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平成18年11月2日大臣会見概要

平成18年11月2日
9時11分〜9時45分
参議院議員食堂

大臣)
 本日の閣議において、文部科学省関係では著作権法の一部を改正する法律案が閣議決定されました。この法律案はご承知のようにテレビ、ラジオ等で放送されるものを同時に配信する場合に一定の範囲で実演家等の権利関係を整理するための法律です。また、著作権を守るための罰則の強化などです。

記者)
 未履修の問題ですが、救済策について、昨日与党との間で合意されましたが、改めて大臣の所感をお聞かせ下さい。

大臣)
 実は昨日は合意しておりません。昨日は与党の要請を受け、今日、それを受けた文部科学省としての案を自民党の文部科学部会・文教制度調査会合同会議と公明党と民主党の会合へご説明に行っております。これは法律や予算ではなく政府が決定する事項ですから、一応ご説明に行った形だと思いますが、色々ご意見を伺っているところかと思います。内容は、法律的に細かなこともありますので、正確を期すため、担当局の審議官から記者説明を行います。本日の新聞各社の報道振りあるいはテレビの報道振りも拝見しましたが、実はどのような案を出しても批判は受けるだろうと思いながら案を作っていました。あまり甘い対応になると正直に履修をしている90パーセントの高校生からは「何だ」ということになるでしょうし、また、あまり厳しいと現実離れして、「自分たちの責任ではないのに、受験を前にして動きが取れないではないか」ということになると思いますが、安倍総理から「受験を控えて、一番精神的にも辛い時だから、スピード感を持って処理してあげて欲しい」ということでしたので、10日間の日数を要しましたが、法制的裏づけがかなり窮屈なこの種のものについては異例のスピードであったと思います。早く対応ができたのは、国民の代表として国会に来ている各党の考えがほぼ同じだったということが一つの大きな要素だったと思います。

記者)
 報道されている通りということですが、大臣が最初に仰っていた時よりもかなりトーンダウンしたと思いますが、結局50時間程度の補習で卒業できるというのは、真面目に履修した108万人の生徒からするとかなり不公平感があると思います。それについてどうお考えなのか、しっかり説明してもらえませんか。

大臣)
 真面目に70時間授業を受けた方について、そうでない方が50時間で良いというのは大変不公平だと思われる方が多いと私も思います。逆に言えば、自分の責任ではないのにこの土壇場になって70時間の履修を強制される人の立場に立てば、また別の意見が出てくるでしょうから、現実の行政を預かっている立場というと自分の考えている筋だけを通すことはできなかったということです。

記者)
 ひとつには学習指導要領の法的拘束力について疑義が生じているということも言えると思いますが、その点についてどうお考えでしょうか。

大臣)
 法形式上のことについては後ほど審議官からご説明しますが、学習指導要領に手を入れてはいません。学習指導要領は変更しない形で処理をしました。ただ、学習指導要領通り、現場が教育を行えていないという現実は認めざるを得ません。10パーセントもの学生が学習指導要領通りの授業を受けていなかった、学生の責任ではなく、カリキュラムの設定権者が行っていませんでした。このことについて、カリキュラム、学習指導要領の告示権者に、告示した通りを担保する権限というのは調査権限しかありません。この辺りの法制的な詰めについては国会でも色々議論が出ておりますから、今後良く考えないといけないと思います。ただ、現実がこうだから学習指導要領を変えるとか、形骸化しているから現実に合わせるというご意見がありますが、90パーセントの人が真面目に履修した訳ですから、間違ったことをした校長の行為を後で学習指導要領を変えて是認するようなことをしてしまったら、全ての根底が崩れますから、私はその考えは採りません。しかし、時代の流れとともに、もっと授業を多くしていく必要がある部分と軽減すればいい部分については、中央教育審議会で良く考えてもらわないといけないと思います。

