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平成20年7月1日大臣会見概要

平成20年7月1日(火曜日)
10時37分〜11時7分
文部科学省 記者会見室

大臣)

 今日の閣議ですが、教育振興基本計画(以下、「基本計画」という。)の閣議決定が行われました。その後、高村外務大臣から「G8京都外相会合出席」について、岸田国務大臣から第8回目のいわゆる国民対話「希望と安心の国づくり」について、額賀財務大臣から「平成20年度予算執行調査」及び「世界税関機構(WCO)次期事務局長選の結果」について、冬柴国土交通大臣から「青い羽根募金運動に対する協力依頼」について、それぞれ発言がありました。また、町村官房長官から閣僚懇談会で、「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の開催について報告がありました。閣議終了後、若林農林水産大臣から「クールアースデー」について、地産地消を促進するためにメニューのコンテストをやるという話がありまして、文部科学省においても学校給食で協力を頂いていると発言を頂きました。日本は非常にフードマイレージが高い、要は食糧大量輸入国ですから、輸送時に非常に大きなエネルギーを使っているので、できるだけ地産地消を進めることは地球にやさしいという考え方です。関連して、バーチャルウォーターについて渡辺金融担当大臣からも発言がありました。いずれにしても、7月7日のサミットに向けて環境に関する議論がなされました。最後に報告ですが、昨日「G8大学サミット」が札幌で行われまして出席してきました。これは世界で初めての試みでして、G8諸国に加えて各大学長または副学長等が集まり、サステナビリティについて議論が行われました。

記者)

 基本計画がようやく閣議決定されました。大臣の受け止めをお願いします。

大臣)

 皆さんも既に御承知のとおり、先週末、大方の決着を見たところで会見をさせて頂いたわけですが、我々は、答申を頂いてから、我々が目指す教育、こうありたい、こうあって欲しいという姿を、再度、自民党内も含め議論をさせて頂き、政府内の折衝に入りました。それからも大変時間がかかりまして、最終的に先週の金曜日から週を挟んで細かい詰めを再度行って決着が付きましたので、月曜日の自民党内手続きを経て、今日の閣議決定となりました。所感と言われますと、我々の主張として一番明解に出てくる部分というのは、単に成果目標だけではだめで、どのように投資をするかということが教育において成果を得るために重要であるというもので、これについては、現下の厳しい財政再建、財政状況の中で数値目標を書き込むとの同意が得られなかったということです。また、もう一つの焦点になりました、学校現場の教職員定数の問題についても、行政改革における公務員改革という、非常に厳しい法律、行革法第55条の3という削減計画があります。地方も削減計画を作っていまして6.2パーセントと国以上の厳しい削減をされている中、私どもは新しい学習指導要領に基づいて、さらに2万5千人の学校現場の教員増を主張させて頂いたわけですが、残念ながら現時点では、まだ理解が得られず、数値目標も盛り込むということには至らなかったということです。今の日本の経済状態、また厳しい財政再建という国家的な課題の中で、長期の計画を作るということが、いかに難しいかを改めて感じています。

記者)

 削除、修正された部分も多く、大変厳しい結果ですが、せっかく作ったわけですから、この部分をどう打ち出して活かしていくのかをお願いします。

大臣)

 いわゆる考え方で平行線である部分はまだ残っていると思います。しかしながら、我々がそれぞれの教育段階において、こういうものを目指しているということについて、否定されたわけではありません。ただ、それを具体的にどうやっていくかについて、質的な問題、量的な問題について、まだ完全に議論が収束しているとは言えない部分も残っているわけですから、我々は、そういった議論の中で我々が主張してきたことを、これから実現するために、毎年の作業、また日頃の教育行政の中において、よりその内容を充実させていく努力をしていきたいと思っています。私は出席はできませんでしたが、昨日の自民党文部科学部会・文教制度調査会合同会議でも、これからが大事だという意見も、数多くの自民党内の先生から頂いているようですし、公明党の先生からも持ち回りという形で、それから公明党文部科学部会でも意見を聞いていますが、そういった意見が寄せられているところですから、来年度予算に向けた概算要求が始まっていくわけですから、しっかりと反映していきたいと思っています。

記者)

 今回閣議決定された基本計画の中に、中央教育審議会(以下、「中教審」という。)の答申、あるいは文部科学省の原案と違う部分で、数値目標が入らなかったのはともかくとして、「骨太の方針2008」(以下、「骨太2008」という。)に同じような表現がありますが、例えば人材確保法に基づく優遇措置を縮減する、つまり教員についてです。それから、新たな施策を講じるにあたっては、基本施策の廃止見直しを決定することが必要であると。元々、中教審の答申や文部科学省原案には、このような文言は入っていなかったと思うのですが、まさに骨太2008の表現と同じだと思うのです。この盛り込まれたことについての大臣のお考えをお伺いします。

大臣)

