第1章 科学技術の振興の成果

第4節■次代を担う人材の育成 −知の継承−

3 今後の人材育成・確保の在り方

 人材、技術など「知」をめぐる世界的な大競争時代を迎える中、我が国は少子高齢化の進展・人口減少を迎えており、科学技術関係人材の質と量の確保をめぐる懸念が高まっている。
 このため、今日、科学技術創造立国の実現に向けて、我が国全体の研究開発や国際競争力を維持・向上させるとともに、安全・安心で質の高い生活環境を構築するためには、科学技術や学術活動の基盤となる人材をいかに育成・確保し、社会の多様な場における活躍を促進していくかが極めて重要な課題となっている。
 第3期科学技術基本計画においては、これらの課題に対応するため、次代を担う人材への理数教育の充実や、若手、女性、外国人が活躍できる環境の形成、大学における人材育成機能の強化と産学連携による人材育成等による初等中等教育段階から大学学部、大学院、社会人に至るまで連続性をもった取組を総合的に推進することが重要であることが示されている(第1-1-42図)
 そこで、科学技術関係人材の質と量を確保するためには、若手研究者の個々の人材が活きるシステムの構築や、大学院教育の抜本的強化や卓越した教育研究拠点の形成、人材養成面での産学連携の強化などにより、科学技術関係人材が、社会のニーズに対応し、様々な分野で高度な専門性を活かして活躍することを促進することが重要であるとの観点から、今後の人材育成・確保の在り方について述べる。あわせて、次代の科学技術を担う人材の裾野を広げるための子どもの教育・学習環境の在り方について述べる。

第1-1-42図 人材の育成、確保、活躍の促進

(1)若手研究者の自立支援

(若手研究者向けの競争的資金等の拡充)

 実績がなくとも、優秀であり、自分の発想で自立して研究を進められると認められるような若手研究者に対しては、競争的資金の中に一定の若手枠を設けるなどにより、支援していくことが有効である。第1-1-43表に我が国における若手研究者を対象とした競争的資金制度を示す。
 例えば、米国でも、科学アカデミーによる研究の初期段階(early-career)にある優れた研究者への支援プログラムの大幅拡充の提言の後、国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)において、生物医学分野の若手研究者の卓越した研究への重点的支援を趣旨とする新規プログラムが相次いで創設されている。
 我が国の代表的な競争的資金である科学研究費補助金においては、これまでも若手研究者を対象とした研究種目の充実に努めてきているが、平成19年度には新たに、42歳以下の研究者がこれまでの成果を踏まえ、自らチームを率いて重点的に研究を推進することができるよう、5年間で1億円程度の研究支援を行う「若手研究(S)」を実施することとしている。
 今後更に、柔軟な発想と挑戦する意欲を持った若手研究者の育成の充実を図るためには、若手研究者に自立して新しい領域の開拓等に挑戦する機会を与え、そこで成果を出した人を引き続き育てる仕組みの導入が有効であり、若手向けの研究資金の拡充を図る必要がある。

第1-1-43表 我が国の代表的な若手研究者対象の競争的資金

(若手研究者の自立的研究環境整備促進)