記者)
 高校教育の目的がある意味では受験のためということを、文部科学省が認めたと言えると思いますが、いかがですか。

大臣)
 それを認めたということであれば、是正策は講じないのではないですか。本来高等学校の目的は、高等学校で必修とされている科目と選択とされている科目を履修して、その間に多くの人と触れ合い、人としての礼儀、長幼の序、謙虚さなどを身につけた人間として社会に出られるということを期待している訳ですから、入試のためにやっている訳ではありません。入試のためというなら予備校でしかない訳ですから。自分の子どもだけはいい大学に入れて、いい会社に就職させて、いい人生を送らせたい、という親心はみんな持っていると思います。しかし、だからといって、「自分の子どもだけ良かったらいい」とか、「自分の学校だけ良かったらいい」ということでは駄目だと言わなければいけない立場の人がこういう行為をしたというところに最も多く問題がある訳ですが、調査権限を最大限に利用して、毎日毎日高校の箸の上げ下ろしを調査しなければならないという国には、私はしたくないと思います。ですから、当事者がもう少し考えてもらいたいと思いますね。

記者)
 政府の救済策が一段落した後の今後の対応、例えば現場の校長先生や教育委員会の責任の話など、また、再発防止の策についての大臣のお考えをお聞かせください。

大臣)
 各党の合意の手続きが終わったら、一斉に解決案について依命通知、つまり大臣の命によって、各局長が、都道府県の教育長、それから都道府県知事に通知を発出します。同時に、受け入れ側の大学に対しても、調査書、内申書の扱いや既に入学してしまっている在学生の扱いについて通知をします。それが終わった段階で、私から各教育委員長に、いじめの問題も含めて、対応について色々批判のある昨今、重く受け止めて、緊張感を持って教職員の指導に当たってもらいたいという私信を出しておこうと思っています。処分のことについては、人事権が私にありませんから、各都道府県教育委員会、政令指定都市の教育委員会等において、重く受け止めておやりいただくという以上のことは、申し上げられるだけの権限が私にありません。同じく再発防止ということも、文部科学省には調査権限しかありませんから、毎月毎月学習指導要領通りやっているかといって調査を出すのはいいですが、そうすると再発防止に資するかもしれませんが、受ける方はもう大変だと思います。何かあるとすぐに制度を直すという話になりますが、どんなに制度を直しても人間の誠実さと規範意識がなければ、問題は解決しないと思います。そういう意味で、気持ちをしっかり持って国民の批判に答えてもらいたいという気持ちの問題を私信でお出ししたいということです。教育基本法に関する特別委員会の議論の中でも、各党教育行政のシステムについては色々ご議論があるようですし、中央教育審議会、教育再生会議等でも色々ご意見が出てくると思います。また、報道機関にも社説、論説等で正しい判断を国民に訴えていただきたいと思います。今日の朝日新聞の天声人語には私の気持ち通りのことが書いてありました。しかし、大臣という立場だと四方八方のバランスを取っていかなければないけません。夏目漱石が「知恵に棹差せば角が立つ、情に重きを置けば流される」と言っています。批判する立場の方は何とでも言えると思いますが、その絶妙なバランスを取ってやっていくということを現実を預かっている立場の者として受け入れないといけないと思います。

記者)
 教育基本法に関する特別委員会で「文部科学省としても、今回の件について責任の一端はある」ということを仰いましたが、文部科学省内でも何らかの責任追及や処分のようなことも在り得るのでしょうか。

大臣)
 学習指導要領というのは文部科学大臣の告示ですから、これが守られなかった場合には、大臣が責任を負うことだと思います。そして、学校の教育について、もう少し、きめ細やかな指導を私がしなければいけないということでしょう。

記者)
 各都道府県等への通知は今日午前中には行われるということでしょうか。

大臣)
 重大な文書ですから、省内の決裁を取る必要があります。原案を今朝目を通しておりますが、もう一度法制的な裏づけ、引っ張っている条項その他に間違いがないかを再点検するように指示しております。いずれにしても今日中には発出します。

記者)
 未履修の問題の対応策について、担当者から詳しいお話をということですが、ぜひ、対応策のポイントについて、大臣から国民に対して一言お話いただけないでしょうか。

