、機械工業、電気機械器具工業、化学工業の順となっている。
 技術輸入額では、情報通信機械器具工業が最も大きく、次いで機械工業、電子部品・デバイス工業、化学工業、医薬品工業の順となっている(第2-3-21図)

第2-3-21図 我が国の主要業種の技術貿易額の推移

 技術貿易収支比の推移を見ると、自動車工業の技術貿易収支比は出超側で拡大傾向にある。また、電気機械器具工業では1993年度(平成5年度)以降、医薬品工業で、1996年度(平成8年度)以降、出超となっている。2002年度(平成14年度)からできた電子部品・デバイス工業の技術貿易収支比は出超、情報通信機械器具工業は入超である(第2-3-22図)

第2-3-22図 我が国の主要業種の技術貿易収支比の推移

 次に、国(地域)別・主要な業種別の収支で見ると、自動車工業は、すべての国に対して出超となっており、特に米国に対する技術輸出額が大きい。情報通信機械器具工業は、主にアジアに対して出超傾向が強く、全体では入超となっている。医薬品工業は、欧米との貿易割合が圧倒的で、全体では出超となっている(第2-3-23表)

第2-3-23表 我が国の主要業種の技術貿易の区(地域)別収支(平成17年度)

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