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平成15年7月11日大臣会見の概要

平成15年7月11日
9時51分〜10時19分
文部科学省記者会見室

◎一般案件
平成15年度中小企業者に関する国等の契約の方針について(決定)
(経済産業省)

◎国会提出案件
衆議院議員大出彰(民主)提出国家公務員1種試験に関する質問に対する答弁書について
(内閣官房)
衆議院議員長妻昭(民主)提出首都高速中央環状新宿線の排気塔に関する質問に対する答弁書について
(国土交通省)
衆議院議員長妻昭(民主)提出日本道路公団等のファミリー企業への天下りに関する再質問に対する答弁書について
(同上)

◎公布(法律)
国立大学法人法(決定)
独立行政法人国立高等専門学校機構法(決定)
独立行政法人大学評価・学位授与機構法(決定)
独立行政法人国立大学財務・経営センター法(決定)
独立行政法人メディア教育開発センター法(決定)
国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(決定)
次世代育成支援対策推進法(決定)
児童福祉法の一部を改正する法律(決定)
裁判の迅速化に関する法律(決定)
民事訴訟法等の一部を改正する法律(決定)
人事訴訟法(決定)
心身喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(決定)
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(決定)

◎人事

大臣)
 本日の閣議では、当省関係として国立大学法人法等関係6法の公布が決定されました。
 閣僚懇談会では、私から、最近の長崎における痛ましい事件をはじめとした残酷な少年犯罪が多発している状況に対し、学校を通じていかに対応していくかについて、7月22日の全国都道府県教育委員会連合会総会で緊急の総点検を要請する等の方針を発言しました。この問題は、単に少年犯罪の問題としてとらえるだけではなく、大人の極めて残酷な犯罪も多いわけで、社会全体として考えていく必要があると思います。文部科学省としては、教育や学校に関することについては責任をもって対処いたしますが、政府全体としてこのような問題に本格的に取り組む時期ではないかと問題提起をいたしました。学校だけではなく、家庭・地域・社会の問題でもあり、警察などとも連携をして対処する必要があると思います。今こそ政府全体で、犯罪を絶対に許さないという社会風潮を醸成していく時期ではないかというお話をさせていただきました。この問題については、各大臣も様々な観点から御発言され、総理からも、「この問題についてはしっかりと対応しなければいけない。自民党でも治安対策について検討している。政府としても関係省庁が連携してこの問題に対応していきたい。」との御指示がございました。
 本日は、この場をお借りしてお話ししたいことがございます。患者さんへ永久的に挿入する放射線源による癌の治療についてです。前立腺癌の治療については様々な方法がありますが、放射線源のヨウ素125を患者に永久的に挿入する治療法について、これまで日本では放射線障害防止法による規制がございました。この度、それを緩和することににより、この治療法を現場で用いることができるよう措置いたしました。前立腺癌の患者さんにとって大きな朗報ではないかと思います。この治療法は、外科手術などと比較して、体の機能の損傷を回避でき、患者の生活の質を維持できるという優れた治療効果を有しているとされております。アメリカでは年間数万件実施されており、日本でもこの方法が普及しますと、外科手術などしないで治療できるわけですから、患者さんにとって大変朗報であると思います。近年、日本では年間1万4千人以上が新たに前立腺癌と診断されておりまして、潜在的にこの治療法が効果的な患者は年間数千人にのぼると推定されています。今回、規制の緩和に踏み切ったのは、今年3月に厚生労働省がこの治療を受けた患者の退出基準(医療法に基づいて診療用放射線照射器具を永久的に挿入された患者が、病院内の診療用放射線照射器具使用室あるいは放射線治療病室等から退出する場合の基準)を定めたことなどを受けて、当省としても専門家による安全性の検討、あるいは厚生労働省との協議を行った結果、この治療法が患者に対する便益があり、かつ、一般公衆等の安全の確保についても問題がないとの結論に至ったからでございます。こうした検討を踏まえまして、7月15日付けの文部科学省告示により、この治療法について放射線障害防止法の適用を除外することといたしました。