大臣)
 高校3年生が全体で116万人、そのうち、未履修の生徒が8万3千人から4千人です。そうしますと、108万人の人たちは、通達どおり授業をしていただいた校長先生のもとの学生なのです。私の気持ちとしてはこちらを基本的には大切にしたい。それは当然のことだと思います。しかし、この8万3千から4千の学生諸君も、自分たちがずるをしているという意図はほとんど無いままに、学校で組んだカリキュラムで勉強をしていた、そして、それが表に出たのがちょうど今の時期、1月2月3月の受験までもうすぐの時期ですから、この人にも瑕疵がないので、何とか救ってあげたいという微妙な綱渡りの中で、70時間までの未履修については70時間を履修することとしました。しかし、70時間履修を要求されている科目においても、病気その他の理由で、3分の2以上出席をしていた場合は、履修をしたものとみなす、という一般的な学校の規則がありますので、未履修が70時間以下の人は、70時間の3分の2ですから大体50時間程度を目安にして補講をする、ということは妨げないというのが私の気持ちです。正直に言えば、これだけ世間を騒がせた校長先生はぜひ70時間の補講をして、子どもをきちんと授業を受けて卒業証書を貰ったという気持ちにしてあげてほしい、と思います。

記者)
 受験科目の削減がずっと進んできております。また、一方では、共通の資格試験や学力テストのようなものを導入してはどうかという提言が昔からあるわけですが、そのあたりのことはいかがですか。

大臣)
 こういうことになると、色々な提言が出てきたり、こうしたらいいああしたらいいというお話が色々出てきます。しかし、やると今度はまた、屋上屋を重ねているではないかとか過重な負担を強いるのではないかと言われます。逆に簡単にすると、学力が十分につかないまま大学に入学したのではないかと言われます。批判する立場からは色々なことが言えますから。ですから、日本の大学生として相応しいところの学力はどの程度までなのかということをもう少し客観的に見極めて決めないといけないので、こういう騒ぎがあったからどうするこうするということではなく、今回は騒ぎを起こした学校、その学校の管理をしている校長先生、そしてその人事権を持っている教育委員会の規範意識がないということが原点にあることだけは忘れないでもらいたいですね。

記者)
 後ほど根拠を明かしていただけると思いますが、70時間の未履修をを50時間の補講でも妨げないという理屈ですけれども、組みかえたことで組みかえていない子はやはり不本意だと思うのですが、情緒的なかたちで結論づけられたのではないでしょうか。

大臣)
 いや、それはそうではありません。学校教育法によって、学校長に卒業の認定権を与えており、それを受けて、各学校の校務規則を作っておられるわけです。その中には、病気その他の色々な事由によって、3分の2の出席があった場合には履修をしたものとみなす、という規定があります。ですから、情緒的な対応をしているつもりはありません。これは間違いのないようにしていただきたい。つまり、未履修というかたちでなく、正規に履修をしていても、病気その他で出て来れなかった場合、3分の2の時間数授業を受けていれば卒業したものとして認めていいという規定をひいてるわけです。

記者)
 確認ですが、大臣としては校長先生に任せるとしながらも、可能であれば70時間の補講をしっかりやって欲しいということですか。

大臣)
 ですから、今日後ほど担当者からご説明をする文章を正確に読んでください。そうすれば私の意図がわかりますから。

記者)
 大臣は当初から70時間程度であれば3月末までに補習ができるのではないかとお考えをお話になっていらっしゃいましたが、ここであえて、3分の2とか50時間ということに言及されたことについてのコメントなどいただけますか。

大臣)
 私は独裁者ではありませんし、結果的に国民を混乱させてもいけませんので、国政全般のバランスを考えてうまく物を運んでいかないといけないと思います。ですから、今日審議官がご説明するそこのくだりの文章をよく読んで私の意のあるところを理解してください。

記者)
 350時間の未履修のある人も70時間ということの公平感について、きちんとしたご説明をいただけますか。

大臣)
 そういう意見が出てくることはわかります。わかりますが、350時間400時間の授業を受けさせるのですか。現実にできないのではないですか。できるだけ、公平感に配慮して最大限の努力を私はしたつもりです。

記者)
 それがレポートを課すということですか。

大臣)
 そうです。それから、詳しい方法は課長等から数値等を含めて指針を示さないといけないと思います。

(了)

(大臣官房総務課広報室)

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