第2章 今後の科学技術振興に向けて

要旨

 現代社会では、我が国を含め各国は科学技術の振興に多額の投資を行っている。我が国において科学技術が今後更に社会の要請に応えていくためには、社会・国民の支持を得つつ必要な研究を行い、成果を上げてそれを効率良く社会に還元する必要がある。そのためには、分かりやすい説明と教育の充実により科学の精神を社会で広範に共有するとともに、適正な評価により必要な技術開発と有能な研究者に適切かつ集中的な資源配分を行いながら、産学官の科学技術関係人材の創造性を引き出す環境を整備することが重要である。

1 概観

 総務省統計局の平成18年「科学技術研究調査報告」によれば、我が国における平成17年度の研究費支出は、政府負担が約3兆3,896億円、民間負担が約14兆3,974億円である。我々は1人当たり政府を通じて年間約3万円支払っている計算になり、民間企業等の負担によりその4倍程度の予算規模の研究が行われていることになる。
 また同報告によれば、平成18年の研究関係従業者は約104万人、うち研究者は約82万人で、我が国の人口のそれぞれ0.8パーセント、0.6パーセントになる。研究者や技術者の全人口に占める割合は米国でも大きくないが、産業、医療などで極めて重要な役割を果たしている。ボストン銀行が1997年に出した調査報告によれば、有数の研究大学であるマサチューセッツ工科大学は、その卒業生だけで4,000社を起業し、110万人を雇用し、世界で2,320億ドルを売り上げている。
 第1章第4節で見たように、知識基盤社会の進行に伴い各国の研究者の数は年々増加し、特に産業界の研究者の割合が増加している。これに対応して、大学・大学院等で高度な教育を受ける人の割合が増加し、社会の要請に応えている。

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