記者)
 長崎の事件対応については、社会全体の問題として政府を挙げて取り組んでいくということですが、その中で教育の分野、学校の指導に関し、何か具体的な対応策を考えていらっしゃるのでしょうか。

大臣)
 今回の事件については、事実の把握が難しい面がございます。捜査の進展を見極めながら、教育委員会を通じて事件の背景、生徒の状況、学校の対応などに関する調査をお願いし、情報収集に努めたいと思っております。この問題に限らず、最近の少年による凶悪犯罪を重く受け止めて、児童生徒の問題行動等への対応について、7月22日に開催予定の全国都道府県教育委員会連合会総会におきまして、全国の教育長に、直接、私から緊急的な総点検を要請する予定です。その中で、具体的な点検の視点を示し、総点検の結果を踏まえて、当省としても今後の対応を検討していきたいと思います。同時に、専門家や関係機関等による研究会を立ち上げまして、事件の背景・経緯、兆候の把握や早期の対応のための取組について検討を行うこととしております。

記者)
 全国都道府県教育委員会連合会総会において緊急総点検の指示をされるということですが、具体的にどのようなことを指示されるのでしょうか。

大臣)
 学校における管理・指導体制はどうなっているか、家庭・地域社会・関係機関との連携はどのように進めているか、基本的な道徳観・倫理観の指導の在り方などについて、具体的に点検をしてもらいたいと思っています。

記者)
 先日、京都大学で、教育の機会均等の観点から全ての外国人学校の卒業者について大学入学資格を認めるべきだという判断をしたようですけれども、どのように受け止めておられますか。

大臣)
 京都大学において、外国人学校卒業者に入学資格を付与することについての御議論があり、大学としての考え方をまとめられたということは聞いております。文部科学省に要請されるということですが、まだ具体的な要望は受けてはおりません。現在、当省におきましては、この問題にどのように対応するかについて検討をしております。私としては、平成16年4月入学者への対応を念頭置いてこの問題についての対応策を考えていきたいと思っております。

記者)
 今回の京都大学の判断というのは、検討の一つの参考というお考えでしょうか。

大臣)
 国立大学の中からそういう意見が出ているということも、一つの御意見として参考にし得るものだと思います。この問題については、全体の学校教育制度との関係など様々な観点から検討を進めておりますが、各方面の様々意見も踏まえながら検討していきたいと思います。

記者)
 本日、北海道の幌延において、核燃料サイクル開発機構の幌延深地層研究所の着工が行われておりますが、道内でもいろいろな論議があり、ずっと懸案の事項であった施設が着工に至ったことの率直な御感想と、そのセンターの意義についての見解、また地元では、研究施設だという位置づけではあるが処分場に繋がるのではないかと未だ不安を感じておられる状況について、大臣はどのようにお考えでしょうか。

大臣)
 高レベル放射性廃棄物の処分については、経済産業省の所管ではありますが、本日、幌延深地層研究所が着工に至りましたことは、幌延町をはじめとする地元関係者の方々の長年にわたる御支援の結果であり、大変喜ばしいと思っております。今後、核燃料サイクル開発機構が着実に研究開発を進めて、その成果が高レベル放射性廃棄物の処分事業に活かされていくことを期待しています。この研究所につきましては、地方自治体と核燃料サイクル開発機構の間で、「放射性廃棄物を持ち込まないこと」、「研究所を将来とも放射性廃棄物の最終処分場としないこと」などを内容とする協定を締結いたしておりまして、それをきちんと守っていくのが当然だと思います。