 前述のように競争的資金等により雇用されているポストドクター等は、我が国の研究水準の向上と成果の創出の大きな原動力となっている一方で、不安定な身分や不透明なキャリアパス等が課題となっている。また、我が国においては、従来から大学院を卒業後、助手として採用され、教授となって初めて研究室を任されるケースが多い。このように身分的な安定が図られる反面、若手研究者の研究上の独立性が確保され、流動的・競争的な環境の中で研究を進められるような研究体制の整備等が十分ではないという問題点も指摘されているところである。このため、ポストドクター等の若手研究者のキャリアパスを構築し、人材の流動性を高め、研究環境の活性化を図るために、大学等の研究機関における人材システム改革を早急に推進していく必要がある。
 米国では、ポストドクターを経験した研究経歴の初期段階にある研究者が、大学等に任期を付して雇用され、その間の研究業績の厳格な審査を経て当該機関における終身在職権(テニュア)を獲得するテニュア制度が一般的であり、テニュアを獲得する前の任期付ポジションの段階は、テニュア・トラックと呼ばれている。この制度により、熾烈(しれつ)な競争的環境の下で、ポストドクター、テニュア・トラック、テニュアというキャリアパスが明確化されており、最終的なテニュアの取得が強いインセンティブとなって、テニュア・トラック段階で自分の研究室の運営を任された若手研究者が優れた研究成果を創出するとともに、人材の流動性の向上が図られ、大学等の研究環境の活性化に大きく寄与していると言われている。
 我が国においても、平成18年度より「若手研究者の自立的研究環境整備促進」プログラム(科学技術振興調整費)を開始し、世界的研究拠点を目指す我が国の研究機関において、テニュア・トラック制(若手研究者が、任期付きの雇用形態で自立した研究者としての経験を積み、厳格な審査を経て安定的な職を得る仕組み)の確立を目指し、若手研究者に競争的環境の中で自立性と活躍の機会を与える仕組みの導入を支援している。
 平成18年度には9事業が採択されており、これらから、我が国におけるテニュア・トラック制度のモデルケースが生まれ、優れた若手研究者の能力を最大限に活かすための公正で明確なキャリアパスの構築と競争的な研究環境の整備が図られることが期待される。

(博士課程在学者への経済的支援の拡充)

 優れた資質・能力を持つ人材が大学院博士課程に進学することを促進するためには、経済的な不安なく学業・研究活動に専念できる環境の整備が必要である。
 日本学生支援機構が行った平成16年度学生生活調査(平成18年4月)によると、日本の博士課程学生の学費・生活費等に充てる収入の約75パーセントは、家庭からの給付、奨学金、アルバイト等で賄われているのが現状である。大学院学生に対する支援制度としては、フェローシップ、ティーチング・アシスタント(TA)、リサーチ・アシスタント(RA)(注1)及び奨学金等があるが、我が国における現状は第1-1-44図のとおりである。一方米国では、多くの大学院学生がフェローシップ、リサーチ・アシスタント等により返済義務のない生活費相当分の支援を受けているとされている(第1-1-44図)
 第3期科学技術基本計画においては、優秀な人材を選抜するという競争性を十分確保しつつ、フェローシップ(特別研究員-DC等)の拡充や競争的資金におけるリサーチ・アシスタント等としての支給の拡大等により、博士課程(後期)在学者の2割程度が生活費相当額を受給できることを目指すこととしている。
 我が国としては、第3期基本計画における目標の着実な実行のために、特別研究員事業の拡充を図るとともに、競争的資金を活用した学生への支援の拡充、日本学生支援機構奨学金の充実、優秀な学生への学費免除措置等の経済的支援が不可欠である。

  • (注1)
    • フェローシップ:通常、学生に直接支給されるもので、学生はこの資金をもって自分の求める研究活動ができる大学院を選ぶことができることから、ポータブルな助成金とも呼ばれている。学生に研究に専念し、優秀な成績を修めることを義務付けるだけで、返納義務はない。
    • ティーチング・アシスタント(TA):大学に雇用され、セミナーの指導、実験・実習の指導、試験の実施、学部学生の講義等を担当し、その対価として、一定額の給付金が支給されるもの。
    • リサーチ・アシスタント(RA):大学教員の研究補助者として雇用されるもので、雇用された大学院学生の給与と授業料などの経費が支給される。学生の研究補助事業に対する対価として支払われるもの。

第1-1-44図 大学院学生に対する経済的支援状況

(社会のニーズに応える人材の育成)

 科学技術創造立国を目指す我が国において、その中核を担う人材として博士号取得者等が、高度な専門能力を活かし、大学等の研究機関のみならず、社会の多様な場で活躍することが必要である。
 日米の博士号取得者の就職先を雇用分門別に比較すると、日本の場合、「4年制大学」が最も多く、続いて「非営利機関」「営利企業」となっている。一方、米国では、「4年制大学」が最も多いのは日本と同じであるが、続いて「営利企業」「行政機関」となっており、特に「営利企業」への就職は日本のほぼ2倍となっている(第1-1-45図)