 人材確保法の問題は、これは見直しをするというのは、「骨太の方針2006」(以下、「骨太2006」という。)の議論の中で、要は優遇措置の見直しですから、2.76パーセントを削減することが閣議決定されています。そのことが書かれたということでして、書く書かないにかかわらず、やっていかなければいけないこととして決められていることであると認識しています。廃止見直しについては、要はすべての政策において基本的に今後とも、我が省のみならず、政策というのは常に検証していかなければいけないわけですから、書くのが当然でもあり、書かなくてもやらなければいけないことですから、そこに書かれていると確認したということであると私は認識しています。

記者)

 来年度予算の概算要求について、今回の基本計画に2万5千人という数値目標が盛り込まれなかったことで、その方針に多少の変更はあるのでしょうか。

大臣)

 それは基本的に関係ないと思っています。色々言われる方はいらっしゃいますが、例えば去年の年末にも話題になったことですが、行政改革推進法(以下、「行革法」という。)をどう扱うか、骨太2006をどう扱うか、少なくとも、行革法については法律を改正しない限り2年間は続くわけですし、また骨太2006もあと3年間は続く閣議決定された一つの事項ですから、今回、それを変えることの合意ができていれば別ですが、その合意はできていませんし、それはなかなか難しかったわけです。仮に、2万5千人の数値が盛り込まれたとしても、それでは行革法を変えてやる、とはならなかったと思いますから、基本的には変わらないとお答えをさせて頂きたいと思います。

記者)

 基本計画の関係で、元々国民会議で教育基本法(以下、「基本法」という。)とセットで出され、中教審もそれを基本法改正のセットで出しました。また、例えば自民党のホームページでも、この基本計画を策定することによって教育予算を実現していく、充実していくんだということが書いてあります。要するに基本法改正の主な理由の一つとも言えるような状況だったのですが、これが結果的に教育予算の充実に明確につながらない形になったことについて、どのようにお考えですか。

大臣)

 それは非常に残念だと思います。そのことを我々は実現したいと思ったからこそ、その数値目標を書いたわけですし、ただ、冒頭申し上げたように現下の情勢の中では、社会保障も含め、基本計画の中では、今御質問のあったような形にはならなかった。いずれにしても、毎年の予算編成の中で必要なことをやるということだと思いますし、2011年にプライマリーバランスゼロという考え方を政府は崩していないわけですから、そのものをどうするか、その後のことをどうするかを明示させる計画は、なかなか作るのは難しかった。それが冒頭私が申し上げた、10年を見越したということでありながら現時点において数値目標が盛り込めなかった一つの大きな要因だと考えています。

記者)

 あえてお伺いしたいのですが、2006年12月基本法が改正されたときには、すでに骨太2006にせよ、行革法にせよ成立されており、言わば制限がかかっていた中で、もう少し戦略的にこのことを運ぶ選択肢はなかったのでしょうか。

大臣)

 あったかもしれません。今そう言われて即座にお答えはできませんが、我々は出来る限り我々の主張をし、時間もずいぶんかかったわけですが、基本的に現時点で政府の今の方針を変えて頂くことは、なかなか難しい状況にあったということだと思います。これは、我々の分野だけではなく、他の分野でもそれぞれが工夫をして取り組むことですから、教育は大変大事だと我々は思っていますし皆さんもそれはおっしゃいますが、その中で工夫をしてやっていくことだと思います。より戦略的にできたかどうかについてはちょっとわかりませんし、これだけやったのだから、やはり現下の状況の中では仕方がないということで、最終的に我々は了承をしたと御理解頂きたいと思います。

記者)

 結局、財務省の理論を崩せなかったというのはなぜだと思いますか。今後の財務省側の理論にのっとると、定数についてもう少し効率的な人材配置を求められていくのではないかと思うのですが、大臣は何かお考えはありますか。

大臣)

 こちらの主張が認められてもそれはやらなければいけないことと私は考えていました。地方の状況を見て、例えば定数の問題になりますと、財務省よりむしろ総務省の方が、私は抵抗が強かったと認識しています。それは今、国家公務員は5年間で5.7パーセントの削減ですが、地方は6.2パーセントが一つの目標で削減計画を作っています。しかし、消防や警察など特殊な例もありますし、学校の先生も一緒にしてもらっては困ると我々はずいぶん主張もしました。そのような中で、数は少ないですが去年は千人の定員増がぎりぎり認められたこともありますが、しかし一方には、やはりまだまだ学校現場で工夫ができるのではないかという指摘もあります。財務省が言おうと総務省が言おうと、当たっていることは当たっているので、やらなければいけないことはあります。事務の合理化であるとか、それからICTの活用によって学校の会議を効率化する。こういったことは、これからきちんとやっていかなければいけない。例えば文部科学省の調査にしても28件から21件に減らしたということですが、もっと減らせるならやりたいと思いますし、先日話を聞いたら、国は減ったんだけど、都道府県はまだ減っていませんよという現場の声もありますから、こういうことをもっと徹底する。要は先生を増やすという発想だけではなくて、より学校現場の工夫をお願いすることは、これからもやっていかなければいけないことだと思います。ただ、地元の学校の先生と話をしていましたら、こういう状態でやはり本当に忙しいというようなことも聞いていますから、そういった現場の実態も我々はしっかりと把握をして、きちんとした主張をしていかなければいけないと思います。今良い質問を頂いたと思います。そういうことをきっちりやれていると言える状況を作りあげることによって、もっと必要なんだということを強く主張できる状況になると思いますから、しっかりとやっていきたいと思います。