記者)
 高レベル放射性廃棄物を処分するための研究施設であるということもあり、地元住民の不安も強いと思いますが、その辺についてのお考えはいかがでしょうか。

大臣)
 長年にわたって地元関係者とも十分に協議をし、協定を結び、そして研究施設として設置するわけですので、それを最終処分場にすることはあり得ません。

記者)
 長崎の事件以前にも、神戸の殺人事件など6年の間に他にも様々な少年犯罪が起こっているわけで、それに対して文部科学省として、心の教育、学校・家庭・地域の連携を図る等様々な指導をしてきましたが、それにもかかわらず結果としてこういう事件が起こっていることについて、どのようにお考えでしょうか。

大臣)
 今回の事件を起こした子どもは、これまでの報道によりますと、学校の中では特に問題のない、よく本も読み、勉強もするという生徒であったようです。子どもたちのあらゆる場面を想定して全てを学校の責任として指導を強化しても、限界があると思います。まずは小さい時から、家庭で人間の基本、やってはならないことを明確に教えておいていただきたい。それも、観念的に教えるのではなくて、何かのきっかけを捉えて、人を傷つけたり、生命を粗末に扱ったりした時によく諭す必要があると思います。子どもたちに、命の大切さという抽象的な言葉を繰り返してもなかなか理解できない面もあろうかなとも思います。人間が守るべき基本である、例えば、嘘をついてはならない、物を盗んではいけない、人を傷つけたり殺したりということは絶対にしてはいけないということを、しっかりと子どもたちに教える。そして、人に対しては親切にし、思いやりを持ち、他人を尊重するということが子どもたちの心の奥底にしっかりと位置づけられていれば、少年時代やあるいは大人になっても心の制御ができるのではないかと思います。もちろん学校教育では、そういうことの大切さを教えていきますが、やはり大事なのは家庭であり、保護者が自らの生きかたを示すと同時に、そのことの大切さを子どもたちに伝えることが必要だと思います。当省としては、学校教育においてもできるだけのことをやっていきたいと思います。また、私はより広くメディアの方々等の御理解も得て、そういう凶悪犯罪を許さないという社会風潮を作っていくことも必要ではないかと思っています。日本が成熟した、本当に心豊かな社会になっていくために、大人の一人ひとりが行動をしていけば、随分変わってくるのではないでしょうか。また、政治においてもこういう問題をしっかり考えていくべき時期だと思っています。

記者)
 長崎の事件ですが、12歳の少年が、校外学習という教育活動の場において、友達の目の前で任意同行を求められ、他の生徒たちが少なからずショックを受けたということですが、そうした警察の手法についてどのようにお考えですか。

大臣)
 それは警察の御判断だと思います。

記者)
 昨日、キャリア教育の推進に関する調査研究協力者会議の中間まとめが提出されましたが、これに関しまして、キャリア教育を今後どのように進めていくかについての大臣のお考えをお聞かせください。

大臣)
 これまで日本の学校教育では、勤労観・職業観を育てる教育ということについて、それほど体系的には取り組まれておらず、中学校の公民科や進路指導等の中で職業との関係について指導がなされてきました。しかし、これからは、中学校、高校に在学している間から、職業に対してもっと関心を持ってもらい、働くことの意義や勤労観・職業観をしっかり養い、どんな仕事が自分に合っているかといったことも学んでいく必要があると思います。そういった意味で、キャリア教育を体系的に行うために専門家による会議を立ち上げ、御審議をお願いしており、昨日、その中間報告をいただきました。方向性としては、学校教育におけるいろいろな教科・活動を通じてキャリア教育の機会を様々に工夫し、しっかりとした職業観・勤労観を子どもたちに持たせるというものです。米国等いくつかの国では、しっかりとカリキュラムの中に組み込まれております。今後は、教科の中で抽象的に教えるだけではなく、インターンシップや体験学習も大いに採り入れていくことが大事だと考えております。学校の中だけでキャリア教育を完結させるのではなくて、ハローワークや各地域の企業、商店街等とも連携し、また御協力いただくことにより、生徒に実際の職業を経験してもらうといったことも進めていく必要があると思っております。

(了)


(大臣官房総務課広報室)

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