第1-1-45図 日米の博士号取得者の活動実態の比較

 また、米国の科学工学分野の学位取得者について、学位取得後の経過年数別に平均年収を見ると、博士号取得者の年俸が最も高いことが分かる(第1-1-46図)。文部科学省科学技術政策研究所及び株式会社日本総合研究所の調査(注2)によれば、米国では、企業の研究開発部門における博士号への高い評価を受けて、博士を取得した後、産業界に就業した場合に、他のどの雇用部門と比較しても、年俸が高くなることが一般化しており、結果として、大学から企業への博士号取得者の就業を促す、大きなインセンティブが構築されているとしている。米国企業は、博士号取得者を、先端分野での研究を推進するリーダー、研究のための社の内外関係者・機関との折衝・調整を行うリーダー、さらには、研究プロジェクト全体をマネジメントするリーダーとしての力を身につけた、あるいはそのための潜在能力を持つ人材として認知している。このため、米国企業においては、研究開発部門の採用において、学士や修士に比べ、博士を優先して採用する傾向が強いとしている。

  • (注2)基本計画の達成効果の評価のための調査 科学技術人材の活動実態に関する日米比較−博士号所得者のキャリアパス−(平成17年3月 科学技術政策研究所株式会社日本総合研究所)

第1-1-46図 米国における取得学位別・学位取得後経過年数別の平均年収(2003年)

 一方、日本経済団体連合会産業技術委員会の調査(注3)によれば、日本のほとんどの企業が博士の採用枠を設定しておらず、個別に能力次第で判断するとしている。また、博士の採用は厳選して行われており、採用した企業の約80パーセントは「求める人材」を採用できている。博士を高く評価している点は、「専門知識・専門能力」「研究遂行能力」「論理的思考能力」等である。一方、問題があると考えている点は、「コミュニケーション力」「協調性」「業務遂行能力」等を上げている。博士課程修了者に期待する資質としては、「リーダーシップ」「課題設定能力」「マネジメント力」「チャレンジ力」等が多くなっている。
 こうした産業界からの指摘も踏まえ、キャッチアップからフロントランナーへの転換という変革の時代における、新たな人材育成のための取組を推進していくことが重要である。

  • (注3)企業における博士課程修了者の状況に関するアンケート調査結果(平成19年2月)
(産学が協働した人材育成)

 前節で紹介した産学官共同研究の成果事例のように、産学官の研究者が結集する共同研究は、若手研究者の研鑽(けんさん)の絶好の機会となるばかりでなく、研究領域における新しい研究リーダーの輩出にも貢献するものである。
 また、大学及び産業界の双方で、自らの専門分野の位置づけを社会的活動全体の中で理解し、現実的課題の中から主体的に問題設定を行い、それに取り組む能力のある「高度専門人材」の育成が急務であるとの認識が高まっている。こうした要請に応えるため、文部科学省では、平成17年度より人材育成を主眼とした産学連携の取組を推進する「派遣型高度人材育成協同プラン」を開始した。
 本事業は、産学が協同し、企業等の現場を活用して、現実の中から問題設定を行い、企業活動全体の中で自分の専門の位置づけを理解するなど、実際の社会の中で必要となる「能力」を涵養することを主眼においたインターンシップの開発を目指す教育プロジェクトを推進するものである。文部科学省では、例えば、IT、バイオテクノロジー、創薬化学、ナノテクノロジー・材料等の先端科学技術分野において、実際に大学院生を企業との協同研究開発プロジェクトに参加させ、現実に即した課題の発見・解決に取り組ませる教育プログラムの開発や、地元の研究開発型ベンチャー企業等との連携による起業家型人材養成を目指す先導的モデルプログラムの実施等の様々な取組が進められており、人材育成を重視した産学協力の新たな取組として、今後の進展が期待される。

(博士号取得者の産業界等での活躍促進)