記者)

 教育の投資効果という議論で、文部科学省はなかなか数値では把握できないというスタンスだと思うのですが、今後もそのスタンスで良いのか、それとも、子どもが大人になり、就職して所得を得るまでの長い時間をかけて行うような調査を今後やっていかなければいけないと考えるのか、アメリカ等ではそういう調査はあるようですが大臣の考えをお願いします。

大臣)

 アメリカのヘックマン博士の幼児教育で投資をすると回収効果が大きいという非常にアメリカ的な考え方だと思いますが、あのようなものも必要だと思います。ただ、これはおっしゃったように時間がかかるわけですし、交通整理が要るのではないかと思います。要するに量的に検証可能なもの、またそうではないもの、逆に言うと、我々が主張した、投資が成果に結びついているということの検証ができないかどうか、今回もかなり探して、そういう幼児教育の例は見つかったのですが、まだクリアになっていない。科学技術関係もそうですが、基礎研究はやってみなければわからないこともたくさんありまして、投資が必ず成果に結びつくかどうかは難しい部分もあると思います。教育も同じような部分を持っていますが、ただ、そうではない部分もあるはずですから、初めから諦めないで、時間がかかってもできるものであれば今すぐチャレンジすれば良いですし、できないからと言って逃げていてはいつまで経っても問題は解決しませんから、そういう交通整理はきちんとしたいと思います。

記者)

 気が早いかもしれませんが、基本計画を5年ごとに見直すタイミングで、この数値目標を盛り込むという主張を、これからも続けていくとお考えでしょうか。

大臣)

 それは、そのときの状況で。例えば、今、成長戦略を再度見直すということですから、日本経済の状況が変われば、また違った判断もできるかもしれません。少なくとも、今は、基本法に基づく基本計画は27あると思いますが、数値目標を盛り込んでいるのは科学技術基本計画だけだと思います。道路予算は数値目標を盛り込んでいるというのは特定財源があるためで、これが一般財源化すれば、おそらく成果目標はあっても数値目標はないという形に、私は変わると思います。これは言い切っても良いと思います。そういう中で、やはり数値目標を盛り込めるかどうかは、歳入の状況の変化が一つ考えられます。これは経済と税収ということで税制改革にも絡むことと思います。もう一つは、先ほど御質問頂いた、いわゆる投資と成果についての一層の理論武装といいますか、そういった研究が進めば可能になると思います。いずれにしても、2011年以降になると、新たに政府はその後の計画を作らなければなりません。私は行革本部の皆さんとわりと親しいのですが、2011年に入るとどういう計画になっているかと言いますと、プライマリーバランスがゼロになった以降は要は借金の返済なのです。この議論はものすごく厳しいものがあると思います。要するに今は骨太2006をはずしてでも、もっと社会保障や教育などを主張したわけですが、2011年まではこれを守るということで、少なくとも今年は骨太も作られていますし、決着したわけです。しかし2011年以降に待っているのは、ではやっとゼロになったけれど、それで良いのかということだと思います。これは、政治家として話をさせて頂いていますが、そこで出てくるのは、ここ数年の間にきっちりとした税制改革ができるかどうか。そのことができないで、今のままの形の上でプライマリーバランスがゼロになった以降のことが改善されるのは、なかなか難しいのではないですか。税収、単なる経済成長だけでできるとは私は思っていませんが、これからの議論になりますし、そういったことを総合的に判断をしないと今の段階で申し上げられません。ただ、まだ我々は数値目標を、投資と教育の関係というものを完全に諦めたわけではありません。

記者)

 昨日、小学校の学習指導要領の解説書が出されました。中学校の学習指導要領をめぐって、韓国政府から竹島の記述について慎重であってほしいという要望が外交ルートを通じて来ているようですが、これについて現段階の大臣のお考えをお願いします。

大臣)

 今はまだ白紙です。色々な情報はもちろん聞いています。領土はしっかり教えなければいけないと思っていますし、それから、政府としてどういうふうに考えられるのかということも、もっと聞いてみなければいけないと思います。

(了)

  • 本概要は、発言内容を変更しない範囲で読み易く修正しています。

(大臣官房総務課広報室)