 博士号取得者等の高度な専門性を有する人材が、大学等の研究機関以外の多様な方面へ進み、その能力を活用することを促進するため、平成18年度より「科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業」を推進している。本事業は、大学、企業、学協会等がネットワークを形成し、企業等と若手研究人材の出会いの場の創出や、キャリアガイダンスの実施、派遣研修等の能力開発、キャリアパス多様化に係る意識の醸成など、ポストドクター等若手研究者のキャリア選択に対する組織的支援と環境整備を行っている(第1-1-47図)
 平成18年度には、8機関が実施機関として採択され、キャリアサポートセンターの設置、地域産業との連携によるネットワークの構築、技術経営ガイダンス、若手研究者の企業等への自己PRの機会の提供などの様々な取組が始まったところであり、今後の発展的な展開が望まれる。

第1-1-47図 科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業

(次代の科学技術を担う人材の裾野の拡大)

 次代を担う優秀な科学技術関係人材を育成・確保するためには、初等中等教育段階から大学院までの連続的な教育の積み上げが重要である。初等中等教育段階から、理科や数学の不思議や楽しさなどに触れる機会を提供し、多くの子どもの科学技術への興味・関心を育み、意欲・能力の高い子どもの能力をさらに伸ばすことにより、人材の裾野の拡大を図ることが重要である。
 このため、小・中学校における観察や実験等を通した体験的な学習機会の充実や、研究者・技術者との交流の促進、理数教育を重視する高等学校等への支援、意欲・能力の高い者を選抜し特別な教育プログラムを提供する大学学部の支援等の連続的な取組を推進する必要がある。

(2)大学院教育の抜本的強化

 科学技術が急速に進展する中で、我が国では、「知」の専門化・細分化に対応できる「深い専門性」と新たな学問分野や技術革新に対応できる「幅広い応用力」を持つ人材が必要とされている。産業界からも、高度な専門的知識と企画力を併せもち、リーダーシップをとれる、即戦力となる人材が求められており、大学院において社会の幅広い分野で活躍する人材の養成機能の抜本的な強化を図ることが重要である。
 文部科学省では、産業界、大学、公的研究機関等の研究者を対象として、自身が所属する機関で求められる研究者と大学院教育の現状に対する意識について調査を行った。まず、自身が所属する研究者に求められる素養・能力について、15項目の中から優先順位を付して3つの項目を選択してもらったところ、所属機関に関わらず、「専門分野の知識」の優先順位が第1位とする回答が最も多くなった。次に優先度が高かったのは、所属機関別に、大学等では「創造性」、公的研究機関等では「探究心」、民間企業では「課題解決能力」となった(第1-1-48図)
 また、所属機関で求められる研究者の育成のために必要な大学院教育の充実について質問したところ、全体で最も回答が多かったのは「専門分野に限らず、関連領域も含めた幅広い知識習得のためのコースワークの充実」であり、特に公的研究機関等や民間企業の研究者からの回答率が高くなった。所属機関別では、民間企業では「産業界等との協力による教育プログラムの開発、インターンシップの支援」、大学等では「奨学金やTA(ティーチング・アシスタント)・RA(リサーチ・アシスタント)等による大学院生に対する経済的支援制度の充実」を挙げる回答が最も多くなった(第1-1-49図)

第1-1-48図 自身の所属機関の研究者に求められる素養・能力(上位5項目)

第1-1-49図 所属機関で求められる研究者育成のための大学院教育の充実

 「新時代の大学院教育−国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて−」(平成17年9月5日中央教育審議会答申)及び第3期科学技術基本計画においては、今後、大学院の人材養成機能を強化していくために、教育の課程の組織的展開の強化や国際的に卓越した教育研究拠点の形成が必要であることが提言されている。
 これらの提言を踏まえ、文部科学省では、平成18年度から5年間の体系的・集中的な取組計画「大学院教育振興施策要綱」(平成18年3月30日)を策定し、本要綱に沿って、大学院教育の充実・強化を図ることとしている。平成18年3月31日には、「大学院設置基準」を改正し(平成19年4月1日施行)、研究科又は専攻ごとに人材養成に関する目的を学則等に定めること、ファカルティ・ディベロップメント(注4)を実施することや成績評価基準を明示すること等を新たに規定し、教育機能の強化のための取組を各大学院に求めている。

  • (注4)ファカルティ・ディベロップメント:教員が授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取組の総称。
(国際的に卓越した教育研究拠点の形成)

 文部科学省では、前述の「21世紀COEプログラム」の成果を踏まえ、その基本的な考え方を継承しつつ、支援を重点化することによって、拠点を更に発展させる事業として「グローバルCOEプログラム」を計画している(第1-1-50図)。本事業においては、我が国の大学院の教育研究機能を一層充実・強化し、世界最高水準の研究基盤の下で世界をリードする創造的な人材育成を図るため、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援することとしており、国際競争力のある大学づくりを推進することを目的としている。
 特に、若手研究者や博士課程の学生が独立して研究に専念できる環境の整備や経済的支援の強化、海外の優れた研究機関との連携や海外からの教員の招へいを促進し、国際的な拠点形成を推進することとしている。

第1-1-50図 グローバルCOEプログラム

(大学院教育改革支援プログラム)

 大学院設置基準の改正等と併せて、社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する大学院博士課程、修士課程を対象として、優れた組織的・体系的な教育取組に対して重点的な支援を行うことにより、大学院教育の実質化を推進することを目的とする「大学院教育改革支援プログラム」を実施することとしている(第1-1-51図)
 このような、大学院教育の改革により、我が国の国際競争力を強化し、世界に通じる高度人材の育成を図ることは喫緊の課題であり、内外に開かれた国際的に魅力ある大学院教育プログラムの展開が急ぎ求められている。

第1-1-51図 大学院教育改革支援プログラム

(3)優秀な科学技術関係人材の確保

 国際的な人材獲得競争が熾烈化する中、優秀な人材を多く確保することは、世界各国にとって喫緊の課題となっている。第1-1-54表のとおり、近年、国際的な潮流として、優秀な人材を確保するための方策がとられるとともに、トップレベルの研究者の招へいを掲げるプログラムが増加している。
 このような国際情勢の下、今後、我が国が優秀な人材を確保するためには拠点を形成することが重要であり、文部科学省では、世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラムを推進し、内閣府では、沖縄振興の一環として、世界に開かれた世界最高水準の自然科学系の大学院大学の設立に向けた構想を推進している。
 なお、我が国においては、外国人研究者が1万1,000人程度と研究者全体の1.4パーセントにとどまっており、外国人の活躍する環境を整備するためには、数の面でも外国人研究者の受入れを促進していく必要がある。

(世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラム)

 我が国の科学技術水準を向上させ、将来の発展の原動力であるイノベーションを連続的に起こしていくための出発点は、我が国の基礎研究機能と国際競争力の強化である。このため、世界トップレベルの研究拠点を従来の発想にとらわれることなく構築し、世界の頭脳が集い、優れた研究成果を生み出すとともに、優秀な人材を育む「場」を我が国に作っていく必要がある。
 このような観点から、平成19年度より世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラムを開始し、国内外の第一線級の研究者の招へい、強力なマネジメント体制と能力主義に基づく報酬、英語の使用や強力な支援体制など、国際標準の研究環境を整え、他大学・他機関との連携を実施することにより、第一線の研究者が是非そこで研究したいとして世界から集まってくるような「目に見える拠点」の形成を目指すこととしている(第1-1-52図)

第1-1-52図 世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラム

(沖縄科学技術大学院大学設立構想)

 沖縄科学技術大学院大学設立構想は、世界の科学技術の発展に寄与し、沖縄をアジア・太平洋地域の先端的頭脳集積地域として発展させていくこと等を目的として、世界に開かれた、世界最高水準の自然科学系の大学院大学を沖縄県に設立する構想である。本構想は、教授陣、学生の半分以上を外国から迎えるなど、真に国際的な研究教育環境の整備等を基本コンセプトとしており、構想の推進主体として平成17年9月に設立された独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構には、既に海外からも研究者が招へいされ、英語でセミナーや会議が行われている。機構のシドニー・ブレナー理事長(2002年ノーベル生理学・医学賞受賞者)のリーダーシップの下、海外のノーベル賞受賞者などの意見を聴きながら、開学に向けた準備が進められている(第1-1-53図)

第1-1-53図 沖縄科学技術大学院大学研究棟(完成イメージ)

第1-1-54表 優秀な人材の確保方策に関する諸外国の動向

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